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フライトコロナイズ  作者: きーち
第3章
16/49

1話 クジラ探し

 ペリカヌの飛空開拓計画が新たな展開を迎えてから暫く経つ。外世界よりの情報から、不可思議な土地が存在し、その土地を調べるべく行動を始めた俺達であるが、それら聞き及んだ土地へ赴いたことはまだ一度しか無い状況が続いていた。

「冒険の成功には慎重さが必要なんだって、何かの本で読んだことあるよ。今がその時って言う風には思えない?」

 ペリカヌ内の食堂にて、弟のエイディスが目玉焼きをフォークで突きながら話をする。半熟の黄身の部分を割れるか割れないかくらいの強さで突くのがこいつの癖であり、兄としては行儀が悪いので止めろと注意したくなる。実際にしないのは、注意したって止めないからだ。

「慎重ったって、補給と近場の探索繰り返してばかりだと慎重通り越して臆病なんじゃあって思えちまうよ」

 弟が目玉焼きなのに対して、俺はサラダをもっさもっさと口に入れていた。朝食だから軽めの料理を、というのもあるが、現在はヒドランデで物資の補給をしたばかりであり、新鮮な食べ物を食べられる時期だから、その贅沢を楽しんでいるのである。

 これが飛び初めて1週間も経てば、出て来る料理の材料が保存の効くものばかりになり、2週間だと乾燥してぱっさぱさの料理と言えないものになって行き、3週間目にもなれば、水すらも濁り始める。

「確かに、そろそろ何か変化があっても良い頃合いだよね。案外、今回の出発がそうかもしれない」

 エイディスの言う通り、今回、ヒドランデを出発してから、何時もと航路が違っている気がする。

 何時もはヒドランデから北西方面の外界を途中まで飛び、余裕のある段階で引き換えしてを繰り返していたが、今回は飛ぶ方向こそ同じであるものの、探索と言うより、なにやらに向けてまっすぐ飛び、余計な飛行を行っていない印象を受けるのだ。

「ふぅん。となると、上から指示があるならそろそろってことか?」

 本当に冒険となるのならば、船員に何時までも黙ってはおけないだろう。何せこれまでとは違う動きを、居住場所であるペリカヌそのものがするのだから。

「だね。準備は絶対にしているだろうし、もしかしたら各班長あたりは既に何か知ってるかも」

「なるほど………班長か………」

「呼んだかね!」

「うわっ!!」

 唐突に後ろから大声が聞こえた。本人はそのつもりは無いのだろうが、普段の喋り声からして大声である。そんな白兵兼作業班の班長、ブラッホ・ライラホが、俺達兄弟が座るテーブルに同席しようとしてきたのである。

 テーブルは二人座ってまだまだ余裕があるものの、巨漢のブラッホが座ると手狭に感じてしまう。

「驚くことはあるまい? 呼ばれたから来たと考えれば、これほど便利な人間はいないだろう!」

 許可など得ず、堂々と席に座りながら、朝食の皿が乗った盆をテーブルに置く。ちなみに皿の上にはジュウジュウと音を立てて焼かれる分厚い肉が二枚。朝からこれである。ちょっと吐き気を感じても俺が悪いわけではあるまい。

「便利な人間は、朝からステーキ二枚っすか………」

「便利な人間にはパワーが必要であるからな! 人に役立つ人間は筋肉の付いた人間である。という言葉もある。ところで、なんだね? 冒険の話かね?」

 そんなことわざあっただろうかと首を傾げたくなるものの、それはさておき、その冒険の話について乗ってみることにした。

「この前、言ってませんでしたか? 冒険が無ければ艦内に寒風がなんとか」

「確かに、暇な日々がやや続いたが、それはパワーを溜めるためだよ。ここぞと言う瞬間にすべてを賭けるために、地味な準備が必要なのだ。ま、それも今日までであるが!」

「今日まで……ということは」

 エイディスが若干目を輝かせてブラッホに尋ねた。彼も彼で、最近は退屈だと感じていたのかもしれない。

「うむ! どうせそろそろ各班長から話があるだろうが、ペリカヌは今回の航空にて、外世界の住人、クリスト達から聞いた土地の一つを目指すことになったのだよ!」

 ブラッホが新たな変化を意味する言葉を口にする。それが良い内容なのか悪い内容かはまだ分からない。旅や冒険というのは、そういうものだろう。




「なんだ、既に聞いていたのか。ブラッホの奴め、楽しみを一つ奪ったな」

 食堂での一件から暫く、ブラッホが予告した通り、小型飛空船操縦班の班長であるビーリー・バンズからこれからの目的地への説明を受けた。

 恐らくは他の班もそれぞれの仕事場にて、同様に知らされているのだろう。俺達の場合は小型飛空船の格納室だ。

 隣には同じ小型飛空船操縦士のレイリー・ウォーラが興味なさげを装って、同じくビーリーの話を聞いていた。だが俺は分かっているぞ。実は興味深々ながら、そういう姿を見せるのは嫌だからわざとそんな態度を取っているというのを。

「僕は初耳ですよ。僕はですが」

 そうしてレイリーは、何故かじと目でこちらを見る。どうやら俺が先んじてこの話を聞いていた事にちょっと嫉妬しているらしい。

「俺だって、どこに向かうかは聞いてねえよ。単に目的地がしっかり決まったってことを耳に入れただけだって」

 実際、ブラッホは詳しい内容を班長のビーリーに聞けと勿体ぶって、話そうとはしなかった。ビーリーからの話に興味を持っているのはレイリーだけでは無いのである。

「なら結論だけ言うぞ。私達が次の目的とするのはホエールウォッチングだ」

「ほえ………なんですって?」

 意味が分からぬとレイリーが首を傾げている。俺も一瞬そうなりかけたが、いろいろとレイリーよりも知識があったため、間抜けな姿を見せずには済む。

 クジラを見に行く。そうビーリーは告げていたからだ。

「生物鑑賞だよ。そういうの、あるだろう?」

「ありませんよ! 僕達は冒険や調査をするんであって、クジラを見に……えっと……」

 レイリーの語気が鈍くなる。確かにホエールウォッチングとは、冒険や調査と言えなくも無い。というか言い得て妙だ。ビーリー班長はこういう冗談が上手いのか?

「普通のクジラじゃあ無いんですよね? 確か……陸のクジラだ」

 何時までも後輩が間抜けな姿を晒すというのは、先輩として如何なものかと思うので、ここで助け舟を出すことにした。

「陸ってなんです? クジラは海か大きな湖にいるものでしょう?」

「いやあ、何と言うか………班長、話の続きをどうぞ」

 知識として知るというより、単語としてそういうものがある程度のものでしか無いため、話の続きをビーリー班長に求める。だいたい説明は彼の仕事だろうに。

「ははは。そう言えばアーランはクリスト達との交渉に参加していたんだったな。そりゃあ知っているか。良いか、レイリー? 普通のクジラは確かに水の中に住む。だが、私達が求めるのは君の言う通り冒険や調査。普通のクジラ相手じゃあそれは不適当だよ。だからこれより我々は、普通では無いクジラを確認に向かうのさ」

 普通ではないクジラ。それは以前、俺達の知らない世界を知るクリスト達から聞いた土地の噂に存在していたはずだ

 陸や空を動き、ある土地に巣食っているというそのクジラを、今回、ペリカヌは確認に向かうのだろう。

「なんて言えば良いんでしょうね? 陸クジラ? 空クジラ? 本当にそんなものがいるかどうかはまだ分かりませんが、兎に角奇妙な話であることは確かだ」

 面白くもある。また、そこで新たな情報が手に入ればさらに良いことだと思う。俺の目的である外世界から来た巨大飛空船の捜索はまだ五里霧中の状態であり、今はどんな場所だろうとも、未知の土地を知るべきなのだ。

「なんですか、そのクジラは………もしその土地に行けば、僕達が調査する破目になるのかなぁ」

 レイリーが心配そうに言葉を漏らす。

 往々にして小型飛空船班はペリカヌを危険に晒さぬために、先んじてそういう調査を単独で行う仕事を任される事がある。

 先日も俺が調査任務を指示され、危険な目に遭ったばかりだ。

「とりあえずアーランは一回お休みだろうがな」

「ロンブライナの調整がまだ済んでねーですもんね。何日の航空になるかは分かりませんから、調査の時に間に合うかどうかは判断できませんが」

 一度墜落に近い形で不時着させてしまった小型飛空船ロンブライナは、現在、整備班達の調整が続いていた。

 外観はそれほど被害が無いのであるが、結構デリケートな部分が歪んでいるらしく、修理に時間が掛かるとのこと。だいたい後数日必要らしい。となると、次の調査には飛行できぬ可能性が高い。

「クジラ見学は私とレイリーの仕事と言うことになりそうだな。さて、どんな危険があるか………レイリー。君も無茶はしないようにな」

 少し緊張感のある顔になったビーリー班長。それはきっと、自分への危険もそうであるが、部下であり、若さ溢れるレイリーが無茶をしないものか心配なのだろう。

「別に無茶をする様な状況じゃあないですから、大丈夫です。大丈夫ですよ」

 そこで大丈夫を二回繰り返すのが危なっかしいのである。ここで冗談の一つでも言えれば、彼自身の才能と合わせて、一人前と見られるのだが。

「油断して墜落しちまいそうになった奴は見習わない様にしとけよー」

「なんですかそれ。冗談にしては酷く無いです?」

「俺自身が言ってるから良いんだよ」

 軽口を叩きあい、レイリーの固さをなんとかしていく。こうやって、少しずつ心に余裕を持たせて行ければ良いのであるが。




 クジラは水の中に棲む生き物だ。それはまあ、クジラというのが魚のデカい奴という程度の認識を持つ者にとっては当たり前の認識だ。

 艦内にいる学者先生に聞いた話では、魚というより牛なんかに近い生き物らしいが、それにしたって陸を移動するとは誰も思わない。

「なあ、どんな生き物だと思う? 俺はな、雲みたいな奴だと思うんだよ。なあ?」

 ペリカヌの下部艦橋にて、何故か何時も慣れ慣れしい作業員班のバーリン・カラックが話し掛けてくる。

 搭乗する小型飛空船がまだ調整中のため、俺は他の班の手伝いをしているのだ。

「あー、雲みたいならデカくても軽そうだな」

 と、真剣に相手などせず、俺は話を聞き流していた。実際、仕事の手伝いで忙しいのだ。今この瞬間も、下部艦橋の床になっている透過壁越しに地上を観測し、地図を製図しているサウラ・カーラに報告をしなければならない。

 というか、臨時で手伝っている俺の方が忙しくしていることに納得がいかない。手持ち無沙汰ではあったが、代わりに仕事を手伝う先に班員が暇そうにしているのはどういうことか。

「そう、軽いんだぜ? だから空も飛べるし陸だって歩けるんだ。そうに違いねぇ」

「その雲みたいな生き物、全然見当たらねえけどなあ」

 地上を見る。出発して数日は既に経っており、そろそろ目的の土地周辺になったと思う。俺達は土地の観測もそうであるが、陸に存在するかもしれないそのクジラの捜査も行っているのだ。

 俺以外の小型飛空船班の二人だって、今はペリカヌから発艦して、周辺の調査を行っていた。そういう状況で無ければ、幾ら寂しいからって、他の班の仕事を手伝いなどするものか。

「そう簡単に見つけられてしまうのなら、楽しみが無くなってしまうというものだよ! なあ! サウラくん!」

 相変わらず元気いっぱいなブラッホが、床の透過壁を見る体勢からがばっと上半身を起き上がらせて叫ぶ。

「良いから班長もバーリンさんも観測続けてくださいーい。あ、アーラン君はあれよ? 休んで良いのよ? ほら、ビーズの奴がお茶を入れたがってるし」

 そんな風にブラッホの叫びはサウラに流されてしまった。

「いや、なんて言うか……ほら、良いって」

 ビーズ・ロートナをちらりと見れば、今か今かと盆を持とうとしているが、茶は断った。なんというか彼に茶を入れられると、毒を入れられるんじゃあないかと警戒してしまうのだ。何故だろう? 彼の雰囲気が暗いからか?

「ちゃ、茶。本当にいらないのか……?」

「ああ、本当に良い。喉が乾いていないんだ。本当だって」

 何やら迫ってくるビーズを手の平で押し留めながら、再度、床の透過壁を見る。ここが本当にクジラが棲む場所なのだろうかと疑いたくなるのは何度目だろうか。

 先程までクジラの話をしていたが、その実在を疑いたくなる。別に陸にクジラが居たって良いとは思うのだが、場所が場所なのだ。

「しっかし、見れる範囲全部砂漠だなぁ! こんなの観測する意味なんてあんのかよ!」

 バーリンが愚痴というよりは怒声を漏らした。確かに視界一杯が砂漠だ。俺達はひたすらに砂漠を観測している。クジラどころか他の生き物の気配すらしない広大な砂漠が、ペリカヌが進む空の下に存在していた。

「あーら、砂漠だからこそ観測が大切なのよ? ちゃんとしないと、目測を誤って、地図を間違えやすいんだからー」

「俺達はクジラを探してんだよ! 砂漠を見学に来たわけじゃあねえんだぜ?」

「地上の観測が私達の本分でしょー!!」

 バーリンとサウラの言い合いはとりあえず思考から外しておく。気にしないと決めたらそれほど視界からどこかへやれるのは、人間が持つ力の中ではかなり有用なものだと思う。

「でだ、ここにクジラが居るかどうか、アーラン君は本気でどう思っている?」

 班長のブラッホも砂漠を見続けるのはさすがに辛いのか、世間話を始めた。

「………有り得ないってんなら、この世界にも果てが存在するってことなんでしょうけどね」

 俺はペリカヌの進行方向を見る。壁に阻まれて見えないものの、その向こうには果ての無い、無限の可能性を持つ遥か彼方の地平線があるはずだった。




 何かが砂漠で動いた。その言葉を発したのは誰だったか。恐らくは作業員班の誰かだったと思うが、その言葉に皆が反応して透過壁の向こう側を見たため、誰かと言うことを誰もが失念してしまったのだろう。

 実際、透過壁から地上を見た時は皆の思考は一致していたから、別に誰でも構わなかったのだ。

 俺が見た時、既にその姿こそ見えなかったものの、砂が動いていたのだ。何かが砂漠の砂の下を動いている光景。それが目に映った。

 俺だけでなく、他の皆もしっかりと目撃していた。だからこそ艦長に報告したのだ。砂の下にいる何かこそ、俺達が探しているクジラでは無いかと。

「陸や空で無く、砂の下に潜るクジラ……ですの?」

 上部艦橋までやってきた俺とブラッホは、そのままそこで艦長に発見したものについてを説明する。

「砂を泳ぐと表現した方が良いかもしれませんな! まるで水の中を泳ぐクジラの様に、砂の上に出ることも、跳ねることもあるでしょうし、陸や空を泳ぐ様にも見えるのではないでしょうかな?」

 主に報告するのは作業員班のブラッホであるが、そこに何故か隣に立つ俺一人。本当に何故か。直接的に連れて来られた理由はと言えば、ブラッホに無理矢理引っ張られたのであるが、その引っ張られた理由が分からない。

 しかも艦長のアニーサもまったく俺の存在に疑問を抱かない。あれか? もしかして俺はブラッホの隣に立っている事に違和感を覚えないという存在になってしまったのか? それはそれで凄く嫌だぞ?

「さて、それが本当にクジラなのかどうかがもっとも重要ですわね。大きさはどうなったのですか? クリストの方々からの情報に寄れば、それはクジラほども大きな存在だったからこそ、クジラと表現した。と申しておりましたが」

 アニーサ艦長がこちらを見る。どうやらブラッホだけで無く、俺の意見も聞かせろということらしい。二人で報告に来たのだから、出来るだけ多くの情報を寄越せと言うことだろうか。

「大きさは……砂の上ですからはっきりと分かりませんでしたけど、下部艦橋から皆が発見できるくらいの動きはしてましたよ。砂が……」

 砂が動いてるところしか見ていないのだから、詳しく聞かれても困る。見たままを伝えてるのだから優秀な報告だと個人的には思うものの、艦長がどう思うかまでは知らない。

「砂が………ですのねぇ」

 まだまだ情報に不足ありと言ったところらしい。ただ、現状はこれ以上を望めないということも、アニーサ艦長ならば分かるだろう。ではどう来るか。

「アカノトさん。近くにペリカヌを降ろせる場所はございますかしら」

 上部艦橋にはペリカヌの操縦席と操縦桿が当たり前の様に存在する。その操縦桿を握る男に、アニーサ艦長は話し掛けた。

 名前をアカノト・テンペライトと言い、白髪の目立つベテラン操縦士である。若い頃は俺と同じ様に小型船操縦士もしていたらしい。

「俺で無く、観測士に尋ねてくださいよっと」

「え!? あ、はい! その、ここからやや左舷の方向に回頭していただき、少し進んだ場所が比較的起伏も無く着陸に適している場所かと!」

 アカノトに話を向けられ、焦るのは観測士のシィラ・メリベイだ。若い彼女は経験も浅く、ミスが目立つらしい。

 そんな新人を鍛えるためか、アカノトは彼女に着陸箇所を決めさせたのだろう。彼くらいならば自身で判断できるに違い無いが、そこを新人のためにとシィラに決めさせたのだと思われる。

「では、小型船が戻り次第、そちらへ着陸を」

「了解でーす」

 軽い口調のアカノトだが、指示する前から既に船は適した動きで回頭を始めている。観測士の観測、艦長の意見。それらと共に状況を見て、先読みをする経験が彼にはあるのだ。

「ふむ。地上での調査となれば、私の班の出番ですかな!」

「ええ、作業員の方々は頼みますわね? こういう場所での調査の経験は?」

「無いわけではありませんが、いきなり広範囲は無理でしょう! 砂漠は容易く体力を奪ってくる。しかも中々それに気づかせないのです! 慣れぬ内は慎重に事を運びませんと!」

 ブラッホもブラッホで、すぐに自分達の能力と出来る得ることを判断できている。この船において、年齢を重ねているというのはそれだけ経験値が豊富ということで正しい。

「あまり長期間は滞在できません。物資の現地調達も難しい土地柄ですし、あまり本格的な調査はできませんわね。できて2日。そう考えて行動してくださいまし」

「はっ。了解であります! では行こうかアーラン君! 冒険の始まりだよ!」

「は? え? ちょっ。あれ!? 俺も参加するんですか!?」

 年配が経験者を重ねる者という意味なら、この船において若いというのは、年配者に振り回されがちだということになるらしかった。




「さて諸君! 砂漠の旅の準備は良いかな!」

「………」

 砂漠へと着陸したペリカヌ。そのペリカヌからタラップで砂漠へ降りたブラッホと彼率いる作業員兼白兵員班プラス俺。

 元気良く声を発するブラッホとは正反対に、俺達の意欲は酷く低く、きっとこれからの足取りも重いだろう。

「って! だからなんで俺まで!?」

 俺は小型飛空船班だ。乗るべき小型船のロンブライナだって、そろそろ飛べる様になるくらいには整備出来始めているらしい。つまり、何時までも作業員班を手伝う理由は無いのだ。

 他の小型飛空船班の二人などは、ペリカヌが着陸する前に帰艦しているのであり、現在は休息を取っている。

「暇な時間が続くよりは良いだろう? 他の皆もどうした! 君らの場合は仕事なのだぞ! 楽しい楽しい仕事の時間だ!」

「あっついんですよー。これからここを歩くって思うと、うんざりするって言うかー」

 サウラが愚痴を漏らす。確かに暑い。この暑さは以前、とある土地で味わったそれとはまた違った暑さだ。

 じめじめとして、じっくり体力を奪ってくるそれで無く、空からの光と、その光が砂に反射された形でまた光。

 二つの光が上下で襲い掛かり、熱量となって人の体を焼こうとしてくる。どれだけ暑かろうと、ここでは服を脱いではいけない。それは火に体を晒すのと同じだからだ。

「太陽が出ている内は暑い! 日が沈めば寒い! そういう当たり前の事が極端になった場所こそが砂漠というものだよ! だからこそ、注意したまえよ! 自然が人間にとって脅威と言うのなら、ここはその驚異すらも極端化しているのだから!」

 ブラッホが砂漠を見渡すのに合わせて、俺達の視線も砂漠へ向く。そこには、この世界が広大なのと同じく、どこまでも続きそうな砂の海が広がっていた。



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