3話 切っ掛けを良しとするかは腕次第
「いったい突然、どうしたのです? あなた方には見張りを任せていたはずですのに」
遠慮などどこぞに放り捨てて、テントへと入って行くブラッホ。そんな彼を追って、俺もテント内へと入った。
そこには、突然現れたブラッホという巨体に驚くクリスト達の長と、同じく驚いているミナ導師。そうして、肝が据わっているのか、平然と微笑んでいるアニーサ艦長がいた。
微笑んでいると表現したが、その実、いきなり現れた俺達に対して怒っているのではないかと思える程度には、ちょっと強い口調である。
「いや、艦長……その……ええっと、なんだ………」
「艦長殿にちょいと話があったのですよ!」
なんとかテント内に突然入ったことへの釈明をしようとするも、そんなことは関係無いとばかりにブラッホがずずいっと艦長に近寄った。もう空気がブラッホ一色になってしまっている。想像するととても嫌だ。
「話……ですの?」
さすがの艦長も、ブラッホに近づかれれば引いてしまうらしい。生物的な力の差があるのだから仕方あるまい。
「ええ! 話ですな! ミナ導師も宜しいですかな? そしてそちらの御仁も」
「宜しいかどうかは、内容次第かと………」
「―――」
体格の良さに対する畏怖心というのは、どんな人種にも有効らしい。艦長と同じく、気圧されているのはミナ導師。そしてクリストの長である老人もそうだった。
クリストの長に限っては、何を言ったのかは分からないのであるが、兎に角戸惑っていることは分かってしまう。これがブラッホの力か。
「その内容ですが、こちらのアーランくんがこれから話しますぞ!」
「は、はぁ!? お、俺!?」
と、自らの勢いでこんな風に場の空気を崩して置きながら、その中心を俺に押しつけやがった。こんな事態、想定したつもりは一切無いため、かなり混乱してしまう。
「うむ! 是非とも話すと言い! 外で子ども達と触れ合う中で、気が付いた物事というものをな!」
「こ、子どもがどうかしましたの?」
話の展開についていけないのは俺だけでなく、アニーサ艦長もそうだったらしい。いったいこれはなんだ。兎に角説明をしろという視線を向けられた。
黙っていたらきっと、刺々しい視線を向けられる。腹を括り、何事かを言葉にする事にした。
「あー、ちょっと外でクリストの子ども達と話し……は出来なかったから交流? そういうものをしたんだよ……あ、ミナさん。これからの話、通訳してくれないか? そっちの人に」
「分かりましたが……それは必要なことなので?」
「多分、このおっさんが話せって言ってることは、そこのクリストの代表者さんに一番聞かせたいことなんだよ……うん。話から外させるって言うのも失礼にあたるだろうし………」
この様に前置きしてから、先ほど、クリストの子ども達と交流した結果、どういう印象を受けたのか。交流の内容。そして、その事実について俺がどう思ったのかを話し、それをミナ導師を通じてクリストの長へと伝えていく。
「巨大な………飛空船ですか」
やはりアニーサ艦長も引っ掛かりを憶えたらしい。もし子ども達が見た飛空船、それがペリカヌや既知世界の飛空船だったらそれで良い。この場を混乱させて申し訳ないと頭を下げるだけだ。突拍子の無い話であることは確かだ。
実際、ミナ導師には受け入れがたい話として聞こえたらしい。
「仰ることの意味が分かっていらっしゃいますか? もしその飛空船が、外からやってきたものだとするならば、私達と匹敵する―――
「わたくし達と匹敵するか、それ以上の技術を持った国か組織が存在する。有り得る話ですわね。まだまだわたくし達は外の世界よりよっぽど狭い領域で生きているのですから」
ミナ導師が否定の言葉を完遂する前に、アニーサ艦長は俺の話を受け入れた。この場において、実のある内容だと認めてくれたのだろう。
「し、しかし艦長、それは………」
「――――?」
「え? 今、なんと………」
困惑するミナ導師に話し掛けたのは、俺達側では無く、クリストの長であった。俺の話をミナ導師を通じて聞いた老人は、何か言いたい事があったらしい。
「―――。――――?」
「―――――!?」
暫く、クリストの長とミナ導師が会話を続ける。疑問符付きのクリスト達の言葉に対して、ミナ導師は驚くばかりと言う様子。いったいどの様な内容なのかが気になるところだ。
一旦それらが落ち着いたところで、ミナ導師が俺達に向けて話の内容を俺達の言葉にした。
「その………この方、いえ、クリストたちの殆どは見たことがあるそうです。小さな町よりも大きな飛空船が、この地よりさらに北へ飛んで行くのを………」
「ここから北って言やあ、外世界側じゃねえか。しかも町よりデカいって………間違いなんじゃないか?」
彼らは巨大飛空船について知っている。そうしてその飛空船はラクリムを滅ぼした飛空船なのではないだろうか。その様な飛空船が何隻もあって堪るかと言う話でもある。
「しかし………それが本当かどうかは……何かの見間違いである可能性だって………」
「それを最終決定するのはわたくしの権限ですわね」
未だ真偽が分からぬと言うミナ導師に対して、アニーサ艦長が告げる。この話を聞いて、どう判断するかは自分がすることであるのだと。
「わたくし個人としては、実に興味のある話だと思いますわ。詳しく聞いてみる価値があります。そうして、その真偽を確実にとは言いませんが、ある程度、確かめることはできるかと」
「ほう! それは一体どういう?」
腕を組み、笑顔で尋ねるブラッホ。話の内容が面白い方向に進みそうなので、上機嫌なのかもしれない。
「先ほどまで、わたくし達はこちらの方と取り引きをしていましたの。それがどういう類のものかと言えば、我々が彼らに食糧などを融通する代わりに、彼らから彼らが旅をしてきた土地。中でも目を惹く場所についての情報を引き出して貰う。というものでして」
幾つかの話を既に聞いたと艦長は話す。例えば陸と空を移動する巨大なクジラの住処となっている土地について。巨大な塔を建てることに労力を費やす町について。かつて大いなる帝国が存在した廃墟に住まうたった一人の超人について。そうして底に辿り着けぬ巨大な穴の存在。等々。
はっきり言ってしまえば信じ難い話だが、興味深いものであることは事実だ。そんな場所が外の世界に存在している。まるで冒険譚の一部に迷い込んだかの様な錯覚を覚える。
「不可思議な物語。真実かどうか疑ってしまいたくなる伝聞。巨大飛空船についてもその一つに入り込める話だと類推できますが、もし、他のそれらが真実であったとすれば、巨大飛空船もそうなるとは思いません?」
疑わしいのならば調べてみよう。クリスト達から聞いた土地を、実際にペリカヌで探る。それは飛空開拓計画の主旨に沿った行動である。
もしクリスト達の話が嘘だったとしても、土地を調査したという事実は変わらず、こちらが損をすることは無い。
そんなアニーサ艦長の話を聞いてから、俺達はテントを去ることになる。巨大飛空船の話を良く引き出してくれたと礼をされながら。
クリスト達との交渉が終わり、俺達は一旦ペリカヌへと帰還することになった。帰る時もロンブライナが運搬室を運ぶ形であったので、乗り込む船員から不満が出たものの、他に方法が無いため仕方あるまい。
そうして今はペリカヌ内の会議室にて、アニーサ艦長からクリスト達との接触結果についての報告。その結果を反映しての次の方針についての会議が行なわれていた。
参加するのはペリカヌ船員の各班長や中枢の人員のみ。のはずだが、何故か俺も呼ばれていた。
「さてみなさん。クリストの方々が語った話については、真偽を横に置き、これまでの説明通りということで宜しいですわね?」
皆、アニーサ艦長の話を聞いて頷いている。ただ一人、俺だけが納得できない状態ということであろう。
「質問……良いですかね?」
このまま会議は進展する前に、言って置く必要があると思い、俺は手を上げて質問した。
「なんですか? アーランさん」
「俺………場違いじゃないですか?」
どう考えたって、一船員の俺が並ぶ場所では無いと思うのだが。
「今回の議題は、あなたが持って来た巨大飛空船についての話が主題ですので、あなたにも参加していただきました。同じく話を通していただいたブラッホ班長については、そもそも会議の参加者ですし、何か不都合等ありましたかしら?」
ブラッホの名前が出たので、隣で会議室の椅子に座っているブラッホを見た。すると目があって頷かれてしまった。まるで彼と同類みたいに説明するじゃないか。それはそれで一大事だぞ。
「不都合とかはその………会議に参加しても良いと言うのなら、参加させてもらいますけど………」
ペリカヌの方針を決める会議に参加できるというのなら、それは有り難い話であるのだが、それでも自分の立ち位置に対する居心地の悪さは感じてしまう。
ただ、艦長の命令みたいなものであるため、そういう悪い感情は押し殺しておくことにした。
「では始めますわね。さて、そちらのアーランさんにも申した通り、主題はクリストの方々から聞いた巨大飛空船についてです。わたくし、今後の方針としましては、この巨大飛空船の探索を一つの目的とさせていただきたいと発案しますわ」
その言葉を聞いて、会議がざわつく。動揺していないのは俺とブラッホくらいだろうか。それにしたって、会議より前にその様な事を既に艦長の言動から察していたからに過ぎない。初めて聞かされたら、きっとこの場にいる誰よりも驚くだろう。
「ちょっと、ちょっとお待ちを。良いですか? 艦長殿」
会議の参加者であるサーイル・エルゲンという男が、ざわつきの中で艦長へ質問する。20代後半くらいの背格好をしている男性で、艦内では報告官という役割を持っている。
そもそも報告官が何者かと尋ねられれば、それはこの計画の監視役というものになるだろうか。
彼は今回の計画への志願者では無く、ガーヴィッド公国から派遣された存在として、計画が無事遂行されているかを監視し、報告する事を仕事としている。ある意味では艦長とその下にいる人員という艦内の組織図から外れた存在だと言えた。
「サーイル報告官はどうぞ。大凡、話される疑問点については想像できますが」
「でしたら結構な話なのですが、艦の目的は植民可能な土地を発見することでありますから、その……巨大飛空船ですか? それを探る事について、計画……引いては公国に何か利益となるものがあるのですかな?」
報告官が帰属する組織はあくまでガーヴィッド公国。ペリカヌそのものよりも公国にとってどうなのかを優先するため、こういう疑問はもっともだと言える。
ただ、こういう感じの言動ばかりしているため、ペリカヌへの帰属意識を持つ船員とはぶつかりがちな人であったりする。味方では無いと言う事を、自らの言動で証明するタイプの人間なのだ。
「その点につきましても順を追って話をする内に解決すると思いますわ。まず、クリストの方々の話から、幾つか植民地候補となりそうな土地についても聞いております」
第一目的なのだから、当たり前のことだろう。それらを聞いた上で、また他に興味深い話として巨大飛空船の話があるのだし。
「ただし、どれもはっきりと確認したわけではありませんし、かなり距離がある場所についてのこと。ですので、土地の調査や植民準備は、それらの情報について確度を高めてからと言う話になるのですわ」
「近隣にある土地についての情報とクリスト達から提供された情報。それらを整合させてから、植民地を目指す。というのであれば分かる話ですが、その先にあるものの一つが、ただの大きな飛空船というのは………」
「タダの、ではありませんわ。飛空船が存在する以上、そこに人がいるということです。それも、飛空船を造れる程の組織力と技術力を持った」
それは植民地よりも価値のある対象だと思わないか。と、アニーサ艦長は会議室にいる全員に尋ねた。
もし、そんな存在がいたとして、自分達はむしろ弱小と言える側になるのではないだろうか。そんな脅しを言葉に含めている。
「それにそういう飛空船が離着陸する場所というのは、即ち、植民地として適した土地であるとも言えますしね。なにせ実際に人が住んでいる。その周辺に未開拓地があれば、そこへの植民も可能かも」
と、一応はまっとうそうな理屈をアニーサ艦長は口にした。だが実際にはそれが建前であり、彼女はあくまで巨大飛空船調査を重視していると俺は見ていた。
(なにせ俺と似た様な目的を持ってるもんなぁ。公国だって、巨大飛空船の情報なら是が非でも欲しいところだろうし)
巨大飛空船がラクリムを滅ぼした船なのだとしたら、ガーヴィッド公国はその存在を恐れ、アニーサ艦長はそれに対する復讐を願っているだろう。
「しかしですなぁ。そうするならそうで、公国への報告義務が………」
「その点ならば、一度ヒドランデに戻る予定ですので、その後にでもしてくださいな。ただし、こういう報告を付け足してくださいまし。得た情報の確認は何にせよ必要ですから、ペリカヌは調査を行うと」
最初から、こう結論を出すための会議なのだろう。植民地探しだろうが、巨大飛空船探しだろうが、クリスト達の話を実際の調査で補強する必要があるのだ。
さっさとその点に関しては先に話しておいて、異論がありそうな話を次に持ち出す。そうすることで当初の目的に関しては流す様に了承させる。こういうやり口をする相手なのだ。この艦長は。
「で、実際に何をどう調査するかが重要ですな! 既に決まって?」
ブラッホも手を上げて質問する。彼にとっては面白そうな状況への後押しと言ったところだろうか。
漸く冒険らしい冒険になってきたと、表情と同じ様に心の中で笑っているのかもしれない。
「クリストの方々からの情報。その中において、もっとも近い未確認地域。ヒドランデで補給を行い次第、そこを調査する予定ですわね」
「いけませんよ艦長! それははっきりした回答ではありません! そこがどうい土地なのか。それを私は聞きたいわけでして! ほら、夢ははっきりと見える頃が一番楽しい瞬間。とも申しますからな!」
暫くの艦内生活の中で、アニーサ艦長と純粋にやり合える人間というのは、少しずつ見えてくる。そのうちの一人がブラッホだ。
彼は彼の中で確固たる善悪勘を持っているらしく、それが体と同じく頑丈な代物なのだろう。だから艦長に話をはぐらかされたりはしない。
「………確かに、しっかりと伝えるのは大事ですわね。その土地について、クリストの方々はこう表現してしましたわ。灼熱の夜と凍える昼が繰り返される地獄の現出地と」
「聞く限りにおいては、すっごい近寄りたくない場所だよね、それ」
会議での話し合いが終わり、俺は小型飛空船整備室へとやってきた。勿論、弟のエイディスと情報の共有を行うためであるが、こちらの話を聞いた弟の第一声がそれである。
「言う通りだよ。地獄なんて言われてる場所にゃあ行きたくないよな」
不安で仕方ない場所だ。しかもそんな場所が一番近場の目的地と言うのだから、不安は増すと言うもの。
「実際、そんな場所があると思うか?」
「……あるんじゃないのかなぁ。世界って広いし」
あっさりと言ってのけるエイディス。兄としては意外で仕方ない。
「そりゃあ広いちゃあ広いけどな、そう認められるもんか?」
「他の人達にとっては眉唾だけどさ、僕らラクリム出身者にとっては違うじゃないか。答えが先にあるんだよ?」
エイディスが言いたいのは、クリスト達が言っていた巨大飛空船について、俺達が既にそれが真実だと知っているということなのだろう。
巨大飛空船の情報をクリスト達が知っていたということは、その地獄染みた土地についても見た上での情報だと言うこと。
「となると、七面倒くさい手順じゃねえか。真っ先に巨大飛空船を追えば良いってのに」
「世の中にはその面倒くさい手順って言うのが必要なんじゃないかな? 巨大飛空船最優先って話も、あくまで一部の人間にとっての話だしね」
大半の人間にとっては、まず聞いた情報の確認が最優先ということなのだろうか。ほんの少し俺自身の目的から遠のくのではと思う部分はあるものの、実際はクリスト達から巨大飛空船の話を聞き出すことが出来ているのだから、一歩前進だと思いところであった。
「それにさ、もっと僕達にとって理解しとかなきゃいけないことがあると思うよ?」
「あん? なんだよ、それ?」
「巨大飛空船が北へ向かったって情報しか分からないって事。馬鹿正直に北へ向かって、見つけられる保障なんてどこにも無いんだよ? なら、さらにあっちこっちの調査をしていく方が、確実なんじゃあないかな。つまり今の状況は願ったり叶ったりってことさ」
エイディスの言うことは何時も正論だ。もしかしたら、それは俺よりも弟の方が、より自らの目的をまっすぐ見つめているからかもしれない。
「でだ、もしその場所があったとして、それを確認する役割って言うのは………」
「そりゃあ、兄さん達、小型飛空船班が向かうことになるんじゃない?」
それが一番憂鬱だ。なんでそんな自分から危険な場所に向かわなければならないのか。そう愚痴りたかったが、きっとこう返されるだけだろう。それが冒険だと。
ヒドランデに一時帰投し、予定通り補給を済ませてから、ペリカヌはクリスト達の情報を元にした土地調査へと飛び立った。
距離はヒドランデからクリスト達がいた場所までの距離よりさらに3倍遠い。数日の日程になるだろうが、それに耐えうるのが冒険艦というものだ。
食料の積み込み量や艦内整備の物資には余裕を持たせ、長時間艦内に束縛される事に対する訓練を船員は行っている。艦自体の耐久性だって十分で、この程度の航空ならば、何事も無ければ無事で終わるだろう。何事も無ければであるが。
「なあ、昨日の夜、なんだか熱く無かったか?」
船内で荷物運びの仕事を手伝っていると、その仕事を主にしているバーリンが、そんな世間話をする。
「そういやあ、寝苦しかったな」
紙箱に入った今日の昼食。その素材を倉庫室から食堂へ運ぶ仕事。どうにもそれに疲労感を覚えるから、どうしてだろうと思えば、寝る際に暑さのせいで、十分に休息を取れていなかったのが理由だと思い出す。バーリンにしてもそうなのだろう。だから俺に仕事の手伝いを頼んだのだ。
だが、その事を忘れていたのはどういうことか。その理由も直ぐに分かった。今は涼しいからである。いや、涼しいというよりやや肌寒い。昨日の夜とは大違いだ。
「今日の昼飯………材料を見るに冷やしスープじゃねぇか?」
嫌な顔をしながらバーリンは自分が持つ食糧を見つめる。調理班はもしかしたら昨日の夜のうちに、こんだてを決めていたのかもしれない。ただ、今現在に至っては、こう体が冷えそうな料理は勘弁して欲しかった。体が震えて止まらなくなってしまいそうだ。
「夜は灼熱、昼は凍える……か」
「なんだそりゃあ。なぞなぞかよ?」
ふとアニーサ艦長が口にした言葉を思い出す。思い出すだけでなく呟いてもいたため、何のことだとバーリンに尋ねられた。
「いや、これから向かう土地ってのがそういう場所らしい」
「ん? じゃあこの暑いのやら寒いのやらって、それが原因かよ!」
恐らくはそうなのだろう。クリスト達は嘘を吐いていなかったわけだ。ただし、まだ地獄の様なというほどではない。さらに近づけばその表現に相応しい気候へと変わって行くのだろうか。
「ったく。こう気色悪いところにずっといるってこたあねぇよな?」
「さすがにそれは無いんじゃないか? あくまで今回は、クリスト達が言ってた土地があるかどうかだ。この気候が、実際に存在するって証明になるわけで、危なくなる前にさっさと退散するだろ」
真っ当に考えればそうなるはずだ。そう予想していたのであるが、残念ながらペリカヌの艦長は真っ当では無い。そのことを、現在の俺は失念していたのであった。




