女性。
闘病中で投稿できませんでした。読んでくださっていた方、申し訳ありませんでした。
それから男性が向かったのは、男の子の家から二つ隣の家でした。男性は胸ポケットから小さな紙を取り出すと、確かめるようにしてインターホンを押します。やがて出てきたのはひかりと同世代の女性でした。
「香織さんですか?」
男性は尋ねます。えぇ、と答える女性に、男性は言いました。
「ちょっとお話があるんですが」
「何ですか?」
少し嫌そうな顔をして女性は尋ねます。
「出てきていただけると・・・」
男性がそう言うと、女性は家の中を気にしましたが、しぶしぶドア口から出てきました。
「一体何ですか?」
女性が改めて尋ねると、男性は言いました。
「瞬君という男の子をご存知ですか?じつはあなたのことをきにしてましてね」
すると女性は何かを気にするように腕をさすり始めました。
「預かりものをしていまして、お渡しに来たんです」
男性が言うと、女性は不審げな顔を向けました。
「すみませんが、ちょっと私と手をつないでもらえませんか」
女性は、は、と眉を寄せます。
「繋いでいただくだけでいいですから」
男性がほほ笑むので、女性はひかりと男性を交互に見ました。ひかりは女性に向かって頷きます。女性は分からないという顔をしながらもやがて右手を差し出しました。男性はその手をつかみます。そして、「君も手を出して」とひかりにも言いました。え、と今度はひかりが訊きました。男性は言います。
「早く」
言われてひかりもおずおずと右手を差し出しました。
手をつないだ刹那、海に流れ落ちるような力を感じて驚いて、ひかりは男性を見ました。しかし、目の前にいたのは男性ではなく、先ほど会った瞬君という男の子でした。男の子はあの部屋で、テーブルに図鑑を開いていました。色鮮やかな図鑑。けれどもある時、悲鳴が聞こえて、男の子は部屋を飛び出しました。廊下からすぐ横の玄関。閉めている扉の向こうから、女性の悲鳴が聞こえました。男の子は、慌てて廊下を走ってリビングに向かいました。
「ママ、パパ、まただよ、またあの悲鳴が聞こえる!」
ソファーでくつろぐ父親が言います。
「関わり合いになっちゃダメよ」
「ややこしいことに巻き込まれでもいたら大変なんだから」
母親も言いました。
男の子は部屋に戻ると、耳をふさぎます。それでも、皿の割れる音や、悲鳴は聞こえました。




