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異世界で教祖はじめました  作者: 習志野ボンベ
第七章
85/110

プラズマたぬき小隊!

 ゴーディア・ベルガ国境近くの田園地帯にて――、

 竜騎士たちと騎士たちが一触即発の空気をかもしたとこで――、


 争いをおさめようとオレは国境警備の騎士たちと向かい合う!



 ◆   ◇   ◆   ◇   ◆



「ほう……我らの相手を一人でしようというのか? ずいぶんな自信だが……それは油断だな。しかし、我らに武器を向けたのだ。相手が一人とはいえ、容赦はせぬぞ」


 素人っぽく見えるオレに対し、よゆうを見せつけるつもりだろうか? 

 こちらに合わせ、馬から下りた隊長さんは露骨にブチギレたりせず、ふつうに話をする。

 しかし、剣にかけた手と声がときどきプルプル震えてるあたり怒りのほどがうかがえた。


 ありゃりゃ……これはかなり無理してるごようすですな。

 はっきりくっきり内心丸見えな隊長さんに、オレはあっけらかんと返事する。



「……いいえ。あなたがたの相手をするのは、わたしではありません」



「なん……だと?!」  

「お前以外にだれがいるというのだ?!」

「竜騎士どもに代わって、お前が出てきたのではないか!?」 


 予想外なオレの答えに驚き、同じく下馬してきた騎士たちは口々にたずねてきた。

 そんなすばらしくノリのいいゴーディア騎士たちへ、オレは笑顔でこう告げる。


「あなたがたの相手をするのは……我がしもべたちです。――さあ出でよ! 『ヴァジュラトゥーン』!」


 召喚の言葉とともに、オレが愛刀ライキリーに念をこめると――、

 その刀身が……青白く輝きだした!



 ◆   ◇   ◆   ◇   ◆ 



 ライキリーの刀身から漏れた青白い光が周囲を照らす。

 強烈なその光は、はじめて見る騎士たちを驚かせた。 


「……な、なんだ!? 剣が光った!?」

「ま、まぶしい! なにが起こっている!?」

「これは……なにかの妖術か!?」

「目が! 目がァ!」


 ……なんというか、実に驚かしがいのある反応で騎士さんたちは驚いてくれる。

 いや~。こいつは教祖冥利に尽きますな~。ホントありがとうございます。

 なんだか、かくし芸のマジックがうまくいったときみたいな満足感がありますねえ。


 と、奇跡を起こしたオレがうなずいてるうち、ゆっくりと青白い閃光は収束していく。

 そしてライキリーの発光が完全に消えたとき――、



 そこには……ネオンサインみたいに七色に光るタヌキの群れがいた。


 

 下ぶくれのぽんぽこりんシルエットをピカピカ光らせてるたぬきは……もちろん、ひさびさ登場したわが召喚獣『ヴァジュラクーン』である。

 しかし、今回召喚されたプラズマたぬきは一味ちがうぞ。

 いつもなら一体しか出ず、大きさは象よりデカい。が――たった今、オレの目の前に整列してるプラズマたぬきは数が多く、そのぶん大きさは人の腰までしかない。


 でもって、その色とりどりのプラズマたぬきたちは――、



「「「「「「「もっきゅー、もっきゅっきゅ!」」」」」」」」



 きれいに声を合わせ、召喚者のオレに向かい短い前足で敬礼した。

 ちなみに――なんか軍隊ノリなのは『電撃狸小隊(ヴァジュラトゥーン)』なんて名前を付けちゃったから。


 そう……こいつらこそ、オレの愛刀ライキリーに秘められた第三の力『ヴァジュラトゥーン』。

 大型プラズマたぬき召喚獣のヴァジュラクーン、雷をまとわせた斬撃波につづく、ライキリーの新たな機能なのだ! 


 

 ◆   ◇   ◆   ◇   ◆



 相手に合わせて、出現数は十体ちょい。

 おなじみ青白プラズマカラーに加え、赤、黄、緑などカラフルにバラエティを取りそろえてる。

 そんな謎の発光生物が急に現れたのだから、騎士たちが驚かないはずがない。

 

「――な、なんだ! こいつらは!?」

「光る……たぬきだと!? お、おれの目がおかしいのか!?」 

「いや、おれにも見えてる……こいつらはホンモノだ!」

「うぅ……なんて……かわいらしいポンポコリン……」


 ……ん? なんか一人まちがったリアクションをしてる人がいるな。アテナさんと気が合いそうだ。

 ま、ともかくマスコット召喚獣の登場で騎士たちは動きを止めた。


 そこでオレはプラズマたぬきたちに指示を出す。

 すると――、


「今だ! かかれ! ヴァジュラトゥーン!」 


「「「「「「もきゅ!」」」」」」


 短く返事した発光たぬきたちはいっせいに騎士にむかって駆け出していく。

 でもってたぬきたちが向かったのは――先頭にいた騎士隊長さんのとこだった。

 隊長(リーダー)にはリーダー色ということだろうか、まず赤色電気たぬきが突っこんで行く。


「な、なんだ! お前は……!?」


 謎のファンシー生物の接近。あわてた隊長さんは剣で追い払おうとする。

 しかし、ぽんぽこシルエットに幻惑されたのか、それとも油断したのか――攻撃はにぶかった。

 そんな鋭さを欠いた斬撃なんて、わが召喚獣には通用しない。


 いや……ま、この緊迫感のない外見こそ、ヴァジュラクーン最大の武器なのだけど。

 

「もきゅきゅー、もきゅ!」


 隊長の剣を軽いスウェーであっさりかわした赤色たぬきは勝ち誇った声を上げる。 

 妙なキュート生物に攻撃をよけられ、バカにされ――腹を立てた隊長さんはヤケになって剣をふるう。


 だが……赤たぬきはピコピコ身軽に動きまわり、剣が当たらない。


「くそッ! よけるな! 化け物め!」

「隊長! こんなにかわいらしい生き物になんてことを!!」 

「――お、お前! なぜ止める!? どっちの味方だ!?」 


 いまだなにかまちがえてる部下一名にジャマされつつも、隊長さんは剣を振り回したが――短い脚ですばらしいフットワークをくりだす赤たぬきにすべてかわされた。

 うむ……にしてもさすが赤色。他のたぬきの三倍の速さである。『当たらなければどうということはない』的なノリだ。

 そして攻め疲れた隊長さんがヘロヘロになったとこで、赤たぬきは――、


「もっきゅもきゅー!」


 キュートなおたけびを上げながら、隊長さんにフライングボディプレスを敢行する!

 と――、


 ――ピカッ! ビリビリッ!


 隊長さんにしがみついた赤たぬきが、真っ赤な閃光を発して消滅――ほぼ同時に隊長さんの全身へ赤い稲光が走った!  


「ぎゃあッ!」


 強烈な電撃をくらった隊長さんは悲痛なさけびをあげる。

 そして――体中からぷすぷすと煙を出しながら、騎士隊長はどてんとたおれた。

  

 うわ……金属鎧を着てたぶん、電気の通りはバツグンだったみたいだな。

 おそらく……かぶとの中の髪はアフロになってるにちがいない。


 地面の上でぴくぴくふるえてる中年騎士さんの姿――電気ダヌキの予想以上の力に驚きつつも、オレはおおいによろこんだ。

 実はこの新機能、ライキリーの製作者鍛冶神(ヘパイストス)さんにつけてもらったもので――、



 ◆   ◇   ◆   ◇   ◆



 ライキリーの第一の力、巨大プラズマたぬき『ヴァジュラクーン』も、第二の力、雷の斬撃波も強力な技なんだが……さすがに殺傷力ありすぎで人間相手には使いづらい。

 この前みたいにケガをさせず数人を相手することもあるかもしれないし、人を斬って寝覚めの悪い思いをするのもイヤだし……このままじゃマズい。

 そう考えたオレは鍛冶神(ヘパイストス)さんに新たな機能を頼んでいた。

 そして追加してもらった小型プラズマたぬきは――圧倒的な使いやすさを見せてくれた。


 ……うん。いいねえ。さすが鍛冶神(ヘパイストス)さん謹製武器。

 けっこういっぱい召喚できるのに自動追尾機能までついてるとか、優秀な子たちだ。


 と、オレはヴァジュラトゥーンの性能におおいに満足する。   

 一方、隊長の無残なやられかたに、騎士たちの間で動揺がひろがっていた。


「……く、なんてヤツらだ!」

「ゴーディア武芸大会でもかなりイイとこまで行く隊長が……あんなにあっさり?!」

「あ、あんな気の抜けた見た目なのに……なんておそろしい!」

「……いいなぁ、隊長……あのタヌキちゃんに抱きつかれるなんて……」 


 またも一人おかしな人がいたけど、それはともかく――、

 混乱におちいった騎士たちに電気たぬきの群れが襲いかかる!


「もっきゅ!」

「もきゅもっきゅ!」

「もきゅきゅー!」

 

 それぞれキュートなかけ声とともにせまるプラズマたぬきたち。  

 ピコピコとかわいい足音を立て、それはそれはファンシーな光景だが狙われた相手には悪夢だろう。

 騎士たちは――もう逃げ回るしかない。


「うわ、来るな! 来るなーッ! ぎゃッ!」

「やめろ……こっちじゃない! あっちへ行け! あいつのほうがおいしいぞ! ふぎゃ!」

「おいこらッ! そんなもん、おれに押し付けるな! って……ぎゃあーッ!」


 しかし、わが召喚獣は逃がさない。

 一人一殺って感じで騎士に抱きついては電撃をおみまいしていく。

 チャ〇ズやサイバイ〇ンみたいな自爆攻撃(カミカゼアタック)に騎士たちの恐怖はピークに達した。


「い、いやだ! あんなのにやられてたまるか!」

「は、早く馬に乗れ!」

「お、おう!」 


 急ぎ、乗馬して逃げようとする騎士たち。

 だが電撃たぬきはピコピコダッシュで猛追――短い脚とぽんぽこ体型からは信じられないほどの速さで、なんと……疾走する馬に追いついてしまった!


「もっきゅーっ!」

「もきゅもきゅー!」


 そしてたぬきは大ジャンプ。馬上の騎士に飛びかかり――抱きつくと放電した。


「ぎゃあッ!」

「ぐぎょッ!」

「ぎゃひっ!」


 情けない悲鳴をあげて、逃げようとした騎士は落馬させられる。

 かくして騎士たちはひとり残らず、電気たぬきのえじきに……、



 ……いや、ひとりだけ残っていた。



 ◆   ◇   ◆   ◇   ◆



「も、もきゅもきゅ!?」

「むふぅ……さあ、おいでぇ、タヌキちゃぁん! うふぅ……ぼくの胸に飛びこんでおいでぇ! さあッ!」


 残る一人は、さっきから下ぶくれシルエットになみなみならぬ愛情をいだいてた騎士さんらしい。

 気色悪いネコなで――もといタヌなで声を出しながら、残された騎士は緑色のたぬきにせまる。

 そのようすにドン引きの緑たぬき――カップめんみたいな召喚獣は攻撃指令も忘れてあとずさりする。


「……も……もきゅ!?」


 しかし、そんなグリーンたぬきに変態ケモナーな騎士さんはむしろうれしそう。おびえる緑たぬきに、鼻息荒くせまっていく。


「おやおやァ……むふふぅ、ずいぶんとおとなしい子なんでちゅねェ! それならこっちからァ……うふぅ!」

「も、もきゅももきゅ~!」


 アブナい赤ちゃん言葉で話しかけられ、さすがに貞操の危機を感じたのだろうか? 

 緑たぬきは背を向けて急ぎ逃げ出し、こっちに助けを求めてきた。


「ダメでちゅよ~! 逃がちまちぇんよ~! んむふふふふぅ~ッ!」


 だが背後から尋常じゃない速度で変態騎士はせまり、飛びつき――あえなくアワレな緑たぬきは捕獲されてしまう。 

 

「もきゅーーーーーッ!!!!!!」

「だめでちゅよ、そんなに暴れちゃ~! でもかわいいでしゅねえ~」

「も、もきゅ! もきゅ~!」


 じたばた暴れるわがプラズマ召喚獣をはがいじめにし、ケモナー騎士は満足そうに笑った。

 すると、当然のことながら――。



 ――ビリッ! ばちっ!



「ぎゃあッ!」


 閃光とともに緑たぬきは消滅――変態ケモナー騎士に緑の電光が走る。

 しかし痛切な悲鳴をあげた騎士だったが、それでも顔はうれしそう。

 歓喜の表情とともに騎士さんは昇天なさり、白目をむいて倒れた。



 …………う~ん。

 趣味は人それぞれだけど……ちょっとアレな人だったな。  



 と、まあ、最後にちょっと予定外のことがあったけど――この場に立っている騎士はいなくなった。

 これで騎士撃破は完了――アワレな緑たぬきの尊い犠牲に感謝しつつ、オレはライキリーを納刀する。 


  




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