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異世界で教祖はじめました  作者: 習志野ボンベ
第六章
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峠バトルの真相

 竜騎士フェリペくんとの、男の誇りを賭けた峠バトルが始まってすぐ。

 先行する竜騎士と愛竜の背中を追いかけてると――、


 ウチの神さまがた――機龍製作にかかわった二柱が、エラくうるさくなった。



(あの~、すみませんがヨシトさん――我々にも少し運転をかわってもらえませんでしょうか?)

(うむ。ワシもいろいろ試してみたいのう。一機死んだら交代ということではどうか?)


 とかなんとか言い出す神さまたち。

 どうやら、よっぽど自分らが作った機龍(メカ)が気になるみたいだ。


 ……ていうか『一機死んだら交代な』とかゲームの順番待ちしてる小学生ですか?

 あいにくオレってば残機(いのち)は一つしか持ってません! 

 たしかに一度、異世界転生(コンティニュー)させてもらいましたけど――それだって残機は1のまんまなんですからね!


 ――と、抗議したオレだったが、神さまたちのうるささは変わらない。



((♪我々もちょっとイイとこ見せてみたい! それ一機! 一機! 一機ッ!))



 なんて大学生の飲み会みたいなコールまでして、オレは頭をかかえる。

 このままじゃ、やかましさで事故りそうだし……妥協せざるをえない。

『脳内の神さまがうるさくて』なんて理由、なんかアブナイ感じだけど……命は大事だしね。

 

(ああ、もう。わかりましたよ。それじゃ前半はヘパイストスさん、後半はヘルメスさんにお願いします……そのかわり絶対勝ってくださいね?)


(おう! まかせておけ!)

(はい! おまかせあれ!)


 工業神と商業神から気合の入った返事がもどってくるが――、

 う~ん、このノリってなんか不安だなぁ。

 


 ◆   ◇   ◆   ◇   ◆

 


 てわけで――、

 まず工業神さんに憑依してもらったわけだけど――、

 あの……ヘパイストスさん? なんでこんなのんびり走ってるんです?


(ええ。そうですね。さっさと勝負を決めてください)


 工業神のまったり走行へ、ヘルメスさんとオレが苦情を入れると――、

 ガンコ職人ヘパイストスさんの雷が落ちる。 


(愚か者ッ! 新造マシンでいきなり全力走行など、どれだけ危険かわからんか!? それに試したい機能もいろいろある。まずはそちらをだな……)


 ……前半はそれっぽい理由だったけど、たぶん後半がホンネだよな。

 そんなこんなで先行する竜騎士フェリペのすぐうしろ、あれこれ機龍にさせてる工業神さま。   


(さて、まずは加速性能から……)


 そして、お試し走行にあおられまくって青い顔してる竜騎士フェリペくん……かわいそうに。

 それからしばらくヘパイストスさんは、たっぷり機龍の性能を試す。

 長々とつづく性能試験――さすがにしびれを切らしたヘルメスさんが止めに入った。


(ヘパイストス、そろそろ技術の検証も済んだでしょう? いいかげん交代してください) 

(ちっ、せっかくの楽しみが……まあ性能試験はだいたい済んだからいいか。機龍は全力走行させてもだいじょうぶなようだぞい)

(……うむ。それはけっこう。では全力を出させていただきましょう)



 ――こうして今度はヘルメスさんがオレに憑依し、機龍を操る番となる。



 よし! それじゃお願いしますよ。ヘルメスさん!

 ヘパイストスさんが遊んだせいで竜騎士フェリペに先行(リード)を許しちゃってますから。

 決着がコジれたりしないように、ちゃっちゃと勝負を決めちゃってください。



(おまかせあれ! わたしは交渉や商業の神であると同時に旅の神でもあります。そして旅と言えば乗物がつきもの――すなわち、わたしは乗物の神ということ! その名に懸けて、ありとあらゆる乗物(ビークル)を乗りこなして見せましょう!)

 

 おおッ! なんだか、どこぞのマルチドライバーさんみたいで期待できそうですね!

 それじゃさっそく、あの竜騎士さんをぶっこ抜いちゃってください!

 


(ええ、もちろん!)



 そんなヘルメスさんの力強い返答に安心したオレだったが――、

 数秒後には期待は後悔に――そして恐怖へと変わっていた。



 ◆   ◇   ◆   ◇   ◆



(OK! アイ・ハブ・コントロール!)


 

 宣言とともに操縦がヘルメスさんに変わった瞬間――機龍は一気に加速した。

 コーナーに後ろ脚を横滑りさせて突入し、そのまま流しっぱなしで抜けていく機龍――景色が真横に流れてく光景をオレはあっけにとられて見送るしかない。  



 ていうか――わッ! ちょッ! どんだけ飛ばすんですか!? ヘルメスさん!?



(そ、そうじゃヘルメス! さすがに飛ばし過ぎじゃぞ!)


 あわてるオレ、さらに設計者のヘパイストスさんが止めに入るが――、

 ふだんは温厚紳士なはずのヘルメスさんは、オレたちの言うことを完全無視。

 それどころか――さらに加速しだす。



(いえいえ! これはまだまだ序の口――もっと飛ばしていきますよ!) 



 …………どうやら商業神さま。ハンドル握ると人が変わるタイプだったらしい。

 そしてアクセル全開――暴走レベルの走りを見せて、ヘルメスさんは一気に峠を駆け下る! 



(ヒャッハー!!! ユーロなんて最初からいらんかったんや!)



 なんて、いつもなら絶対口にしないようなことを叫びながら、機龍に限界走行をさせるヘルメスさん。

 そんな同僚の姿にヘパイストスさんが深くため息をつく。


(…………むう、ヘルメス。母国の経済危機がストレスになってたようじゃのう。あわれな……)


 いや……ヘパイストスさん。涙ぐんでないで止めてください! このままじゃ事故っちゃいますよ!

 と、苦情を言ったオレだったが――ヘパイストスさんはオレをなだめるように言う。

 

(……いや、そういうな。ヨシトくん。しばらくあやつのウサ晴らしに付き合ってやってくれ)



 ちょ、そんな! 

 ストレス解消で命の危険に付き合わされるこっちの身にもなってください!



 と、そうこうしてるうち――、 

 オレと竜騎士そして機龍とハーティロックは峠バトルの山場っぽい連続ヘアピンへと突入する。



 ◆   ◇   ◆   ◇   ◆



 峠バトルも後半――、 

 先行するフェリペくんが、あろうことかガケにむかってつっこんでく。

 うおッ! アブない! なにするつもりなんだ!? 


 ――あせるオレにヘルメスさんが冷静に解説を入れる。


(おそらくガケを飛び越えて近道するつもりですね。このままでは勝ち目がないと思ったのでしょう。ストレートでもなくカーブでもない第三のポイント――上空を速く走るとはなかなか……)


 うぅ、イヤですよ。そんな謎の公道最速理論……ていうか、そんなに追いつめられてたの!?

 ウチの神さまたちがごめんなさい! そしてはやまらないでフェリペくん!

 内心で謝りつつ、フェリペくんの無事を祈るオレだったが――、


 ……ん? おかしいぞ?! なんでこっちもスピードそのままなんだ?!


 オレに憑依したヘルメスさんも、なぜか速度を緩めない。  

 これまた全力全開でガケのはしに突っこんで行く!

 そして――、



(さよならユーロ! こんにちはドラクマーッ!)



 などと意味不明な供述をしたヘルメスさんがフェリペ竜騎士につづいて――それ以上の速さと高さでもって崖から飛びだす!



 ひゃッ………………ぎいいいいいいいいいいいぃぃやゃーッ! 



 ――真下を通り抜けてくいくつもの断崖絶壁。

 ――そしてはるか下、ぼやけるほど遠くに見える地面。


 最悪の絶叫マシンが生み出した景色に内心で絶叫するオレ。

 一方、オレの体を操るヘルメスさんは楽しそうに機龍を駆りつづけ――飛びだした勢いのまま、空中で竜騎士フェリペを抜き去る。



 そして、ぽかんと大きく口を開けたフェリペくんを空中に置き去りにし――。

 オレたちは対岸に着陸。そのままふもとのゴール地点まで駆け下ったのだった。   



 ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


 

 こうして竜騎士フェリペとの峠バトルに勝ったオレたちだったが――、



(ちょ、ヘルメスさん! もうゴール過ぎてますけど!?) 

(いいえ! まだ走り足りません! 風がわたしをよんでいるのです!)



 ガケを飛び越えたあと……どころかレース終了後も暴走し続ける速度狂(ヘルメス)さん。

 それからしばらく森を走り回り――ようやく満足したのか憑依を解いてくれた。


(ああ、すっきりしました。……ん? どうしましたヨシトさん、さっきから無言ですが……?)

 

 とかなんとか――満足そうに言ったヘルメスさんへ、オレはさすがに怒る。


 ………………『どうしました?』じゃありませんヘルメスさん! マジ死ぬかと思いました!

 もうひざとか手とかガクブルです! こんなことになるなら、もう体を貸しませんからね!

  

(いやいや、そう言わずに……)


 なんてアホなやりとりを続けながらゴール地点――山のふもとにある大岩のあたりにもどるオレ。 

 そこには青白い顔をしたフェリペくんが待っていた。

 ジロリ――にらみつけてきたフェリペくんに、オレは頭をさげる。



「……お待たせして失礼…………機龍の調整のため、しばらく走り回っておりました」 



 さすがに『商業神(ヘルメス)さまご乱心』なんて本当の理由は言えない。

 だからテキトーな理由をオレがこじつけると――、   


「そうか……おれとのバトル程度じゃ調整にもならないか……」


 つぶやいて、ヘコんじゃうフェリペくん。

 …………あらら。これはよくないな。

 気分を害して『族長のとこへ案内するのはヤダ』って言われたらどうしよう? 


 と、オレがむけた視線に気づいたのか。

 フェリペくんはむっとしたように言い返した。



「……心配すんな。度胸試しの賭けは絶対だ――竜騎士の誇りにかけて約束はかならず果たす」



 ……ふむふむ。それなら一安心ですな。


 てなわけで――、

 頭文字(イニシャル)がDからはじまっちゃう『度胸試し』に勝ち――、



 オレたちは竜騎士の本拠地にむかう!





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