表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で教祖はじめました  作者: 習志野ボンベ
第四章
40/110

里の発展計画~その1

 どうも久世ヨシトです。

 いろいろあって今は異世界で教祖なんぞを(いとな)んでおります。

 

 さてオレには最近、大切なものができました。

 大切なものができると幸せです。

 しかし、幸せの次にやってくるのは大事なものを失う恐れです。


 この幸せを失わないためにどうすればいいのか。

 今のオレには、とにかくできることを一つづつ、やってくしかないようで……。


 ――とりあえず、今日はその第一歩です。



   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆



 朝、目覚めのとき――。

 ぱちりと目を見開いて、とがったエルフの耳が目の前にあっても驚かなくなった。

 マリアさんがオレにしがみつく形で密着している。

 ま、昨夜(ゆうべ)がんばったそのままの姿勢だからな。


 マリアさんは美人さんなのに、寝顔は子どものようにあどけない。

 オレと一緒にいるせいで安心してるからだろうか? 

 ……だったら、うれしいかぎりだ。


 暖かな気分が胸に広がり、ついちょっかいをかけたくなってしまう。

 まず目の前にある耳のとがった部分を唇で優しくはむっとくわえた。

 そして背筋にそっと指を走らせ、細い腰をなでると――、


「……もう、ヨシトさまぁ……」


 あれ? マリアさん、もしかして起きてる?

 いや、寝言だ。(つや)っぽい声からすると夢の中でもオレとアレコレしてるらしい。

 ……そうか。夢の中でもオレと……か。


 愛おしさと幸せがつのって、美女エルフの細い体をぎゅっと抱きしめる。

 するとマリアさんは目を覚ましてしまった。

 

「ふえ、ヨシトさまぁ? あれ、ホントにヨシトさま……」

 

 ほんわかと、とぼけたことを言っているマリアさん。

 ああ、ほんとに寝起きのマリアさんは可愛いな。


「あ、……今……わたし!?」

 

 ええ。夢の中でもオレと仲良くしててくれたみたいですね。


「あ、あわわ……!?」



 恥ずかしがることはないです。オレはうれしいですよ。

 うれしいから……ちょっとすいません。


 オレはマリアさんの上にのしかかり、そっと体重をかけていく。

  


「ヨシトさま? なにを?」


 オレがどんだけうれしいか……マリアさんにも、ちゃんとわかってもらおうと思ってます。


「ぁ……それは……!?」


 なんて最初はとまどっていたが――、

 オレの味わってる幸せををマリアさんも理解してくれたと思う。

 


  ◆   ◇   ◆   ◇   ◆ 



 寝床でふにゃっとなり、夢の中にいるマリアさん。

 そのきれいな顔に軽くキスする。今日一日分の元気を分けてもらうのだ。

 出発する前に起こさなかったことを、あとですねられるかもしれない。

 だが、今朝はちょっと休んでもらっていたほうがいい。朝から寝床でいじめすぎてしまった。


 よし。では行きましょう。この幸福を守るために。

 本日リニューアルオープンだというコルクの里。その秘密にせまりたいと思います。 

  

 というわけでオレは里の中央広場に向かったのだが――。




 おや、妙に人がごった返してるぞ?

 それに加えて馬車と荷物が…………なんだ?! この量は!? 

 いつも静かで閑散としてるコルクの里が、活気にあふれた市場のようになっている!? 

 ビフォーアフターにもほどがあるだろ!


(見ろ! 里が街のようだ!)

 なんて、思わずムス〇大佐のようなことを考えてしまった。


 と、そこで――、



「おはようございます。ヨシトさん」

「おお、これはこれはヨシトさま!」


 声をかけてくれたのはアテナさんとアンディさん。

 ああ、おはようございます。


 そういえば、ここのところ二人であれこれたくらんでたようだけど、その結果がこれなんですか?

 ずいぶん大量の荷物と人が集まってますが、いったいどこから湧き出たんでしょうか? 


「彼らは遠方から船でやってきた行商人です。いつもならば『大物見台』と呼ばれる台地近くの河川港に荷下ろしをして、そこで売買をすませているのですが……」

「このあたりでは三つの月の潮汐力で発生する『逆上潮(リバースストリーム)』と呼ばれる現象を利用し、船を海から河口を通ってさかのぼらせ、内陸部と交易しているそうですよ」


 アンディさんの説明にアテナさんが補足を入れてくれる。

 へえ。おもしろい現象ですね。

 でも行商人さんたち、今日はなぜコルクの里にまで来たんですか?


「あの港で売買をすると、どうしてもモーラの街の商会に商品を買いたたかれてしまうのですよ。船で来る行商人たちには、モーラの街まで荷物を運ぶ陸の足がありませんからね」 

「しかし今回、わたしたちが馬車を用意し、格安レンタルさせたことで、彼らはモーラの街への運送手段を手に入れたのです。行商人たちとの交渉についてはアンディさんにお願いしました」

「ええ。わたしが顔なじみの商人に声をかけたら、すぐに食いついてきましたよ」


 アンディさん&アテナさん、男女混合ダブルスによる的確な解説は続く。


 なるほど。行商人さんたちが集まるわけだ。

 港で買いたたかれるより、直接、モーラの街に持ちこんだほうが売り上げは多いはずだもんな。

 中間に入って利鞘(マージン)を取ってるモーラの商会より、商品を安く売れるから、買い手はたくさん付くだろう。

 馬車のレンタル代を払っても十分におつりは来る。

 

 あれ……?

 でも、この里って大物見台とモーラを結ぶ最短距離にはありませんよね?

 なんで、わざわざ遠回りしてここまで来るんでしょうか?

  

 そんなオレの問いにアンディさんが答えてくれる。

 

「どれほど近道でも悪路では意味がありません。最短距離を通ったからといって最短時間でつくとは限らないのです。大量の荷物を馬車で運ぼうというならなおさらのこと。その点、大物見台からこの里を通りモーラの街を結ぶ道は広く、その上、焼き固められて補強されている――馬車の通り道としては最適なのです。里には商品置き場に使える広場もありますし」


 そうか! そのための道つくりと舗装だったんですね!


「はい。ヨシトさんとヴァジュラクーンが道を作り舗装してくれたおかげで、里のオープンを早めることができました。里の全員を駆り出して量産刀(バディラクーン)で森を切り開き、道は伐採した木を用いた木隗舗装で……と考えていましたが、はるかに上質ですばやく工事が可能になったのです」

 

 おお。アテナさんからおほめの言葉をもらったぞ。

 よかった。あの召喚獣(プラズマたぬき)ともども、お役に立てたようでなによりです。


 ――なるほど。それでこんなにも里が人でごった返してるのか。 

 

「ええ。荷物置き場や野営地を張幕(テント)で設営しています。さらに宿として用意した小屋も十分ありますし」


 アテナさんの言葉にオレは里の外周部へ目をやる。


 へえ、たしかに。

 むこうで広げられているのは以前、街で買っておいた丈夫な布ですね。見事にテントに化けています。

 そして、謎の丸太小屋(ログハウス)は商人さんたちの宿だったってわけか。


 ふむ。道を通し、流通の拠点にして人と物を集める――これが里の発展計画だったんですね?


「いいえ。ここまではまだ序の口です」

  

 オレの問いに、アテナさんは不敵な笑みを浮かべる。


「馬車のレンタル代も敷地の使用料も宿代も低くおさえてありますから、わずかな利益が出る程度ですね。必要経費分の回収にもまだまだ時間がかかります」


 え? それって満足そうにいうところですか?

 馬車や敷地のレンタル、宿商売が商売になりそうなら、それなりの値段をつけて、きっちり利益を上げていけばいいんじゃないですか? 


「大きな商売をするにはまず人と話題を集めなければなりません。そのための低価格路線です。わたしたちの狙いはその先にあります。たとえるならば低価格レンタル馬車と宿屋はスーパーの特売品。利益を狙う商品は別にあるということです」


 と、特売品ですか? 

 女神さまの割にずいぶん庶民的なたとえですね。

 分かりやすくて、こちらとしてはすごく助かりますが……。 

 しかし利益を狙う商品って……いったいなんなんですか?



「それは……これからのお楽しみですよ」


 ――そういってアテナさんはもう一度、不敵に笑った。


   

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ