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神様の休日

今日から夏休みだ。

普通の人はのんびり過ごしたり趣味に時間を割いたりしているだろうが、俺は学校に来ていた。

テストで赤点を取ってしまい8時半から追試があるのだ。

教室に入ると孝太が机にうつ伏せているのが見えた。横を通る時に孝太が顔をあげて話しかけてきた。

・・・こっちを見てないのによく俺だとわかったな。


「おっす、大地。調子はどーだ」


華麗に無視を決めて、孝太の後ろに座りテスト前の確認をする。


「大地~、無視すんなよ~。自信ないよ~。俺と姉貴の時間が~…」

「残念だが俺はかつてないほどの自信に満ち溢れている」

「な、なんだとっ!?どういうことだ!」

「悪いがこれ以上お前と話すことはない…」


というか先生が入ってきたので中断せざるを得なかった。





1時間のテストが終わり、俺は溜めてた息を吐く。

後ろの人が回収し、その場で採点が始まる。

前にカルミアと頑張ったから大丈夫だと思うが、これで補習になったらカルミアに申し訳がない。

俺は祈りながら採点が終わるのを待った。




「御門大地さん」


採点が終わり、俺のテストが返された。

ちらっと見えた孝太の点数は38点だった。

その孝太本人は口から魂が抜け出ていた。

俺も恐る恐る点数を確認してみると


「・・・・・82点」


定期テストが36点だったので、実に40点以上のUPだ。

俺は喜びを隠さず「よっしゃぁああああああ!!」と叫んだ。

・・・周囲の目が痛かった。



「ただいまー!!」


元気よく家に入ると昨日と同じ靴が玄関にあった。

リビングに行くと予想通りカルミアがいた。


「おう大地!おかえり!!追試はどうだったんだ?」

「ばっちり合格したぜ!」


予想以上の点数を出せたことでテンション高めに報告をした。


「そうか、それはよかった!お昼ご飯を食べてから遊園地に行くのか?」

「時間が勿体ないしあっちで食べないか?」

「それでもオーケーだ!じゃあ早速行くか!」

「あぁ、準備してくるから少し待っててくれ」


俺は部屋に向かい、鞄を置いてから着替え、財布とチケットを持ったことを確認してリビングに戻った。


電車に30分ほど揺られた後バスに乗り換え、計45分で遊園地についた。

今は夏休みなのでそれなりに人がたくさんいた。

天候は快晴、周囲には人がたくさん。

・・・簡単にいうと超暑い!


「大地ぃ~、暑いよぉ~。溶けちゃうよ~」

「スライムよりバブルスライムの方が強いから大丈夫だ」


隣にいるカルミアもさっきから音をあげている。

俺もこれ以上止まっていると暑さにやられそうなので、 チケットを使って中に入り早急に涼しそうな昼食の取れる場所を探した。


幸い、クーラーの効いてる店はすぐに見つかり、ゆっくり休みながら食べることができた。

食べ終わって外に出ると、また日差しが照りつけてきて熱が上がってきた。

しかし、ぼーっとしてるわけにもいかないので乗りたいアトラクションを決めていくことにする。


「カルミアはどれに乗りたいんだ?」

「私か?う~ん・・・涼しいやつがいいな!」

「涼しいやつか…」


何かあったかな~、と考えながらパンフレットに目を落とす。

ジェットコースターは風がきて涼しいだろうが、それだとたくさん種類があるから違うのはないか見てみる。


「・・・スプラッシュマウンテンなんてどうだ?」

「あの水がかかるジェットコースターか?」

「そう、それだ」

「うん!いいぞ!」


カルミアの賛成も得て、スプラッシュマウンテンがある場所まで向かう。

スプラッシュマウンテンは30分待ちで混んでいる方だった。


30分カルミアとしりとりや世間話で暇を潰し、やっと順番が回ってきた。

カルミアと隣同士で座り、シートベルトを閉めたところで出発した。

焦らすようにノロノロと高さを増していき、頂上まで上ったところで今度は急加速する。

いろんなところから「きゃあああああああ!」という声が上がり、隣からも悲鳴が聞こえてきた。

俺もテストのストレスを発散するように「わあああああああ」と思い切り叫んだ。

緩急をつけた移動もこれが最後らしく、今までで一番高く上っていった。

そして満を()して水面へ急降下!

水が勢いよく身体にかかってとても気持ちがよかった。


あっという間に終わったコースターの旅を終え、降りてからカルミアに話しかける。


「いや~、気持ちよか・・・・・・」

「あぁ!気持ちよかった!・・・ってどうしたんだ、ぼーっとして?」

「いや、お前服!」

「え、服?・・・うわぁ!」


カルミアが驚きの声をあげた。

それもそうだろう。なぜならカルミアの服は水に濡れて透けていたから!

前と同じ白のシャツがぴったりと身体にくっついており、肌や下着が透けて見えていた。

カルミアは慌ててパーカーを羽織り、「トイレに行ってくる!」と言って消えていった。




「いや~、さっきは災難だったが気持ちよかったな!」

「あ、あぁそうだな…」


俺はばっちり見ちゃったんで恥ずかしがっているが、カルミアはもう気にしていないようだった。

・・・切り替えの早いやつだな。


「次はどこに行くんだ?」

「まだ涼しいところに行きたければそうするけど」

「じゃあ頼む!場所はおまかせで」

「りょーかい」


涼しくなる場所か~。

カルミアがどうなのか分からないけど涼しくなれるかな?



「・・・ここか?」


次にカルミアと向かった場所はお化け屋敷だ。

横にいるカルミアに目を向けると小さく震えているのがわかった。

・・・カルミアも怖がったりするんだな~と思っていたら


「~っ!!面白そうだなっ!早く入ってみよう!」


全然そんなことはなかった・・・


中に入ると当然薄暗く、霊が出てくる時におきまりの「ひゅ~、ドロドロドロ~」というBGMが流れていた。

そんな中、大きく手を降り、意気揚々とカルミアが歩いていった。

すると早速大きな鏡があり、自分達の姿が映る。

しかし見ていると、鏡の中の自分達の後ろにいきなり人が現れた。

俺は声には出さなかったものの、驚いて少しだが震えた。

だが、カルミアは全くびびることなく「よっ!」とか言って声をかけていた。

鏡を越えた後も色んな仕掛けがあり、そのたびに俺はびくっとなっていたが、カルミアは話しかけていた。

・・・たまに何もないところにも話しかけていたような気がするんだが。


お化け屋敷を出て一息吐くために近くにあるベンチに向かった。

カルミアはお化け屋敷を出てからもずっと笑顔で、とても楽しかったようだ。

ベンチに座るとカルミアが上機嫌で話しかけてきた。


「大地!楽しかったな!」

「あぁ、そうだな・・・」

「色んな人と話ができてよかった」


どういうことかよく分からなかったが、気になることがあったので質問してみた。


「そういえばカルミア、たまに何もないところに向かって話しかけてなったか?仕掛人でもいたのか?」

「え、大地はわからなかったのか?」

「わからなかったって・・・・なにが?」

「あそこにはいたじゃないか。所謂(いわゆる)幽霊が」


・・・え、何を言ってるんだこいつは?

あそこはお化け屋敷だが、本当に幽霊なんかいるはずが・・・・

それよりまず確認したいことが


「・・・お前、幽霊が見えるのか?」

「あぁ、見えるぞ。そこら辺に結構いるからな。大地に憑いている霊でも教えてやろうか?」

「・・・遠慮しておく」


この話は聞かなかったことにしよう。

うん、そうしよう・・・・・




お化け屋敷の次にやってきたのはメリーゴーランドだ。

カルミアが「久しぶりに乗りたい!」と言い、そこまでならいいんだが「大地も一緒に乗ろう!」と言い出した。

さすがに恥ずかしかったので携帯でムービーを撮ることを条件に勘弁してもらった。


「大地ー、ちゃんと撮れてるか~!」

「おーう、ばっちりだー!」


カルミアが乗っている馬がこっちに回ってきた時にピースをしながら確認をとってきた。

ちゃんと撮れてることが分かると、2周目からは手を振ったりしていた。


メリーゴーランドが終わって降りてきたカルミアに撮った動画を見せると、カルミアは「おぉ~!」とと声をあげ、楽しそうに見ていた。

そんなカルミアを俺は楽しそうに見ていた。

しかし、カルミアの表情に急に影が差した。

どうしたのだろうと思い動画を横から覗いてみると、そこにはお母さんとその娘らしき親子が一緒の馬に乗っている場面だった。

・・・どうしてこの動画で暗い顔になってしまうんだ?

と疑問に思って見ていたのがカルミアに気づかれたのか「動画の中の私も楽しそうだな!」とテンションを上げていた。

俺も無理に聞くことはないと考え、質問することはなかった。



その後、ゴーカートで競争したり、カップがくるくる回るやつに2人で乗って回転しまくり、目を回したり、色んなジェットコースターに連続で行って、目眩を起こしたりした。

大変なだったがそれ以上にとても楽しかった。


そろそろ遊園地を出る時間が近づいており、最後に観覧車に乗ることになった。

列に並び、すぐに自分達の番になった。

中に入りカルミアと向かい会わせになって座る。

窓の外に視線を向けるとどんどん小さくなっていく遊園地の風景が見ていて面白かった。


「わぁ~!・・・ってうわぁあああ!?」


カルミアも感嘆の声をあげていたが、途中から慌てたものに変わった。


「どうしたんだ?」

「どうしたって、大地。これ・・・高くないか?」

「は?」


そりゃ高いだろう。観覧車なんだから。


「た、高いよ、これ高すぎるよ!!」

「いやいや、こんなもんだろ」

「こっから落ちたら死んじゃうぞ!」

「落ちないから大丈夫だって・・・」

「無理無理無理!落ちるってこれ!ダメだってこれ!・・・こうなったら落ちる前に自分で脱出を」


言うが早いがカルミアがドアを開けようとしていた。


「って!待て待て待て!!状況をよく考えろ」

「何をする大地!?」

「お前が何をする気だ!」

「だから一刻も早くここから脱出を・・・っ!?」


話している途中にカルミアが外に目を向け、怯えていた。


「ひいぃぃぃ~!やっば高いよ!?」

「お、落ち着けって」

「落ちろだって!?」

「言ってねぇ!」


駄目だ、完全にパニックになってるな、こりゃ…

俺はカルミアを落ち着かせるためにカルミアの横に移動した。

その際ゴンドラが揺れて、またカルミアが悲鳴をあげていた。


「・・・ほらよ」


少しでも落ち着くように手を握ってやろうと思い、手を差し出したのだが


「大地~、怖いよ~!」

「っ!!?」


なんとカルミアは腕に抱きついてきた。

柔らかい体が押し付けられて俺までパニックになりそうだったが、なんとか堪えることができた。

そして空いてる方の手でカルミアの頭を撫でてやる。

するとカルミアは落ち着いていっったようだった。




「・・・大地、ありがとう」


観覧車が4分の3を回った頃にカルミアが完全に落ち着いたのか、お礼を言ってきた。


「どういたしまして」


窓の外に目をやると大分地面が近付いていた。

未だに腕に抱きついているカルミアにも見てみるよう促すと、恐る恐るといった様子ながら外を見てくれた。


「・・・・・おぉ!地上が近いぞ大地!助かった~」

「あぁ、そうだな」


カルミアが腕から離れて喜んでいる。

温かさがなくなった腕は少し寂しかったが、カルミアが笑顔でいるところを見ているとそれだけで満足だった。





「お化け屋敷を超楽しんでたお前がまさか観覧車でびびるなんてな」

「うん、私もびっくりだ!」


観覧車から降りた俺たちはそのまま遊園地を出て、帰りのバスに乗った。

時間は6時半を回っており、辺りは夕暮れに染まり始めていた。


「そういえばカルミアの家ってどこにあるんだ?」

「ん、遊びに来たいのか?」

「いや、送ってやろうかなと思ってな」

「送り狼になってやろうかなと思った?」

「言ってねぇよ」


失礼な聞き間違いだなー。


「すぐ暗くなるだろうし、家まで送るよ」

「う~ん、別に大丈夫だぞ?」

「俺が心配なんだよ」


これは言い訳などではなく本音だった。

前に一人暮らしだって言ってたし。


「それなら別に構わないが・・・私の家はしょぼいからきっと引くぞ?」

「そんな心配するな。絶対引いたりしないから」


カルミアは不安そうな顔をしていたので、また頭を撫でてやった。




カルミアについてやってきた場所は割と俺の家に近い位置にある川原だった。

橋の下にテントが建ててあり、そこに向かっているような気がするんだが・・・・・まさかな!


「着いたぞ、ここが私の家だ」


そう言って指を差したその先にあるのはテントだった。


「・・・・・・」

「・・・やっぱ引くよな」

「ち、違くてだな!ただ、少し驚いてただけだ!」


俺が無言になって引いたと勘違いしたのだろう。

口では無理して笑っていたようだが、目がとても悲しそうだった。

そんなカルミアに気の利いた言葉の1つでもかけてやりたいが、何も思い浮かばなかった。

なので話を変えるように疑問に思っていたことを聞いてみた。


「ここで一人暮らしって・・・その、家出とかか?」

「いや?そんなことはないぞ」

「え?じ、じゃあなんでこんな所で一人で暮らしてるんだ?」


言ってから俺は後悔した。

そんなことになる理由は良いことな訳がないからだ。

案の定カルミアは苦笑し


「私には・・・・家族がいないんだ」


と言った。


「あ、その・・・・す、すまん」

「あぁ!気にするな大地!私はこれでも楽しい生活を送っているんだぞ!」


確かにカルミアはいつも笑顔で俺たちにも笑顔を分けてくれるほどだが、たまに見せる寂しそうな表情が俺はとても気になっていた。

そして1つの考えが浮かんだ。


「なぁ・・・よかったら俺ん家に来ないか?」

「え?」


カルミアは理解が追い付いてないのかキョトンとしている。なので俺はもっと解りやすい言い方に変えた。


「だから、俺の家の居候にならないか?」

「えっ、えっ・・・?」


カルミアはまだ混乱しているようだった。

俺は黙ってカルミアの返事を待っていた。


たっぷり1分ほど考えた後、ゆっくりと口を開いた。


「・・・ナンパ?」

「1分考えた返事がそれか!!?」

「だ、だってそれ以外に大地が私にそんなこと言う理由が見当たらなくて」

「もう少し考えろよ!お前が可哀想に思えたとか、お前と一緒に過ごしたいとか、俺がお前を好きだとか!!」

「・・・え」


あ、やばい。なんか俺まで変なこと口走ってないか?


「え~と、それはどういうことだ?」

「ー!?た、ただの言葉の綾だ!」

「なぜ逆ギレ気味なのだ!?」


俺が聞きたいわっ!

本当になんで俺はこんなに動転しているんだろう。


「で、話を戻すがどうするんだ 」

「あ、え、あの・・・・私は大丈夫だけど、大地の家族が・・・」

「俺の家族なら大丈夫だ。気に入った人ならむしろ自分達から頼んでくると思うぞ?」


カルミアはまたもたっぷり1分考えた後に答えた。


「・・・・・じゃあ・・・・・・・・・・・行く」

「おう」

前書きと後書きってどっちが書きやすいだろう…

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