神様の出会い
サブタイトルも難しい・・・
せっかくの土曜日なのに目覚まし時計の音が耳元でうるさく鳴っており、俺、御門大地は目を覚ました。
7月も半分が過ぎ、眼前に迫った夏休みを前にして暑さが増してきていた。
眠気が取れないまま目を擦りながら未だにうるさい時計を叩いて止める。
そしてベッドから起き上がり、小さく欠伸をしてから両頬を叩く。
「・・・ってぇ」
少し威力が強く呻いたが目は覚めた。
俺は部屋を出てリビングに向かった。
「あっ、大地お兄ちゃん!おっはよ~!!」
リビングの戸を開けたら朝から元気な我が妹、中学2年生の仁那の声が響いた。
俺も「おはよう」と返しながら中に入る。
すると今度はキッチンの方から声が聞こえてきた。
「大地くん!愛しのお母さんにあいさつはないの!」
「はいはい、おはよ」
「おはよ~」
もう40を過ぎたのにたまに来る友達からは姉さんに間違われる俺の母さんの美奈。
確かに見た目は年齢より若く見えるからって中身まで年齢低くする必要ないのに、どこか子供っぽい。というかお茶目?
その年でそのキャラはやめた方がいいと思います。
「それより母さん、挨拶はいいけどその焦げてる卵焼きは自分で食べてな」
「大地くんのいじわる~!」
母さんをスルーして椅子に座る。
4人掛けのテーブルと椅子は俺が右手前でその隣に仁奈。
そして仁奈の前が母さんと位置が決まっている。
ちなみに父さんは仕事で外国に行っており、滅多に帰ってこない。
並べられた朝飯を食べていると仁那が口に食べ物を含めたまま話しかけてきた。
・・・なんかリスのように見える。
「お兄ひゃん、ひょうはほっかいふの?」
「仁那、ちゃんと食べてから喋ろうな」
何を言っているのか分からなかったぞ。
まぁ、リス顔が可愛かったから許そう。
「・・・っんく!お兄ちゃん、今日はどっか行くの?」
「暇だし少し散歩でもしてくると思う」
「そっか!私は今日部活があるから帰りにデザートよろしくお願いします」
「おう、いいぞ」
仁那は元気な性格から想像がつく?ように陸上部に所属している。しかもエース級の実力だ。
今日も元気一杯頑張ってくるであろう仁那にとびきり美味しいう○い棒でも買っていってやるかな。
「大地く~ん!私にも買ってきて欲しいな~」
なんか母さんが気持ち悪い声を出しているが無視しよう。
部屋に戻り財布やら着替えやらちゃちゃっと準備を済ませて玄関に向かう。
ちょうど仁那も家を出るのか靴を履いている途中だった。
「これから行くのか」
「うんっ!お兄ちゃんもこれから散歩?」
「そうだよ」
「そっか~。お兄ちゃん、デザート忘れないでね」
「おう。仁那も熱中症に気を付けて部活頑張れよ」
「イエッサー!行ってきま~す!!」
仁那が元気よく家を出ていった。
さて、俺もそろそろ行こうかな。
「行ってらっしゃい、大地くん☆」
「・・・どなたか存じませんが人の家に勝手に入らない方がいいですよ」
「ひどいっ!私お母さんなのに!」
「そうだったのか」
「はっ!分かっちゃった!!大地くんは私をお母さんじゃなくて姉として見ているのねっ!!!」
さて、散歩散歩~っと。
「あぁ!大地くんスルーしないで!?」
構わず家を出て適当にぶらぶら歩く。
そのうち知ってる道に着き、なんとなくジョギングに切り替えた。
今日はよく晴れていて日差しが暑い。だが風もそこそこあるのでちょうどよく感じる。
適度に汗をかいたところでコンビニが見え、仁那にデザートを頼まれていたことを思い出す。
コンビニに寄ってスポーツドリンクと唐揚げと仁那にあげるプリンを買った。ついでに母さんにも○まい棒を買ってあげた。
コンビニを出て家に帰ろうと思ったが、駐車場に仁那と同じくらいの年の少女が2人の男に迫られてるのが見えた。
なんでコンビニには不良が溜まるんだろうな・・・。
どこかお決まりのような光景に溜息が漏れる。
面倒だが助けに入った方がいいだろう。
「おい」
できるだけ低い声を心がけて声をかけた。
すると3人が一斉にこっちを向いた。
少女はとてもきれいな白い髪で、顔立ちも整っていた。
胸に小さなフリルのついた白のワンピースの上に、夏なのに暑くないのかぶかぶかの黄色のパーカーを羽織っていた。
下は涼しそうな短いスカートだった。
はっきり言って美少女である少女は少し不安な表情をしていた。
・・・やっぱりからまれてたのか。
「なんだよ、お前?」
男の1人が話しかけてきた。
「お前こそ何してるんだよ」
「あ?ただこの子に道を聞いてただけだろ」
またそんな見え透いた嘘を・・・。
「だったら俺がその役を変わってやるよ。いいだろ?」
肩を掴んで軽く力を込める。
俺は小さい頃から武道をやっていたため力は強い方だと思う。
その証拠に男が「痛っ!」という声を出した。
「なんだよ、お前!もう別の奴に聞くよ!おい行こうぜ・・・」
男たちは案外早く諦めて去っていった。
それを確かめてから今度は少女の様子を見てみた。
「な、なんだお前?」
「え?」
なんか思ってた反応と違うな・・・。
ここは『助けてくれてありがとうございます!』か、俺の目つきにビビッて逃げるのどちらかかと思っていたんだが。
「わ、私はお前に屈したりなんかしないぞ!」
「は?え、お前あいつらにからまれてたんじゃないのか??」
「何を言ってるんだ?あいつらは私に道を聞いてきただけだぞ?」
・・・マジかよ。
「で、でもお前は不安そうな顔をしていたじゃないか」
「それは私が最近こっちに来たばかりで道がよく分からなかったからで」
「そ、そりゃすまん!俺はてっきりお前がからまれてるんじゃないかと思って…」
と、その時、きゅ~と可愛らしい音が鳴った。・・・少女のお腹から・・・
「・・・お前、腹が減ってるのか?」
「そ、そんなことはないぞ!私はお腹が空かないのだ!」
そう言った直後にまたきゅ~という音が鳴った。
俺は苦笑し、自分で食べる予定だった唐揚げを差し出した。
すると少女は目を輝かせながら「いいのか?」と聞いてきた。
「目の前に差し出したのに食べさせてあげないなんていじわる言わないよ」
「そっか。ありがとう!」
お礼を言い、唐揚げを口に運ぶ少女。
少女が笑顔で唐揚げを食べてる間、そういえばまだ名前を聞いてないなと思い、質問してみた。
「お前、名前はなんて言うんだ?」
「カルミアだ!そういうお前はなんて名前だ?」
「俺は御門大地だ。よろしくな」
「大地か。よろしく!」
なんて短い会話をしているうちに4個あった唐揚げがきれいに彼女・・・カルミアの胃袋の中に消えていた。
・・・食べるの早いな。
と、今度はカルミアから質問がきた。
「大地は今何をしているんだ?」
「ん?暇だったから散歩に出てその帰りだ」
「散歩という割には汗をかいているじゃないか」
「あぁ、途中からジョギングだったからな」
「そーかそーか」
そういえばもう家を出てから結構経ったな。
仁那も昼には帰ってくるし、そろそろ戻った方がよさそうだ。
「じゃあ俺はそろそろ帰るよ」
「わかった。あ、少し待ってくれ!」
そう言ってカルミアはごそごそと服の中を探し始めた。そして探し物が見つかったのか俺に向き直った
「あなたが落としたのはこの遊園地のチケットですか?それともこの水族館のチケットですか?」
なんかいきなり茶番が始まった。
「いいえ、両方です」
「なんと図々しい!そんなあなたにはこの私自身をプレゼントしよう!!」
「ごめんなさい」
「ふられたっ!?」
本当になんだこの茶番?
「冗談はここまでとして、ほらっ大地」
「ん?」
差し出してきたのは2枚の遊園地のチケットだった。
「これは見せびらかしてるのか?」
「ふっふっふ、いいだろ~!━━ってそんな訳ないだろ!これは大地にお礼だ!!」
「え、なんで?俺は何もしてないぞ」
「何を言う。大地は私に唐揚げをくれたじゃないか。いわば命の恩人だ!!このくらいさせてくれ」
とんだ過大解釈だな。
「でも遊園地のチケットじゃあ唐揚げと釣り合わないだろ?」
「む?なんだ、やっぱり水族館の方も欲しいのか」
「俺は遊園地の方が価値が高いと言ってるんだが・・・」
あれくらいのことで貰うわけにはいかず、断るつもりだったが・・・。
「でも私は遊園地に行く相手がいないし、使わないと勿体ないから大地にあげるよ」
「行く相手がいないって・・・1人もか?」
「1人でもいたらこんな風に言ってないぞ。こっちに来たばっかってさっき言っただろう?」
「それって親もなしで一人でってことなのか?」
「うん」
おいおい、こんな見た目仁奈とあまり変わらない年齢の奴が一人暮らしって色々やばいだろ。
まぁそれはいったん置いておくとして、いや置いておいたらやばいんだが一旦忘れて。
「それでカルミア本音は行きたいのか?」
「え?・・・そりゃあ行けるなら行ってみたいけどさ」
「そっか」
その返事を聞いたとき、俺の考えもまとまった。
「・・・じゃあ俺と一緒に行かないか?」
「え?」
カルミアは驚いたように目を丸くしている。
「でもそれは大地にあげたもので・・・」
「おう、貰った。だからお前を誘うのも自由だろ」
「でもそれじゃああげた意味がー」
「あるだろ。俺はもっとお前と話してみたいし」
カルミアは悩んだ挙げ句、唐揚げを差し出した時と同様「いいのか?」と聞いてきた。
「もちろん。てか、俺の方が誘ってるんだがそっちはいいのか?」
「あ、当たり前だ!!」
「じゃあ決まりだな、日時は夏休みの最初の日・・・今日から一週間後でどうだ?」
「問題なしだ!」
カルミアは今からわくわくしているのか、ずっと笑顔だった。
その顔が可愛くてつい頭を撫でてしまった。
そうしたらカルミアも気持ちいいのか目を細めて受け入れてくれた。
その顔もまた可愛くて見とれてしまった。
「それでお前も道が分からなくて困ってたんだっけ?必要なら俺が案内するぞ?」
「ふふっ、大地はお人好しだな。結構怖い目つきなのに」
「後半は余計だ。それでどうなんだ?」
カルミアの頭を撫でていた手で頭をぐりぐりしながら聞く。
「痛いよぅ。・・・それと案内は大丈夫だ。時間はたっぷりあるからのんびり覚えていくよ」
「そっか・・・」
「ありがとうな。でも大地の方は帰らなくていいのか?そろそろ昼だぞ?」
カルミアを微笑ましく見ていたが、指摘されて急いで時間を確認する。
時刻はもう少しで12時半になるころだった。
おそらく仁奈は帰ってる途中だろう。俺は急いで早口で別れを告げた。
「じ、じゃあ俺はもう帰らないとだから。またな!」
「うん!楽しみにしているぞ!!」
嬉しそうなカルミアに手を振り、ジョギングというよりむしろダッシュで家まで帰る。
「ただいま~」
家に着くと仁那の靴があり、もう帰ってきているようだった。
リビングに入ると仁那は母さんとテレビを見ていたが、2人は俺に気がつくとそれぞれ「おかえり~」と言ってきた。
俺も「ただいま」と返し、仁那と母さんにそれぞれプリンとうま○棒をあげた。
仁那は喜んでいたが母さんは若干泣いていた。まぁ嬉し泣きだろう。
それからは部屋に戻って暇を潰し、ご飯を食べていつも通りの12時くらいに寝た。
待ち合わせ時間や場所を決めてなかったことにはその日の寝る前に気がついた・・・。
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