狼の牙
前作「灰色の狼」の続編になります。
まぁ、今回は少し残酷な描写があるのでご了承下さい
合戦用意・・・と艦長からの命令が下ると先任将校を始め搭乗員に緊張が走った。
「機関全速、面舵一杯・・・右舷前進一杯、左舷後進一杯、深さそのまま」
船体が大きく揺れ、目標の敵艦隊に向かっていく・・・
「敵艦、魚雷発射!数は・・・三つないし四つ!」
推測長の報告あるや否や艦橋部の発令所から艦長の声がスピーカーに響き渡った
「メインタンク、ブロー・・・深さ三十まで急速浮上」
狼は鋼鉄の全身を奮わせ、咆哮の雄たけびに似た音をあげる。
ぎりぎりで敵艦から放たれた死神の鎌とも言うべき魚雷を避ける
「敵艦との距離100・・・80、70、60、50!」
「前部発射管、一番・二番次いで後部発射管、八番・九番。てっ!!」
この時こそ、【狼】の真価が発揮される。獲物に喰らい付き牙を突き立てる
牙は敵艦に目掛けて向かっていく・・・
敵艦は、至近距離からの急激な攻撃に対応しきれない
次の瞬間、爆音とともに九五式酸素魚雷が突き刺さり全ての命を噛み砕く
そう・・・敵も同じ人間なのだ
いくら言い訳を繕ったところで、人殺しの何者でもない
魚雷は敵艦左舷中央に突き刺さり炸裂し内側から一気に大量の気泡をまき散し起爆した。
根元から吹き飛び、船体は真っ二つに折れ飛散した。
ある意味で、悲惨で陰惨な場面を見ずに済む事が唯一の救いではないだろうか?
無残な残骸・・・爆発の瞬間に吹き飛び、かつては優秀であっただろう敵兵士達は
肌を焼かれ、骨を溶かされ、神経を蝕まれる激痛に身をよじらせ・・・
千切れた手足や頭、臓物は海に投げ出されたに違いない。
今、この海は夥しい怨念と無念の残留思念とが渦巻く血生臭い殺戮の色をしているだろう
許してくれと言う言葉は言い訳でしかなく
どう言い繕ったとて自分は許されざる存在に過ぎないのは分かりきった事だ
これは、戦争なのだから致し方ない、諦めてくれ
心の中で、自身を納得させた。
「敵艦隊、完璧に沈黙。艦長、ご指示を」
先任将校の声によって、現実に引き戻される
「両舷一杯、機関全速・・・現海域を離脱する」
【狼】は牙を収め、彼方へと姿を消して行く
「これより本艦はキール港にて補給を受けた後に、艦隊と合流し作戦に参加する。」
軍港に帰還するのは、本来は補給の為と兵士の休息を意味するが・・・
休息を取る猶予などは、当に無いに近いので補給のみが目的である。
敗戦が濃厚になった今では、補給を受けられるだけでも奇跡に等しい
はたして、無事に辿り着けるやら・・・
彼の脳裏に、ふと悲観的な考えが過ぎった
我々・・・否、【灰色の狼】はどの様な結末を迎えるのか
彼自身、その様な思考に耽る事は珍しい
元々、生に対しても死に対しても淡白なほうなのだから
かと言って、生来の性格を変えようとは思わなかった
無為に生に執着するのは武人としては情けない話ではあるが・・・・
むざむざと、無駄死には御免ではあった
さて、これからどうするかな?
彼は、そんな疑問を自身に投げかけた
そして・・・【狼】の最後の戦いが訪れようとしていた。
滅びるにせよ、生き残るにせよ・・・・
時代は、二次大戦末期
時代は刻々と新しい時代へと時計の針を進めていた
それが、如何なる世になるかは定かではないが・・・
もう少し、話を展開をする予定でしたが・・・ネタに詰まったので短くなってしまいました。
まぁ、次回は長めに作ろうと思います。