《弐》再びの出会い そして裏切り その2とその3‐1
その2が短すぎるのであわせます
2.2
真実を知らず、
偽りを信じ、
本当に何も知らない少女・鬼凜。
その少女の頑なな心はいつ解かれるのか
2.3
「全く、俺がほおっておくとでも思ったわけ?」
倒れた鬼凜を背負う"彼"。
運命の扉の鍵の1つを握りし少年と、少女が再
び巡り合う。
そして
絶望への砂時計が傾き、
カウントダウンを始める。
少女はいったい何を想うか
「起きたら覚えておけよ」
ごめーん。鬼凜。
彼女の空々しい声が聞こえた気がした。
‐ ‐ ‐ ‐ ‐
「ちっ」
その手の下には、ガラスの破片が散らばり、血を流している。
暗闇で顔は見えない。
「絶対に捕まえてやる。鬼凜いや天女フェリア」
その暗闇で、その声は嫌に響き、赫い血が映えていた。
写しだされたのは、
天女化した鬼凜の姿だった。
- - - - ‐ - - -
鬼凜は泡沫の空間にいた。
氷と水、シャボン玉
水に関係するもの
と光
なんだろう
それらを触れようとした途端、それらは消え、
彼女は、朱い空間にいた。
炎
と
闇
先程とは正反対の空間に
そして消えた。
誰かがいたような
そんな違和感を残して。
鬼凜の意識は浮上した。
鬼凜が目覚めて最初の思考はこうである。
(...ベットが違う。部屋の家具とか全部違う。
ここどこだ。
あれ?昨日何があったっけ。)
その途端脳裏に浮かぶ映像。
鬼凜は飛び起きる。
(に・・逃げなきゃ)
その時、その部屋のドアが開かれた。
「起きたわけ?
本当昨日は苦労したよ。
公園で僕の目の前で倒れるし、俺1人で連れて来たんだからね。
で、手は大丈夫だったわけ?
何かで切れたみたいになってたけど。」
金茶の髪に藍色の瞳。
見たことのある顔立ち。
鬼凜にとっては"2度目"の出会い。
「あ、あの時の毒舌少年。いや何でもない。
ねぇここはどこ?」
それは彼には禁句の1つだった。
そのせいで少し刺々しい言い方で言う。
「質問に対する答えも言わず、まずそれ、か。
ここは僕の家だけど?
お前が落ちた歩道橋の近くで、人に向かって
いきなり毒舌少年かぁ
「すいません」
まぁ許してあげるよ」
1度の経験で鬼凜は学習していた。
彼を怒らせては駄目だと。
年上の威厳も何もないが…
「えっと怪我?本当だ痛い
手当てしてくれたんだ。
それに公園ですか。
全然心当たりないんですけど。」
天女うんぬんのことを簡単には言えることで
はない。
怪我も鬼凜が知らないのも無理はない。
その怪我は"彼女"が力を使った時に飛んだガラスの破片で切ったものであり、
鬼凜は"彼女"の存在を知らない。
知らないものを認知できないのだから。
逆に"彼女"は鬼凜の全てを知っている。
"彼女"は鬼凜が産まれた時からずっと共にある存在だから。
「まったく要領得ないね
それ、お姉さん。」
最後が心なしか強調されている。
「…それと、..ありがとう えっと...」
「あぁ僕はウェルヒム・ソルウェイ。
ウェルでいい。
何度も聞かれるの嫌だから言っとくけど、在日英国人。
あんたより最低3下の12歳。
それと男だから。
お姉さんは?」
つまり暗に最低僕より3上のくせに何してんだとウェルは言いたいんだろう。
男と強調したのはよく間違われるからだろう。
「鬼凜。『き』は鬼って書く見た通り女、16歳。
ねぇウェル君昨日私どういう風に会ったの?」
苗字は鬼凜は言わない。
神野家に比べると小さいがそれでも刈野家は財閥の1つだから。
「君はいらない。
苗字言わないのは気にしないからいいけど。
で昨日のことだけど怪我して公園の木の下に
座り込んでたから駆け寄ったんだよ
そしたら僕に向かって倒れ掛かってきた。以上
それにしても髪昨夜と違うね。
昨夜は赤銅色だった。」
「えっ?」
鬼凜は本気で分からなかったようだが
まぁ意識がなくなる寸前も色の変化にも気づ
かなかったのだろう。
そして思い当たったのは“天女”。
ウェルは鬼凜が一瞬はっとしたことに気付いたようだが何も言わない。
2度会っただけの他人だから。
相手が言いたくないことを聞くのは無神経だから
「まぁ、いいけど。
それとその制服。
ボロボロだから、これでも着れば?」
出されたのは女物の服。
「お姉さんかお母さんの?」
「僕は一人っ子だし、母は父と一緒に海外。
たまに仕送りがあるだけ。
これはさっき買ってきた。
鬼凜が着なきゃ無駄になるんだけど」
これはウェルヒムなりの気遣い。
そして同時に12歳で実質一人暮らしということである鬼凜はこう思っていた。
(あんなことがあったからには家には戻れないし、
戒兄は心配するだろうけど…)
「・・ウェル。
こんな知り合ってすぐにで悪いけど、お願い
ちょっとの間だけ居候させて。」
気が付いたらそう口に出していた。
「..いいけど条件な。
家事半分やってくれ
あとタメ口でよし
…どうだ鬼凜」
「わかった」
少しだけ鬼凜は微笑んだ。
こうして交渉は成立したのであった。
鬼凜の中で小さな変化が起こる
それは何を引き起こすか
.