《壱》総ての始まり、総ての終わり~覚醒~ その1‐1
それが始まりだった。
一人の少女が目を覚ませた。
「・・・朝・か。」
年は16、7だろうが、その年に似合わぬ落ち着きがあり、表情はほとんどない。
髪の色は黒とありがちだが、瞳の色は赤・・血というより、炎のような赤だ。
どこか人形地味た感じである。
彼女の名前は、刈野鬼凛。
年は16[といっても、今日なったばかりで、正確にいうと、昼頃らしいが。]である。
御浦高校一年生である。
紺いや・・・黒色の制服を身につける。高校生としては、地味めであろう。
しかし、彼女の綺麗さは、消え失せない。
真っ直ぐな黒髪が、翻る。
素早く支度をし、朝食を作る。
家族は、居ないのだろうか?
「おや・・起きていたのかい?鬼凛」
低い男の声がきこえた。
それと同時に年の頃20後半だと思われる男が出て来た。
「・・戒兄起きたの?じゃあ戒兄の分も用意するね。」
兄・・・
そう、彼は、鬼凛の兄であり保護者である。
名前は刈野 戒。年は26。
血がつながっていると分かるくらい顔は似ている。が、瞳が違う。
戒は、焦げ茶色である。
「大丈夫なのかい。僕の分も作って・時間は?」
「大丈夫大丈夫」
鬼凛の人形地味た顔は、人間らしいと言っては変だが、可愛らしい年相応の笑みがある。
彼女が兄を慕っているとよく分かる。
「なんでわざわざあんなに遠いところにしたんだい。
もっと近くでも・・・。もしかして、お金のことでも気にしたの?そんなに気にしないでいいのに・・・」
「戒兄それ聞くの何回目?」
彼女鬼凛が通うのは、バスで50分はかかる県立御浦高校である。
そして、かなりの偏差値があり、その中で鬼凛は奨学金制度を取っている。
この家の近くにあるのは、私立のみ。
しかも、鬼凛は去年まで、近くの私立に通っていた。
「う。でもこれでも高い地位いるつもりだし、大丈夫なんだよ。本当に・・・」
彼女の兄・戒は、これでも、(一見、優男。眼鏡を取ると、かなりの童顔である。)神野コーポレーションの専務-次期社長なのだ。
『神野コーポレーション』
元から大きな会社だったが多方面で近年急成長し、今では、世界一、二を争う大企業。ここに入れるのは、エリートだけだと言われている。
「あっもうこんな時間」
食事し終わった鬼凛は、食器を片づけようとする。
「僕が片づけておくよ。もう7時半が来るだろ。バス7:35でしょ。それと今日は、 早めに帰って来ること・」
「ありがとっ戒兄」
かばんを持ち鬼凛は、走り出した。
鬼凛は気付かない。
兄・戒の目の光が優しいものから鋭いものに変わっていたことに。
兄・戒が薄い気味の悪い笑みを浮かべていたことに・・
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