《弐》再びの出会い そして裏切り その7
「なんでっなんで今更。
お父さんとお母さんがっ…。
だって、あの人達は、私を…嫌ってるハズなのに‥」
もう鬼凛は言う。
『鬼凛..本当にお主は少しも愛されていなかったと思うか?
いや言葉でいうのは簡単だが、お主は信じないだろうからね。
見せてあげる
カコを(彼らがそれを望んでいなかったとしても)。
鬼凛知る覚悟はある?
それとウェルヒムはどうする?』
震える声で鬼凛は言う
「あるわ
ウェル一緒に来てくれる?」
「仕方ないか
こうなったらとことん付き合ってあげるよ。」
とため息をつきつつウェルヒムは言った
『ふふふ
どちらが年上かわからなくなるやり取りね
ではいくそ゛』
朱い光があたりに満ちる
その光は3人を覆い
3人は記憶の渦の中に入っていった。
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"おめでとうございます。
とても可愛い女の子ですよ。"
看護師からの祝いの言葉が耳に届く。
ここは‥病院
"よくやった、綾乃"
これは悠馬の声
"よく生まれて来てくれたわ、鬼凛
この名前はね鬼に負けない強く凛とした子になってほしい
そんな願いをこめたの"
綾乃の嬉しそうな声が
顔が
流れる。
「…‥どうして…?
鬼凛は忌み名なんじゃないの?
なんで、そんな願いがあるの?
だって…」
鬼凛の脳裏に浮かんだ記憶が
影響したのか
場面が跳ぶ。
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“鬼凛。本当綺麗な赫い瞳ねぇ。
突然変わったときは、びっくりしたけど、どんな瞳でも、鬼凛は鬼凛よ。”
やわらかく見える笑い
彼女が見たことも覚えていない自分に向かっての笑顔であった。
綾乃の言葉に流れるは一筋の涙
「あ‥れ?
さっき結構泣いたのに・・
両親からの愛情なんかもうとっくの昔に諦めていたはずなのに・・
あんな昔の言葉になんでこんなに涙が出るの?」
あきらめていた筈だった
もう 要らないって思ってたはずだった
そう思わなきゃやっていけなかっただけだけど
「鬼凛。 大丈夫?」
「えぇ 大丈夫よ」
再び場面が飛ぶ。
それは 鬼凛が3歳くらいに一気に成長している。
“鬼凛、どうしたの?”
音を出して遊んでいたのに、静かになって不思議に思ったのだろう。
綾乃が言う。
“ママーーー”
持っているのははさみ。
“ちょっと危ないでしょ、鬼凛っ”
それを取り上げ、鬼凛を叱る。
“いーやぁー”
“鬼凛っ”
綾乃がおもわず、過去の鬼凛に手をあげた。。
“うわーーーーん”
“ ごめん ごめんね 鬼凛”
ここから 雰囲気が変わる
場面が移り変わる。
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“悠馬、私こわいの。
鬼凛を傷つけるんじゃないかって
私を虐待した両親みたいになるんじゃないかって
よく言うでしょ。 虐待された子供が親になったらまたその子供を虐待にするって”
“綾乃、私たちは鬼凛から離れた方がいいかもしれない・・・・”
“どうして‥?
鬼凛はまだ4歳よ。”
“詳しいことはうちの秘密にかかわることだから言えない
だが 戒ならもう大丈夫だろう 戒はもう17だし、少しずつ離れていけば怪しまれない
あの子は綺麗な赫の瞳だ、それを心苦しいが、 それが 鬼凛の幸せなんだ
たとえ私たちが嫌われたとしてもな・・”
一瞬、場面がブレ、彼女の鬼凛の精神世界へと戻る
「‥今のじゃ、よくわからないけど満月。」
そうウェルヒムが言う。
鬼凛はウェルヒムに少し支えられ、震えその瞳からはボロボロ 次々と涙を流していた。
『 本当に人とは愚かだ。
自らが弱いのに、大切なものの心も体も守ろうとする、その結果よ。
綾乃…あなたの母は、怖かったの虐待してしまうのが
両親のように傷つけるくらいなら、自分から引き離す方がましだと思ったのよ
名前の由来を故意に曲げたのは、あいつー戒よ。
でも、自分が傷ついてもなおあなたを守りたかったの
悠馬…あなたの父は、 お前が天女かもしれないそう 考えて 神野から遠ざけようとしたのだ
無駄だったがな。』
鬼凛は、支えられながら
知らなかった事実に、混乱している。
自分の中の父と母との差に。
そして
「母の方は分かった。
こいつの父の方が意味わかんないんだけど?」
ウェルヒムはもったいぶった満月の言い方に少し腹を立てたのか、すごくキツイ口調で問う。
『悠馬-鬼凛の父は、鬼凛が適合者かもしれないと思った理由はね、
鬼凛は、“月華”に似ているからだ』
「月華・?
聞いたことある
大叔母さんだ。父方の
若くして死んだ父の叔母でこの瞳は彼女譲りだって戒兄が…」
(やっぱり鬼凛にとって戒は裏切られても信じたい大切な人なんだな…)
とウェルヒムが思う。
2人とも気づいていなかった
さっきの記憶に戒が出ていないことに
戒が壊れたきっかけもここらへんだということも・・・・
そして 新しい大切な人ができたからこそ泣かずに話せるのだと本人もウェルヒムも気づいていませんでした。
『あぁ そうだ。
そしてお前たち風に言うと前の適合者でもある。
彼女は、予知能力を持っておった。
私の影響でな。
もともと、その瞳は私の影響だしな
鬼凛‥絶対神野家にも-戒 刈野戒にも捕まるな。
……適合者は、捕まれば一生籠の鳥だ。
誰も一族の男しか知らないことだ。
天女の遺伝子を色濃く残すために…ね。もう…あのようなものは‥みとうない。』
直積的なことは言っていないしかし、鬼凛にも
そしてウェルヒムにも(なぜわかる byユエ)にもその意味は分かった。
しかし、
神野-影神-家はそうして、血を外へ出さないようにしてきた家なのだ。
だからこそ 手段を選ばない
たとえ、薬を使ってでも、あの家から奥之院から一度入ったら逃げることは難しい。
そうして 何人もの適合者が死んだのだ。
「月華叔母さんも
あなたと、・・・満月と?」
『月華は私と対話はできたが、私を表には出せなかった。
いや、今までだれ一人ここまで私の力や意識を引き出せたものはいなかった。
余地も意味がわからなければ無駄だ。
覚醒した途端つかまってしまった。16の誕生日にな』
そして彼女の優しい心は粉々に砕かれ、
琴線は切れた。
「16歳に何か意味でもあるの・?」
『なんてことはない。
私の意識が大なり小なり目覚め、力が発現するのが、彼らが言う覚醒が
その時なのさ。
それまではわれらの力は、その体にうまく浸透せず、大惨事を引き起こす
私は、自分の意思で消えることはできぬのじゃ。
私の封印された本当の体を見つけない限りな
頼む、力を貸してくれ 鬼凛。』
「その返事すぐじゃなきゃだめ?
いろいろあって、頭がこんがらがってて・・」
『いいぞい。 なるべく早いほうがいいが急がん』
でも・・・・・・・・・
様々な感情が入れ混じり吐露するかのように涙がまた流れる。
鬼凛の中で凍っていたものが溶け出す。
「私、お母さんたちに嫌われてなかったんだ。
すごくうれしい
でも、すごくすごく悔しい
私気付けなかった。その優しさに。
それに私は、 傷ついてもいいからそばにいてほしかった・・
私ね、 目が覚めたらお母さんたちに会いに行く。
それでありがとうっていうんだ」
いままで偽り続けてきた本音が吐露される。
「そう・・・ つきあうよ。
だから少しは年上の威厳見せろよ。
鬼凛」
その照れくさい暖かい雰囲気に影が差す。
満月は戸惑うように、言いにくそうに言った。
『…鬼凛。悪いけど、会える可能性は極めて低いと思うわ。
故意に私を逃がした裏切り者を神野家が、
刈野 戒が
そのままにしておくわけがないわ。
殺された可能性が高いわ。』
その
突きつけられた現実は
鬼凛の心を
刃のように抉る。
でも、黙っているだけが優しさじゃないのだ。
「嘘だっ
だって私何も言ってない
何も… 」
気付けなかった
大切なもの…
2つ 零れ落ちる。
「鬼凛…
おい、鬼凛。
悲しいのはよくわかる。
僕はそこまでつらいことはなかったよ、
完璧に理解はできないと思う
でも、お前の両親はそれを覚悟でお前を救けたんだよ。
だから、自分が死ねばいいなんて馬鹿な考えを起こすなよ。
それとも、僕に同じ思いをさせる気?
大切な人をなくす悲しみを
すぐに受け止めなくていい。
鬼凛にも、
僕にも
まだまだ時はあるんだから・・・」
そして、二人はこのセカイから
現実世界へと戻っていく。
光にさらされた
闇の一部。
さまざまな心を写す泪。
第二の出会いは近い
.
ちょいこの話は長いかも・・・