《弐》再びの出会い そして裏切り その4
<ウェル視点>
"戒兄"からの電話に対して鬼凜が見たことないくらい凄く綺麗に笑って、
壊れそうな人形
みたいな感じがなくなって本当に普通の年頃の子
という感じがした。
それと同時に何か悔しかった。
少しとはいえ一緒に暮らしていて、僕は何も知らなかった。
と愕然とした。
と考えた途端自分に対して心の中でこう吐いた。
何も聞かなかったのは
知ろうとしなかったのは
君でしょ。
と
そして、鬼凜にあんな顔をさせる"戒兄"っていうのに会ってみたいと思った。
「‥よかったな。鬼凜
理由は知らないけど、こっち連絡とってなかったんだろ。」
ウェルはそう口にする。
こくん
鬼凜は顔を上下に小さく振った。
「言いたくなければ言わなくていいからな。
いったいあの歩道橋から落ちたあと何があった?」
鬼凜は顔を反らす。
この時鬼凜に『声』が聞こえた。
(やっぱり無理か。何も知らないと手助けしようがないのにな。)
力がある程度制御できる今弱い思いは聴こうと集中しないと聞こえない。
その『声』を聞いた途端はっとした。
無条件に与えられる愛とか情と言われる物を兄以外から受けたことが
鬼凜にとってはなかった。
だからこそその優しさが嬉しかった。
だから
「そんなに悩まなくても、話したくないならそれでいいって言ったでしょ。
「話す‥聞いて貰いたいの。でもちょっと待って」
…わかったよ」
いよいよ自分も事実と向き合う時が来た、と。
鬼凜は思った。
3日間出来るだけ開こうとしなかった心の扉を開いた
「私の苗字は"刈野"聞いたことある?」
「あぁ隠すぐらいだから有名な財閥刈野家だろ、神野家の分家の」
それは鬼凜の今までの知識
と同じことだった。
と言っても現時点でも彼女は余り知らないのだが
「あの日は、私の16歳の誕生日だったの。
それまではそんなことなかったのに分家のはずの私の家がわざわざ呼び出された。
私の誕生日を理由にね。
宗主様に連れて行かれたのは地下室だった。
それで、血のついたリボンを見せられたの。
何のモノかは知らないけどね。
それに応じるみたいに私の体は熱くなった。
何が起こったのか私には分からない。
皆は"適合者"と私を呼んだ今までの適合者はすぐにそれで気を失っていたらしいけど、私は失わなかった。
そして何のか、と私は聞いたわ」
鬼凜は一息おく。
自分でも頭の中で整理できていないのだから。
「"天女"ですって。
詳細は分からないけど。
後も分からないわ私は気を失ったから
「ちょっと待って。
3日前も言ったけど鬼凜お前自分で公園間で来てたぜ」
…あの時も言ったけど心当たりない」
2人とも"彼女"のことを知らない。だから話に説明がつかない。
真実を少女が知る時は一刻一刻と近付いて来る
それによるのは
絶望か?それとも…?
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