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Japan Force  作者: 坂崎紗葵
第1章スラヴィニア反乱
9/32

ハウンドは獲物を狩る

今回は海戦なのですが、知識がなさ過ぎて酷いです。今回ストーリーの動きは少ないので、軽く読んでやってください。



一人の壮年の男性が居た


彼の名はリュングルト・ミシェルコネフ


スラヴィニア国財務省財務大臣


彼はクーデター軍から逆賊の判を押され、首都ヴルモフから密かに脱していたのだ。


「私は生きて帰れるのか?」


部下は答える


「わかりません」



状況は最悪だった


国境近くのポルソーまではやってきたが、どうも避難民に工作員が混じっているのだ


「ウシュコ、工作員がいる」


ミシェルコネフは部下、元スラヴィニア司法局捜査官ウシュコ・グルンタールに告げた


「大臣・・・ではこちらへ」


ウシュコは群集の中へ大臣を押し入れた




「丸見えだっつーの」


猟犬は一部始終を見ていた


「問題は、どう殺すかだなあ・・・」


猟犬、ダニロフ・マックトゥグスキー中佐は目標の殺害方法に悩んでいた


(このまま行けば蜂の巣だろうしな・・・ふぅむ・・・)




エミリー・ランドグリーズ24歳


イギリスの大学を卒業後、赤十字社へ入社した。


「エミリー、こっち手伝ってくれ!」


「はーい」


彼女は人を助けることに集中し、周りが見えていなかった・・・




ダニロフこと猟犬は持ってきていた注射器を取り出した


非常に小型な軍用のアドレナリン注射器だった。


中にはアドレナリンではなく、危険な劇薬ではあった・・・が



そこからの動きは往年の工作員、さすがというべきかすばやい動きで群集へ近づいた


(・・・殺気!?)


ウシュコはそのかき消された殺気を体で感じた


だが位置がわからない


(どこだ・・・・ッ!?)



目の前に大臣へ伸びる手があった


ウシュコはその手を払いのけようとし、針が指へ突き刺さった


(ぐ!?)


針を刺した男はすぐに立ち去った



ウシュコは体に激しい痛みを覚えた


「うぐっ・・・!うごぉぁっ!」


口から信じられない量の血が、吹き出る


「ウシュコ!?ウシュコッ!」


同僚の声を尻目に彼は事切れた



「何?・・・えっ・・・死んでる!?


エミリーが雑踏を踏み越えて行くと一人の男が死んでいた


「誰!?だれが殺したの!?」


そばについていた男を問いただす


「ドクター、我々はココを出る。構うな」


「できないわ!死んでるのよ!」


「どくんだっ!」


男はぼろぼろのスーツからピカピカ光る拳銃を取り出した


「どけ!我々は出国するのだ!」


その時、群衆の一人が叫んだ


「あいつ、財務大臣のリュングルトだ!」


群集が怒気を増す


「お前のせいで家族は離散した!」

「そうだそうだ!」


リュングルトは恐怖した


国民が怒っている


その時一発の銃弾が、リュングルトを撃ち抜いた


ハウンドは狩ったのだ。


ハウンド、ダニロフは雑踏の中へと消えた。



こちらにもハウンドが居た


コディアック・サービス・コーポレーション(以下CSC)の社員、マグダネル・グォンツォフ。


彼は愛銃のM82A1を取り出した


CSCはスラヴィニア専属のPMCで、彼もまた軍事顧問の一人だった。


オーストラリア軍の出身の彼はこの地を楽しんでいた。


彼の手には指令書が握られていた


彼が倒すよう命令されたのは法務局局長、ラーニン・シャスク。


グォンツォフがいるのはバルト海沿岸の町ハロウシャセクス。


ハロウシャセスクは冷戦時代、欧米への牽制をかけるためソビエト海軍が作った軍港である。


現在、港は拡充されて普通の港と軍港が併設している。


港は来るPKF海軍侵入阻止のため、軍艦がひしめき合っていた。


スラヴィニアでも内陸部のここは、PKF空軍でさえ近寄れないのだ。


ここにラーニン・シャスクがいるという情報はスラヴィニアの秘密機関が探し出した情報であった。


ラーニンは今日、避難民輸送船で亡命をする・・・と



彼は3日、座礁した貨物船にへばりついていた


ここから港がよく見える。


ラーニンは長身で、2mの身長だ。


目立つ


そこへ一台のタクシーが止まる


そこから2mの男が出てきた


奴だ




ラーニンは国民に顔を知られていなかった


秘密裏に動く彼は国民へ知られてはならないとかん口令が敷かれていたのだ


それが利点だった


グォンツォフは精度の高いスコープをカチカチと動かす


倍率が上がる


スポッターはいないが、グォンツォフは撃ちぬく自信があった


「こいつで一儲け・・・だ」


グォンツォフは2mの巨人の頭を撃ちぬき、座礁した貨物船に乗り付けてあったゴムボートで一目散に逃げだした。




ふんふふん♪ふんふふん♪


-8月25日 スラヴィニア共和国、首都ヴルモフ 書記長官邸-


不気味だが、かわいい歌声があたりを漂う



「そこにいましたか、ミス・シュパジェノブスク」


「んー?」



ミハエルとは父の名、彼女は18歳のアナスタシア・シュパジェノブスク



”彼女”は18歳の少女にしてクーデター軍の長だった。



彼女の祖父、コーソン・シュパジェノブスク将軍は孫娘をたいそう気に入っていた。


祖父は陸軍士官学校に彼女を入学させ、軍事知識を自ら教え込んだ。


そして卒業後すぐに他界したのだが、祖父は彼女、アナスタシアに将軍の座位を譲ったのだ・・・


国外には彼女の父、ミハイル・シェパジェノブスクとなっている。



「財務大臣、ならびに法務局長を始末しました」


「うんうん」


「残っている目標はただ一人です」


「・・・プーシキン・グァツォネフ?」


「正解です。彼はエストニアになど逃げてはいません」


「どこにいるかわかったの!?」


「いえ・・・」


「じゃあどうして断言が?」


「国境地帯はすべて崖、逃げ様がないのです」






一人の男、部下をすべて失った男


彼はスラッコーへとたどり着いた


そこで黒い髪と漆黒の瞳をした男達に気がついた


「日本人・・・!」


彼は日本への留学経験があった


日本語はたしなむ程度ならできる


そして彼は男へと駆け寄って一言



「助けてくれ」







ブラソトニキ、チェチェン人のPMC


彼らはスラッコー近くで書記長を襲撃した


だが彼らはまんまと書記長を逃した


彼らをまとめるのはチェチェン解放戦線で名を上げた戦士、イスラマ。


イスラマは逃がしたことを悔いたが、考えを改めて奴を追跡してきた。


「イスラマ、奴はこの先のキャンプじゃないか?」

「NATOのキャンプだ、危険すぎる」


イスラマはキャンプに逃げ込んでいると踏んだ


そして衛生電話を取り出してある番号へとかけた


「イスラマです。・・・はい、そうです。見つけましたがNATOのキャンプで・・・はい。わかりました」





「助けてくれ!」



修一は後ろから叫ぶ声に驚いた


「うわっ!・・・誰だ?」


修一には見覚えのない、だが・・・どこかで見た気がする顔だった


坂崎修一と仲沢凛は外で喋っているところをこの奇妙な男に呼び止められた


「教官・・・この人・・・この国の大統領・・・」


修一の頭のもやもやがすべて吹き飛んだ


「プーシキン・グァツォネフ!そうだろう、おっさん!」



プーシキンはただ頷くばかりだった





報告を受けた楢木隊長はすぐさまNATO軍を統括する米軍に指示を求めた


PKFアメリカのロバート・ジェイコブズ大佐はこの報告に驚いた


「エストニアに逃げたとばかり・・・しかし確かに報告はなかった・・・彼を助けるにはどうすれば」



エストニアへ逃がすことが先決だった。


スラッコーはエストニアへの国境のある町だ。それで済む。


ジェイコブズはエストニア側へ打診した



結果はNOだった


「なぜです」


担当者は答えた


「現在、ゲリラ部隊が国境を越えてわが軍の国境警備隊と交戦しています。おそらく書記長の確保が目的でしょう。よってわが国に危険が及ぶため、認可できません。

万が一、通過した場合は・・・撃墜も辞しません」




彼を安全に護送するには海路を利用することだった。


だが、スラヴィニア唯一の海路であるハロウシャセスク軍港はいまだスラヴィニアが保持していた。


PKF海軍部隊はあと1日で近辺へと近づくことが出来る。



-8月25日深夜 ハロウシャセスク-


「対艦ミサイルはこれでよし・・・と」


「ありがとう陳さん」


「いや、商売だからね」



陳と呼ばれた男は海岸線に地対艦ミサイル「YJ-82」を設置していた


トレーラーに詰まれたミサイルたちは今か今かと発射を待ち望んでいる。


これを提供したのは陳の耀山國防貿易公司、中国軍外商部のダミー企業である。




スラヴィニア海軍は中東製の哨戒艇とドイツ・中国製のフリゲート艦を運用していた。


潜水艦は運用していない。


スラヴィニア海軍はスラヴィニアでももっとも行き遅れた組織で、艦艇数はすべて合わせても7隻だった



そこで、スラヴィニアはこれを補うためにエアロスパシエルのガゼルヘリコプターに対艦ミサイルを積んだり、地対艦ミサイルシルクワームを大量に輸入していた。




スラヴィニア海軍のドイツ製MEKO型フリゲートは初期のものであり、旧式艦であった(アルゼンチン海軍より譲渡)。



旧式化が否めないため中国製の補修キットを使って何とか補修がされている。



しかしレーダーシステムはECMジャミングに対するすべを持たないため、現在PKF海軍のECM攻撃でレーダーは白くなっている


-8月26日早朝 バルト海洋上-


PKF海軍は数十隻の船で構成されていた。


アメリカ海軍よりアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦が3隻、強襲揚陸艦2隻


イギリス海軍よりインヴィンシブル航空母艦1隻


ドイツ海軍よりザクセン級フリゲート2隻


フランス海軍は各国の陸戦兵器(戦闘ヘリ・戦車・火砲)を積んだ揚陸艦を5隻


何とか間に合った海上自衛隊は護衛艦ありあけ1隻に補給艦3隻



潜水艦はなく、スラヴィニア海軍も導入していないのでシーホークなどの対潜ヘリは武装を変えられ、対艦ヘリとされている。


「こちらアメリカ海軍、DDG-102サンプソン。機雷など危険な浮遊物無し。概ね良好。そろそろイギリス人のハリアーが出番だ。SPY-1レーダーが敵の航空機を捉えている」


レーダーには数十にわたる航空機が表示されていた


「こちらインヴィンシブル、スタンダードミサイルで処分してくれ。うちの航空隊を出したくない」


「こちらDDG-80、ルーズベルト。イージスシステムに出来ないことはない」


「DDG-76ヒギンズ、いつでも」


「アメリカ海軍艦艇に告ぐ。敵航空部隊迎撃のためシステムを活用し、迎撃に当たれ」


『AyeAyeSir!』



アメリカ海軍のイージスシステムは同時に複数の目標をロックすることが可能。


イージスシステムはすでに接近しているスラヴィニア空軍の航空機部隊を完全に捕捉していた。





-ハロウシャセスク軍港沖 バルト海洋上-


「パーファー1からパーファー20、全員戦闘に関して準備はOKだ」


Mig-29ファルクラムはスラヴィニア空軍主力戦闘機である。


現在洋上を飛行するパーファー飛行隊からは空対空ミサイルR-73(中国製)が取り外され、中国コピーのKh-31A対艦ミサイルに換装されていた。



さらに後続の陸地でエンジンを停止させて赤外線センサーへ映らないようにしているのはエアロスパシエルガゼル対艦ヘリである。



装備されている対艦ミサイルはスラヴィニアアーマメント技術研究所(SAIT、サイト)で改良した密輸されたEU製のHOT対戦車ミサイルである。


SAITはこれをSR-03対艦ミサイル(スラヴィニア共和国の頭文字をとって)としている。


SR-03対艦ミサイルは量産体制に移行しており、ガゼルにかなりの数が搭載されている。



SR-03を搭載したガゼルはエンジンを止め、出撃準備をしている。その数30機。



-再びPKF艦隊-


「こちらDDG-102サンプソン。SPY-1レーダー全敵勢力を捕捉。数は・・・なんだ、20機か」


オペレーターはロックオンされた機体数を見て言う


「ノーリックス艦長、迎撃許可を」


艦長は迎撃許可を発令し、Mk.41VLS(垂直発射装置)からESSMシースパロー改がロック可能である12標的へ発射され、リボルバー形式に新しいミサイルが充填される。


「第2波攻撃準備、コメンスファイア!」


さらに12発が発射される。





-パーファー航空隊-


20機の戦闘機に一気にミサイル警報が鳴り響く


「全機チャフを放出!フレアもめいいっぱい使え!」



ぶわっとオレンジの花が咲き乱れる


照準がずれたミサイルはかなり多く、半数が海へと墜ちた


少なからず生き残ったミサイルはパーファー航空隊へ襲い掛かった


5機のMig-29ファルクラムが迎撃され、墜落した。



-PKF艦隊-


「標的5、レーダーから消滅。依然、15機健在!」


「DDG-102から全艦へ。対空戦闘準備」



各艦は持ち前の対空ミサイルやファランクス(CICW)、艦砲を敵へ向ける


「インヴィンシブルは後退、補給艦もだ。揚陸艦?撤収しろ」



「こちらDDG-76ヒギンズだ。ダメ押しでミサイル発射。コメンスファイア!」



ESSMが12発発射される




-パーファー航空隊-


「またか!第3派攻撃!」



Mig-29は急機動で大きくかわした



隊長機と9機は生存した


残った5機はミサイルに食われてしまう。




-PKF艦隊-


「10機撃ちもらしたぞ!」


アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の主砲が唸る


バンバンバンと連射音が轟き、CIWSのバルカンがバリバリと耳を劈く音を放つ


生き残ったMig-29ファルクラムも被弾し、すべて海中へ消え行く。


苦し紛れに放たれたSA-03が一発、DDG-80ルーズベルトの右側面へ命中した。



「船体に被弾!損害大!第3ブロック浸水!ええい、水密ドアを閉じろ!」


「第3ブロック封鎖・・・できません!浸水が早すぎる!」


「沈没するぞ!」


「くそっ、総員退艦!」



DDG-80ルーズベルトはゆっくりと沈んでゆく


救助艇が集まり、隊員達は全員無事救出された。





-ハロウシャセスク軍港司令部-


「パーファー航空隊全滅。戦果、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦1隻。アメリカ軍のものです」


「MEKO型フリゲート、敵と接触します」




-バルト海洋上スラヴィニア海軍MEKO型フリゲート(古い戦艦のため、名前はない)-


「敵艦と接触するか・・・?」




-バルト海洋上アメリカ海軍アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦DDG-102サンプソン-


「SPYレーダーに敵艦を捕捉。1隻」


分析官が告げると艦長は答えた


「DDG-76ヒギンズへ。データを転送する。ハープーン対艦ミサイル発射用意」


『了解』



DDG-76ヒギンズは船に4連装発射筒を積み、中には対艦ミサイルハープーンが詰まっていた。


「SPY-1レーダーに敵艦を捕捉、MEKO級ですね・・・アルゼンチンからの」


「よし、目標をあわせろ。海底に沈めてやる」



CICの担当官たちがあわただしく命令を伝え合う


「ハープーン発射準備!・・・コメンスファイア!」



バシュッ!と右舷の4連装の筒の1つが音を立てた


ハープーン対艦ミサイルは一直線にMEKO型フリゲートへと向かった




-バルト海洋上MEKO型フリゲート-


「敵がミサイルを発射!」


「AK-630CIWSを起動、迎撃せよ!」



中国がコピーしたロシア製AK-630CIWSがMEKO型には搭載されていた。


アルゼンチン海軍時代にはないもので、中国軍技術者が設置したものだ。



中国軍、およびSAITで改修されたAK-630は目標を自動で追尾、ファランクスにも引けをとらないレベルになっていた。



迎撃されたハープーンは3門のAK-630によって爆発した




-DDG-76ヒギンズ-


「迎撃された!?AK-630か」


「第2波を?」


「ああ、しこたまだ!他のイージスにもアスロック(対艦ミサイル)を撃たせろ!」








-スラッコーPKF.JGSDF基地-


「きょーかん、教官ってば」


「・・・んぁ?」



まどろみの中、坂崎修一は目を覚ます


「お昼寝ですか?」


部下、仲沢凛がそう尋ねる


「ん・・・寝てた・・・か?」



昨晩、歩哨で徹夜だったからだ


「ぐっすり。はい、どうぞ。水です」


ヴォルヴィックのミネラルウォーターをわたされ、飲み干す



「日本ほどではないが暑いな」


スラッコーPKF基地はプレハブ製なので、クーラーもない。


すこし暑い


「ほんと、下着が背中に張り付いちゃいます」


「だな」








-バルト海洋上 MEKO型フリゲート-


「敵対艦ミサイル7発!だ、だめです避け切れません!」


「全員衝撃に備えろ!」




AK-630は3発の迎撃に成功したが、残った4発をもろに船体へ食らった。


瞬く間に船は水へと引きずり込まれた



-DDG-102サンプソン-


「レーダー反応なし、MEKO型フリゲート沈没」


わぁ、と歓声が上がる



「・・・新たな目標を捕捉!・・・フリーヴェフィスケン級哨戒艇!」




-バルト海洋上 フリーヴェフィスケン級哨戒艇-


「ハープーンミサイル発射!」



フリーヴェフィスケン級哨戒艇はリトアニアから購入した哨戒艇で、ハープーンはリトアニア海軍時代から積んである劣化品だった。



もちろん劣化しているため、自爆してしまう



-DDG-102サンプソン-


「・・・レーダーから消失!・・・自沈!」


「自沈?」


「はい・・・っ、新たな目標!リマン・エル・ハドラミ型哨戒艇。数は4隻!こちらへ高速で進入してきます!」


「迎撃!」


「迎撃アイアイサー!」



PKF艦隊は対艦ミサイルで照準をあわせた


「発射!」



イージス艦2隻がハープーンとアスロック対艦ミサイルを発射した



「弾着まで・・・・3・・・2・・・1・・・弾着!4隻すべて沈没!」




PKF艦隊はイージス艦1隻を失ったものの確実に距離をつめていた





-ハロウシャセスク軍港司令部-


「防衛ラインを突破されました!」


「ええい、被害を知らせ!」


「F-22Pフリゲート以外と連絡が途絶!」


「クソッ!F-22Pフリゲートは!」


「現在、Z-9EC(F-22Pフリゲート搭載の中国製ドーファンヘリコプター)の誘導で対艦ミサイルを準備中!」


「発射体制に入ったらぶっ放させるんだ!」




-バルト海洋上 F-22Pフリゲート-


「YJ-83発射可能!」


「撃て!」




4連装発射筒から4発の対艦ミサイルが射出された



-バルト海洋上 DDG-102サンプソン-


「敵艦を捕捉!すでに対艦ミサイルが!」


「スタンダードSM-2で迎撃せよ」


「了解、VLSを使用!」


「撃て」


「コメンスファイア!」



VLSから迎撃ミサイルが発射された



「弾着まで3・・・2・・・1・・・弾着!・・・2発迎撃失敗!」


「127mm砲、迎撃用意!撃て!」



イージス艦に積まれた127mm連射砲がドォンドォン!と放たれる



「全機迎撃!」


「反撃準備、アスロックを敵艦へ撃て!」


「了解!」




-F-22Pフリゲート-


「敵がミサイルを!」


「迎撃しろ!」



F-22Pフリゲートに積まれるFM-90迎撃ミサイルは8連装で、VLSに大きく劣る


PKF艦隊はこれを考慮してアスロック対艦ミサイルを10発、撃ち込んでいた



「目標捕捉できません!多すぎます!」


「やれ!やるんだっ!」


「だ、ダメで-」



F-22Pは反撃するまもなく、海底へと沈んだ



-バルト海洋上、ハロウシャセスクまで150kmDDG-102サンプソン-


「・・・敵艦隊全滅を確認」


「全艦機関停止、インヴィンシブル級アークロイヤルはAV-8Bハリアーを出動させて欲しい」


「こちらアークロイヤル、了解した」




-インヴィンシブル級アークロイヤル航空母艦-


「パイロット全員出動、攻撃命令」



パイロット達は自室から飛び出す



フライトスーツにフライトヘルメット、サバイバルキットなどを体に身につける。


ヘンリー・ブルックス英国空軍中佐を筆頭に搭乗して行く


「よし、スラブ女のケツにぶっこんでやるか!」


『ワハハハ!』


イギリス人らしくない下品なジョークを飛ばし、AV-8Bハリアーに乗り込む


「TACネームGACK、ヘンリー・ブルックス中佐であります。出撃許可ねがいます」


『こちら艦長のウィンブル・リー。許可する。発艦せよ』



ハリアーは甲板を突き進む。



やがて空へと躍り出た



『GACK(TACKNAME)よりTELLY(2番機)、我々最後の任務であろうこの任務成功させよう』


アークロイヤルは今年度をもって退役が決まっていた。


同時にAV-8Bハリアーも除隊となっているのだ


『こちらTELLY、一花咲かせよう!』




8機のAV-8Bハリアーはバルト海の上を飛んだ




『こちらDDG-102サンプソンのノーリックスだ』


『こちらサンダー飛行隊のヘンリーブルックスであります』


『ミスターブルックス、君たちにお願いしたいのは対艦ミサイルの破壊だ。これらが合っては我々にはどうすることも出来ない。


地上部隊がいればトマホークミサイルを撃つこともできるが、それも望めない』


『了解しました。だからこんなでっかいイチモツ(AGM-65マーベリック空対地誘導弾)をつけてるわけですな!ダハハッ!』


『ぷっ!くすくす!』


ブルックスの部下の笑い声が混入する


ノーリックスは厳格な海軍将校であり、このような下種な笑いは気に食わなかった


『AGM-65マーベリックは廃盤なんだ。くれぐれも大切に使ってくれたまえ』


『りょーかい』



「面白くねー奴」


とオフレコでブルックスが言うのは誰も聞いていない





-ハロウシャセスク軍港司令部-


「ええい、ガゼルだ!ガゼルを出せ!」


「・・・レーダーに敵機反応!空母から出撃した戦闘機!」


「なにぃ!?」


「数は8!」


「迎撃ミサイルの準備だ!」


「了解!パーンツィリS-1(ロシア製地対空ミサイル)用意します!」



パーンツィリS-1はロシア製の地対空ミサイルで、最新式である。


これはロシアとの国境小規模紛争で鹵獲し、中国側へわたしてコピーしたものだ。



-サンダー飛行隊-


『全機へ、SAMの臭いがする。全機低空で進入する用意をしろ』


『Roger!』


『・・・何も起こらないことを願おう』




-ハロウシャセスク軍港 ヘリポート-


「ヴニヴェスク飛行隊、貴様らの目標は侵入してくる敵航空部隊だ!」



短時間でSR-03からAAMミサイル(中国製)に換装されたガゼルヘリは防空のためにヘリポートから飛び立った




『ヴニヴェスク飛行隊のドン・ランフォードだ。全員散開し、進入してくる敵機を待て』


CSC航空部隊のドン・ランフォード。


イギリス空軍の中佐で、軍役を離脱したあとはCSCに入社した


彼は故国との戦闘となるとは夢にも思っていなかった


「・・・所詮、軍を裏切った男だ・・・」





『はいはい、今夜のディスクジョッキーブルックスさんだよー、みんなマスターベーションの準備したかな?興奮しすぎて玉がなくなる位気持ちい任務だぜ!』


『ぶははは!』


陽気なブルックスの下世話なジョークに部下達の緊張はほぐれてゆく


『GACKより全機、レーダーにヘリが映ってる。連中のハエを叩き落せ!』


『ROGER!』




ガゼル飛行隊とハリアー飛行隊は衝突した


だが、所詮鈍行のヘリに勝ち目はない


次々と落とされていくヘリにドン・ランフォードは思わず暗号化されていない無線で叫んだ



『俺はイギリス人だ!』




その声にブルックスは聞き覚えがあった



あれは空軍の養成学校を出たばかりの、フォークランド紛争に出向いたときにいた同僚の声にそっくりだ。


あいつは悲観主義で、声に特徴があって耳に残っている。



『ドン、ドン・ランフォードか?俺は・・・フォークランドでは同じ飛行隊だったヘンリー・ブルックスだ!』


またドン・ランフォードにも聞き覚えがあった。下ネタを連発するお調子者男、ヘンリー・ブルックス


『へ、ヘンリー!お、俺を打つな!同胞だ!』



ヘンリー・ブルックスことGACKは冷たく答えた


『大英帝国に背いた者は万死に値する』



冷酷な機銃弾がドン・ランフォードのガゼルを砕けさせた



『た、隊長?』


『・・・裏切り者は蜂の巣に。いよいよイチモツをケツにぶっさしてひぃひぃ言わせるときが来たぞ!』





-ハロウシャセスク軍港司令部-


「くそっ!防衛隊はなにをしておる!」


「・・・し、司令ッ!」


「なんだ!」


「・・・同志シュパジェノブスクよりお電話が・・・」


「・・・わかった」


基地司令は背中に寒気が走った


狂気に包まれた女王からの電話だ



「はい、ハロウシャセスク軍港のスピリデッチ大佐であります・・・」


『あ、大佐ぁ?私、アナスタシアだけど』


「は、なんでありますかシュパジェノブスク中将・・・」






『あんた、いらないわぁ』


ゾッとした


背中の産毛がすべて逆立つ



「は・・・い、いえしかし!」


『はいはい、いーわけっしょ?いいからいいから、後任もう送ったし。ファルクラム何機ぶっ壊せば気が済むのよ、あんた。・・・あ?ガゼルもぶっ壊した?もうあんた・・・はー』


「それは申し訳なく!し、しかし敵艦隊は我々が責任を持って-」


『消えろ。それが私の願いだ、大佐』



ブッ・・・・ツーツーツー



「大佐?顔色が悪いですが・・・?」


「・・・なんでもない。すこし指揮を任せる、大尉」


「はっ」




「・・・何年だ、何年軍に尽くしたんだ!30年!30年だッ!それなのにあのクソガキ!俺の軍歴に土足で入りやがって!」


スピリデッチは一人悪態をついていた



そこへ一人の黒い海軍の軍服を着た男が歩いてきた


「ミスタースピリデッチ、後任のドラグマ中佐であります」


「ドラグマ?何者だ」


「イェスタール・ドラグマ中佐、今年度ヴルモフ空海軍を卒業しました」


「なっ・・・新米のぺいぺいの来る場所じゃない!」


「・・・中佐ですよ?私は」


「俺は大佐だ、この階級章が見えんのか!」



するとドラグマはその階級章を思い切りちぎりとった


「なっ!貴様何をするか!」


するとドラグマは自分の階級章をはずしてポケットに入れ、スピリデッチの階級章を付け直した


「元大佐、あなたはクビだ」


「ふざけるなよ青二才!」



スピリデッチは腰のホルスターから旧ソ連製のマカロフ拳銃を取り出す


「俺は、俺は軍歴を護る」


ふっ、と鼻で笑ったドラグマはさっと、ホルスターから中国製の92式拳銃を取り出して撃った


「ぐぅっ!?」


「邪魔だ、消えてくれ」






-サンダー飛行隊-


『よぉし、見えてきた見えてきた。敵のSAMを発見。トレーラーだな。1番から3番機はSAMを撃破するぞ!後の連中は対艦ミサイルをぶっ壊せ!


パーティーの始まりだ!』




1番機のブルックスは左へ旋廻し、パーンツィリS-1地対空ミサイルを乗せたトレーラーを照準に合わせた




『敵航空隊侵入!』


『迎撃に当たれ!パーンツィリ1、迎撃!鎧2から5も撃て!』



パーンツィリS-1の装備する57E6地対空ミサイルと2A7230mm機関砲が火を吹いた



ドォンドォン!と30mmの弾丸が炸裂し、地対空ミサイルがハリアーを追い回す



『くっそがぁあぁあ!』


思い切りエンジンをふかしてミサイルから逃げるブルックス



『こちら4番機!対艦ミサイル発見!攻撃する!』


『同じく5番機も!』


『8番機発見!』


『7番機発見!』


『6番機発見!』




ブルックスはフレアを使った


フレアが機外へ放出され、ミサイルは戸惑い自爆する



『対艦ミサイル撃破!』


『こっちもだ!』




『鎧1と連絡途絶!』


『対艦ミサイル隊!応答せよ!』


『大佐が外で死んでる!』


『それよりまずいぞ!レーダーに敵舟艇!揚陸してくるぞ!』


『海軍の防衛隊は!』


『間に合わない!』


『くそ!全員武器を取れ!』



『空域安全確認、海域も問題ない』


『あれ?隊長?隊長ッ!?』



『・・・・生きてるよ』


『よかった!』


ブルックスはハリアーの後尾に30mm機関砲を2発食らっていたものの、何とか飛行していた


『全機、帰還するぞ』







-アメリカ海軍強襲揚陸艦LHD-7イオージマ-


『海兵隊員、出撃だ!』


『Oo-rah!』



LCACエアクッション揚陸艇には海兵隊員が180名敷き詰められていた


『本日はLCACをご利用いただきありがとうございます。このフェリーは揺れがありませんが、もし気分が悪くなればお友達の首筋に吐きかけるか、海へ吐くか、ご自分のヘルメットにどうぞ』



M16A4小銃を手に持ち、1世紀過ぎてもなお使われるM1911A1MEUを腰へ刺した海の兵士。


あるものは神へ祈り、あるものは異常なほど興奮していた



『上陸まで5分!』



敵の攻撃はない。



上空をイギリスの戦闘機が通ってゆく


「おれ達の分残しただろうな!」


どっと笑いがおこる



後続のLCAC2隻にはM1A1戦車が積まれている。


上空は武装したヘリが覆う



制空制海権ともにPKFが制圧している



簡単な戦いだ


なんたっておれ達はMEU、最強兵隊ウォーリアーだ。


ニュージャージー出身の海兵隊員、リーヴェン・カマラスター上等兵は手に持ったM16A4小銃をぎゅっと握った



問題ない


問題ない






LCACは派手に浜へ乗り上げた


『降車!降りろ!』



前方のタラップが激しく倒れる



『Ou-rah!』



リーヴェンはM16A4の安全装置をつけたままだった


「許可があるまで撃つな!」


上官の大尉が叫ぶ






「敵が揚陸を開始、人数はざっと数えて200人。海兵隊だ」


『了解した。階級の高いものは?』


「一人指揮を執っていそうな奴がいる」


『ではそいつを撃て』


「リスクが高いんだが」


『給料は弾む』


「・・・りょーかい」


CSCのマグダネル・グォンツォフは愛用のM82A1対物ライフルを構えていた。


「・・・まったく」



寝そべりながらスコープを覗く


一人、指揮を執る男の頭に狙いを定める


そしてゆっくり引き金を引いた




「アルファ小隊は右へ!ブラヴォーは左へ!チャーリーは-」


その瞬間、大尉の頭が粉々に吹っ飛んだ


そして数秒後に銃声が鳴った


「遠距離狙撃だ!注意しろ!」


「大尉が死んだ!本部!大尉がやられた!」


「MIA!MIA!」



全員があわて始める






ニヤリ、とグォンツォフは笑みを浮かべた


「俺の仕事は終わりだ」


彼はてきぱきと武器を片付け、ハロウシャセスク軍港に隣する1軒の高層アパートから立ち去った

















































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