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Japan Force  作者: 坂崎紗葵
第1章スラヴィニア反乱
8/32

砲兵は日本人を撃つ



「赤十字の輸送トラックの護衛?」


「ああ、そうだ」


陸上自衛隊第10師団の隊員達はそう言い渡された


「なぜ?」


「ポルソーの村に避難民キャンプが出来た。赤十字の車両は何かと狙われやすいんだそうだ」


坂崎修一は楢木隊長へ質問するが、答えはそんなものだった。




-エストニア・スラヴィニア国境-


「赤十字社のエミリー・ランドグリーズです」


「陸上自衛隊中部方面隊、第10師団の楢木です」


楢木隊長以下9名の第2小隊は国境に居た


赤十字社のエミリー・ランドグリーズと名乗った女性はとても若かった


「本日は我々のために来ていただきありがとうございます」


金髪は後ろで結ばれている。茶色の小さなめがねにそばかすの顔。十代に見えなくもない


「いえ、それで物資は何を?」


「食料と衣類です。医薬品もすこし」


「了解しました」



陸自は96式装輪装甲車を出すことになった。


6輪装甲車は銃架にM2重機関銃を装備している。



2台の装甲車が輸送トレーラー3台の前後につき、脇は軽装甲機動車が固める


俺、赤坂、池田、仲沢4名は右側の装甲車に乗る。


運転手は赤坂が務め、俺は銃座(M2重機関銃)を使う。


左には江崎、横田、七宮、吉山陸曹、楢木隊長が乗りこんだ。


前後の装輪装甲車には別の師団が乗る。



「出発」





-スラヴィニア共和国陸軍第21歩兵機械化連隊指揮所ポイントズールー


「クラフチェネンコ少佐、第3師団機動歩兵中隊第二偵察隊のウェニスク中尉から無線が入っています」


「ん?わかった」


ラヴェニズクは無線機をとった


「こちらポイントズールー、ラヴェニズク・クラフチェネンコ。そちらは?」


「こちら第二偵察隊ヴィクトル・ウェニスク中尉であります」


「用件は?」


「赤十字のトレーラー3台を発見しました」


ほう、中身によっては襲撃する価値がある


「中身は?」


「医薬品と食料と見られます」


価値はあるな


「よし、場所は」


「スラッコーよりポルソーへ向かうM72国道です」


「偵察隊だけでやれるか?」


「ええと、援護がいます。JGSDF(陸上自衛隊)です。装甲車2台、兵員輸送用の機動車2台」


「お前達の武器は?」


「RPG-7、小銃です」


「無茶だな。制空権はもない。撤退させ・・・いや、待て」


受話器を置き、部下のモンショル・ステリネフ少尉を呼びつけた


「はい、なんでしょう」


「ポルソーの近くに重火器を持った友軍はいないか?」


「いえ、いません。しかしポルソーより南20kmのグラヴェンズ山に第3砲兵隊がいます」


「よし、それでいこう」




-グラヴェンズ山第3砲兵隊-


「第3砲兵隊のミコシェ中尉です」


『こちらポイントズールーのクラフチェネンコだ』


グラヴェンズ山第3砲兵隊指揮官リュミエール・ミコシェは脳裏に基地で読んだ軍の新聞にあった青年を思い出した。


「ああ、あの!」


『ごちゃごちゃいうな、緊急任務を任せたい』


「は、なんでしょうか」


『ポイントアルファ、座標は・・・9と21だ』


「砲弾の種類は?」


『榴弾だ。目標には命中させるな』


「了解しました。何発程度打ち込みましょうか?」


『10発頼む』


「了解しました」



無線機を切り、ミコシェはため息をつく


「全く、ガキは・・・おい軍曹!兵隊達に自走砲2台動かさせろ!ポイント座標はアルファ、921!種類は榴弾!数10発!復唱!」


「2台!アルファ!921!榴弾!10発!」


「よし、やってこい」



88式155mm自走榴弾砲は中国、中国北方工業公司ノリンコ製の自走砲でスラヴィニア軍はこれを主力としている。



「ハンマー1、こちらミコシェ。準備は?」


『こちらハンマー1、いつでも。全車OKです』


「よし、各車5発を連続射撃!」






-同時刻 M72号線-


「おい、なんかどんどんって聞こえねえか?」


「あ?そりゃ戦場だからな!」


96式装輪装甲車の後部スペースに座る隊員達はその音を何かとは知る芳もなかった





『着弾5秒前・・・4・・・3・・・2・・・着弾確認!』




砲弾は96式装輪装甲車をはずれ、横の随伴していた赤十字の白いトヨタのランドクルーザーに直撃した



隊列中央、右の銃座に座っていた坂崎は息を飲むとともに、死臭と金属が焼ける臭いをかいだ



『2発目・・・2・・・1・・着弾!』


今度はM72号線に着弾した



坂崎は銃座から中へ入り、仲沢と頭をぶつけた


「あだっ!」


「いたぃっ!」


しばし沈黙し、すばやく坂崎は「すまん」と謝る



そして運転席の赤坂へ話しかけた


「遠距離砲撃だ。砲声と着弾から見てそこまで遠くはない。だがココを狙っている。本部へ状況を確認しろ」


「了解」



-スラッコーPKF統括本部-


「こちらJGSDF」


『こちら第10師団の赤十字護衛部隊!敵から攻撃を受けた!』


担当官の勝呂茂一2佐はすぐにマップを出した


「砲撃地点は?」


『おおよそだが・・・おい、坂崎!どの程度だ?・・・・わかった。聞こえるか?位置は南!50km圏内の山!通信終了!』


勝呂はすぐに位置を割り出した



「・・・グラヴェンズかニキョリカ山岳だな・・・よし」



彼はPKF空軍部隊へのホットラインをつないだ



-エストニアNATO空軍基地-


『こちらJGSDFの勝呂中佐(2佐)、航空支援を願いたい』


「こちらイタリア空軍のアルナンド・ペドロルロ大佐だ、状況は?」


『わが部隊の赤十字護衛部隊がスラヴィニアの砲兵に攻撃を受けている』


「よし、座標は」


『不明、しかしグラヴェンズもしくはニキョリカ山岳と見られる』


「了解、すぐに援護機を回す」




イタリア空軍機、F-16ファイティングファルコンは滑走路に3機並んだ




-M72号線-


「また砲撃音だ!」


坂崎は叫んだ


ひゅぅぅぅぅと音がし、目の前へ墜ちた



ドォォン!



車の中にアスファルトの焼ける臭いが充満した





偵察していたスラヴィニア陸軍の隊員達は砲撃に歓喜した


「これでいけるぞ!」


10人の偵察隊員は手に持つAK-103の安全装置をはずした






砲撃はほとんど外れ・・・いや、わざとはずしたのか?


坂崎は落ち着いて考え始めた



「・・・敵だ、敵が来る」



そうつぶやいた


「え?敵?敵が来るんですか?2曹」


池田の声を無視して坂崎は銃座へと戻った



M2を触り、ジャキンとレバーを引く


M72号線の脇は丘陵地帯だ。しかも木が生い茂っている


右で何かが動いた。


坂崎は回転銃座を右へ回す


そこには敵、スラヴィニア軍の制服を着た隊員が10名ばかし、走ってきていた


坂崎は迷うことなく、M2の押しがねと呼ばれる引き金に当たる部分を押す



ドドドドドドドド!


銃声は彼らのアーマーを切り裂く


ロシア語で何かが聞こえてくる


坂崎、彼は知らない





「敵の攻撃!退避!」


まず最初の掃射で工兵のヤロスラフ・マーギン上等兵がなぎ倒された


次に分隊支援火器を持つユスリフ・コロコフ1等兵も頭を粉々にされる


ヴィクトル・ウェニスク中尉はこの反撃に驚いた


(アノ砲撃の中、ここまで正確に射撃を!?)


命の危険、そして部下の全滅を恐れ彼はすぐさま部隊に撤収命令を出す




「敵は逃げたぞ」


坂崎はそういって車内へ滑り降り、今度は仲沢の胸と激突した(そんなに大きくはない)


「あぶっ!」


「んくっ!?」



しばしの沈黙


「・・・わぁぁあぁあああ!?」


「ひゃあああ!」


坂崎は胸から顔を離し、顔を赤らめてスマンと謝る


「あっ、いえっ、そのっ」


しどろもどろする仲沢





-グラヴェンズ山第3砲兵隊-


「砲撃の増量命令だ!5発をさらに撃ち込む準備をしろ!」



砲兵達は砲弾のケースを保管所から持ち出して自走砲へと向かう






-グラヴェンズ山より南へ20kmのNATO軍の領空-


「こちらビッター・ピエトロ、コールサインアンジェロ」


「こちらJGSDFの勝呂。援護を頼みたい」


「・・・早速対地レーダーに反応あり。大きさからして大砲だ。攻撃する」




HUDに入力された敵が捕らえられる


70mmロケット弾を装備するこのF-16は対地攻撃に特化されている


「敵を目視で見つけた。自走砲だ」




-グラヴェンズ山第3砲兵隊-


「おい、何の音だ?」ミコシェは聞き覚えのない音に疑問を抱いた


すると砲兵達が逃げ始めた


「お前らどこへ・・・・!!!」



山の向こうから戦闘機が飛んできていた




「はいはーい、こっちみてねー」


赤いトリガーを押すと70mmのロケット弾が8発発射される


ドォンドォンドォンドォンドォンドォンドォンドォン!!



3機のF-16が計24発のミサイルを砲兵隊の基地へ撃ち込んだ


88式155mm自走榴弾砲3台は見事花火を咲かせて砕け散る



「敵撃破、帰還する」





-スラヴィニア共和国陸軍第21歩兵機械化連隊指揮所ポイントズール-


「そうか・・・しかたあるまい。それに赤十字のキャンプにはうちの工作員が入っているらしいしな・・・」


生き残った偵察隊の報告を無線で聞いたラヴェニズクは無線機を置いた


部下のモンショル・ステリネフ少尉がそこへ駆けて来る


「少佐、ラヴィエスカ攻防戦に勝利しました。米軍機甲師団はさがります」


「よし、よかった。Su-25が助かったな」


「はい。これに乗じてわが軍の戦車部隊が駐留に成功しました。他にもPMCが軍事顧問として入っています」


「まずまずの出来だ」




-ポルソー赤十字キャンプ-



「ありがとうございました。仲間は失いましたが、最低限の被害で済ますことが出来ました」


とエミリー・ランドグリーズは答える


「いえ、完全にお守りできなかったことは申し訳なく思います」


「お気になさらず。それでは」


赤十字スタッフを援護した自衛隊はスラッコーの基地へと帰還した。




-1時間後 ポルソー赤十字キャンプ-


そこにはビジネスマン風の男が立っていた


しかし日に焼けた肌が黒いスーツに合っていない


彼はスラヴィニア保安局の工作員、ダニロフ・マックトゥグスキー中佐、通称ハウンド(猟犬)。


彼はこのキャンプである人物を捜索していたのだ。


「・・・見つけた」




そこにはスラヴィニア国財務大臣「リュングルト・ミシェルコネフ」とその一派がぼろぼろの平服に着替えて難民面をしていた










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