恋愛大作戦 LoveWar!
「2日の散策もなぜお前と同じなんだ。まあ嫌いではないからいいけどな。これがあの吉山だったら郡上の川へ投げている」
そんな冗談振りまきつつ2日目
私と坂崎教官はさんぷる工場に訪れていた
「すごいですよ、教官ッ!これ見てください!」
本物と違わぬ食品サンプルに私は目を奪われた
「よかったら作ってみますか?」
工房のおじさんが気をきかせてきいてきた。
「教官、やりましょうよ!」
食品サンプルは蝋細工らしく、ロウをお湯に溶かして作るのだという
「これがキャベツですね」
グリーンのロウが見る見るうちにキャベツの葉へと変わった
「序の口ですよ」
とおじさんは笑う
「カップルさんですからお揃いのサンプルを作ってみましょうか」
カッ・・・・・・!?
「カップルだなんて・・・えと・・・ねえ?教官」
「あ、ああ・・・そ、そうだな。師弟関係ですよ」
なんか断言した!
寂しい!
「またまた照れちゃって」
『違います!』
結局夫婦さんぷるなるエビフライ2本を作らされてしまった
とりあえずケータイに装着した
時刻は昼を過ぎ、おなかが減ってきた
「教官、おなか減りました」
坂崎教官は
「そうだな、何かうまそうなものは・・・あれなんてどうだ?」
お蕎麦屋さんがあった
「いいですね、入りましょう!」
「へい、ざるそばお待ち」
2つざるそばが運ばれてきて、私はそれをすすった
ズズズ、と音を立てて食べる
「おいひぃ!おいひぃですよっ!これっ!」
「そんなに騒ぐな。ガキか」
「ガキです!18ですよ!」
そんな会話でさえ楽しかった
「しかしうまそうな生蕎麦だな。郡上の水で作ったと書いてあったから相当うまいんだろうな」
と、割り箸をパチンと割って教官もズズズと豪快にすすった
「うまいな・・・」
「ごちそうさまでした!」「ごちそうさま」
二人とも同時に食べ終わる
「すみません、蕎麦湯ください」
「はいかしこまりました」
坂崎教官が何かを頼んだようだ
「教官教官」
「?なんだ?」
「蕎麦湯って・・・なんですか?」
教官は目を大きく見開いた
「お前・・・蕎麦湯知らんのか・・・?」
「はい・・・お湯?ですか・・・?」
「蕎麦湯は茹で汁にかつおだしが入った湯だ。それを残ったそばつゆに入れて飲むんだ、うまいぞ?」
へぇ・・・私ははじめて知った
「物知りなんですね」
「常識だ、常識」
蕎麦湯なるものはおいしかった
飲み終えてお勘定をするとき
「割勘にしましょうよ」
「いや、俺が払う」
坂崎教官は半ば強引に代金をすべて払ってくれた
私の中で坂崎教官を占める部分がどんどん大きくなっていった
「・・・?あれ、なんですか?教官」
橋から人がダイブしている
「ああ、郡上の名物だ。まさか俺に飛び込めとはいわないよな?」
「い、いえそんなことっ!」
すこし濡れた教官を想像したのは事実だけど
途中でアイスクリームをほおばりつつ、私と教官は2泊目の民宿に向かった
「・・・男女で部屋が同じはおかしいだろう」
民宿で私と教官が同室になったのだ
「流石におかしいな」
と里中3尉も同調するが
「まあ坂崎ならまずいことはしないだろう」
と楢木2尉の言葉を皮切りに問題ないという意見が出て私と教官は相部屋になった
「まぁ、その・・・なんだ。何もしないから安心してくれ」
「え、あっ・・・はいっ」
緊張とかの次元を通り越してもう死ぬ!
「仲沢は射撃の腕がいいな。なんでだ?」
「えっ、それは教官の腕がいいからですよ」
「そうか・・・ありがとうな」
「えっ・・・いえ」
気まずい
私が話題を振らないと・・・
「きょ、教官。ご家族は・・・?」
「ん?親父とお袋と弟と妹だ。親父は航空自衛隊、弟は海上自衛隊、妹は技研。親父はF-4で空を翔け、息子は地を駆け、弟は海を駆け、妹は兵器を作る。
素敵な軍人一家の完成だ」
「すごいですね・・・」
「そうか?お袋断固反対だったけどな。それで仲沢、おまえは?」
私に話が振られ、すこし動揺した
「えっ、私ですか?」
「俺の聞いといてお前は言わないのかー?」
すこし悪戯っぽく聞いてきた
「いいますよ!・・・お父さんにお母さんです。核家族ですね」
「そうか、なるほどな。そういえばなぜ自衛隊を目指したんだ?」
そんな答えに困る・・・
「私・・・地元が岐阜県で航空自衛隊基地が近かったんです。それでバイト先に来る自衛官の方にあこがれて。空自は性にあわないしどうしようかと思ってたんですが、
とりあえず陸自を受けてみようと思って」
「お母さんは反対しなかったのか?」
「お母さんは賛成してくれましたよ。国防だし、公務員だしって。でも辞めたらお見合いさせる気らしいですけど。私、絶対やめません」
「おいおい、結婚できなくてもいいのか?」
「大丈夫ですっ!教官こそどうなんですか?」
「うっ・・・いないな、相手は」
「そろそろ寝ようか。かなり喋ったな。かなり仲が深まった気がするよ」
「そういってくれると嬉しいです。おやすみなさい」
寝れるわけないじゃん
「きょ、教官?もう・・・ねちゃいましたかぁ?」
すこし小声で声をかけてみた
「ん・・・何だまだ起きてたのか?」
「すこし暑くって」
緊張の意味で
「・・・ふぅ。夜風にでも当たるか?」
ベランダにはいった
夜風は私の髪の毛をなびかせる
「あぁ、もう少し髪長ければなあ」
「?どうかしたか?」
「髪の毛が短い人と長い人、どっちが好きですか?」
教官は指を顎において考えるポーズをした
「俺はその・・・なんだ、内面を気にするからな。外見がどうであれ、優しい奴なら誰でもいい気がする」
私はすこし自信が湧いた
翌日最終日、最後の目的は帰宅だ
明後日まで休暇があり、明日まで入れない。
全員が実家へ帰宅することが出来る
そんな矢先
-帰宅バス車内-
一本の電話が私のケータイに入った
表示パネルには「お母さん」と入っている
通話ボタンを押して耳元に近づけた
「あ、もしもしお母さん?今日の夕方にはそっち行け-」
『あ、凛!?ごめんね!今日だってのすっかり忘れてて!』
「あ、ううん気にしないで。ご飯ぐらい自分で・・・作れないけど、外食とかで済ませればさ-」
『いや、お母さん今家にいないのよ』
「はぃっ!?どこにいるの!?」
『・・・北海道テヘッ♪』
「テヘッ♪じゃないよ!私どうするの!?」
『誰かに泊めてもらって。じゃあばいばい~い』
「ばっ、バイバイじゃないよ!お母さん!?お母さん!?」
ツーツーツー
・・・ヤバイ
帰りは流石に教官の隣ではなく、隣はナナだ
「凛、家は入れないの?」
「うん、ナナぁ、泊めてぇ」
「嫌」
「えええ、なんでぇ!?」
「私だって彼氏と過ごしたいし、私の彼3○なんて柄じゃないもん」
「ちょっ、ナナ!?」
ナナはいろいろと吹っ飛んでるからダメだ
加藤陸士長は!?
「私見てもダメ、私も・・・彼・・・と・・その・・・」
ナナが突っ込む
「卒業おめでとうございます!」
「ば、馬鹿野郎!」
ええ、もう誰がいるのぉ?
里中3尉は・・・
だめだ、あんな人と泊まったら酔わされてしまう
「凛、凛」
ナナが呼んだ
「何?ナナ」
「坂崎2曹んとこは?」
・・・・・
「ハァァァァァァァ!?」
大声を出してしまい、バスの皆が振り返る
気恥ずかしくてそのまま座席に引っ込んだ
「なんでそうなるの!?」
「なんでもいいじゃん。女性隊員はもういないし・・・」
「うぅ・・・」
バスは愛知県名古屋駅に到着し、全員がそれぞれの実家や持ち家に帰っていった
「あ、あの教官」
「?まだ帰ってなかったのか。お前は岐阜だろう?岐阜行きなら直通でてるだろ?」
「じ、実は私家に入れなくて」
「?かぎでも忘れたのか。ご両親がいるだろ?」
「両親もその・・・今北海道で・・・」
「・・・で?」
私は息を吸って答えた
「泊めてください」
「・・・・」
「なにしてるんだ?入れ入れ」
教官は快くOKした。なぜだっ!
教官の実家は旧家といった感じだった
「ただいまー。お袋、お客もいるからお茶出してくれ」
「あっ、いえそこまでは!」
家の中から女性が出てきた
「修一・・・?まさか婚約相手?」
私は顔が溶けるんじゃないかってくらい暑くなった
「ばっ、違う!後輩だ!後輩!家に帰れないから今日1日泊めてやるんだよ」
「そぉ?」
「切れるぞ」
「おおきぃ・・・部屋ですね」
「そうか?まぁ、ここが客間だ」
6畳の部屋
テレビはないけど、広くて暮らしやすそうな部屋だった
「親父は事務職でな、空自の。帰りは遅い。弟も休暇だが、向こうは彼女とよろしくやってるらしい」
私は座布団の上にぺたんと座る
「私来てもよかったんですか?」
「あ?うん。問題ない。・・・あっ、そういえば理奈が今日帰ってくるな・・・」
「理奈?」
「ああ、俺の妹だよ。技研の」
「なるほどぉ」
午後6時30分
一台の車が表に止まった
「理奈さんかな?」
すこしすると教官が外へ出て行く音がした
言葉が外から聞こえるが何を言ってるかは分からない
しばらくすると私の部屋に身長の高い、私より美人で・・・年上の女性が入ってきた
「兄貴の彼女ぉ?」
「えっ!?あっ、ち、違います!」
「おい理奈!」
入ってきてすぐに教官も入ってきた
「かわいい、いくつ?」
「えっ、じゅ、18歳です」
「へえじゃあ新しい隊員さん?兄貴やるじゃん」
「馬鹿!ちげぇってんだろ!さっさと自分の部屋に行け!」
「すごい妹さんですね」
「あれで22だ。まったく。だが技研の有力新人とまで言われているらしいからなあ」
7時ごろに車がまた来た
教官のお父さんだ
「修一の後輩ですか、息子がお世話になっております」
「い、いえ!こちらこそ」
お父さんは教官そっくりだった
ご飯をおよばれし、自分にあてがわれた部屋に戻った
「はぁ、緊張する・・・」
しかし気づくと寝てしまっていた
翌日、お世話になったので皆さんに私は挨拶した
「ありがとうございました」
お母さんと妹さんが
「次来るときはうちの息子を貰ってね」
「兄貴なんて売れ残りでよければね」
教官が憤慨し
「お前ら仕送りしないぞ!」
と叫んだ
お嫁さんかぁ・・・えへへ
『えぇぇ?なんもなかったわけ?』
電話越しにナナが驚きの声を出した
「で、でも仲は深まってるよ!」
『仲ってあんたねえ・・・まあいいや。やんっ!ちょっ、ダメだって!』
「どうしたのナナ?」
『彼氏、今起きて・・・ちょっ!朝からは疲れるって!ごめん切るね!』
・・・ナナはなんか、もういいや
私はすこし満足しつつ、今日から入れる基地の女子寮へ戻った
東ヨーロッパの小国、エストニアの東に位置するこの国は1991年まではソビエト連邦の領土だった。
ソ連崩壊後、独立したこの国は「スラヴィニア共和国」という名を得た。
共産主義体制を選び、1998年までは傾きかけつつものどかな牧草地帯広がる国だった
しかし1999年にスラヴィニア開発機構が大規模なレアメタル鉱山を発見し、さらに2000年には牧草地帯からダイヤモンドが発見された。
これを皮切りにスラヴィニア共和国は力をつけ始めた。
ガスパイプラインも発見され、さらに力をつける。
政府はハト派が歴任したため戦争は起こりはしなかったし、隣国も攻め入りはしなかった。
しかし軍部の軍事費が政権を圧迫し、国民は貧困にあえいだ
時の書記長「プーシキン・グァツォネフ」は軍事政権打倒を掲げ、政権から軍人を一掃しようとした。
しかしかえって軍部の反感を招く結果となった。
2010年7月25日 スラヴィニア共和国首都ヴルモフ
軍部は軍事クーデターを起こし、主力戦車<<MBT>>「T-90」戦車が街の通り<<グラスネクツ通り>>を蹂躙した。
ハト派のプーシキンは直ちに隣国のエストニアに離脱。
軍部は政権を掌握し、後任書記長にタカ派「ミハエル・シュパジェノブスク」将軍が就任した。
スラヴィニア共和国軍はスラヴィニア全土の掌握を画策し、住民の一斉弾圧を開始した。
一部では民間軍事企業の兵員が使用され住民が殺害された。
国際連合はジェノサイド条約にのっとって国連平和維持軍(PKF)を編成した。
しかし各国には思惑があった
「レアメタル鉱山を自国のものに」・・・と
同時にチェチェン紛争を経験した者たちで作られた傭兵派遣企業「ブラソトニキ」などのPMCも鉱山資源獲得に入国した。
日本政府にも参加が打診されていたが、それは断られた。
2010年7月28日、日本政府はスラヴィニア日本大使館員および、鉱山技術者などの日本人救助のため米軍に救助を依頼した。
しかし7月29日、米軍救助機を前に大使館へスラヴィニア陸軍特殊作戦小隊「ボスラヴェキニ」が突入し大使館員と邦人が50人死傷する惨事になった。
救助機が到着する頃にはボスラヴェキニは退却していた。
国際情勢と国内情勢上日本はPKO派遣が「必至」となった