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Japan Force  作者: 坂崎紗葵
最終章スラヴィニアの栄光
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過去の亡霊

話が飛びすぎて申し訳ございません。序盤のみエロ注意。

俺はハンバーグを箸で食べやすいサイズに割いて口へ運ぶ。


「ん・・・うまい」


「ほんと?よかった!」


-2011年10月10日 愛知県守山区-


俺と凛は7月に結婚式と婚姻届提出を終わらせ、基地近くにアパートを借りた。


凛は自衛隊をきっぱりと辞めてしまった。


「よかったのか?」という問に彼女は。


「よかったの」


と答えた。



俺は中央情報隊の解散後は第10師団に籍を置きっぱなしにしてある。もちろん出勤も。


「ああ、今月のお給料です、奥様」


俺は銀行で下ろした生活費を茶封筒で渡す。


「おつかれさま、旦那様」



「ふぅ・・・」


晩飯の後、バストイレ付きの部屋なのでシャワーを浴びる。



すると狭い個室に凛が丸裸で入ってきた。


「な、ちょ・・・」


「肩おもみします♪」


胸が背中にあたっているというのに、大胆にも抱きつきながら肩を揉む凛。


「なんか、大胆になったな?」


「夫婦だし♪」





-3週間後-


「ただいまー」


「おかえりなさい」


俺が仕事から帰ってくると凛が玄関で待っていた。


「どうした?」


「あの・・・あのね?」


「ん?生活費足らなかったか?」


凛は首を振ってポケットから体温計のようなものを出した。


「風邪引いたのか?」


「ちーがーうの!これ!陽性なの!」


俺はその言葉でようやく気がついた。これは妊娠検査薬だ。


「にん・・・しん?」


「そうっ!」



俺は凛を抱きしめていた。


「え、ちょ、なにっ!?」


「俺に子供が出来るのかもしれないなんて嬉しいじゃないか・・・!」



後日、一緒に産婦人科へ行くと妊娠していることがわかった。


俺と凛はうれしさで胸が一杯だった。


両方の親にすぐに報告し、10ヶ月彼女を支えることに俺は専念することにした。


柑橘類が食べたいといわれればすぐに買いに行ったし、やることもすべて。


全く、苦ではなかった。



妊娠、それはつらいものだけど。愛している人のこどもが生まれるのは嬉しい。


修一は私のできない家事や、余った仕事を片付けてくれた。


出産予定日は来年の8月中旬。それまで、がんばろう・・・!



-せかいのどこか-



私は囚われの姫。


私は外に出れない。




「あああああああああああ!!!!」


「五月蠅いぞ!」


檻をガンッと警棒で叩く音。


叫んだ人物は番兵の行動で黙る。


「くそ、最高に嫌な仕事だ。こんなんぶっ殺せばいいのによ・・・」


番兵はロシア産の煙草をひとつつまんで錆びたライターで火を着けた。


「そのくせ、犯せねえと来たもんだ・・・ったく」





-2011年12月10日 新スラヴィニア民主主義国-


敗戦から1年近く過ぎた。


この国は戦後にロシア連邦による強制的な統治が行われた。


財政逼迫やロシアが利権を得るための金銭で国内は増税を重ねた。


スラヴィニアが所有した鉱山や油田はロシア連邦かどさくさにまぎれて入手した民間企業が独占した。



『こちらZV駐屯地、イワノフです!』


「こちら本部、どうした」


『民間人が大規模なスクラムを組んでこちらに接近しています!武装しています!』


「了解した。直ちに1個分隊を派遣する」



民衆の怒りは爆発した。


「こちらカサトーカ1-1。カサトーカ1-2は俺と同じ進路をとれ」


『了解、カサトーカ1-1』


2機のKA-60カサトーカはZV地区、プリャネンチ街区にはいった。


プリャネンチは先の戦争では荒廃しなかったものの、スラヴィニアの有力都市の一つだった。


スラヴィニアは戦後に軍隊が解体されてしまったのでロシア連邦軍が統治していた。


KA-60は街を旋回する。


『こちらカサトーカ1-1。鎮圧部隊をラペリング降下させる』



KA-60はスリリングを着けた兵士たちをヘリから下ろした。



「こちらソーコル1分隊。民衆へ発砲する」


『許可する』



AN-94アバカンを装備した鎮圧部隊は棍棒を持つ民衆に一斉に掃射した。


「人殺しは楽しくて仕方がない」


ソーコル1の隊長は新しい弾倉にリロードした。


「・・・?」



地面が揺れ始める。



街のビルの一つからBMP-1P装甲戦闘車が出てきた。


「IFV!IFVだ!」


BMP-1は主砲の73㎜砲を密集していた鎮圧部隊に撃ちまくった。



『おい、本部!こちらカサトーカ1-1!鎮圧部隊が戦車に蹴散らされたぞ!』


『何?情報を確認したい』


『我が方のBMP系の装甲車が鎮圧部隊を鎮圧した!』



その時、カサトーカ1-1に地対空誘導弾が直撃した。



12月11日、プリャネンチを中心とする複数都市から正体不明の武装集団がロシア連邦軍を攻撃した。




-2012年2月10日 陸上自衛隊のとある基地-


「ここに特殊捜索隊、SpecialSearchForce、SSFの設立を宣言する」


俺はある式典に居た。


式典といっても基地の片隅ではあるが。


中央情報隊解体後、強制調査が出来る部隊を失ったため自衛隊はSSFを組織した。


俺はSSFの指揮官として配属されることになり、第10師団から移籍した。


職場は名古屋だったので住む場所も変えずに済んだ。



指揮官デスクワーク:真賀山洋次1等陸佐


現場指揮官:坂崎修一2等陸尉


小銃手:片山直人2等陸曹


小銃手:篠原ミサト3等陸尉(女性)


狙撃手:石塚兵悟3等陸曹


分隊支援火器:伊埜浩志2等陸曹


衛生兵:姉坂智可1等陸曹(女性)



「全員敬礼!」


全員が敬礼をする。






「んーと、修一今日は午前中だけだよね。お昼ごはん考えないと・・・」


坂崎凛は昼の献立を考えていた。


「んー、生ラーメンでいいかなあ」


ドアのカギを開ける音がした。


「あ、修一おかえりなさい」


「ん、ただいまー」


制服を着て帰ってきた修一は制帽を服掛けにかけて背広もかける。


「SSFのメンバーって今日発表だったんでしょ?どうだったー?」


凛が問うと修一は


「ああ、特殊作戦群の精鋭二人、地方からの精鋭で全員かな。女性隊員は二人か」


「浮気しないでよ?」


すると修一は凛に後ろから抱きついて


「俺はお前だけ」


「もー」



惚気を続けるばかりだった。



夕方4時になって凛は少し不安になった。


「私の誕生日忘れてないかな・・・」


修一はパラパラと参考書をめくってノートに書き取っている。


「聞けないなあ」



修一は参考書をぱたんと閉じて凛に向かっていった。


「よっしゃ、誕生日だしなにか食いに行くか?」


凛は嬉しくなった。


「覚えててくれたんだ!」


「忘れるわけ無いだろー。ほい、プレゼント」


修一が差し出したのはペンダント。


「あ・・・」


名前が彫ってある。


「2年も前に上げたやつだとダメだろ?付け替えて」


りんは首から下がっている銅のネックレスを指で触った。


「ありがと」


凛は新しいものに付け替えた。






ロシア連邦軍はある情報を突き止めた。


膨大な軍事力を持っている反政府勢力はAIFから横流しされた武装を使っているらしいということを。


ロシアはNATOへ責任を転嫁し、NATOへの軍事協力を仰いだ。


ロシア軍はすでに100人の兵士が死亡しており、スラヴィニアを抑えるのは至極難しい事態になっていた。



-2月19日-


「SSFに指令が?」


「うん。スラヴィニア。懐かしいだろ?」


坂崎修一は名古屋市にあるSSF司令部で作戦指令書を受け取っていた。


「新スラヴィニア民主主義国(NSDC)、ロシア連邦軍ともめているそうですね」


「ああ、ニュースにはならんがすで爆撃機が武装市民を爆撃している。そこで我々はスラヴィニアに入って情報を収集する。そこで土地勘のある人間を助けてこい」


「?誰ですか」


「ラヴェニズク・クラフチェネンコ元少佐」


「・・・急性心筋梗塞か何かで死んだと聞いていますが?」


「そういうことになってた。現在彼はNSDCの僻地トラヴァントにある軍の刑務所に収監されている。彼をあそこから連れ戻して、武装市民軍とスラヴィニアを解放するのが今回の作戦だ」


坂崎は少したじろぎ


「しかし、それではロシア連邦と間接的に戦争になりますよ」


「ああ、問題はない。実はこれはロシア側の希望でね」


「・・・は?」


坂崎の疑問に真賀山は答えた。


「スラヴィニア財政のひっ迫は目に見えていて、スラヴィニアが供給する化学燃料だけじゃロシアに恩恵があるどころか赤字らしい。


ロシア連邦軍は現在NSDCの新軍隊を組織して対応に当たらせているから君たちが戦うことになるのはNSDCの正規軍だ。ロシア側は彼らに防衛を任せるだけ」





-3月1日 新スラヴィニア民主主義国領内 メーチ山岳地帯-


アメリカ陸軍のAH-6リトルバード2機がブリザードの中を飛ぶ。


「今日は異例の雪だそうだ」


アメリカ陸軍のパイロットが操縦桿を握りながら口に出した。



俺たちは冬季迷彩に身を包み、支給されたAK-74Mを白い袋で包んである。


バラクラバをつけてゴーグルをはめている。


「目的地まで20秒。準備」


ヘリパイロットの合図で俺はAK-74Mのセレクターをセミオートにカチリと変える。




ヘリは山岳の平らな場所に着陸した。


「行くぞ」


「了解」


俺の合図で同乗していた篠原3等陸尉と石塚3等陸曹が降りる。


俺は首元の小型マイクのスイッチを入れてもう一機のヘリに合図する。


「2-1着地。そちらのLZ(ランディングゾーン:着陸地点)を確保する。少し待て」


『了解2-1』



「行くぞ。LZを確保する。警戒しろ」


俺は雪を踏みながら山を降りていく。


俺達を載せてくれたヘリは一度空へと上る。



山を20m降りたところに平になっている山肌を見つけた。


「石塚、ここから下を見てくれ」


「了解」


石塚はSVD狙撃銃にサーマルスコープを取り付け、バイポッドで山肌に銃を固定する。



俺と篠原は山を下へ降りていく。



「材木貯蓄施設発見。敵哨兵1名。俺がやる」



俺は無線のスイッチを切って腰から6kh4銃剣を取り出す。


ナイフを逆手にとって敵に近づく。



肩にある部隊章にはロシア語で「新生スラヴィニア軍」との文字。


俺は首筋にナイフを突き立てて奥へと押しこむ。


「が・・・あっ」


息が漏れる。


敵を雪の地面に触れぬように雑木林の中へ捨てる。



「クリア」


敵の懐を探り、ロシア製の手榴弾を2つばかり拝借する。


「大丈夫ですか?坂崎2尉」


「問題ない。大丈夫だ」


俺は血のついたナイフを雪で拭いとって腰の鞘にしまう。



『こちら石塚。LZゾーンからそちらへ迫る敵を発見。身を隠してください』


「了解。篠原、そこの雑木林に入るぞ」


「了解」




俺は雑木林に伏せた。


ざくっ、ざくっと足音が聞こえる。



『敵2名。始末します』


「頼む」


SVDのサプレッサーがプシュップシュッと音を立てて二人を倒した。



「LZ確保。確保した」



2機目のAH-6が片山2等陸曹と伊埜2等陸曹、姉坂1等陸曹を下ろす。



「我々は崖下にあるトラヴァント軍事刑務所に入りラヴェニズク・クラフチェネンコを救出する。刑務所には横から突入する。その前に発電ケーブルを断絶して停電させる」


「どこにあるんですか?」


と、片山。


「そこの材木貯蓄施設だ。1本の太いケーブル」


俺が指さすところには黒い太いケーブルが地面を這っている。


「了解」




ケーブルは電気が走っているため、絶縁グローブと絶縁体付きのハサミでちょん切る。


「完了」





トラヴァント軍事刑務所は旧ソ連時代に建てられたもので元はドイツ国防軍や武装親衛隊などを収監する目的で建てられた。


現在、先の戦争で戦争犯罪者として処分された将兵や脱走兵などが収監させれいる。


規模は小さく、コンクリートの刑務所(2F建て)、コンクリートで出来た詰所(平屋)、そして車両置場。


車両置場には申し訳なさそうにBRDM-2偵察装甲車が2台止まっていて、ヘリポートには1機のMi-8MTVがちょこんと座っている。



坂崎は狙撃手と援護として石塚と姉坂を狙撃位置に送らせ、残った隊員で攻撃をすることにした。



「AH-6隊、攻撃頼む」


『Copythat』



坂崎の指示でヘリ2機は刑務所の詰所へハイドラ70ロケット弾を発射する。



刑務所全体に警報が鳴り響く。


「突入」


柵をワイヤーカッターで切って刑務所に坂崎達は突入する。



新生スラヴィニア陸軍兵は詰所を飛び出した。



ダダッ、と短い単発音で一人目の兵士が倒れる。


二人目は外に居た白ずくめの男を見てぎょっとし、弾丸に倒れた。



分隊支援火器を持つ伊埜2等陸曹がRPK-74Mを詰所の窓を割って中に銃口を差し込んで撃ちまくった。


「行くぞ。石塚、これより内部へ入る。務所に近づく奴は全員撃て」


『了解』




俺はAK74Mを右手で持って右足でドアを蹴破った。


一人の警備兵。



警備兵は腰へ手を伸ばそうとしたので足をAKで撃ちぬいた。


「ガアアッ!」


俺は警備兵に近寄り、ロシア語で質問をする。


[ラヴェニズク・クラフチェネンコはどこだ]


兵士は笑い


[そんな奴知らないな]と答える。



俺はAK-74Mの台尻で銃創を押す。


[アアアアアッ!くそ、糞野郎!]


悪態をつき、涙を流す兵士。


[なら言え。何処にいる]


兵士は涙を流しながら


[2階の奥だ、くそっ!]




俺たちは兵士をおいて2Fへ入る。


「片山、先へ」


「了解、隊長」


片山はAK-74Mを構えて2Fへ上る。


『クリア』



無線の声に俺たちは反応して2Fへ上る。



『こちら石塚、現在4人目を始末した。狙撃位置をそろそろ変える。送れ』


「わかった。注意しろ」


石塚の狙撃地点変更連絡を受けて俺は伊埜と片山に入り口の防衛を指示した。




ドアはステンレス製で、あまり重厚ではなかった。


俺はドアを叩いて


[ラヴェニズク・クラフチェネンコ少佐は?]


と、ロシア語で聞いた。


すると中から


[俺はここにいる・・・ここに]


とか細い声が帰ってきた。


俺はAK-74Mをドアに向かって撃った。



鍵が壊れ、ドアノブが回る。




中には一人の男がいた。


だが1年前に見たあの自信と若さに満ち溢れた姿ではなく、顔は無精髭でおおわれて少し筋肉が落ちてスラリとしていた。


[痩せたな]


俺の問いかけに


[俺にあったことが?]と、か細い声で返す。


俺は正直に答える。


[1年前、国境で逃げるお前を止めた]


男は目を見開いて


[あの時の日本人か・・・!特殊部隊とは出世したものだ]


[いや、それはいい。俺たちはお前をここから出して反乱軍の指揮を取ってもらうために来た]


男は首を傾げる。


[反乱?]


俺は答えた


[敗戦後、ロシアの圧制に耐えきれなくなったんだ。第2次スラヴィニア動乱だ]


ラヴェニズクは髭を触り


[誰が希望した?]


[反乱軍の指揮官らしい。とにかく来てくれると助かる]


ラヴェニズクは答える。


[カミソリと、俺の軍服を持ってきてくれ]
























































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