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Japan Force  作者: 坂崎紗葵
第3章中央情報隊第2小隊
27/32

矢部宏和の答え

物足りないかもしれませんが、どうぞ。

-アフガニスタン 首都カブール-


仲沢凛の陸上自衛隊第2小隊とアメリカ海兵隊のアルファ2-1第1分隊はカブールに侵攻中のAIF軍を叩いていた。


ビルのひしめくカブールの一角、海兵隊のM1A1戦車とその後方に凛たちの歩兵部隊。



池田は89式小銃のマガジンを脱着して異常がないかを見ていた。


「自衛隊が戦争に駆り出されるなんてなー。な、仲沢」


「う、うん」





ロシア語がその遠くで聞こえていた。


4階建てビルの屋上。


「ミャシャコグ、配置についた」


『了解』


男はバイポッドを取り付けたSVD狙撃銃で下を狙っていた。


「目標発見。アメリカ兵と日本兵だ」


『了解。少し待て』



男はスコープの倍率や、手の汗を拭いて待った。





(狙撃手、1。ほかなし)


(了解)



二人の男は狙撃手のいるビルに居た。


手にはサプレッサー付きのSIGP220。


ハンドサインで指示を送り、片方の男がナイフを出した。



ドアをゆっくりと開けてビルの縁にいる狙撃手に近づいた。



「やらせねぇ」


日本語でそうつぶやき、うつぶせの狙撃手の胸ぐらに手を入れて顔をこっちへ向けさせて首へナイフを差し込んだ。



「クリア」



坂崎修一は血のべっとりとついたナイフを自分の倒した敵の服で拭きとった。


「坂崎、狙撃しろ」


「了解」



坂崎は死体からSVDを剥ぎとって構えた。


スコープには凛がいた。


「・・・凛」



真賀山は坂崎に


「後であわせてやる。だが、まずは彼女を守れ」


と、つぶやいた。


「よし、まずは路面。IED爆薬が見えるか?」


坂崎はスコープを覗いて爆弾を探した。


小さな箱状のものが見える。


「あの箱か?」


「そうだ。撃て」


坂崎は引き金を絞った。


ダンッ、という狙撃銃の軽快な発射音と7.62mm×54ラシアン弾はIEDを撃ちぬいて起爆させた。




ドガァーン!という大きな爆発音は部隊の進みを止めた。


「え、何・・・?」



凛はただ困惑した。



「よし、上出来。次は狙撃手だ。向かいの建物、内部の3Fだ」


真賀山は双眼鏡を覗きながら坂崎に指示をした。


「見えます」


「撃て」



坂崎は息を整えてPSO-1スコープのレティクルに敵を収めた。


タンッ。




「こちら斥候隊、敵殲滅。次のポイントに移ろう」


『了解』


真賀山の無線でAH-6リトルバードが接近する。


丸い機体側面には「BEC」の白文字がある。


ヘリはビルの屋上に乗り付けて坂崎たちを回収した。




「改めてよろしく、坂崎さん」


「よろしく、ええと・・・」


女は答えた。


「アリーナ・ナビトフスカヤ、よろしく」


差し出されたのは黒手袋の手だった。


坂崎は手を握り返す。


「SVDね、私にくれないかしら?」


坂崎は持ってきてしまった狙撃銃をアリーナへ渡した。


「ん、ありがとう」


この機内にいるのはアリーナ以外見知っていた。


パイロットは


「よろしくー、しゅーいちくん」


「いいからちゃんと飛ばせ」


「はーい♪」


ケイラー・レブリアンズ、だった。


彼女は多彩というかもうおかしかった。


「BECに入社したのは戦いを続けるため。それだけ」


そう彼女はいっていた。



「最終目標は日本人とアラブ人の始末ね」


アリーナはSVDのマガジンを見つめながら口に出した。


『こちら2番機、1番機どうぞ』


ひどく訛った英語が聞こえてくる。


ケイラーは無線に


「汚い英語しゃべんなヴォケ!」


と悪態をつく


するとロシア語で何か返答があり、アリーナがぷっと吹き出した。


そして何かロシア語で返答した。


すると無線の主はまたひどい英語で


『すまない、おらはロシア人でな。日本人に変わる』


無線がガサッと音を立てると


『こちら赤坂、聞こえてるな?敵はバザールの一角にあるカフェで商談をやるらしい。大方逃げる手はずだろう。バザール付近にはもともと反政府系ゲリラしかいない。自由射撃地帯だ』


赤坂は続いて


『1番機は下に降りろ。2番機が機銃掃射と支援を行う』



バザールが見えてきた。


その近くでは黒のランクルに乗ったBlackEagleCompanyの社員が制圧準備をしていた。


『降下!』


ヘリは思い切り高度を下げ、バザールの中央に着陸した。


「いけいけ!」


坂崎はM14EBRを持って外へかけ出した。





耳のインカムに敵はそこから真っすぐ進んだ建物にいると聞こえた。


俺はただ走った。


目標の建物の中には見知った男が幽霊を見たかのような顔をしていた。


「おどろい・・・た。坂崎くん、生きてたのか」


俺は窓ガラスを叩き破って中にはいった。


「動くなよゲス野郎」


「ひっどいなぁ」



矢部の足元にはすでに死体があった。


「アミール・ヒーディン?」


矢部は首を振り


「ウスリーノフ・シュタイコビッチ。知ってるだろ、そこのロシア女は」


アリーナは近寄って死体を見た。


「なんてことだ、ってか?アミールはとっくにアフガンを離れた。そして俺もだ」



矢部は思い切り走った。


俺がM14を構えると床下が爆発した。


「くそっ、トラップだ!追おう!」



俺はM14を背中に背負ってPDWのMP7を出して走りだした。






考えろ。考えろ。


ああ、いい囮がいる。



矢部は裏に停めておいた野戦バイクに跨り、エンジンをかけた。


そして走りだす。



「くそっ、バイク!」


坂崎は矢部の逃げる背中を見ただけだった。



『乗って!』


バタバタと空からは音が聞こえ、ケイラーの運転するAH-6が着陸した。


『こちら2番機、バザールに敵が集まってきた。脱出しろ』




高いエンジン音を鳴らすバイクは米海兵隊の戦車の横を猛スピードで滑り抜け、陸上自衛隊の小隊の前に迫った。



矢部は目標を見つけ、片手を出してかっさらった。


手に収まる人物は一瞬過ぎて訳がわからなかった。




バイクはそのまま行き止まりに差し掛かった。



俺はM14にスコープを載せて矢部を狙った。


「1発だ、1発で終わらす」



そして俺は見た。


矢部の隣に凛がいるのを。




「凛ッ!?」


『はーい、坂崎くん残ねーん。凛ちゃんはここで死にまーす』


「ふざけんなてめえ!」


坂崎はヘリのヘッドセット越しに怒鳴った。


『ほーら、ちゃんと当てないと死ぬぞー?』


矢部は自身があった。


この女を盾にする。


もしアイツがあとすこし待って撃たなければ後ろの壁を乗り越えて逃げる。


この先はAIFの支配下だ。



凛はこの男が、自分の彼氏をあんな目に合わせたのだと理解した。



上空のヘリから銃を構えているのは修一なのだろうか?



凛は決意した。修一ならやれると。



「・・・!」


俺は凛の手の人差し指が地面を向いて手を上下に動かしているのが見えた。


「下がるっていうのか・・・!」


そして手を開いて指を一本ずつ閉じていった。


「カウント・・・!」


俺はM14を握り直した。




「気づいて・・・!」




凛は思い切りしゃがんだ。


矢部の腕からすっぽりと抜ける。



坂崎は撃った。


思い切り撃った。




「ああ・・・・」


矢部は視界が赤くなるのを見ながら倒れた。



坂崎は命を消していく矢部のそばにすわった。


「・・・おまえは・・・いい部下だ」


「お前の部下じゃあない」


「・・・ふん。俺の目的は金だったと思うか?」


「・・・ああ」


「違うな・・・俺はただこの世界を壊したかった」


「・・・?」


「気まぐれさ・・・・は・・・・は」






-AIF軍、撤収か NATO軍被害軽微-


新聞の一面に乗ったのはこれだけだった。


AIF軍は矢部が死亡し、アミール・ヒーディンが消えたあと実態が明らかになった。


ほとんどが傭兵だったのだ。金のもらえなくなった彼らはバラバラに消えていった。


しかしAIFに取り入った武装集団はその余った兵器を奪い取って各地への潜伏を行った。





「私ね、結婚したい」


「・・・え?」


坂崎は自宅の自分の部屋で凛がそういうのを聞いた。


「だってあと1年って・・・」


「いつ死ぬかわからないから・・・」


「あ、ああ」


「だから」





次回予告。


忘却の彼方へ葬られた姫、助けるのは葬られた王子。


次回「葬られた王子と姫」

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