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Japan Force  作者: 坂崎紗葵
第3章中央情報隊第2小隊
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国際連合安全保障理事会決議1973 UNSCR1973

-1月20日 愛知県名古屋市守山区守山駐屯地-


「え、誕生日?」


「うん」



俺は89式小銃の分解整備をしているときにその話を聞いた。


「いつ?」


「2月の10日だよ」


なんと凛の誕生日は2月10日らしい。


「何か欲しいものは?」


俺が油を指していると凛は


「うーん、愛?」


俺は思わず油を注ぎ過ぎた。


「うわっ・・・・なんだって?」


「だーかーらー、最近ふたりきりになれないしー・・・」


「よしよし。じゃあその日は有給とろうなー」




-1月22日ソマリア東部-


「傭兵部隊の集積終了しました」


「明細は?」


「はい。東欧の兵隊がほとんどで、ロシア語で問題ないかと。一部フランスとアメリカ、アフリカ系が居ますが」


「東欧の明細を見せて」


女、アリーナ・ナビトフスカヤは元GRUの現地作戦指導員であり、経験が優れている中年女性だ。


「ロシア連邦より50人。ちらっと見ただけで40後半と30が多いわね。ソ連崩壊の異物達。ウクライナからもすこし。スラヴィニアも来ているわね。パイロットが多いから全員雇用して」


「はっ」


「フランスとアメリカーナはあわせて10人。アフリカ系は信用ならないわ。切って」


「はっ」


ソマリア東部の街、かつてアメリカ軍が支援していた街でもあるのだが長年の内戦でゴーストタウン化していたのだ。


現在、ひとつの組織が統治下においている。


「武器類はいいかしら?」


「ええ、AK-74Mが人数分近くあります。あとはRPG-7とRPK-74が少し」


「兵器は?」


「今回は使用目的ではありませんので調達はテクニカルにとどまってます」


「ありがとう、同志ウラディミル」



アリーナは軍靴をカツカツと鳴らしてコンクリートの建物を上がっていった。


元々はホテルとして栄えていた施設だ。


「中佐、中佐ではないですか?」


「?」


アリーナはリクルートルームという傭兵の登録所を横切ったときに呼び止められた。


「お忘れですか?スペツナヅ第3ヴォーク(狼)分隊のころ一緒にいさせてもらったグルーニン・ジェシュトノフであります」


アリーナはその名前に聞き覚えがあった。


「ジェシュトノフ中尉・・・?」


「そうであります」


ジェシュトノフは綺麗な敬礼をした。


「変わった・・・わね?」


アリーナはジェシュトノフの顔についた大きな傷を見ていった。


「ああ、これはちょっとグルジアでヘマを・・・」


アリーナは彼と10年前、チェチェン紛争時によく作戦を遂行していた。


「中佐殿もここへ?」


「いいやグルーニン。私が責任者だ」


「なるほど・・・」


「それより他に分隊のものは居ないのか?」


「中佐がやめたあと、ヴォーク分隊はチェチェン紛争で壊滅しました。生きていたのは私とドラガディ2等軍曹だけです」


アリーナはかつての同胞たちの末路を知らなかった。


「そうか・・・」


「お気を落とさず。ドラガディ、あれは私の妻です」


「そんな関係に?」


「お恥ずかしい限りで。それよりアフガンの英雄、ドミトリー・パブチェンコ中佐の噂は聞きましたか?」


「いや、なにか?」


「彼は現在PMCに入社しているそうですよ。アメリカ資本の」


「雇えるのか」


「いえ、彼はソビエトに見放された人物ですから」


「なら有益ではないな」


「しかしアフガン派兵の兵士たちは多いようですね」


「ああ、かなり。お前には期待しているぞ」


「ありがとうございます」



アリーナは懐かしの戦友に敬礼をし、階段を上がった。


「お呼びですかウスリーノフ同志」


「同志アリーナ、仕事の遅い女は好かん」


ウスリーノフ・シュタイコビッチはKGBでも作戦室の出で、現地指揮官であるアリーナとは犬猿の仲だった。


「は、以前率いた部下にあったものですから」


「グルジアで名誉負傷勲章を授与したグルーニン・ジェシュトノフ少佐か。ふん、負け犬に用などない。」


「・・・」


「中佐、私は君の恨む上層部にいた事は認める、しかし統率を優先したまえ」


「そんなつもりは」


「まぁ、いい。それよりやっと兵器は目処が付いた。矢部のコネクションは尊敬する」


「何を?」


ウスリーノフは印刷したファイルをアリーナに投げつけた。



「Mi-24D、Mi-8、Mi-28、UH-1、T-72、T-62、Mig-21にMig-23、Mig-29、Su-25・・・アメリカのF-16まで・・・よく集めましたね」


「艦艇は流石に出来なかった」


「納入は?」


「来年だ。その頃にはSu-24も手に入る」


「アラブからの支援は膨大ですね」


「全くだ。パイプライン確保という名目で集めたが・・・ロシア連邦の国家予算を超えるんじゃないのか」






-2月10日 凛の誕生日-


「ごめんな、夜だけで」


「いえ、別に平気です」


10日朝、俺は有給の受付を却下されてしまった。





「なんでダメなんですか?」


「お前には有給を出さんよう言われちまってなー」


矢部のしわざだった。


その書類には矢部の押印があったのだ。




俺たちは夜に外泊届を出し、凛たっての希望でレストランへ行った。


そしてゲームセンターだ。



「修一、これできる?」


凛が指さしたのはUFOキャッチャーだった。


中には可愛いクマが入っている。


「高校生時代にやったきりかなー」


とは言いつつ、俺はゲーセン通い・・・これは水月鏡華のストレスによるものだったが、とにかくゲーセン通いをした3ヶ月間があった。


当時俺の中で主流だったのは射撃系の筐体で、タイムクライシスなんかがそれに当たる。


それのほかには当時見ていたアニメ、ゲームの景品が入ったUFOキャッチャーをやった。


当時はそれなりに、割りに合うくらい景品を取って売ったりしていた。



俺は100円を筐体に入れ、昔の感を取り戻すことに集中した。


さすがに1回目では無理だった。


「あー・・・」


凛の顔が心に刺さる。


次は取る。


俺はもう100円をぶち込み、ボタンを操作した。





「すごい・・・ありがと」


「気にすんな」


俺は凛の頭に手をやって撫でた。



「外泊ってどうするの?」


「ん・・・ホテルに行くとか?」


「じゃ・・・・あそこでいい」



凛の指差す先は俗にいうラブホテル。


「あー・・・いいのか?あそこで」


「うん」



「休憩ですか?お泊りですか?」


「泊まりで」


「 わかりました」




部屋に入り、ベッドに腰掛ける。


「あー、ほい誕生日プレゼント」


俺はジュエリーケースを渡した。


「これ・・・?」


「たいしたもんじゃないけどさ」




私はゆっくり箱を開けた。



入っていたのは指輪だった。


「え、これ・・・」


修一は照れくさそうに頬をかき


「婚約指輪みたいなもんだと思ってほしいな。給与3ヶ月分じゃないけど」


「ありがと・・・ぅ」


私は気づくと涙が出ていた。


「え、あ、泣かせたか?」


「ううん、嬉しくて」


「でもいつ出来るかはわからない。とりあえず、落ち着いてからな?」


「・・・うん」





「横になって」


「?」


「いいから」


凛は俺をベッドに寝かせた。


「よいしょっと」


背中に凛が乗ると、曲がった背骨がゴリゴリと骨格にハマる。


「軽いな」


「重くなくてよかった」


凛はほっとした感じでそういうと


「マッサージしてあげるね」


「ん、サンキュ」



凛は指でツボを一つづつ刺激していく。


「っつ・・・上手いな。どうしてだ?」


「肩もみくらいするから・・・気持ちいい?」


「ああ、すごく・・・涎垂らして寝たら起こしてくれ」


「わかった・・・」


小さな指はぎゅっぎゅっと俺の方を抑える。


体から余分な息が漏れる。


「ふぅ・・・・」


「ガチガチに凝ってるよ・・・私に言えない仕事って大変なの?」


「まぁ、結構・・・」


「生傷増やして帰ってくるから・・・」


「心配させてごめんな」


「いいの。生きててくれればそれで」


ぎゅっぎゅっ、と俺の体は押されて解放される。





「あの・・・さ?」


「ん?」


凛は俺から降りてなにか言いたげにもじもじしている。


「キスしたい・・・・」



俺は凛に口付けをする。


暖かい感触がつたう。


「んむ・・・っ」


舌を口の中でかららませ、手を絡ませて凛をゆっくりベッドに押し倒す。



私は朝の5時頃に目が覚めた。


横では修一が布団にくるまって寝息を立てている。


ふたりとも服は来て寝ている。


私は右手の人差指で修一の頬をつんつんと触り、反応を楽しんだ。





-3月19日 リビアミスラタ-


坂崎修一はAK74Mの弾倉を確認した。


「アメリカ軍の着弾確認に引きずり出されるとは思わなかった」


真賀山2佐のボヤキにデルタフォースのマット・クレイズ軍曹が反応する。


「俺も嫌だよ。まったく」



俺たちはオッデセイの夜明け作戦に参加していた。


後学のため、という口実だった。



作戦に投入されたのは第2小隊とアメリカ陸軍デルタフォース第1分隊。


リチャード・ヴェルディークとマット・クレイズ、トニー・ガーフィールド中尉。


今回は日本人のほうが多くなっていた。



乗っているのはリビア空軍籍のMi-24で、コードはもちろん偽装していた。


「もともと俺たちだけでいく予定だったのに」


千葉3等陸曹の声にしわがれた声で答えるのはトニー・ガーフィールド中尉。


「俺達だって貴様のようなひよことは行動したくはない」



デルタはミスラタ郊外に落ちたミラージュ戦闘機の救出任務を持っていた。



途中で彼らを降ろし、第2小隊はそのままミスラタ郊外の空軍基地付近に着陸した。



「敵はなし。炎が上がってるだけだな」


「基地内部も見ろとのことですな」


「うん、いこう」


富坂1等陸曹と真賀山2佐の短い会話は終わった。



基地内部には炎上しているMig-23が4機、壊れたSAMトレーラーがくすぶっているだけだった。


黒焦げの死体も多数見られたが、敵は居なかった。


「撤収したあとかもしれ-」



1発の銃声がした。


そして横にいた千葉3等陸曹ががくりと倒れた。


「え」



「狙撃、狙撃-」


突然眩しくなった。


そして羽音。


上空には黒塗りのMi-8ヘリが4機もいた。


「かこまれて・・・」


機銃掃射が地上を襲う。



「ああががっ!」


銃火に平城3等陸曹が倒れる。


「平城!」


富坂1等陸曹が助けに走りだした時、彼も倒れた。



「くそっ!隠れろ!」


俺と真賀山2佐と三ツ矢3等陸佐はひたすら走った。


「格納庫に飛び込め!」



大きく穴が開いている格納庫は多少なりとも銃火を防げる。


俺はAK74Mを構えてヘリに撃った。


機銃手が銃撃を食らって機外へ落ちた。


「どんなも-」


パンパンパン



胸に熱い痛みを感じた。


「・・・へ?」



カラダが倒れる。


駄目だ、ここで倒れたら・・・凛に会えなく・・・



後ろを向くと三ツ矢3等陸佐と真賀山2佐が倒れていた。


そのまま俺は仰向けで倒れた。


かつーん、かつーんと足音が聞こえる。



視界に入ったのは黒のスーツを着た「矢部」1等陸佐だった。



「よぅ、坂崎」


「やべさ・・・なんで?」


「いや、悪い!」


彼は俺を見下ろしながら両手を合わせた。


「いやー、武器購入にどうしてもここに入らないといけなくて。んで、安全確認してもらったわけ」


「なんのことか・・・さっぱり・・・」


「よーは、俺は国を売って金持ち。君は地獄へ落ちる」


P220拳銃が俺に向けられた。


「彼女さん悲しむだろうけど、そのうち別の男でも作るだろ」


俺は矢部に憎悪の念を込めていった。


「・・・・お前は俺が殺してやる



ダンッ





「坂崎!坂崎!」


デルタフォース第1分隊は応答しない坂崎たちを探しにわざわざ戻ってきていた。


格納庫に倒れている彼らを見た時、血の気が引いた。



トニー・ガーフィールド中尉は格納庫を見回して


「ミサイル類すべてがない。先ほど飛んでいったMi-8に積んであったんだろう」


「それより坂崎たちが・・・!」


トニー・ガーフィールドは言う


「どいつもこいつも穴だらけだ。回収はするけどな」






















 




















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