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Japan Force  作者: 坂崎紗葵
第3章中央情報隊第2小隊
21/32

南極の遺産




日韓紛争は世界への激震となった。


韓国の崩壊と朝鮮半島の統一化でことは閉められたものの、半島での治安は悪化していた。


中国もスプラトリーでの一件で国際世論に登場する余力もなく半島は見捨てられていった。



日本の武器輸出はアジア諸国を喜ばせた。


F-2戦闘機のラインは2011年で閉鎖予定だったが台湾の40機発注で撤廃した。


フィリピンからもオファーが入り、F-2は改良の余地ありとして技研での研究が進められることになった。


89式小銃や01式軽MATは陸自が難色を示したため輸出はしないことになった。



台湾は90式戦車か10式戦車の発注も依頼したがこちらは国防の理由により断ることになった。


またフィリピンは艦艇1隻失ったので日本への依頼をした。



軍需産業が国家レベルまで回復した日本は自国軍のハイスペック化に乗り出すことができた。



-12月3日 愛知県名古屋市守山区守山駐屯地-


「教官、デートしましょうよ~!」


「ん、いいけどどこに行くんだ?」


「うーん、カラオケとか?」


「いいけど最近のはあんまり歌えないぞ?」




12月3日、冬本番の名古屋市で彼らはダウンジャケットを着て外へ出た。


「近くにあったよな・・・ええと、あった」


歩いてカラオケ店に入り、3時間コースを選ぶ。




「っと・・・」


仲沢の1曲目が終わった。


俺はその4分程度を完全停止で聞いていた。


「下手・・・でした?」


俺は即答した


「うまい」




俺は無難にロック系の曲をチョイスした。


3分ほどの曲だが、曲の上下がすごい。


うるさかったかな


「・・・ふぅ。あーすまんきらいか?」


すると仲沢は目を輝かせ


「このバンド好きなんです!」


「おー、趣味合うな」



何曲くらい歌っただろう。


「20分か・・・」



時計を見るとタイムアウトまで20分残されていた。


「・・・」


「・・・」


唄で気づかなかったが、距離が異様に近い。


仲沢の心音が横で聞こえる。


「あ・・・えっと・・・どう・・・します?」


ふたりともレパートリーを歌いきった。


俺は頭を掻いた。


「あー・・・っとだ・・・こういう時に言うべきかわからないけど・・・その・・・キスしたいかな」


何言ってるんだ俺は変態じゃないのか何言ってしまった


「あ、やっぱえっと・・・」


俺が言いかけると仲沢は


「・・・どう・・・ぞ」


「・・・?」


ふるえる声だった。


「私も・・・したいです」




俺は初めてじゃない。キスは学生の時に何回かした。だけどあれから7年以上立っているからすこし心配だった。



「えっと・・・その・・・優しく」



仲沢は顔を赤くしながらそうつぶやいた。


俺はゆっくり唇を近づけた。





「ん・・・」



私の唇にかすかに触れた感触があった。


暖かい。


眼を閉じているけど教官は・・・眼の前だ。


10秒、20秒。


私は自分で離れれなくて、結局教官が離れた。


「ふ・・・あ・・・」


「大丈夫だったか?」


その問いに私は


「・・・ファーストキスですからね。えへへ・・・」



体がなにか熱くなってきた。


そこに時間を知らせるブザーが鳴り、私と教官は帰り道を歩いた。



「なあなかざ-」


俺が名前を出した時、彼女は俺の前に歩き出して道を塞いで言った。


「凛って・・・呼んでください。二人のときは」


俺は少し恥ずかしかったが


「わかった」


そう答えた。


「じゃあ・・・凛、も・・・俺のこと名前で呼ぶんだぞ?」


「・・・修一?」


その言い方に思わず


「・・・なんかかわいいな」



-その日の夜 守山駐屯地女性隊員隊舎-


「へー、口にキス?」


「うん!すごいよ!すごい!いきそうになった!」


「馬鹿かってーの」


ポコンと私は頭を叩かれた。


「もう何するの」


「あんたその程度でそんなじゃ・・・ふふ♪」


「え、ちょ、なに!?」


「本番とかどうすんのよー」


私は本番という言葉で頭がおかしくなりそうになった。


「わっ、ちょっ、顔真っ赤!」


「・・・だよね・・・耐性付けないと」


「そうだよ、彼氏なんだし」




-12月5日 防衛省中央情報隊司令室-


衛星探索員の情報で矢部はまたここに着ていた。


「次はなんだ?高麗軍でも来たか」


「いえ、これを」


衛星が示していたのは南極だった。


「ここがどうかしたか?国家不干渉エリアだ」


「ここを見てください」


ズームアップしていくと、氷が溶けて中からなにか出ていた。


「・・・船?」


探索員は答える。


「正確には宗谷型砕氷船です。文献によればこの艦は非公式です。宗谷型はソ連側に2隻と日本側の1隻だけですから。ソ連側の物でないとすればこれは・・・」


「遺産か」


「はい」


矢部1佐は興味を示した。


「積荷は?」


探索員は答えた。


「非公式艦と断定したには理由があって、1945年1月に見慣れない船が日本国旗をつけてドイツの軍港を出たとあります。ドイツ側は戦乱でこれを日本へは伝えていません。


ドイツ国防軍の証言と宗谷型のスケールは一致してます。また、これにを目撃した他の海兵は数十人の武装SSとSS将校と日本軍の兵士が乗り込んだのを見ています。


積荷は木箱100個とコンテナが40個、大荷物です」


「ふうむ・・・探査の余地ありだな。それで最後の更新記録とかは?」


「はい。1945年3月2日に南極を航行中していたソ連海軍が部隊確認のできない船を攻撃しています。それと同行していたドイツ海軍のUボート2隻。」


「よーし、第2小隊にまた頼むか。第1は今高麗国の調査しているしな」




-翌日朝9:20 愛知県名古屋市守山区守山駐屯地-


「はい、電話代わりました坂崎修一2等陸曹です」


『あ、坂崎くん?オレオレ、矢部』


「矢部1佐ですか」


『うん。この間はどうもね。んで今回もお仕事よ』


「どうすればいいですか?」


『えっとさ、今日迎えが行くからさ、それに乗ってよ』




「え、仕事・‥‥ですか?」


「ああ・・・長くなるかもしれない」


「どこまでとは・・・」


「言えないけど・・・大丈夫だ」


凛はすごく心配していたが、納得してくれた。




迎えに来たのはワンボックで、中には第2小隊のメンツが載っていた。


「よーっす、修一くん」


「よろしくお願いします、真賀山2佐」



車の中で任務の解説を受けた。


「またもややべっちの任務だ。場所は南極」


『南極ぅ!?』


全員が驚いた。


「南極の溶けた氷から見つかった砕氷船だ。日本軍のものと思われる。ここは開拓当時からブリザードが激しすぎて誰も到達してはいない地点だが地球温暖化で今年溶けて見つかった。





-5日後 南極昭和基地-


近くまで飛行機で行き、そこからアメリカの船に乗って基地まで入った。


「これより探索へ向かいますが・・・あの人達は?」


南極遠征隊の隊員たちは突如現れた6人を不審に思った。


「わからんが、同行しろとのことだ」



-12月9日2時間後(AM11:00)グリッド14,47-


「こいつか」


「あなた方はこれを見なかったことにしていただけますかね?」


不審に思う遠征隊をなだめ、真賀山2佐は小隊を率いて船へ近づいた。



「水密扉か。C4でふっ飛ばしちゃうおうかな?」


「雪崩とかいいのか?」


危険なことを言う千葉3等陸曹に突っ込む富坂1等陸曹。


「普通に溶接機かなんかでこじ開ければ?」


と冷静な意見な平城3等陸曹。


「溶接機はあるぞ」


と三ツ矢3等陸佐


「じゃあ修一くん頼んだ」



俺は溶接機で凍りついた水密ドアに切れ目を入れていく。


「よしっと、開きました」



扉は内側へ倒れた。


「何があるかわからんから用心しとけ~」


寒波に強い旧ソ連製AKS-74Uを持ち、船内へと入る。



「貨物室が臭うな。何が積んであるかはわからんらしい」


6人の隊員は速やかにかつ無駄のない動きで部屋にはいってゆく。


「このエリアは船倉か。船員の部屋だな」


ドアを開けると毛皮のコートを纏った骸骨が転がっていた。


「軍人じゃないな」


富坂1等陸曹は骸骨の服を検分しながら言った。


「体格と服装、所持品からしてコイツは日本人だ。まぁ、日本の船だしな」




しばらく歩くと大きなドアにぶち当たった。


「こいつか、貨物室の扉は」




「なんなんでしょうねー」


「まぁ、この地点は踏破されて来なかった場所だし我々としても実績が残るし」



昭和基地の遠征隊はブツブツ言いながら船の外で待機していた。


すると一人の隊員が倒れた。


「?おい、どうし・・・」


倒れたところには赤い雪ができていた。


「え、血?」



パシュッパシュッ!



「うわ、な」


カシュシュシュシュシュ!



「Unterdrückung(制圧)」


「Verständnis(了解)」



黒の軍服の男たちは日本人遠征隊を全員撃ち殺し、宗谷型砕氷船の前に降り立った。


数は15人。



「Oder verbirgt sich ein Schatz Schiff anvertraut Seine Exzellenz Präsident Generation nach wir(これが総統閣下が我々後の世代に託された財宝を秘める船か)」


「Dearimasu Ja, Herr Gutenberg Commander.(そうであります、グーテンベルク中佐殿。)」


指揮官と思しき壮年の青い瞳を持つ男は打ち破られたドアを見ていった。



「Troll Grab. Kill.(墓荒しだ。殺せ)」


『Sieg Heil!(勝利万歳!)』


ナチ式敬礼(元はローマ式敬礼)を済ませた彼らはUMP45サブマシンガンを携えて船内へ入っていった。





「情報にあった木箱100とコンテナ40だーな。千葉ちゃん、適当にひとつ開けてよ」


「了解」


千葉3等陸曹はバールで木箱をこじ開けた。


「・・・っと・・・こりゃあ・・・スゲェ・・・おい見てくれよこれ!」


千葉3等陸曹が木箱から取り出したのは金の延べ棒だった。



「延べ棒?隠し資産か何かか」


真賀山2佐はしげしげと金を見つめる。


「刻印がハーケンクロイツだな。ドイツの金で間違いない。箱にもドイツ語か。おい、そっちの日本語の箱は?」


俺の目の前の箱を指さして真賀山2佐はバールを渡した。


俺はバールで箱をこじ開けた。


「三菱の延べ棒ですね」


「枢軸軍の隠し資産だな。コンテナはなんだ?」



千葉3等陸曹、富坂1等陸曹、俺で凍てついたコンテナの一つをこじ開けた。


三ツ矢3佐が「おぉ」と感嘆する。


中身は何かのエンジンだった。


三ツ矢3佐はエンジンを見ていった。


「Jumo004エンジンだ。ドイツ空軍のMe262ジェット戦闘機に詰まれてた」


「詳しいんですね」


と俺が言うと


「ホントは空自に入りたかったんだけどねー」


と答えた。



その隣りのコンテナには88㎜戦車砲が3つ入っていた



「技術提供用も兼ねていたのか。なるほどね」


他のコンテナにはStg44やMG42、MP40が大量の弾薬と共に積まれていた。



「このコンテナは開けたらまずい気がするな」


少し離れた位置にあるコンテナにはバイオハザードマークが刻み込まれていた。


「生物兵器か細菌兵器のたぐいだろうな・・・開けたらまずいと思う」





『Wir sündigen Grab Vandalismus. Ich werde um Vergebung Sünden weinen!(罪深き墓荒しよ。泣いて許しを乞うがいい!)』



突如船内放送が響いた。


ひどいハウリングだった。


「おいおい、亡霊でも出てくるのか?」


そんなことを言った千葉3等陸曹の足元に弾が着弾した。


「敵襲!」



全員が一斉に散らばる。



『Du bist ein Troll, ein Satz hat in dem Gebiet des Dritten Reiches, Deutschland Schuhe stolz!(お前たちは誇り高きドイツ第3帝国の領地を土足で文荒らしているのだ!)』



「ナチ野郎だな!ネオナチだ!」


真賀山2佐の声は全員に届いた。


「ナチぃ!?うそでしょもー!」


と平城3等陸曹。


三ツ矢3佐も信じられないといった感じだ。


『Verzeih mir, wenn Yarrow out now! Come on! Komm heraus!(いま出てくれば許してやろう!さあ!出てこい!)』



「わからないよドイツ語は!」


真賀山2佐はAKS-74uを発射した。


『Wir leiten Sie weiter unten auf der SS bewaffnet Hölle klopfen!(武装SSがお前たちを地獄の底へ突き落とすだろう!)』



俺の目には黒のコートを着こみ、SSの襟章をつけた男たちが大勢降りてくるのが見えた。


「敵の増援です!」


「俺がやる!」


富坂1等陸曹はPKM軽機関銃をコンテナから少し出して敵の方角へ撃った。


『Container! Der Behälter Schatten!』


全員ほぼ別のコンテナに陣取っている。


隣のコンテナが富坂1等陸曹、富坂1等陸曹のさらによこが真賀山2佐、その後ろが平城3等陸曹、俺の後ろが三ツ矢3佐、そして千葉3等陸曹。


俺は左から顔を出してAKS-74Uを撃った。


男は階段の所でその弾に当たり、転げ落ちる。


『Franz!』


PKMの掃射が落ちる男を助けようとした敵を切り裂く。


『Ohhhhh!!!』


「グレネード!」


三ツ矢3佐は銃撃がやんだ隙に上の敵が出てくる水密扉(今いる位置はくぼんでいる)に投げつける。



炸裂音と断末魔が聞こえた。


「敵発見!」


別のドアから出てきた敵を千葉3等陸曹が撃つ。


「ちょろいっ-」



千葉3等陸曹が撃った敵は死なずに撃ち返し、倒れた。


「千葉ァ!」


真賀山2佐は走った。


「大丈夫っす・・・ボディアーマー着てますから」


「そこで待ってろ。全員、放送室への攻撃を開始するぞ」


『了解』



5人の隊員は貨物室に千葉3等陸曹を残して船倉へはいった。


「こいつらカッコだけだな!弱い!」


真賀山2佐の言うとおり、彼らは戦闘に慣れている様子ではない。


銃の反動で天井を撃つ奴もいる。


『Attack!Attack!』


敵二人が角から躍り出た




平城3等陸曹が前に歩み出る。


AKS-74Uを横薙ぎに発射し、二人を倒す。




「クリア」



放送室に敵は残ってなかった。


「こちら宗谷、本部送れ」


『こちら本部~、どうしたー?』


矢部1佐の抜けた声はこの自体を知らないようだった。


「ネオナチの部隊に襲撃された」


『了解。負傷者は?』


「千葉が撃たれた。敵は20名弱を制圧したが、隊長っぽいのは見当たらない」


『・・・あー、待て。未確認の航空機がその近くに着陸した。・・・付近を航行中のアメリカ海軍がもう1機にスクランブルしたらしい。


現在南極自体がアラートだ』


「了解。どうすれば?」


『宗谷型砕氷船の防衛に・・・あー待て。アメリカ海軍がそっちも援護するって打診してる。どうする』


「財宝と命をかけたら命だ。頼む」


『了解。アメリカの護衛兼救助のヘリは20分で到着する。衛星によると敵はあと10分でそこへつくぞ』




-南極沿岸 アメリカ海軍第7艦隊群-


「所属不明機、現在南極グリッド30.67に着陸。ハリアー1、現在これに対処中」


「日本より応援要請。座礁船調査中の探索部隊が攻撃を受けた模様」


「SEALSを出せ」



ワスプ級強襲揚陸艦エセックスからMH-60Sシーホークが飛び立つ。



『こちらハリアー1、所属不明機確認』


「無線チャンネルを全チャンネルで帰還を命令しろ」


『了解』



『こちらアメリカ海軍。貴機は不可侵の南極領域を侵入している。所属国を名乗り、帰還せよ』


『こちらドイツ第3帝国所属の戦闘輸送機である』


『正確な所属を述べぬ場合撃墜を辞さない』



ハリアーの追跡していた小型輸送機は着陸直前であった。


『こちらハリアー1、迎撃許可を』


「攻撃を受けぬ場合、攻撃してはならない」


『了解』



輸送機は着陸し、遠い津郡の制服を来た兵士が一斉に走りだした。


『連中は武装している。対応は?』


「GAU-12での殺傷を許可する」


『Copythat』


25㎜機関砲による攻撃は兵士たちをミンチに変え、輸送機を吹き飛ばした。





「敵発見」



双眼鏡を覗いていた三ツ矢3佐が静かに話す。


「しかし、コイツを撃てるなんてね」


真賀山2佐は少々興奮気味に喋った。


俺たちは貨物庫から千葉3等陸曹を安全な位置に移したあと、MG42を人数分持ちだした。


「弾づまりも確認したし、十分に引きつけるぞ」



敵は30人といった数だ。


その時遠くで爆発音が聞こえた。


「アメリカ海軍の攻撃だな」



敵は船から100mの位置へ入った。


「オープンファイア~」



MG42のバイポッドを船の手すりにかけ、射撃開始した。



ヴァーーーという連続音は彼らを地獄へたたき落とした。





「MG42!?」


指揮官、マールハイツ・グーテンベルク中佐は祖国の名銃の発砲音に驚愕した。


「中佐!遮蔽物が!」


「RPG-7を撃て!」



RPG-7を抱えた兵士が走ってくる。


そして倒れた。



「俺がやる!」


マールハイツはドイツの第3帝国党を率いている。


第3帝国党の党員全員がここへ集結した。


引けない。


マールハイツはRPG-7を打ち込んだ。




「RPG!!!!」


真賀山2佐の叫び声で俺たちは船の中へ転がり込んだ。


爆発で頭の中がキーンとする。


「・・・うあ」


俺はすぐに立ち上がり、手元にあった武器を取った。


AKS74Uを持って外へ出ると手すりが吹き飛んでいた。


ネオナチの兵隊たち、約20人はもうそこまで着ていた。


俺はAKS-74Uを撃つ。


下へ撃ち込み続けた。


銃声が聞こえない。


無音空間で俺は銃を撃っていた。


しかし反動の手応えが消えた。


「弾切れっ・・・!?」




真下に居た敵はニヤリと笑い、武器を向け






倒れた。



「?」



真下まで着ていた敵がことごとく倒れていく。



「いったい・・・?」



聴力が戻るに連れて騒音が聞こえてきた。


音の方を見るとヘリが1機、下へバルカン砲で攻撃していた。





マールハイツは銃弾で体を割かれた。


彼は最後に、祖国で自分に愛想を尽かして出ていった妻と娘、エリスを気にかけた。





アメリカ軍のヘリの中で、日本語の話せる兵士が俺に聞いた。


「あんた痛くないのか?」


「・・・?」


「そこ!」


アメリカ兵は自分の右肩を叩いて俺を指さす。


「・・・あ」


破片が刺さっていた。


血が出ていた。


そう言われると突然激痛が走った。


「イッたぁっ!?」


「気づいてなかったのか。治療してやる」



千葉3等陸曹はヘリの奥で衛生兵に見られ、他の隊員たちも少なからず軽傷だった。




後に正式な調査隊が船を調べた結果、4兆円相当の金塊とMe2621機分のパーツ、ドイツ軍の資料が発見された。


武器は1個中隊分が入っていた。



日本政府はこれの所有権を国連に主張、受理された。


ドイツ軍資料はドイツ連邦に寄付され、Me262もまた寄付された。


4兆円の金塊はドイツ刻印のものはドイツ連邦、日本刻印は日本政府に分配され日本は1兆5千億円の権利を手に入れた。





-12月20日(金曜)午後5時00分日本名古屋市守山区守山駐屯地-


「ただいまー・・・ってアレ?」


俺は同室の赤坂が部屋にいないのに驚いた。荷物もない。


「横田、赤坂は?」


横田は驚いた様子だったが


「知らなかったのか?まあ、お前1週間いなかったしな。アイツなら自衛隊やめたよ」


「は!?」


驚いた。


アイツがやめるとは。


「驚いたのがさ、あいつ里中3尉と出来てて一緒にやめちまったんだよ」


「なんだって!?」


アイツ連絡くらい・・・


「あ」


そういえば携帯電話の電源を切っていた。


電源をつけると3通入っていた。


2通は凛からだ。



1件目「遅いです!」12/10


いつになったら帰ってくるんですか?私寂しいですo(`ω´*)oプンスカプンスカ!!



2件目「びっくりしました」12/17


修一がいないのが残念です。赤坂3等陸曹と里中3尉が一緒に自衛隊をやめちゃいました。送別会を開いたんですけど、二人付き合ってたみたいです。


寂しいなあ・・・


修一も早く帰ってきて!・・・修一ってなんか書いてるとドキドキしちゃう



3件目「すまん」12/17


お前と別れるのは辛いが、やめなくちゃならない事情になった。


お前になら話せるからいつでも電話をくれ。


一応年中は国内にいるつもりだ。


あと美紀と付き合ってるのは秘密にしてた(笑)


結婚とかじゃないから心配しないでほしい。ただ日本じゃ不便だったから。


親愛なる友人へ、早く帰ってやれ。仲沢が最近訓練に集中しない。


あと俺の部下の江崎、七宮を頼む。そうじゃないと吉山の馬鹿が引き継ぐことになる。


お前が最近空けがちのせいで怪しいんだ。注意しろ。



電話を頼む。





「なるほどな」



俺はとりあえず凛にメールを送ることにした。


件名:帰ったぞ;


すまなかった。俺も会いたくて寂しかったんだ。


40分くらいしたら行く。



そして電話番号を電話帳から探し、赤坂に電話した。

『よぉ、遅かったな』


「おい、なんの相談もなしか?」


『まあ、電話じゃなんだしさ、8時くらいに駅前の居酒屋でどうだ?仲沢も一緒にさ』


「・・・わかった。じゃあな」


『りょーかい』




20分後くらいにメールが入った。


件名「おかえりなさい!」


わかりました!今でも大丈夫ですよ♡




俺は早速勇み足で向かった。


「・・・?」


女子隊舎は3階建てのビルで、今は薄暗くなりつつある。


隊舎のそばに男性隊員がコソコソしていた。



「吉山純太・・・?」


防衛大学校卒の自称キャリアの陸曹長が居た。


あからさまに怪しいので俺は声をかける。


「吉山陸曹長、どうかいたしましたか?」


「ッ!!!!!!」


かなり動揺していた。


「坂崎かッ・・・チッ」



吉山は逃げ去る


「なんだアイツ」





「その怪我・・・」


「ん?あー、たいしたことない」


俺の方の包帯を見て少し驚いていた。


「・・・無茶しないでくださいッ」


凛は俺に寄りかかった。


「泣かせちゃったか・・・ごめん」


「・・・自分を大事にしてください」



凛は自分で離れた。


「赤坂が8時に駅前の居酒屋に来ないかって」


「いいですよ」


「よし、じゃあ7時40分に迎えに行くよ」



俺は帰り際に二人分の外出届を出し、自分の部屋を片付け、TVを見る。


バラエティをつけたりニュースを見たり。


「・・・う」


眠気が来た。


「寝るか・・・」



7時25分に俺は起きて着替えた。


寒いのでダウンを着る。



「おう」


「かっこいいですねその服」


「ん・・・そうか?」



おまえのが可愛い。


もこもこしたジャケットにミニスカにタイツ。


そしてもこもこしたブーツ。(全部ナナチョイス)


「行くか」



「聞いてくださいよ、ナナ今日から休みとって彼氏と日曜まで温泉なんですよぉ?」


「あ、ああ」


「だから今度連れてってください」


「わかった・・・ええと、今月末か」


「予約取れますか?」


「何とかやってみる」


「やったぁ!」




-7時57分 駅前居酒屋-


「おーっす。肩どうした?」


「ちょっとな」



居酒屋には里中元三尉と赤坂がいた。


「坂崎くんにひみつしてたけど、ごめんね」


「いやー、三尉殿がコイツとねえ」


「もう三尉じゃないわよ」



話は弾んだのだが20分程度で赤坂が席を立ち


「ちょっとこれから話せない話に入るから奥座敷に行こう」



奥座敷をとってあったのか、気の効くやつだ。



俺だけ奥へ行き、凛は里中元三尉に任せた。




「で、話って?」


「あー、実はさ。俺のやめた理由だけど」


「ああ」


「BlackEagleCompanyって聞いたことないか?」


「あー、新進気鋭の民間軍事会社(PrivatemilitaryCompany)か?」


自衛隊に属していればそういうニュースも耳に入るものだ。


「そう。そこにスカウトされた」


「はぁ?なんで」


「実は第2小隊の隊員数人にスカウターが着てたんだ。お前は出てたからコなかっただけで。楢木隊長と幹さんと神部さんと俺と美紀。


これに乗ったのが俺と美紀なんだよ」


「なるほどな。給金でも高いのか?」


「このPMC、アメリカ資本なんだけどアメリカに家1軒がでる。」


「すげーな」


「ああ。そんでもってからの月収が100万。ボーナスもでる」


「すげーな、それ」


「だから志願した」


「なんだ、まあがんばれよ?」


「ああ、ありがとう」




「こう、アタックしないとダメよ?」


「へーそうなんれしゅか?」


「そう。あいつ鈍いから。」



「おい、話し終わったぞ」


「あ、おかえり俊也」


「おかえりなはーい」


俺は凛のただならぬ気配に気づいた。


「・・・おい、飲ませたんじゃ・・・」


と言うと里中元三尉が


「やーねー、チューハイよ」


「飲ませてるだろうがッ!」


「メンゴメンゴー」


「あー、もう」


凛はベロンベロンだった。


「帰るわ」


「おう。次会えたら」


「またな戦友」




凛をおぶって帰る。


「修一ぃ」


「んー?」


「わたしってこどもっぽいよね?」


「・・・そこが好きなんだって」


「・・・そっか」


「わかったらおとなしくしてろ、犯罪だぞ飲酒は」


「ひゃーい・・・」



「すいません寮母さん」


「いいけど、この子未成年よね?」


「・・・ええ、まあ」


「もう、仕方ないわね」




俺は凛を寮母さんに預け、部屋に戻ることにした。


「・・・?」


何か俺は視界の中に違和感を感じた。


「・・・気のせいだよな」




-PM11時50分-


「そろそろ消灯か」


俺はPS3の電源を落とし、布団に入った。


「・・・なんか喉乾くな」



まあ、時間内に戻ればいいよな。




俺は隊舎を出て外の自動販売機に向かった。


「寒ッ・・・」


ジャージにダウンを羽織ったが、やはり寒い。



「ブラックなんか飲んだら眠れなくなるな・・・温かい奴・・・・っと」


ココアを無難に選ぶ。


「・・・なんだ」


何か胸騒ぎ的ななにかがする。




気づくと俺は女性隊舎に足を向けていた。


「お、坂崎2曹、逢引はいけませんよ?」


「うるせぇ、バーカ」


巡回の後輩をかわし、隊舎に向かった。



「ああと確か、凛の部屋は1Fの奥・・・」


何もなければ窓を開けてココアを置いていけばいい。



「・・・ッ!」



窓が開いていた。


この寒いのに開いてるわけがない。


俺は走った。


10m、5m、2m、1m



窓をゆっくり覗くと中に黒影が一人、コソコソとしていた。






キリキリキリ・・・カチッ


ガラガラ・・・・


「んぅ・・・?」



私は窓の物音に目を覚ました。


誰か、立っている。



「えっ、だ-」


「静かにしないと殺すぞ」


「ムグゥっ!!???」


口を手で抑えられた


「へへへ、黙ればいいんだよ、黙れば」


「むぐー!むぐーっ!」


「黙れっつってんだろ!」


横腹を殴られた。


「ムグッ!」


「よしよし・・・へへ」





「何やってんだゴルァ!」


ビクッ!!!


俺が叫ぶと人物は体をびくつかさせた。


男は手で凛の口を塞いでいる。


「久々に本気出すわ」



俺は右ストレートで人物の顔面を殴った。


「ガッ!」


人物にストレートに入ったが、奴は手に持っていた工具で殴りかかってきた。


「あぶなっ!?」


レンチか何かは俺の肩をかすめた。


「ツッ!!!?」


この間の怪我のところを刺激し、激痛が走った。


人物は俺を蹴り飛ばし、馬乗りで殴り始めた。


「ガッ・・くそっあ!」


「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」


やばい、意識が飛ぶ。顎に何発入ってんだこれ。


「あああああ!!」



目をかすめて開けると凛が椅子で人物に殴りかかっていた。


チャンス


俺はするっと抜けだして後頭部を思い切り殴った。


「痛っ!!」


そのままチョークスリーパーをかけ、気絶させる。


「大丈夫か?凛」


「大丈夫ですッ・・・たすけてくれてありがとう・・・です」


「とりあえず紐、ひもない?」


「ええと、これでいいですか?」


凛が差し出したのは荷造り用の糸だった。


「うん」


俺は人物の手首足首を結び、かぶっていた覆面を剥ぎとった。


「吉山!?」


そこにいたのは吉山純太陸曹長だった。





「強姦未遂及び暴行、住居不法侵入の現行犯で逮捕します」


この駐屯地には第130地区警務隊本部が設置されているため、いわゆる憲兵(警務官)に吉山を引き渡した。


「クソがあああっ!俺は吉山陸将補の息子だぞコラアアアアアア!!!!」





「・・・怖かった」


「・・・うん」


俺は自販機の横のベンチに座って凛を慰めていた。


「・・・あの」


「?」


「膝の上、乗ってもいいですか?」


「え、あ・・・いい・・・けど」



ちょこんと凛が座った。


身長160cm、体重40kg台と聞いてはいたが軽い。


しかも良い匂いがする。


「・・・ココアおいしいです」


「そうか、よかった」



俺は顔面に氷嚢を当てながら、笑った。





いつまでもこんな幸せが続くといい。





おい坂崎そこかわれ

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