REDARMY BOOM!
「次のニュースです。元赤軍派の小島勲被告が先ほどキューバのグアンタナモ空港を出発いたしました。小島被告は1972年のテルアビブ空港乱射事件で」
テレビを切る
「ふぁぁ・・・マジで来るの?」
喜美谷 功は日本の名古屋に潜伏していた
「はい、喜美谷2尉」
「まぁ、日本で戦争起こすなんてさ・・・できることじゃ、ねぇよなぁ」
と喜美谷は不気味な笑いを浮かべる
「第1分隊は全員集結しております」
陸上自衛隊特殊作戦群第1分隊
喜美谷に賛同し辞職した分隊。
12名の隊員は中東や東欧に分散し、傭兵活動を行ってきた
「なあ四方村」
「はっ、なんでしょうか喜美谷2尉」
「一丁、派手に行きますか♪」
-同時刻:陸上自衛隊守山駐屯地-
「ほら!行け!行け!」
俺は午後の昼下がりに叫んでいた
「どうした仲沢!しっかりしろ!」
「だ、だめです・・・ぅ」
部下の一人仲沢はトラック50周の27周目でばてた
「立ち上がれるか?」
仲沢は首を振るので
俺は仲沢の腕を持って立ち上がらせた
「いけそうか?」
聞くと仲沢は
「は・・・はいっ」
また走り出した
そして倒れた
「ああクソッ!」
俺は駆け寄る
「大丈夫か、仲沢!」
意識はある。日射病か
「しっかりしろ、仲沢」
俺は彼女をおんぶして木陰で休ませた
「俺の責任だ。すまない」
仲沢は答えた
「さ、坂崎教官の責任じゃないです・・・」
俺は腰の水筒を差し出す
「飲め、生理食塩水だ。あと・・・これを」
俺は左手でバックパックから冷却ジェルシートを取り出す
「ちょっと、我慢しろ」
俺は上着を脱がせてTシャツにする
「えっ、あっ・・・ちょっ」
「我慢しろ」
俺は脇のリンパ管にそれを貼る。もう片方にも
「これで体温は下がるはずだ。池田、これ濡らしてこい」
「はいっ!」
池田にタオルをわたす
「落ち着いたか?」
俺はうちわで仲沢をあおりながら問う
「はい、楽になりました・・・」
「我慢せずに次からは言うんだぞ?」
「えっ・・あっ・・えと・・・」
「俺ってそんな怖そうに見えるかな」
ヒゲは剃ってるというか生えないけど
「い、いえ・・・」
「そうか」
「でも」
「でも?」
仲沢は言った
「教官って大胆ですね・・・ぬ、脱がすなんて」
「ばっ、馬鹿!・・・世邪な気持ちはないんだ。許してくれ」
「ふふっ、冗談です」
彼女は医務室に運ばれ、1日の休息を与えられてから原隊に復帰した
-7月9日-
「訓練期間は本日を持って終了とする」
『やったぁぁぁぁ!』
新人隊員の養成期間が終了し、彼らは部隊へと配属された
「坂崎教官、みんなで呑みにいきませんか?」
池田が俺に聞いた
「ふうむ・・・いや、遠慮しようかな」
「えーそんな」
そこで後ろに居た仲沢が
「行きましょうよぉ!」
という
「赤坂、どうするよ?」
赤坂は自分の部下に聞いた
「ドーする、お前ら」
江崎と七宮は
「イーッスね!最近呑んでないんで!」
「わたしもさんせー!」
赤坂は答える
「酒豪、坂崎の復活だな」
「酒豪?教官って酒豪なんですか?」
仲沢は聞いてきた
「いやっ、その・・・だな」
赤坂がばらした
「一回呑みすぎて楢木小隊長と取っ組み合いして勝っちゃったんだよこいつ。呑み対決して第1小隊の幹2尉にも勝っちゃうし。そんで最近呑まなくなったんだよ」
「お、お前!」
-午後8時20分 名古屋市内の居酒屋-
「おい坂崎、お前・・・酔わないのか」
「里中3尉も酔ってないだろ」
結局里中3尉、加藤陸士長、神部1曹、小宮陸士長が加わった飲み会
開始2時間で里中・坂崎は生中を5杯と焼酎3杯を飲んで顔ひとつ赤くしない
他の隊員達はほろ酔いだが池田・七宮・仲沢は未成年なので飲んでいない
「坂崎教官ってすごいんですね」
とオレンジジュースをちびちび飲んでいた仲沢が言った
「ん?そうか?」
「はい」
午後9時を回ったところで加藤と神部と小宮が酔いつぶれた
「こいつら帰らせるから俺は帰るぜ」
と赤坂(ほろ酔い)が言い残してタクシーに分乗して帰った
「お前達はいいのか?」
俺は池田、七宮、仲沢 そして
「3尉殿も」
里中3尉は
「あんたが酔いつぶれるの待ってたんだけどなぁ・・・」と言い残しかえる
「俺も帰りますわ」
と池田は里中3尉について帰っていった
「・・・お前らは?」
残った七宮、仲沢に問う
「私は・・・うーん」
と七宮が答え
仲沢は
「私は教官が心配なので」
「こいつ、お前は俺のなんだよ」
と俺は笑いながら小突いた
「いたぁ~」
9時10分過ぎ
居酒屋に柄の悪い不良が入ってきた
ズカズカと部屋に入り大声で話す
「見たか?コウチャンの面!あれはもう女誘えねえよ!」
「見た見た!ハッチやりすぎだよな~」
「ハッチの奴女相手に強いんじゃねえんだな!ぶわっはっはっ!」
「ツーかオマワリはやっぱ楽だな!ババァからひったくっても全然捕まえられねえでヤンの!」
「ラッチ、お前声でけぇ!」
俺は耳で話を受け流す
本当ならボコボコにしたいところだが、面倒な騒ぎになる
「教官、私そろそろ帰りますね」
と七宮が出て行こうとする
「支払いは割り勘だぞ」
俺が言うとちぇっと言って1500円を置いていった
「夜道だぞ?」
七宮は答えた
「今タクシー呼んだんで平気です」
俺がトイレに入って出てくると仲沢がさっきの不良に絡まれてた
「ねぇ、若いね。いくつ?」
「じゅ、18です・・・」
「へえ、おれらと同い年じゃん。一緒に飲まない?」
「いっ、いやっ、私連れが・・・」
「いーじゃんいーじゃん、ほっとけば。おれらのほうがいいって」
「だ、だから・・・」
「はいはいオイタはそこまで。帰るぞ、仲沢」
「教官ッ・・・」
俺が声をかけると仲沢は安心した顔を見せた
だが不良も黙っちゃいない
「なんだよオッサン、俺ら話てたろ?すっこんでクソでもして寝ろよ」
「ウッゼー奴だな、殺っちゃう?」
「ミキクン半端ねぇ!」
「俺サンセー」
「ラッチがやんならおれもやるわ」
4人の不良が絡んできた
俺は頭を掻いて言う
「顔が誰か分からなくなるまえにお家へ帰れ、不良少年」
ガキが叫ぶ
「なんだとコラァ!てめぇマジぶっ殺すからな!」
「やっちまおう」
俺は言う
「店で暴れたらだれが金出すんだ?外へ出ろ、外へ」
「構うか、テメェが出せよカス!」
4人が一気に飛びかかってきた
「きょ、教官ッ!」
俺は正面から来た奴のパンチを腕で受け止め、振り払ってひじでたたきつけた
「うべっ!」
前方右から来た奴には金的をお見舞いし、左から来た奴には右手で顔面にパンチを入れる
一人残ったラッチと呼ばれていた19くらいのガキがぶるぶる震えだした
「どうした、お前は来ないのか」
ガキは叫んだ
「て、テメェターミネーターかよ!強すぎんだろうが!」
俺は冷静に返した
「この管区に来たのがお前らの間違いだ。ここは自衛官が多く来る場所でな」
「クソッ、ぶっ殺してやる!」
正面から来た不良は闇雲にパンチを繰り出し、俺のみぞおちを殴った
「やっ、やったか!?」
「坂崎教官!?」
「・・・全然いたくないぞぉ?♪」
俺は思い切りガキの顔面にアッパーを食らわせた
帰り道、仲沢が俺に喋りかけてきた
「教官やっぱり強いです!」
「そ、そうか?」
俺は内心喜びつつ答える
「はい!」
「ラッチ、顔・・・」
「クソッタレ自衛官め・・・目に物見せてやっからなあ・・・・」
-翌日-
「は?暴力を振るわれた?」
「ああ、親御さんから苦情電話が入って今日直接来るそうだ」
俺は朝早くから小隊長室に呼び出され、行ってみると昨日のした不良のうちの一人が俺を名指しで苦情を入れたらしい
「坂崎2曹、君が正当防衛なのは店と仲沢一士の証言で分かってる。だが、一応会話をしてもらいたい。そこにきている」
俺は仕方なく、帽子を深くかぶって本部の応接室へと向かった
-同時刻 愛知県小牧市名古屋空港付近の廃工場-
「喜美谷2尉、武器の用意が出来ました」
「へぇ、いい武器じゃんっ。どっからめっけたの?」
スチール製OD色の箱にはスイスアームズ製SG552が収められていた
「依頼主のアルル氏の個人ジェットで運びました。税関はフリーですから」
「ほんで対戦車火器は、どうよ?」
「こちらを」
四方村は木箱を開けた
中には筒状のものが入っていた
「ん?M72LAWか?」
喜美谷が言うと四方村は答えた
「いえ、RPG-22です。ソビエト軍横流し品のひとつですね。十分装甲車を破壊するパワーは持っています」
「ふん、まあパトカーなんかこれ使わなくてもいいだろうケドな。何発だ?」
「50発です」
「よっしゃ」
「教官・・・」
部屋を出ると仲沢が立っていた
「なんだ、仲沢」
「私のせいで・・・何も悪くないのに」
と泣きそうな顔をするので
俺は手を仲沢の頭に置いて
「なくな。俺が悲しくなる。なに、気にするな。すぐ戻るから兵舎で待ってろ。終わったら今日もハイポートだぞ」
そういうと仲沢は
「はいっ!」
「うちの息子、こんな大怪我なんですよ!」
と母親
ラッチと呼ばれていた餓鬼は鼻に添え木をしていた
顔も包帯で巻いてある
「いや、しかしですね、彼が先に手を出したというので」
と楢木隊長
「だからといって大人が子供に暴力を振るうなんて!」
「そうだよ。何も本気で殴ることはないだろ!」
俺は口を出すなといわれているので座りっぱなしだ
「大体、そちらがさきに手を出したんじゃありませんの?」
「はい?」
と楢木隊長
「うちの息子がいい金づるにでも見えたんじゃなくて?」
俺は堪忍袋の緒が切れた
「いい加減にして欲しいですな。親ばかも」
楢木隊長が気まずい顔をした。俺は目線ですいませんという
「なっ!?お、親ばかですって!?」
俺は続けた
「ああ、親ばかだ。あんた、自分の息子が何してるか知ってるのか?」
ラッチと呼ばれてた餓鬼は顔を青ざめさせた
「うちの子は見た目はアレでも成績優秀のいい子ですのよ!」
俺は答えた
「ひったくり、お前だろ?昨日のさ」
ラッチは顔をさらに青ざめさせる
「う、うぐっ・・・」
「晴彦!?あんたまさ・・・か・・・」
「いやぁ、お手柄お手柄。よくやった」
と隊長
「すいません、勝手に出てって」
「いい、いい、気にするな」
俺が兵舎に戻るとやっぱり仲沢はいた
「あっ、教官!どうでした?」
俺は答える
「問題ない。さて、一緒にハイポートだ」
-7月10日AM9:30分 名古屋空港-
一機のガルフストリームが滑走路に向かってやってくる
機体にはUSAFのマーク
アメリカ空軍籍のビジネスジェットだ
中には完全武装のコマンド兵が5人小島勲を監視していた
滑走路には愛知県警機動隊とSAT、警察官が数百人待機していた
報道陣はシャットアウトされている
ガルフストリームは車輪を滑走路にこすり付けて着陸した
ドアが開き、アメリカ兵がMP5A5を構えながら外へ降りてきた
そして二人のアメリカ兵に連れられ、鎖をジャラジャラつけた小島勲が降りた
数十年ぶりの日本の地である
「引渡し許可証だ」
「了承した。護送車まで頼む」
青と白の鉄格子のはまった輸送車に小島は載せられた
なかには武装したSAT隊員10名が載り、ルーフを開けたパトカー3台が護送する
上空には航空警察のドーファンヘリ1機とベル412ヘリが1機、追跡する
警備は大規模で、小牧市から名古屋刑務所までのルートは封鎖されている
2台のOD迷彩をしたハマーH1が廃工場近くでエンジンを暖機させていた
中には喜美谷以下10名の兵員が乗っていた
「いいか、1台目がまず警察車両を掃討。2台目は輸送車を襲撃する」
最終チェックが行われていた
喜美谷は大方を確認するとモトローラ無線を手にとって連絡をした
「大矢、そっちはどうか」
「はい、滞空しています」
大矢正信元陸上自衛官。航空隊出身。
大矢はMD500Dを飛ばしていた
中には2人の元自衛官が乗り込む。
手には旧ソ連製9K38イグラがある。これも密輸品だ。
9K38イグラはロシア連邦軍でも最新の地対空ミサイルである
「準備はばっちり。いつでも」
喜美谷は全員に言った
「いいか、最初の襲撃以外の射撃は絞るんだ。SIGの弾は弱装弾だ。殺傷力はない。相手を気絶させれるだけだ。手榴弾の使用は控えろ。最悪でもスタングレネードだ」
喜美谷は言う
「じゃあ一丁行くか!」