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Japan Force  作者: 坂崎紗葵
第2章国境紛争
15/32

青年の意思、国家の意思、上官の意思

※性的表現を含みます

「イグナトーチェ、ウォトカをあまり飲むんじゃないぞ」


「けど同志軍曹殿、やってらんないですよ・・・週末は合コンだったのに」


ロシア陸軍PKF派遣小隊レオニート


彼らは今日、海岸の警備役であった。



『李、敵は?』


『は・・・警備兵が7名です』


『隠密作戦で行く。5名、来い。湛、貴様は狙撃だ』



中国兵たちは音のなるかさばる装備を置き、手にナイフを持って近づいた。


狙撃手は木にのぼり、時を待つ。




『やれ』



一人の中国兵は一人で見回っていたロシア兵に近づき、喉元をナイフでかっさばいた。


『美しい』



二人目のロシア兵はロープで絞め殺される。


『3人目が遺体を発見する。湛、仕留めろ』



狙撃銃はサプレッサーを装着しており、音漏れることなくロシア兵を地獄へ引きずり落とした。



「ん・・・?定時連絡まだか?」


ロシア軍の使用する野戦テントに中国軍はジリジリと近寄った。



「イグナトーチェ、見てこい」


「えー、俺じゃなくても!」


「行って来い」


「ちぇ」




『一人来ます』


『やれ』



イグナトーチェはかったるそうに草むらを歩いた。


「やってらんねー・・・」



”ガサガサっ”



「・・・」


イグナトーチェはAK74Mのセレクターをフルオートにがちりと変える。



「そこか!」


イグナトーチェは草むらにAK-74Mを撃った。



『あがっ!』







ロシア軍部隊の基地から警報が発令された。







『ばれたようです』


『しかたあるまい。通信兵!本隊に連絡!強制攻撃!』


『は!』





島はアラートモードに移行する。



イギリス軍どアメリカ軍、そして自衛隊にフィリピン軍。


彼らは示し合わせ、陣地防衛に入った。


ロシア軍は生き残ったイグナトーチェ以下7名を後退させた。




中国艦隊の動きはあまりにも大きく、CIAの衛星は見逃さなかった。


アメリカ海軍の派遣部隊は直ちに行動を開始した。


イージス艦と潜水艦は中国海軍を収める射程へと移動を開始した。





「警報か!」


坂崎は飛び上がった。


赤坂はうなずき


「敵部隊だ。デフコン1、オールアラート。くそっ、武器庫には鍵が!」


「こいつで何とかするしかないな」


坂崎は自衛用のシグザウエルP220(9㎜拳銃)を叩いた


「予備マガジンは2、か。きついが仕方ない」



自衛官たちの動きは早かった。


展開までに1分を要さなかった。



「点呼!・・・よし、全員いるな」


楢木隊長が話し始めた


「ロシア軍が接敵した。数は不明だが、3名死亡している。武器庫の鍵は今開けに行かしたが、状況は―」



その時、遠くから響く砲声がした。


「艦砲か、まずいな」




着弾はすぐだった。


自衛隊テント横の森林に着弾する。


「全員砲撃の放物線をよく見て行動しろ!」





『こちら古屯3、援護要請』


『了解、現在上陸用舟艇が急行中』



中国海軍は戦車を載せた揚陸艦を急行させ、兵力増強を図る。




-DDH-16 ひゅうが-


「中国艦隊が動き始めたぞ。SH-60Kは発艦!直ちに対潜行動に移れ!」


「アイサー!」



海上自衛隊のひゅうがからSH-60K哨戒ヘリが飛び立った。数は2機。




アメリカ海軍は空母よりF/A-18スーパーホーネット(対艦ミサイル)を発艦させた。




自衛隊は砲撃にさらされた。



「動けない!」



砲撃は彼らにあたりこそしなかったが、的確に動けなくさせてはいた。



そして迫っていた



中国軍は





1発の銃弾が世界を変えるというのは本当で





陸自自衛隊史上始めての戦死者が出てしまった。



1発の弾丸は陸上自衛隊北部方面隊の隊員のヘルメットを貫通し、脳天を貫いた。



前に居た同じ隊の隊員に生暖かいピンクの脳漿が振りかかる


「い、井上・・・?いの・・・う、うわあああああああ!!!!」


銃弾が彼らを晒した



「敵!敵だ!」



坂崎修一は腰の拳銃をとった



視界には一人の男



名も知らぬ男だが、殺意を込めてこちらを見る。


手には小銃が。


坂崎は9mm拳銃を撃った。


手には小さなブレ。


これで一人の男は命をなくす。


坂崎は叫ぶ


「撃て!死にたくなければ!」



自分より階級の上のもの、下のもの、全員が拳銃を構えた。



楢木隊長が叫ぶ。


「自由射撃!武器庫まで後退!」


バズン!バズン!


中国軍の侵撃を止めようと拳銃を撃つ。



これに加勢したのはアメリカ海兵隊だった。


イラクで場馴れした彼らは睡眠用のワーキングパンツ、裸に防弾アーマーを装備して自動小火器を撃ち始める。



「OpenFire!」






-同時刻 日本 陸自自衛隊守山駐屯地 女性用隊舎-


私には彼氏がいない


というか作ったこともない。


どういうわけか、経験がない


「はぁ・・・」


ボリボリと頭をかき、洗面台で手を洗い冷蔵庫へ向かう。


牛乳を取り出し、コップに注ぐ。



「んぐ・・・んぐ・・・」


一気に飲み干す。


格好はタンクトップに下は下着。


妖艶ではあるが、ココには女しかいない。



「はぁ・・・教官にして・・・ほしいな」


ドクドクと心臓が鼓動する。


「ああ・・・だめだめ・・・」


下腹部がじんじんする。


「女の部分が目覚めてるのかなぁ」



ブチッ


「・・・?」


何かが切れた



「あっ、ネックレスが・・・」


それは教官とデート(たぶん)したときに買ってもらった銅のハート型ネックレスだった。


「縁起悪いな・・・」



仲沢凛は心配になり、メールをする。




「大丈夫ですか?」


状況は刻一刻と悪い方向に進んでいた。





「89式小銃、確保!」


「よし!」


自衛隊は無事武器庫までたどり着いた。


鍵を開け、隊員たちに銃を行き渡らせる。


「弾には限りがある!注意して撃て!」


と、楢木隊長が声を張り上げる中そこに無線機を持った赤坂が来た。


「隊長、海自が状況説明を要求しています」


「代われ」


-DDH16ひゅうが CIC-


「こちらは艦長の尾崎です」


『こちら第10師団の楢木です。ご用件は。なるべく手短に』


「状況は?」


『悪いです。中国人がなだれ込んでるように見えます。米海軍に出来るなら掃射をお願いしたいところです』


「ふむ、負傷者は?」


『北部方面隊の隊員1名が殉職、ほかは健在です』


「でてしまいましたか」


『はい。それで、海自は何をしていただけますか?』


「我々はSH-60Kしか持ち合わせていません。現在、2機がそちらへ向かっています」


『回収地点は?』


「島中央部の開けた場所です。そこから30分」


『了解、通信を終了する』




尾崎は一刻も早くヘリが彼らを救うことを願った。




-SH-60Kシーホーク 1番機-


「命令変更、島中央部への着陸」


「了解・・・マテ、磁気電探に反応あり。夏級潜水艦と見られる」


「データリンクに照合させろ」


「OK・・・よし、ビンゴ」


「こちらシーホーク1番機、敵潜水艦発見指示を」


『こちらひゅうがの尾崎。確かか?』


「確かです。敵は弾道弾発射態勢の模様」


『了解、魚雷発射』


「アイサー魚雷発射」



シーホークはホーミング魚雷を海中へ叩き込んだ


「データをあしがらへ転送」



-イージス艦あしがら CIC-


「シーホークよりデータ来ました」


「前方VLSのセル1からセル5、VLアスロックを発射態勢に」


「了解・・・インプット完了」


「コメンスファイア!」




イージス艦あしがらはアスロック対潜ミサイルを射出する。



1発目の魚雷は潜水艦を破壊できなかった。


-夏型潜水艦-


『日帝の連中に殺されてたまるか。上陸部隊の支援を急げ』


『艦長!』


『何だ!』


『日帝の対潜ミサイル5発が!』


『なにぃ!?デコイはもうないぞ!早くミサイルを撃たんか!』


『無理です!』



-SH-60K1番機-


「・・・圧壊音確認、海域異状なし。命令を続行、島へ向かう」




-中業島-


「聞いたな!30分で行くぞ!」


隊員たちは素早く森に走りだす。


すると四方八方から銃撃を受けた。


「アンブッシュ!(待ち伏せ)散開し、索敵!」



坂崎は怯える心を何とか抑えこむ


(ここで死んだら・・・仲沢のあの笑顔見れないじゃんか・・・)


89式小銃を握りしめ、サイトを覗く。


草葉の陰にヘルメットが見えた。


緑のヘルメット、ロシア軍でもアメリカ軍でも自衛隊でもない。



「隊長、敵です」


坂崎の言葉に楢木は返す


「撃て」




坂崎は1発、弾薬を放つ。


5.56㎜の弾はそのまま中国兵を射ぬく。


『感づかれてるぞ!』





-F/A-18スーパーホーネット部隊コールサイン「スクウォーター:アンジェリコ」-


「レミルズ隊、敵輸送船部隊捕捉。どうぞ」


-E-2Cコールサイン「スクウォーター:レミルズ」-


「こちらレミルズ隊、レーダーには正しくそれがアカの海軍艦艇ということを表している。攻撃し、撃沈せよ」


『アンジェリコ了解』




アンジェリコ隊10機は右へ高度を落とし、輸送戦艦部隊へ攻撃を開始した。




『おい、あれはなんだ?』


『敵空軍機!』



武装のない輸送船はハープーンミサイルによる集中攻撃を受け、10隻中8隻を失った。



中業島方面中国海軍は輸送船団と大切な兵員を海の藻屑にしてしまった。


残っているのはソブレメンヌイ級駆逐艦3隻と僅かな補給船2隻


勝ち目などなかった。




-中国 北京-


「中業島部隊が勝手に行動を開始!国連平和維持軍と交戦中!」


主席は椅子から落ちそうになった


「なんだと!?撤収させてなかったのか!」


「状況は不明、しかし我が艦隊は壊滅的打撃を受けたとのことです!」


「わ、我が国の利益を考えろと言うたのに!・・・クソッ!全員離反者だ。国家反逆罪だ!」





『こちら1番機、到着。2番もだな。陸自の隊員さん達、早いとこ頼む』



ヘリは予定通り着陸を果たした。


中国軍の追撃を回避し、陸自の部隊は無事についたかに思われた。



「・・・ん?北部方面隊の井之頭3等陸曹がいないぞ!」



それは先程死んだ井上3等陸曹の脳漿を頭からかぶった隊員だった。


遺体は現場に放置せざるを得ず、彼は同意してついてきていたはずだった。



「ちょっと見てきます」



坂崎は走りだす。



森に入ったところで井之頭を見つけた。


「おいいの・・・!」



彼は中国兵に取り囲まれているのが明白だった。


5人、5人の敵が彼を狙っていた。



『日帝め、死んでしまえ』


『このクソ豚が』



中国兵たちが言い合う中、李はこの作戦の成功を確信していた。


家族に腹いっぱい食べさせられる。





坂崎は89式小銃を構え、横薙ぎに掃射した。



李は自分の血に溺れてしまった。


『ここで・・・死ねるか・・・』




「大丈夫か?」


井之頭は震えてはいたが、ヘリまでは行けそうだった。



坂崎は彼に肩を貸し、ヘリまで引きずる。






『中華人民共和国に・・・栄光・・・を』



ヘリに乗り込んだ時、坂崎は背中に衝撃を感じた。



「・・・え?」



李は最後の力を絞り、92式拳銃を坂崎に当てた。



李はそのまま崩れる。




「坂崎!しっかりしろ!」


楢木隊長の声が聞こえる。


「あ・・う・・・お、俺は・・・」


痛みの激しい当たりを手で触ると、ぬるっとした感触が手に伝わった。


「血・・・かぁ・・・」


「しゃべるな!赤坂!神部!手伝え!」


坂崎はアーマーのポケットを開け、安産祈願のお守りを取り出して握りしめた。


「・・・まだ死にたく・・・ない。く・・・そ」






-中華人民共和国 雲南省-


あばら屋が点在する村があった。


地図に表記されないが、それなりに農民の住む村だ。


そこに一台の場違いな公用車が来た。


中国共産党の公用車だった、



共産党の制服を着込んだ4人の党員が車から降り、1軒の農家に立ち入る。


「李悌一の親、李鷭眞はいるか?」


一人の60代の男性が家の奥から出てくる。


「私が鷭眞ですが・・・?」


共産党員は高らかに宣言した。



「貴様の息子、悌一は国家反逆罪及び国家転覆罪を犯した。その思想を教え込んだのは貴様だ。逮捕する」





-日本 AM4:00-


深夜番組も終わり、朝の番組が始まりはじめた頃だった。



「番組の途中ですが、ニュース速報をお伝えします。本日未明、中国軍がフィリピンの南沙諸島へ侵攻を開始しました。


この攻撃により、自衛官が少なくとも3名負傷しているとのことです。続報が入り次第お伝えいたします」



-アメリカ合衆国 ホワイトハウスAM2:30-


攻撃の数分後には中国の大使が召喚された。


合衆国大統領は大使に状況説明を要求した。



「大使どういうことなんですか?停戦に合意したではないですか」


大使は震えながら


「匡壯謁海軍大佐という海軍将校のクーデターでして、我々の所為ではないのです大統領」


「信用できませんね」


「匡壯謁海軍大佐以下、艦隊の家族は現在公安と党が確保しています。どうかご心配なく」





艦隊は匡壯謁海軍大佐の最終命令「絶滅覚悟攻撃」を受け、艦隊は無理やりにアメリカ海軍・海上自衛隊の支配する海域へ侵入した。


海自のイージス艦あしがら、米海軍のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦シャイローがこれに反撃、対艦ミサイル攻撃をVSLによって行った。


中国海軍艦隊は迎撃を受け、壊滅。上陸部隊もすぐさま鎮圧されてしまった。



李悌一は国への忠誠心を最後まで捨てなかった。


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