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Japan Force  作者: 坂崎紗葵
第2章国境紛争
14/32

南沙諸島の影と青年たちの闘争



-中華人民共和国 北京-


「主席殿、わが海軍は現在南沙諸島全域をカバーしました。また陸軍部隊も順調に進軍しつつあります」


「南方の馬鹿共に自分達の矮小さを思い知らせるのだ。無停止攻撃を開始せよ」


「はっ!」





-9月23日 AM9;00南沙諸島 中業島沖-


中国海軍は航空戦闘を開始するために空軍の援護に回った。


海軍のソヴレメンヌイ級駆逐艦と揚陸艦はずんずんと海域を突き進んできた。



中業島へ戦車部隊を送るためである。


中業島はインド空軍の空爆により滑走路が壊されて中国空軍は出てこれない。


そこに目をつけたインド軍は南沙諸島全域をカバーできる位置に航空母艦ヴィラートを派遣し、ハリアーを使って制空権を確保した。



フィリピン空軍は空軍機を持たないため、全面インド空軍が出張っている。



インド海軍は敵揚陸艦を叩くため、シンドゥゴーシュ級通常潜水艦を4隻派遣し、さらにフィリピンからSu-30が対艦ミサイルを装備して飛び立った。



一方中国海軍はインド海軍の出撃を考慮し、ソヴレメンヌイ級などの揚陸部隊とは別に対潜部隊を配備。


Z-9対潜ヘリが哨戒活動に当たっていた。




「・・・?」


Z-9対潜ヘリ1番機の林曹分伍長は対潜レーダーに映る機影を確認した。


「敵潜水艦をレーダーに捕らえた。確認してくれ」


「何?・・・これはシンドゥゴーシュ級潜水艦だ!」


「命令を!」

      

「魚雷を撃て!」


「了解!」



中国海軍のZ-9ヘリは機体側部についている魚雷を投下した。




-インド海軍シンドゥゴーシュ級潜水艦-


「中国人に感づかれました。敵、魚雷発射!」


「デコイ射出!」


「了解!」


潜水艦は囮を発射し、魚雷を回遊した。


さらに見つからない深さまでもぐった。


「こちらシンドゥ・ナトゥラ。敵に探知されたも回避。空軍さんのデータ網に敵戦艦は映らないのか?」


「まだ映らない。映ってるのはコルベットだ」


「早くしてくれ、対艦巡航ミサイルが今か今かと待ってる」




-Z-9 1番機-


「逃したみたいだ」


「クソッ」


林伍長は悪態をついた


「林、あせるな。ここの辺りに敵がいるのはコレで明白じゃないか。燃料もそろそろマズイし、母艦に帰還するぞ」


「了解、上官殿。1番機、燃料補給のために帰還する」






「敵を捕捉!」


「よし!コード入力開始!」


「完了しました!」


「対艦ミサイル発射!」



1発のミサイルが海中から飛び出た。


インド海軍のそれは中国海軍の指揮を執る戦艦052B型駆逐艦を狙っていた。


2隻しか作られなかった052B型駆逐艦だが、性能は中の中程度だという。


だがレーダーはそれを見逃さなかった。



「敵潜水艦、対艦ミサイル射出を確認!」


「哨戒機急げ!くそっ、対空班は用意しろ!」



艦隊に非常警報が鳴り響く。


警報に、上陸用舟艇に詰められた中国陸軍の兵隊達はおびえを見せる。


元々、ヘリで突然連れてこられて詰められた兵隊だ。ここがどこで、自分が誰と戦っているのかも分からない。






4隻のインド海軍潜水艦はさらに第2波攻撃を開始。合計8発の対艦ミサイルが艦隊をめがけて直進した。



Z-9対潜ヘリ部隊は海域へ急行した。



しかしながら待ち伏せていたAV-8ハリアーに迎撃され、全機が墜落という惨事になった。




「友軍の哨戒機が迎撃されたぞ!迎撃できるのか!」


「対空砲を撃て!迎撃ミサイルは撃てないか!」





フィリピン軍は旧式の車両輸送船LST-1は3隻、中にはスコーピオン軽戦車20両とコマンドゥ装甲車20両を積み込んだ。


さらに兵隊を積んだパゴロド・シティー級輸送船5隻。


これらの艦艇は中業島への上陸を目指し、順調だった。




フィリピン陸軍の上陸部隊は何の妨害もなく、海岸へ上陸した。




中国海軍の先行上陸部隊は壊滅的被害を受けていた。


度重なるインド空軍の爆撃機のせいだ。



「敵上陸部隊が上陸ッ!」


「攻撃せよ。われらが中国共産党に栄光あれ・・・・」



中国軍の上陸部隊は無謀にも攻撃を開始した。



フィリピン陸軍部隊はスコーピオン軽戦車と歩兵部隊でコレを撃退し、島の半分を押さえることに成功した。





-ベトナム 南威島-


南威島に空挺降下した中国軍は夜中、ベトナム陸軍の追撃を受けて散り散りになった。


各個小隊が撃破され、中国軍は南威島でも占領をすることが出来なかった。




-南威島方面中国艦隊-


中国海軍の部隊はフリゲート艦を引きつれ、さらに巡航ミサイルが撃てる夏型原子力潜水艦とゴルフ級通常潜水艦を配備した。



夏型潜水艦とゴルフ級潜水艦には通常弾頭の巡航ミサイルが積まれ、ベトナム陸軍の駐屯する南威島の司令部を狙っていた。



「位置情報入電!」


「ベトナム人に我々の力を示してやれ。ミサイルをロックオンしろ」


「了解!・・・入力完了!」


「発射!」




夏型潜水艦はVLSより巡航ミサイルを発射した。


中には炸薬がこめられている。




巡航ミサイルは防衛網を難なく通過し、南威島司令部を直撃した。






-同時刻中国 北京-


外国人記者等がいっせいに集められた。


会見を開くという。



国家主席は堂々と現れこういった



「我々は安全目的で海域を航行中、フィリピン海軍の攻撃を受けました。我々はこの問題に対処するため反撃、これを撃沈しました」


記者達が叫ぶ


「ベトナムでの侵略行為はなんです!」


国家主席は言葉を返した


「侵略?いいえ、違います。我々の土地を取替えしているだけの行為です」




-翌日 AM10:00アメリカニューヨーク-


国連は戦闘の悪化によって中国側の核弾頭使用によるインドとの全面核戦争を恐れ、両国へ停戦を打診し従わない場合経済制裁を行うと通告した。


国際連合はスラヴィニアで活動しているPKFの3分の1を撤収させる手はずを整えてこの地域紛争へ終止符を打つことを決めた。




-通告後 中国・北京-


「おのれ、資本主義共め。侵攻はどうなっておる」


「国連の平和維持軍が停戦ラインに規制線を敷いています。不可能です」


「クソッ!どうにかしてあの島を取り上げろ!あの資源が欲しいのだ!」




-同時刻 フィリピンマニラ ASI総合司令部-


「中国軍はコレで下がるかな」


とフィリピンの大統領。


ベトナムの大使は 


「中国人どもは根深い。条約無視の攻勢に出るはずだ」


インド大使も同調し


「まさしく。ああ、そういえば日本とアメリカの支援は受けられそうですかな?」


ベトナム大使は


「両方乗り気ではないなぁ」


フィリピンの大統領は


「この戦い、日本やアメリカの支援なくしては勝てませんぞ」





このあたりから多国籍軍が中業島、南威島に駐屯を開始した。


構成国はイギリス、フランス、ロシアから構成され国境地帯の防衛に当たった。



しかし周辺海域まではカバーできないため、海域での衝突が国連の懸念材料だった。



これは勢力的に劣るASIにとっても懸念材料であった。


中国側としてはこれはいい条件で、潜水艦や潜航艇を投入した。



ASIと国連は最大の海軍力を持つアメリカ海軍第7艦隊とそれに次ぐ海軍力を持つ日本国海上自衛隊に支援を依頼した。


ロシア海軍は諸事情と航路の問題ですでに断っているため、ASIと国連には頼みの綱であった。



アメリカ合衆国は第7艦隊を要請どおり南沙諸島海域へ派遣した。


規模はタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦シャイロー1隻、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦3隻、空母1隻、潜水艦2隻のレベルであった。



日本は国内世論批判が多く、更に法律の壁もあるため米海軍の支援役という体で参加した。



と、いえども規模はそこそこでイージス艦あしがら1隻を筆頭にたかなみ型護衛艦2隻、むらさめ型護衛艦2隻、対潜ヘリ収納用母艦ひゅうが、そしてそうりゅう型潜水艦1隻とおやしお


型潜水艦1隻。十二分な艦隊をそろえて出港した。




地上部隊も出すことになりアメリカは海兵隊を投入。日本は陸自を投入することになり経験豊富な第10師団から数人、他の師団から数十人を派遣することになった。



-10月7日 南沙諸島中業島-


陸上自衛隊の平和維持部隊は10人でここに駐屯していた。


他にはロシア陸軍が10人、アメリカ海兵隊が10人、そしてイギリス陸軍10人。


島に中国軍はいない。


海岸ラインにPKF部隊は駐屯し、異常を逐一報告する。


フィリピン陸軍はこのPKF部隊に見張られつつ100人規模の部隊を駐屯させている。



中国海軍は即時展開が出来るようにここから数百KM離れた海域に艦隊を止めてある。




坂崎修一は悩んでいた。



「仲沢は何を言おうとしたんだろうか」




-9月28日 日本・陸上自衛隊守山駐屯地 遠征前日-


「教官、なんで私ダメなんですか?」


「何度言えばいいんだ?仲沢。今回のPKFは3等陸曹以上でしか参加が許されてないんだ。おとなしく訓練していろ」


「そんなぁ」


教官は私の頭に手を置き、ぐしゃぐしゃと撫でた


「ちょっ、痛いですって!」


「すぐ帰ってくるさ」




-その日の夜-


「・・・決心・・・したぞ。私は告白する」


「ほー、意気込んでるねえ」


「ナナ、見ててよ。私告白する」






-9月29日 遠征当日、駐屯地-


「交代要員に絞られろよ、池田!」


「了解です!」



俺は目で仲沢を探した。


もうトラックに乗らなければ。


俺がのり、トラックにエンジンがかかる。


そこへやっと仲沢が現れ


「教官!言いたかったことがっ!」


「なんだ!早く言え!」



「私教官の事が―」




『出発します!盛大な拍手を!』



かき消された。


拍手の中に仲沢の声が消えてゆく








-10月7日 中業島-


「ふぅ・・・」


「どうした、坂崎。浮かない顔して」


「ああ、赤坂か」



赤坂はサングラスをかけていた。



「いや・・・仲沢が心配でな・・・」


「そうか・・・ま、がんばれよ。とりあえず状況報告だ」


「おう」


俺は椅子にかけ直し、話を聞く体制をとった。



「赴任から5日でわかったことをまとめよう」


「わかった」


赤坂は話し始めた



「中国軍は出てきそうだ。これは間違いない。そしてココにいるフィリピン軍は全員信用できる。


PKF部隊も信用できるだろうが、スパイには気を付けたい。まあこんなとこか」


「だな・・・っと」


PKF部隊が持ち込んだ携帯電話専用の電波塔を介して送信されたメールが届いた。



-From:仲沢凛


Subject:お元気ですか?


やっとメール送信できました(><)


こっちは元気です。やっと涼しくなりました。


行く時に渡したお守り、なくさないでくださいよ!




「ふっ・・・」


「お?めったに笑わない坂崎がどうした」


「神戸先輩」


神戸先輩はのっしのっしと歩いてきた。


「ん、ああ、あのちっこいやつか」


「はい。まあかわいくて」


神戸先輩はゲラゲラ笑い


「お似合いだとは思うが?」


と分けのわからないことを言い、ノシノシと戻っていった。








―日本―


「あっ!メール!」


私は思い切りとった。


From:教官?


Subject:Reお元気ですか?


元気だ。いや、お前に会えないから少し不機嫌だ。


こっちは何とかなりそうだが、死んだ時はすまん。




「もう・・・死んじゃダメですよ」




―中業島―


From:仲沢凛


Subject:ReReお元気ですか?


死なないでください!なんのためのお守りですか!




俺はお守りを見た


「安産祈願じゃあなあ・・・」



巫女さんも驚いただろうな。






―中国艦隊 中業島沖―



『孫君、どうかね』


「はっ、匡大佐殿。現在我が海軍は国連という資本主義に縛られてはいますがいつでも攻撃可能であります」


『孫君、我々はこの度国連から脱することにしたよ』


「そ、それは国家主席様のご意思で・・・?」


『そうだ。君はこれから13億の民の総意を表すのだ』


「了解!」




-アメリカ合衆国ラングレー CIA本部-


「マーズ、聞いたか?この回線」


「ああ、聞いた。連中動くな」



CIAは回線を傍受していた。


「海軍部隊に伝達しろ」





匡壯謁海軍大佐。


内地勤務のタカ派。


国連決議で弱腰となった主席に見切りをつけて自分の操れる中業島方面の艦隊を勝手に行動させている。


主席は撤収を決定しており、すでに秘密裏とはいえASIも合意していた。


実際、南威島方面と太平島方面の艦隊は撤収を開始している。





中国海軍中業島派遣艦隊は行動に移した。


ゾディアックボートに海軍の特殊作戦部隊が乗り込み、浜を目指す。



時はAM1:00


秋空の下、十二分に暗い。




農村出身の李悌一伍長はこれで家族に腹いっぱい飯が食べさせられると思っていた。


「伍長、これでいつも言っていた家族を裕福にさせる夢が実現できますね!」


「馬一等兵、そうだな。お前もじゃあないか」


「ええ・・・へへ」



彼らは知らなかったのだ。


自分たちが個人の命令で動いていることを。






ゾディアックボートは無事、崖下の小さな浜に着岸した。



「伍長、フックをかけろ」



李はブンブンとカウボーイの縄のようにフック付きのロープを回し、崖上にかけた。


「かかりました」


「共産党に」


『共産党に』





CIAのつかんだ情報は直ちに艦隊へと送信されるはずだったのだが、手違いが起きてまだ届いてはいなかった。



つまり全員警戒していないのだ。



総勢100人の潜入部隊は崖を登って林を走った。




男たちはただ、欺かれていた。


それを知らぬ若者たちは家族のため、自分の未来のため、国の未来のためにPKF部隊の野戦キャンプ地を目指した















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