南沙諸島危機
スラヴィニア反乱から数日、中国海軍は南沙諸島海域における戦闘を開始した。
一方で陸上自衛隊第10師団の坂崎と仲沢は二人で外泊することに・・・!
第二章「国境紛争」
-第1話「南沙諸島危機」-
-AM4:00 日本-
「本日未明、フィリピン南沙諸島沖で同国の護衛艦が沈没しました。原因はまだ分かってはいませんが、船体は真っ二つになり生存者はいまだ見つかっていないとのことです。
それでは現地の楢沢リポーターへつなぎましょう。楢沢さん?」
「現場の楢沢です。ここマニラでは朝から軍の動きが活発化してきています。本日の朝2時ごろ南沙諸島スプラトリー沖で哨戒活動をしていたPF-11
ラジャー・フマボンが沈没しました。フィリピン軍は救助所部隊を現地に派遣するようです。こちらからは以上です」
「わかりました。ありがとうごうございました楢沢さん。さて、次のニュースです・・・」
-AM5:00 スプラトリー諸島沖 座標エクスレイPF-11沈没地点-
フィリピン空軍籍のUH-1ヘリは救助隊の海軍の隊員を積み、飛んでいた。数は5機。
何があるか分からないため、武装したUH-1ガンシップも飛行に追随した。
パイロットは現場に到着するまで後すこしだなと、思った。
その時、航空無線に割り込みがあった。
『こちらは中国海軍である。当海域は我々の支配下にある。即刻引き返せ』
「中国海軍だって!?」
パイロット達は驚いた。
救助に駆けつけようとしていたUH-1飛行部隊を待ち受けていたのは海域を支配する中国海軍の艦艇だった。
Z-9ヘリが銃座でこちらから狙っている。
戦艦の対空兵器もまたこちらに狙いをつけていた。
戦艦は2隻、ヘリは4機だった。
とても無武装機5機とガンシップ1機で勝てる相手ではなかった。
フィリピン空軍機6機は陸へと引き返すことしか出来なかった。
「孫中佐、うまくいきましたね」
「ああ、那下士官」
ソヴレメンヌイ級駆逐艦の艦長室で男がふんぞり返っていた。
名は孫満兆。
中華人民解放軍の海軍中佐だ。
「しかし特殊部隊の連中、なんで撃ったんだ」
「相手の発砲に驚いて撃ったようですね」
「素人か。これだからバカは困る。それで、沈んだ駆逐艦は?」
「はい、生存者を救出後に全員送還予定です。死体は船体に押入れて海底に縛り付けて回収できないように」
「よろしい那下士官。フィリピン軍は出てこないよな」
「はい。先ほど救出部隊を追い出したところです」
「南方の小国の癖して我々の領海に立ち入るからだ。馬鹿共にはいい罰だ」
-マニア市 フィリピン陸軍基地-
「今回の件は流石に横暴すぎます!」
「国内では合わせたかのように華僑が暴れ始めています。すでに国民数名が死亡しています」
「中国軍は揚陸艦を派遣し、スプラトリー諸島に接近しつつあります」
「ふぅむ・・・」
大統領は思案した。
これは中国人による攻撃なのか?
-日本 沖縄県アメリカ軍司令部-
「中国艦隊はすでに南沙諸島付近に集結中であります、大佐殿」
「まったく、あの連中はどこがどこだか理解していないようだな」
「はい。現在フィリピン軍のデフコンレベルは3、無線はCIAが傍受しています。また、ベトナム軍もこれに警戒しデフコンレベルは4となっています」
「分かった、いざというときのためにMEUを準備しておけ。あとは日本にも出動できるよう連絡を」
「了解しました」
-日本 愛知県守山市陸上自衛隊守山駐屯地-
「はぁ・・・」
「どうした、仲沢」
昼下がり、仲沢が自動販売機の横でため息をついていた
「あっ、教官・・・いえ、なんでもないんです」
「ん?なんだ、言ってみろ」
「い、いえいいんです!」
仲沢は走り去ってしまった
「なんだったんだ・・・?」
「告白なんてゼッタイ無理ッ!」
私は木陰で叫んでいた
「ナナ、やっぱわたしは・・・」
「おーい、なかざわー」
「えっ!?」
後ろから声が聞こえてきた。
振り向くと教官が走ってくる。
「どうしたんだ?急いで」
「えっ・・・あと、次の非番はどこへ行きましょう!?」
今聞くことじゃないよっ!
何聞いてるんだ私!
「うーん、前回は俺が決めたしな・・・次は仲沢が決めてくれ」
「わ、わたし!?」
「言いだしっぺだろ」
うーん・・・と
「海水浴・・・?」
-ベトナム 南威島沖-
「艦長!中国海軍の艦艇数隻がわが海域へ侵入しました!」
タランタル型コルベット5隻は直ちに海域へと急行した
「ギュン曹長、インド海軍との連絡は?」
「ハッ、デリー級駆逐艦1隻の援護が約束されております!」
「頼もしい。インド政府と仲良くなっておくべきだった。フィリピン海軍の動きは?」
「現在、スプラトリー諸島沖での事件を受けてか援護は出せないとのこと。ただもし同盟を組むのであれば参加したいと」
「よしよし。では行くぞ」
その海域では中国海軍のフリゲート艦「ジャンフー」が2隻待機していた
両者にらみ合う形だ
-ベトナム 首都ホーチミン-
「ようこそ、フィリピン国外務大臣」
「インド外務大臣も」
ベトナムではインド・フィリピン両国の外務大臣とベトナムの首相が会談していた。
「今回お集まりいただいたのは他でもない、あの野蛮な中国人共の件です」
「大方そう認識を。我々両国もあの粗暴な振る舞いには心底困っています」
「そうですね。今回の行動はあまりにも逸脱しています。フィリピンも1隻船を沈められおりますし」
「表向きは違うのです。船体と乗組員も帰ってこず、海域は封鎖されていて」
「今こそ我々で立ち上がるべきでは?」
「それには中華民国の了承が・・・」
「台湾はすでに押さえました」
「なんと」
インドが口を開いた
「では・・・こうしましょう。あなた方が主張した領土はすべてその国の領土。そして同盟を組み、中国から逃れる」
-9月20日-
「本日、インド・ベトナム・フィリピン・台湾は条約を結びました。この条約国は南沙諸島連合という組織であり、南沙諸島海域を中国海軍から守る意図があるようです」
「やってくれる」
アメリカ合衆国大統領はこの決定に気に喰わなかった
「結果、わが軍は兵站活動に回るわけだ。フィリピン、台湾はわが軍の旧型武器を使っている」
「はい、大統領」
大統領次官は同意した
「次官、中国の動きは?」
「はい、中国海軍の遠征部隊はフリゲートとミサイル駆逐艦を全域に配置しています」
「ふんふん、それで南沙諸島連合軍(Allied Spratly Islands 以下ASI)は?」
「はい、主に陸軍部隊を輸送船に積んで個々が主張する領土に運んでいます。海軍力は主にインドとベトナムです」
「ふむ、ありがとう」
-9月21日AM3:00 南沙諸島中業島-
中国海軍の特殊潜行部隊は潜水艇でこの島へ上陸した。
目的は島の実効的な支配。
将兵は数百あまり。
滑走路が設置されたこの島には中国空軍機を止めれるため、利点が大きかった。
さらにフィリピン空軍は現在戦闘機を保有しておらず、この空港はもぬけの殻だった。
潜水艇2隻から20人の特殊部隊が降りる。
03式自動小銃には消音機が取り付けられている。
「行け」
中国軍特殊部隊は小銃を持って空港施設へ走る。
「管制塔を制圧し、無線を奪取する」
-9月21日AM7:00日本 愛知県一宮市-
「仲沢、ヘルメットつけろよ」
「はい、教官」
実家に止めてあったバイク、前に買ったホンダのバイクに俺はまたがった。
大学時代に買った奴だ。
しばらく乗ってないけど、まぁいいだろう。
とりあえず点検だけをしておく。
「よし・・・」
バイクにまたがり、特殊部隊が使うようなヘルメットをかぶる。
仲沢には女性用のヘルメット(元は高校のときに乗ってたスクーター用、ついでにいえば元カノの)をかぶらせる。
高速道路に途中で乗り換えた。
「しかし何で海水浴なんだ?」
「したかったんですもん!」
今から向かうのは愛知県知多半島の海水浴場だ。
残暑がいまだ厳しいのでまだあいているそうだ。
「俺とじゃなくても、七宮とか加藤とか、あと里中先輩とかいるだろうが!」
「だって!」
「まぁ、いいわかった。俺も暇だったしな」
-前日 ショッピングモール-
「うーん、これがいいかな・・・」
私は手に水色のシンプルな水着を手にとっていた。
「奴はこっちが好きだろう」
横から声が聞こえ、進めたのはピンク色のすこし派手な感じの水着だった。
「え・・・?」
顔を見ると里中美紀3尉の姿があった
「里中3尉ッ!?」
「坂崎なら露出が多いこっちのが好みだ」
「何で分かるんですか?」
「実際そうだったからな。私も奴が着たばかりの時に誘おうとしたんだ。ま、結果断られたが好みは聞いたんだよ」
「へぇ・・・」
「よかったら私が色々と教えてやるが?」
「え、遠慮します」
「そうか、残念だ」
結局私は水色の、だけど先ほどのピンク色の水着と同タイプのを買った。
-現在-
「しっかりつかまっとけよ?」
「はい!」
仲沢は俺の腹に手を回し、きゅっと抱きしめる
ヘルメット越しにふわんといい匂いがした。
「行くぞ」
スピードを出して海岸へと向かう。
「到着」
「教官、かっこよかったです!」
「ん?そう・・・か?ありがとうな」
バイクは駐車場に止め、海岸へ向かった。
「暑いな・・・・」
「はい。あっ、着替えてきますね。先に海岸で待っててください」
「わかった」
俺は男性更衣室に入り、服を脱いで黒の海水パンツを穿いた。
じりじりと肌を焼く日光。
砂が足を焼く。
「まだかな・・・」
肩をとんとんと叩かれた。
「教官、遅くなりました」
「おま・・・」
俺は驚いた。
豊満とはいえないが、子供の域を脱した胸に水色の水着、そしてくびれた白磁の腹部に水色の下着。足も綺麗で
思わず見とれてしまった
「きょう・・・かん?」
「ああ、いやっ、綺麗だな。かわいい」
「あ、ありがとうございます・・・」
「泳ぐか」
俺は海へ入った。
ぬるい。
「大丈夫か?」
「はい」
俺は背泳ぎで泳いだ。
「どうだ?仲沢」
教官が私に聞いたので私は
「楽しいです」と答えた。
教官は無駄のない体型だった。
変態かもしれないけど、興奮してしまった。
1時間程度泳ぎ、私と教官はお昼を食べるために海の家に入った。
「何を食べたい?」
「うーん、焼きそばで」
「じゃあ俺はラーメンだな」
料理が届き、俺はラーメンをすすった。
「うまいな」
「はい」
食事を終え、デザートのソフトクリームとカキ氷を頼んだ。
仲沢はソフトクリームで俺はイチゴカキ氷だ。
仲沢はおいしそうにぺろぺろとソフトクリームを舐めていた。
それがまたかわいかった。
俺はすばやく仲沢のソフトクリームを舐めた。
「きゃっ、教官・・・!?」
「うまいな。お前も食べてみろ」
俺は代わりにカキ氷を差し出した。
「あむ・・・おいしいですね・・・ッッ!」
仲沢は頭を押さえた
「キーンッってしたか?大丈夫か?」
「え・・・えへへ・・・」
午後、あと1時間泳いで帰ろうと思った。
俺は波間で体を任せた。
-9月21日AM3:10 南沙諸島中業島-
管制塔は民間の管制官が一人いた。
中国海軍特殊部隊の隊員が一人、アーミーナイフを持って椅子に座っている管制官に近づいて首にナイフをつきたて、掻っ捌いた。
血がぷしゅっと音を発てて壁へへばりつく。
『虎1、管制塔制圧』
「了解」
他の隊員たちはこの島へ駐屯するフィリピン陸軍の部隊に攻撃を始めた。
歩哨を消音機付の88式狙撃銃でしとめていった。
「行け」
兵舎に特殊部隊たちは高性能爆薬を設置し、起爆した。
島に残っている兵隊たちはもういなく、完璧に島を制圧してしまった。
-9月21日PM3:00 日本 愛知県知多半島-
「仲沢、あがるぞ」
「はーい」
教官にいわれて私は泳いで教官を追った
海岸まで20m、そこで異変を感じた。
「うぐっ・・・!?」
足が痛い
「まさかツッた!?」
私は海の中へ引きずり込まれた。
「教官ッ!助けッ!ごぼっ・・・がはっ・・・!」
ヤバイ。
手が動かない。
目が閉じちゃう。
やばいやばいよぉ
ガッとその時手を掴まれた
思い切りその腕に引き上げられた。
海面へ出た
体力が・・・抜けて・・・
「泳げないか!?」
「は・・・い・・」
「わかった、がんばれよ」
教官は私の腕を掴んで思い切り背負って泳ぎ始めた。
意識・・・と・・・ぶ・・・
「おい、仲沢!?仲沢ッ!」
やばい、意識が飛んだか。
海岸まで持ってくれ・・・・
海岸まで運ぶとライフセーバーが走ってきた
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫だ。知識は心得てる」
俺は気道を確保し、心臓マッサージを始める
「帰って来い!」
仲沢はピクリともしない。
俺は人工呼吸に踏み切ろうと思い、顔を近づけた。
そしてマウストゥーマウスをしようとしたとき
「う・・・けほっ!」
帰ってきた。
「きょうか・・・ま・・・さか?」
「人工呼吸はまだだ、バカ・・・どうせならさせてくれよな」
思わず本音が漏れた
「え?」
「き、気にするな。大丈夫か?」
仲沢はこくんとうなずき
「足が痛いのとふらふらします」
「・・・帰れそうにないな」
「え・・・」
「ちょっと待ってろ」
教官どこに行ったんだろ
私は砂浜で腰を落として待った。
数分で教官は帰ってきた。
「外泊許可取った」
「えええ!?」
「いがいとすんなりな」
「だだだだだだだって私着替え持ってませんよ!?」
「買えばいい。行くぞ」
-PM5:00 ホテル-
結局私は下着を購入し、ホテルへ入った。
そこそこに綺麗、いいホテルだった。
「二人分は入れますか?」
カウンターで教官はチェックインをした
「ええと、はい。お二人ですね。どうぞこちらへ」
部屋に入り、私は座布団に座った。
「ごめんなさい・・・教官」
「なにがだ?」
「だから・・・お金使わせちゃって」
そういうと教官は近寄り、私の頭をまたかき撫でた
「わわわっ、やめてください!」
「もうそんな事いうな」
教官は私を抱き寄せた。
「は・・・え・・・?」
「心配させないでくれ」
数十秒は一時間に感じれた。
温かい。
「っと、すまん!抱きついてしまって」
「い・・・・いえ」
微妙な時間が流れる。
「あの・・・ご飯は?」
「ん、6時に来るはずだ」
6時に食事が運び込まれた。
おいしそうな夕食だった。
「おいしいです、これ」
「そうだな。ご飯もなかなか」
食事を終え、私と教官は温泉に入った。
お風呂はそこまで込んではいなかった。
お湯に浸かって今日のことを考える。
一番教官に触れれたんじゃないかな・・・
ナナの「脈あり」の言葉が現実味を帯びてきた、そんな気がしてならない。
お風呂を出ると教官が待っていた。
「おう、お先」
「待たせちゃいました?」
「待つのは得意だ。行くぞ」
部屋にはぴったりと布団が並べてあった
「・・・離すか?」
「・・・このまま・・・でも別に・・・」
「寝れないな」
「はい」
9時に布団に入っても寝れない。
「・・・」
教官はむくっと立ち上がって冷蔵庫からビールを取り出した。
「ふう・・・」
ごくごく、といい音が聞こえる。
私も冷蔵庫からジュースを取り出して飲んだ
その時教官が「あっ」と声を出し
「お前それチューハイだぞ!」
「えっ!?」
缶を見た
「アルコール・・・!」
体が急に温かくなった。
「大丈夫か?」
俺が問うと仲沢は
「う・・・酔っ払っちゃいました・・・」
仲沢はゆっくり俺にもたれかかった
「おま・・・」
「・・・教官・・・」
「な・・・んだ?」
「私教官が・・・・・・Zzzzz」
おいおい、そこで終わるか。
俺はよりかかった仲沢を布団へ戻し、自分はソファーで寝た。
-9月21日AM4:00 南沙諸島南威島-
「敵襲来!」
中国海軍の制圧した中業島から中国空軍のY-9輸送機が飛び立った。
数は5機、人数合計500名。
ベトナム陸軍は守備隊をすでにここへ派遣し、対空砲で持って迎撃を開始した。
「降下しろ!」
Y-9のタラップが開き、兵隊達が飛び降りていく。
1機のY-9は兵員を降ろす前に被弾し、空中で分解した。
「中国人共が降りた!狩り出すぞ!」
守備隊はUAZと呼ばれるソ連製の移動車両に分乗して島での戦闘を開始した。
-9月22日 AM6:00日本愛知県知多半島-
「ん・・・」
俺はソファで目覚めた。
後頭部をぼりぼり掻く。
テレビを点けた。
「昨日、南沙諸島にて武力衝突があった模様です。現地からによりますと、中国軍の部隊が中業島、南威島を攻撃し多数の犠牲者が出ている模様です。
日本国政府は中国へ厳重抗議とともに平和維持部隊を派遣する考えを進め始めました」
「やばい・・・な」
俺はそう思った。
中国の拡大侵略がかなり現実味を帯び始めてきた。
とりあえず俺は仲沢を起こした。
女の子の臭いがする布団周り。
すー、すー、とかわいい寝息を立てる仲沢。
「仲沢、朝だぞ」
「ん・・・っ」
ごしごしと目をこする仲沢
「朝・・・?」
「朝だ。足はどうだ?」
「ん・・・大丈夫です」
おれ達二人はチェックアウトし、バイクで駐屯地へ戻った。
帰り道で会話をした。
「外泊だなんて誤解させるかもな!悪い!」
「そんなことないです!」
仲沢は相変わらず心を任せているのかぎゅっと俺の腹に手を回す。
「凛、外泊だなんて大胆じゃん」
「バ、バカ!そんなことない・・・よ」
「ふぅーん?」
「・・・ないんだから」
「おいおい、坂崎よ。お前外泊だなんてすげーな」
「何もしてないぞ?」
「・・・なんだ」
二人とも仲良く誤解されたのだった。
-9月22日 ベトナムホーチミン市 中国大使面談-
「大使、状況を説明していただきたい」
ベトナムの首長は在越中国大使に詰め寄る。
「まぁまぁ。我々は国家の領土をあなた方から平和的に取り戻しているだけなのですよ」
「平和的ぃ?うちの軍はすでに20人が戦死しているんだ」
フィリピンの首長が噛み付いた。
「ほーう、それはそれはご愁傷様ですな」
「なんだと!?」
大使は言った
「小さな小国が束になろうが我々の偉大なる中華人民共和国には勝てない。君たちは黙って指でもくわえていたらどうかな?」
大使は何食わぬ顔で面会をしていた部屋を出て行った。
直後、ベトナム陸軍は南威島に1個中隊を送って中国軍の空挺部隊を殲滅した。
中国政府は反撃を開始、フリゲート艦が南威島に接近し艦砲射撃を行う。
またフィリピン軍を支援するためインド空軍が派遣したジャギュア攻撃機はSu-30の護衛の下で中業島の滑走路を爆撃した。
制式に紛争に突入したのだ。
「次のニュースです。連日報道してきた南沙諸島衝突事件で新たな展開です。ベトナム軍とフィリピン軍は全面攻勢を開始し、中国軍との正式な戦闘状態へ突入しました。
国際世論は中国の行動を批判し、国際連合は直ちに戦闘行為を終結するよう両国へ要請しています」
-翌23日 AM6:00フィリピン マニラ-
大統領は国際的権威のあるアメリカの放送局を呼び、全世界ネットで今回の事件経緯を説明した。
「今回の紛争につきまして、世界の皆様へお知らせをしたく今回の会見に至りました。まず、9月18日に起きたわが海軍のラジャーフマボンの沈没事件です。
ラジャーフマボン生存者によると攻撃は対戦車火器による攻撃と判明しました。生存者は中国海軍に収容され帰国しましたが船体と遺体は海中へ投棄されたとのことです。
この時期から中国海軍の著しい侵略が始まり、中業島への攻撃が始まりました。駐屯していたわが軍の兵は大半が殺害され、民間人も多くが死亡しました。
中国軍は南沙諸島海域における利権を狙っており、これを容認すれば日本の尖閣諸島も同じ結果になりかねません。そこで我々ASIは戦闘部隊をこの海域へ集中させることとしました。
すでにインド軍、台湾軍がこの海域へ集結しつつあり大規模な戦闘状態へ発展するでしょう。我々は長期化する恐れのあるこの紛争に勝利するためにアメリカ合衆国並びに日本への援助を申し込む考えであります」
実際この演説後、在日フィリピン大使、在日ベトナム大使、在日インド大使が外務省を訪れ(台湾は事実上中華人民共和国であるため大使館はない)、平和維持目的の自衛隊派遣を要請した。
アメリカ合衆国にも同じことが行われた。
スラヴィニア反乱から数日、世界はまた混沌の紛争へと引き込まれてゆくのだった。