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Japan Force  作者: 坂崎紗葵
第1章スラヴィニア反乱
12/32

終戦、そして新たなるクライシス



俺は出されたものに驚いた。



『核爆!?』


男はゆっくり頷いた


『こいつに刺激を与えてみろ!ドカンだ!』



俺の後ろで仲沢がぶるぶると震え始めた。


「心配するな仲沢・・・」




-ロシア国境警備隊基地 監視台-


「大尉!撃てますが!?」


「ダメだ!弾丸が爆弾に当たったりすれば・・・」


ヴィンペル部隊の隊員は櫓でSV-98を構えていたが、危険すぎて撃てなかった。




『俺を国境から出させろ!』


要求はそれだけだった。



『落ち着け!』


俺が言うと彼は言葉を返した


『俺は落ち着いているよ』






ロシア連邦保安庁ヴィンペル部隊のヴァシリィ・デグチャレフ少尉は雑木林に走っていった女を追いかけていた


「待ちやがれ!待てってんだ!」


女は一瞬振り向き、さらに速度を上げた。


仲間は誰もついてこれていない。


なんて体力だ。


ヴァシリィは腰からホルスターを引っぺがし、中に入っているスチェッキンAPSフルオートハンドガンを取り出した。


これにホルスターをかねた銃床をつけ、肩で構えた。



パパパパパパン!


と乾いた連射音が響く。


女には当たらなかった。


女は振り向き、腰から拳銃を取り出して撃ってきやがった。


「うおぉっ!」


ヴァシリィはとっさにかわしたが、弾丸がワークパンツを貫いて太ももに突き刺さった。


「クソアマァァアァッ!」




女はヴァシリィから悠々と逃げ去った。






『起爆されたいのか?』


男、おそらくスラヴィニア軍将校はじりじりと国境側へ歩む。


仲沢はまだ震えが止まらない


俺はやってやろうと思った。



腰には9mm拳銃が入ったホルスターがある。


だが手の動きでばれる。


「仲沢、ちょっと・・・引っ付いてくれ」


「・・・・え?」



俺は仲沢を引き寄せて手元が隠れるように密着した。


「な、なんですか!?きょうか・・・」


「静かに」


ホルスターのボタンをはずし、9mm拳銃をそっと取り出した。


安全装置を手中ではずす。


(パチン)


ぐっと引き出す。



(仲沢、突き飛ばすぞ)


俺が小声で言うとこくんと頷いた


(・・・3、2、1)


俺は仲沢を倒れないくらいに突き飛ばした。


「ひゃっ!」


『!?』


将校は仲沢に一瞬眼を取られた。


俺はすばやく拳銃を構え、撃った。



ガスッという鈍い音がし、男の首筋に直撃した。


『ぶっ・・・』



『やるじゃないか・・・日本兵』


俺は近くへ駆け寄った


『自衛隊だ、スラヴィニア軍』


『ふっ・・・俺はここで終わりというわけで・・・一花咲かせたいよなあ』


男はすばやくケースのスイッチを押した


『わりぃ、起爆させちまうよ』



男は不気味に笑い始めた


『にげろぉぉ!』



ヴィンペル部隊の隊員達はロシア国境側へ逃げ込み、ティーグル軽装甲車へ飛び乗って逃げ始めた。


核爆弾ケースの表示画面には残り25と表示されている。


間に合わない。


俺は仲沢を抱き起こし、走った。



「ちょっ!?教官ッ!?」


「暴れるない!」


他の自衛隊員も走り出した


難民は事態を理解し始めたのか、国境側へなだれ込んだ。




「AllDie!」



その声が聞こえたのは23秒くらいだろう。


俺は仲沢を抱きかかえ、かばうように倒れた。



「ッー・・・!」


「ッ!!!!」







・・・あれ?



俺はゆっくりと目を開いた。


底には小刻みに震える仲沢だけだった。



俺は後ろを向いた


そこには取り押さえられた将校とヴィンペル部隊に搬出された核爆弾。


「・・・どういう・・・」


そこに黒服の男が現れた。



「不発だよ。古いソ連製だ。爆発などするか」


日本語だった。


「陸上自衛隊中央情報隊の矢部1佐だ、よろしくぅ」


「は、はぁ」


「ところでそこの下でちじこまってるWAC(女性自衛官)、出してあげたら?」


「あ、ああ」


俺が退くと仲沢はゆっくり這いでてきた。


「大丈夫か?」


仲沢に聞くとゆっくり答えた


「大丈夫です・・・ありがとうございます・・・守ってくれ・・・て」


俺は急に恥ずかしくなり


「い、いや、部下の安全も・・・だ・・な」



そこへコホンと咳払いが入り


「ああ、ちょっと話が」


といい始める矢部1佐


「あ、どうぞ」


「うん、とりあえずこれで作戦終了。難民をまとめるのはヴィンペルに任せて撤収だ。」


「はっ!」



翌日、俺達は輸送機に詰められ帰国を果たした。





-9月8日 日本-



「任務、お疲れ様だ。諸君。今日から我々は通常任務へと復帰し、変わらない日々を送る」


基地司令が演説をし、全員が基地の懐かしき隊舎へと戻ってゆく。



そこで俺は後ろから声をかけられた。



「教官ッ」


「ん?仲沢か」


俺が振り向くとそこには嬉しそうな顔をした仲沢がいた。


「週末の非番、一緒に外へ出ませんか!?」


「一緒に・・・か?他は誰も連れずに?」


誤解されないかな


「はい」


「そ・・・うか、うん、いいぞ。土曜だな?」


「はい!」




俺の週末は埋まった。





陸上自衛隊及び海上自衛隊、そして航空自衛隊の被害はないに等しかった。


運も味方したのだろう。


陸自の車両に弾痕が残った程度、隊員達も軽傷が数人いるのみだ。


戦闘自体も少なかったためPTSDを発症する者もなかった。



国内ではこの成果に祝福がなされた。一方で違憲行為との批評もあったが特に問題もなかった。




-ロシア サンクトペテルブルク プルコヴォ空港 9月10日-


そこに一人の女がいた。


ジーナ・ドゥミトリィンスクというロシア系イギリス人のパスポートを持って。



彼女は国際線ロビーにいた。


手にはサンクトペテルブルク発パリ行きの航空チケットがあった。



『お嬢さん』


そこに一人の男がロシア語を使ってやってきた。


「ラヴェ・・・すいません、間違えました。私英語しか出来ないんです」


彼女に話しかけてきたのは東洋系の男だった。


そう英語で答えると男は英語で答えた


「にしては随分とロシアなまりをした英語だ」


びくっ


「私は日本国陸上自衛隊中央情報隊の矢部1佐と申しまして。貴女をアナスタシア・シュパジェノブスクと見ています」


そうか、彼は・・・死んだのか。ここにこないなんて


「そうそう、あなたを自爆までしようとして守った彼、彼は今ですね国連軍に拘束されていますよ。よろしければ房も同じにしましょう」


いき・・・てる?


アナスタシアは答えた。


「ふん・・・おとなしく歴史に消えるつもりはないの」


「そう・・・ですか。んじゃあ、まあ僕が消えますよ」



日本の工作員はすぅっと消えていった。


・・・え?



私はサンクトペテルブルク発パリ行きへ無事乗ることが出来た。




矢部は彼女を見送り、つぶやいた。



「イワンのバカにご用心」






-ロシア航空 Tu-154M 72便-


「当機は3時間40分のフライトの後、フランスはパリのシャルルドゴール空港に着陸いたします。サインがあるまではベルトを締めてお座りください」



「ふぅ」


私は座席に座り一息ついた。


これからどうしよう。


彼、ラヴェニズクはスイスへ入国して亡命をしろといった。


亡命先はキューバだった。




眠れなかった。


気が張っていた。



どうしよう、どうしよう。




途中で気づいた。


"囲まれている”


『殺された同胞が待つだろう』


両脇の男がキャビンアテンダントに見られないようにしながらアナスタシアを押さえ、通路を歩いてきた男がアナスタシアの首筋に注射器を突き刺す。


「いぐっ!!!??」


男達はそそくさと立ち上がり、別の座席へ移った。








-翌日オランダ ハーグ収容施設-


「ラヴェニズク・クラフチェネンコ、今日の新聞だ」


「・・・ああ」


ラヴェニズクは酷くやつれていた。


彼はジェノサイドで起訴され、懲役250年がすでに決まっていた。



彼はオランダの国際新聞を取り寄せていた。


元々は軍エリート、英語も出来る。



その見出しにラヴェニズクは驚いた



-スラヴィニア反乱主導者亡命に失敗か フランス行きの機内で変死体として発見される-


記事本文:パリからによると、スラヴィニアクーデター騒乱の主導者であり9月5日より消息を絶っていたアナスタシア・シュパジェノブスク容疑者18歳が


サンクトペテルブルク発フランス行きのロシア航空72便の機内で遺体として発見されたらしい。


死因は不明だが、フランス警察の検証によれば毒物は検知されなかったとのこと。


彼女には国連が100万ドルの賞金をかけていたが、遺体として見つかった今その価値はなくなったようだ。


彼女は9月5日にロシア国境より逃走している事が確認され、以後足取りは不明だった。


国連事務総長パン・ギムンド氏は遺憾の意を表明し、犯人捜索に全力を注ぐとのこと。〔オランダ/ガイ・ルックス〕




「そ・・・んな・・・」



ラヴェニズクは倒れこんだ。




-翌日紙面-



-スラヴィニア共和国、解体へ。国名はスラヴィニアとされる模様-


スラヴィニアの首都ヴルモフでは生き埋めになった兵隊や民間人の捜索が続けられているが、先日プーシキン・グァツォネフ書記長が亡命後に再入国した。


グァツォネフ書記長は直ちに国家再建プロジェクトに取り掛かる模様。


-紙面右端隅-


-スラヴィニア陸軍エリート士官独居房にて死亡 死因は心臓麻痺-







-日本 週末土曜日-



「ふぅ・・・10分遅刻とはいい度胸だな」


守山駐屯地出入り口で俺は待っていた。


9月で残暑も厳しい。


俺はポロシャツにハーフパンツという暑苦しくもない格好で立っていた。



向こうからカッカッカッと足音がする。


「仲沢、遅い・・・ぞ」



目を奪われたというのは間違ってない。


フリフリした服とキャスケットにジーンズ。




何より目を奪われたのは薄化粧がとてもその美貌を引き立てていたからだ。



「すいません教官ッ!遅れちゃって!」




-20分前 WAC用隊舎-


「これで・・・よしッ」


私はお気に入りのフリル付の服とキャスケット、ジーンズをはいてピンクの靴を履いて


その時呼び止められた


「凛、あんた化粧は?」


「え・・・しないけど・・・?」


「はぁぁぁ!?マジで!?」


ナナ(七宮)は持っていた雑誌を放り投げて私の手を掴んで化粧台へ連れて行った。



「ちょっ、ナナッ!遅れちゃう!」


「遅れたほうが好感度がもてるの!」




そして10分


「はぁい、終了!」


「わぁ・・・」


自分の顔が変わった気がした。


生まれてから化粧したことは数えるくらいで、それも高校時代だけだった。


「はい、行ってくる!」


「うんっ!」




-現在-


「すいません、遅れて・・・っ」


ハッ・・・ハッ・・・と息を切らす仲沢。


「ん、ああ・・・それよりどこに行きたいとか決めてあるのか?」


「い、いえ・・・」


「そうか・・・ならまあ鉄板だ、ついて来い」




俺は仲沢と歩いた。


20分歩き、新守山駅に到着。


そこからJRで名古屋へ向かう。



「定番だよな」


俺は切符を2枚買い、一枚を仲沢へ手渡す。


「そんな、切符くらい自分で・・・」


「まぁいいじゃないか」



電車にすぐ乗り込む。


名古屋行きとあってか、すこし混雑していた。


快速なので座席タイプである。


仲沢をとりあえずおばあさんの横へ座らせ、俺はつり革につかまっていた。



数十分か数分か、電車は名古屋駅に到着した。


俺は仲沢と降り、地下鉄へ乗り換えた。


「あれ?名古屋じゃないんですか?」


「大須だ。あれ?行ったことないのか?」


「はい。名古屋も数えるくらいで」


「そうなのか?あれ、出身はどこだったっけお前」


「私ですか?私は木曽川市ですよ」


「そうか」


「はい」



電車で揺られて大須観音駅に到着し、俺と仲沢は大須商店街を歩いた。


カップルや学生、さまざまな人間が歩いている。


「わぁー!!」


目をきらきらと輝かして周りを見ている仲沢に声をかけた。


「なにか欲しいものあるのか?」


仲沢は振り向いて


「えっとですね、服と、靴と・・・アクセサリーと・・・!」


「おいおい、そんなに金ないぞ」


すると仲沢はきょとんとした顔で振り向いた。


「えっ・・・?買ってくれるんですか?」


「あ?ああ、女の子にお金使わしたら嫌だからな」


「そ、そうですか・・・」


仲沢はそっぽを向いてしまった。


まずったか。金もっともってこればよかったかな、と俺は思った。


元々金はあまり使わないんだ。


ゲーム機が出たら買ったりソフトが出たら買う程度で、かなりの額がたまってきている。



「ATMで下ろしてくるよ」


「あっ、いえ!そこまでしなくて大丈夫ですから」




しばらく歩いていると一店のアクセサリーショップが目に入った。


「すいません教官、ここ見てもいいですか?」


「ん?ああ、好きにしろ」





私が目に留まったのは銅のネックレスだった。


ハート型でかわいい。


自分で買えるかなと値札を見てみた。


(1万ッ・・・高いな・・・諦めよ)


「ん?買わないのか?」


「あっ、えと、はい」


すると教官は値札を見て店員に


「これください」


といってしまった


「えっだって一万円もするし!?」


すると教官は


「いい、いい。欲しいんだろ?」


という。


私は恥ずかしくなったけど、頷くことはできた。



「ほら」


と私はケースをわたされた


「すいま・・・せん」


そうしかいえなかった。





「すいま・・・せん」


という仲沢は小動物のようでかわいかった。


買った甲斐があるというものだ。


「大事にしろよ」


「はいっ!」



そう答えた仲沢の顔は笑みに満ち、童顔の顔が栄えていた。



俺達はその後、食事をすることにした。


「何か食べたいものは?」


「えっと・・・何がいいかなぁ・・・」



うーんうーんと仲沢が唸る。


なんだ、卑怯的なかわいさだな。


口には出せないけどな。ただの変態だ。



「じゃあ矢場とんで」




俺たちは歩いて矢場とん本店へと向かう。



昼時で込んではいたが、すぐにテーブルへ座ることが出来た。



「じゃあわらじトンカツ定食、仲沢は何がいいんだ?」


「えっと、こっちの小さいので」


「はい、かしこまりました」



注文を済ませ、俺は仲沢へ聞いた。


「なんでまたトンカツなんだ?」


すると仲沢は


「教官、このお店見てましたよ」


「え・・・?」



そういわれれば見ていた気がする。


「お前・・・それを見て?」


「はい」


「観察力のいい奴だな」


と、俺は仲沢の頭をぐしぐしと撫でた。


「ちょっ、子供じゃないんですけどっ!」


撫でるたびに彼女の茶色の髪がふわりふわりといい香りを漂わす。




ぐしぐし撫でられて内心嬉しかった。


厳格なお父さんだったからそんな経験はないから。


教官の動きを見ていてよかったなぁ、って思う。




「お待たせしましたー」


「おっきい!?」



教官の頼んだわらじトンカツは私の顔2個分くらいのサイズだった。


「うまいんだよ、これ。食べてみろ」


そういって教官は私にトンカツを箸でつまんで口のほうへ差し出し・・・え?


「早く食べろ、落ちたらどうするんだ」



えええっ!?あ、あーんをするの・・・!?


「早く」


「あ、あーん・・・・」



恥を忍んで食べさせてもらった。



「あむ・・・おいひ・・・」


味噌の味が絶妙だった。


ご飯が欲しい。


って私は男か。



「おいしいだろ?」


そういう教官の顔はご満悦そうだ。よかった。


「じゃあ教官もどうぞ」


私は自分の味噌ヒレカツを同じように差し出した。し返しだっ!


しかし教官は


「おう」


といってなんのためらいもなしにぱくっと私の箸に食いつい・・・ええっ!?


「なかなかだな。今度頼むか」



私のほうが恥ずかしいよ!



自爆技に私は嘆いた。


これ以上の仕返しも思い浮かばず、私は次のカツを食べた。


あれ?これ・・・間接キス・・・にはならないか。漫画でもないし。あっ、帰りに漫画買おう・・・新刊でてるし。



なんて事思いながら私は昼食を終えた。






食後の一服はやめられないもので、あまり煙草をすわない俺でもこの時だけは吸う事がある。


一日1本未満、やめたいと思えばやめれる位だ。


腰からマイルドセブンを取り出し、1本を加えてジッポで火をつけようとしたときに思い出した。



店からはすでに出ていて、喫煙所の前だ。


問題は隣にいる連れ、仲沢のことだ。


「おっと、煙草嫌いだったか?」


エチケットとして聞くべきだろうと俺は考えている。


「いえ、大丈夫ですよ。父がヘビースモーカーなんで」


そう笑いながら答えてくれたので俺は「遠慮なく」といい、ジッポで火をつけた。


すぅっ、フィルターを発がん性のある物質が抜けてくる。


副流煙を仲沢には浴びせたくはない。


俺は仲沢に煙が当たらないように吸った。



ある程度吸い、縦型灰皿へ落とす。


「すまんすまん」


「いえ。あっ・・・えっと、メールアドレス交換して欲しいんですけど」


モジモジしながら仲沢がケータイを差し出した。


「ん、いいぞ。今まで交換しなかったのも不思議なくらいだしな」


俺は口臭予防用のガムを噛み、ケータイを取り出した。


「赤外線でいいよな」


「はい」



赤外線ポートを近づけ、お互い送受信する。


「よしっと」




時間的にも駐屯地へ戻るときが来た。


「そろそろ行くか」


「はい」



電車に乗り、帰り道を行く。


名古屋から新守山までの電車内で


「今日は楽しかったです、ありがとうございました。アクセサリーも買ってもらって・・・」


というので俺は恥ずかしくなったが答えた


「その・・・なんだ、お前にはかわいい奴とか付けてて欲しいからな。た、ただ訓練の時以外だぞ?」


すると仲沢は


「わかってますよぅ、教官と会うときだけですっ。次もこういう時間って用意できたり・・・?」


俺は素直に答えた


「うん、いいぞ。どうせ非番の日なんてゲームかネットだ。どんどん誘ってくれ」





電車が駅につく頃、仲沢はうたた寝をしていた。


「おい、守山だぞ。おーい?」


揺さぶっても起きない。


こまったな・・・



俺は仲沢をおんぶすることにした。


女の子をおんぶするのはどうかとは思ったが、叩き起こすのはもっと嫌だった。


以外にもすんなりおんぶできた。


軽い。これが女の子の重さか。


高校時代の彼女は背負うなんてことはなった。


ましてや先輩だったからな。



よっと背負い、改札で駅員に切符を二枚見せて通った。


タクシーなんてものを拾うことは出来ない。


近すぎる。



俺は背負って帰り道を歩いた。


夏の暑い日。


背中にやわらかいものが当たる・・・なんて邪な考えを捨て去る。ゴミ箱へ捨てる。


自分は汗かきではないので仲沢に不快な思いはさせないだろう。


しかし密着部はどうしても汗をかく。


俺は早くこの子を帰してやろうと思った。




駐屯地の警備隊員に驚かれた


「どこからつれてきたんっすか!?」


俺は答えた


「駐屯地の隊員だヴァカ」




女性用隊舎へ近づき、ふと思った


男性禁止ではないか?入れないだろ



しかし運のいいことに仲沢は目覚めた。


「んー・・・ここどこ・・・?」


寝ぼけた声が聞こえた。


俺は答える


「駐屯地だ。強いて言えば俺の背中の上」


仲沢は「なるほどぉ・・・」と理解した声を出したが、すぐさま


「えっ!?せせせ、背中ッ!?」


「お、おま暴れるな!」



漫画なんかだと転んで胸に手が当たるなんてシチュエーションだが、屈強な自衛隊員にそれは通用しない。


足に力を入れて踏ん張り、転倒を防止した。



「降りるか?」


そういうと仲沢は「はい・・・」と力なさ気に答えた。


俺はゆっくりと彼女を降ろす。


女性用隊舎の前で仲沢は言った。


「今日は・・・ありがとうございましたっ・・・えと、その・・・またお願いします!」


俺は答えた


「ああ、わかった」




仲沢と別れ、俺は自分の隊舎へと戻った。





「りーんっ、あんた坂崎2曹の背中で寝てたね」


「ひゃああああ!?」


自分のテリトリーであるベッドにナナが乱入してきた。


「えっほんと!?」


と加藤有希陸士長まで。


「教官ってそんな人なのかな?私が訓練受けたときは厳しくて優しいだけだったけど」


と陸士長は続けた。


ナナは私の肩を掴んで


「脈ありだね!・・・?その箱は?」


買ってもらったネックレスケースを指差してナナは言う


「これ?教官に買ってもらったの。綺麗でしょ!」


私は箱をあけ、首に付けた。


ナナは興奮しながら言った。


「これアンタのセンス?似あってるよ!買ってもらった?すごいじゃん!」


「えへへ・・・そうかな」


「そうだよ。これ1万くらいでしょ?脈ありだね!脈!」





深夜


俺は赤坂とのCODMW2での対戦ペイヴロウこえーよを終え、ベッドで漫画を読んでいた。



その時、親か旧友くらいからか、それとも元カノくらいが連絡してくるケータイがヴーヴーと唸る。


俺は手にとって開けた。



「From:仲沢凛


Subject:今日はありがとうございました(^^)



今日はありがとうございました!また行きたいです(´∀`)


PS:教官の背中、気持ちよかったです!」



俺はカチカチと打って返信した。





「あ、返信早っ・・・」


私は髪の毛を解いていた。


ケータイをとってメールを見た。



「From:坂崎修一教官


Subject:Re:今日はありがとうございました(^^)



気にするな。俺も楽しかった。


また行こう。


それとネックレス、大事にしてくれよ。


似合ってるからな。


明日の訓練で会おう。



PS:そういうことを言うんじゃない。俺はもう寝るぞ」


「教官、照れてるのかな」


私はそう思い、ケータイを閉じた。









-同日 現地時刻AM2:00フィリピン スプラトリー諸島沖-



「ん・・・?」



-PF-11フィリピン海軍キャノン級護衛駆逐艦ラジャーフマボン-


乗組員は海域で不審な艦船を発見した。



直ちに無線で艦長を連絡を取った。



「艦長、前方に不審な船が」



船は小型、ゾディアックボートと呼ばれる小型ゴムボートだった。



ラジャーフマボンはサーチライトで海域を照らした。


海域に映ったボートには人が数人いた。



この海域はフィリピンが測量などを行っており、れっきとした領海だ。


何事だろうか。



乗組員は地元の犯罪組織だろうと考え、護身用のコルトM1911A1を取り出した。


「そこでなにをしている!」


拡声器で乗組員が叫ぶ。


ボートは異様な速さで逃げ始めた。


「艦長!該船逃走!威嚇射撃を!」


『許可する!』


乗組員は艦側面のM2ブラウニングを撃った。


ダカダカダカ!と発砲音が響く。


船には当たらないが、船は停止した。



だがサーチライトで当たっていないため、うすボケてしか見えない。


そしてそのボートが光ったのが見えた。






85mm成形炸薬弾、つまりRPG-7のHEAT弾がラジャーフマボンの側面へぶち当たった。


ラジャーフマボンはWW2の時の艦艇であり、一時期海上自衛隊へ配備されていた実績があった。



しかし85mmの対戦車ロケットには耐えられなかった。


RPG-7はフマボンの貧相な装甲をぶち破って内部の弾薬庫を吹き飛ばした。



ラジャーフマボンは大爆発を起こし、船は真ん中で千切れてしまった。



フィリピン海軍には被弾、沈没の緊急SOS無線が届いただけであった。






第1章END
































第1章完結です。スラヴィニア編が大きく1章です。


第2章南沙諸島危機をご期待ください。

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