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「やっぱりメイベルさんの魔法で眠らせるのがいいのではないでしょうか。一度の魔法で広範囲に作用していましたし、フォスティにもダメージを与えないで済みますし」
「じゃあ、フォスティを一ヵ所におびき寄せて、メイベル嬢にまた広範囲に魔法をかけてもらおうか。メイベル嬢の魔法はどのくらいの範囲まで効果があるのかな」
レナード様とエイデン様は、私の魔法を活用することを前提に話を進めている。
「あ、あの、先ほどの魔法はまぐれみたいなもので、次も成功するかわからないのですが……」
私がおそるおそるそう言うと、エイデン様は言った。
「それなら今から試してみよう。メイベル嬢の魔法がどんなものか」
「今から?」
「ああ、今から」
エイデン様はそう言ってうなずいた。
私たちはエイデン様に連れられ、広場の方まで向かった。
見渡す限り芝生の続く広大な広場。私はそこで、エイデン様に言われた通り先ほど使った魔法を試すことになった。
広場には、一定の間隔で捕まえたフォスティの檻が置いてある。先ほどと同じ効果が出るのか試すためだ。
力を込めて杖を振ると、再び先ほどと同じような不思議な色の光が杖から溢れ出た。
実験の結果、私の魔法は半径10メートルくらいまでの広さに作用することがわかった。場所や条件が変わっても問題なく作用することも。
「問題なさそうだね! じゃあ、メイベル嬢にフォスティを眠らせる役目はお願いしよう」
エイデン様は明るい声で言う。
話し合いの末、演習場を数ヵ所に区切り、その中心にフォスティが好む香りを放つ石を設置しておびき寄せた後で、私が魔法を使って眠らせていくことになった。
一度にフォスティを集めるとなると少々危険なので、実施の際はエイデン様が魔道具店から取り寄せてくれたバリアを使うことにする。
このバリアは鏡のついたプレートのような形をしていて、これを持っていると攻撃を受けたときにダメージを相手に跳ね返せる仕組みになっているのだ。
ちなみに使い捨てのため、一度攻撃を受けたら割れてしまう。
私は複数枚これを懐に入れた状態で魔法を使うことになった。
「バリアがあるとはいえ大丈夫かな……。おびき寄せずに演習場内を少しずつ回って魔法をかけていく形にした方がよくありませんか?」
レナード様は眉根を寄せてエイデン様に尋ねる。
「バリアを複数枚用意しておけば大丈夫だよ。演習場全てを回るとなると膨大な時間がかかってしまうし。もしものときのために、私もメイベル嬢の後ろに立って攻撃に備えるしね。君たちほど才能はないけれど防御魔法は得意なんだ」
「それなら大丈夫ですかね……。メイベルさん、できそう?」
レナード様は心配そうな顔で尋ねてくる。私は大きくうなずいた。
「はい! お役に立ってみせます!」
「メイベルさんがそう言うならいいか……。僕も当日は魔獣がメイベルさんに攻撃して来ないよう、ガードするね」
レナード様は、まだ少し不安げな顔をしながらも納得してくれた。