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それから私たちは、気絶しているフォスティを持ってきた檻に入れて捕獲した。このフォスティは、ヘイル侯爵家の運営する魔獣園に送るらしい。生態観察のために飼育するのだとか。
「早速一匹捉えられるなんて……。フォスティ退治にはかなり時間がかかることも覚悟していたけれど、君たちがいれば意外と早く片付くかもしれないな」
エイデン様はフォスティを閉じ込めた檻を眺めながら、満足げな声で言った。君たちというかレナード様が気絶させただけなので、私はちょっと気後れしてしまった。
すると再び木の影からガサガサ音がして、生き物が近づいてくる気配がした。
私はそちらに視線を向ける。
茂みから現れたのは、やはりフォスティだった。しかし、先ほどとは数が違う。十数匹のフォスティが唸り声を上げながら一斉に近づいてくるのだ。思わず喉からひっと悲鳴が漏れる。
「メイベルさん!」
フォスティの群れに視線を向けて驚いた顔をしたレナード様は、さっと私の腕を引いてフォスティたちから引き離してくれる。
エイデン様がフォスティの群れを眺めながら、固い声で言った。
「仲間が捕まったから取り戻しに来たのかもしれない。数十匹同時に現れるのは初めて見た」
私はじっとフォスティの群れを眺めた。確かに彼らは檻の中に捕まえたフォスティに注目しているように見える。
レナード様は、私とエイデン様の前に立って、先ほどと同じように呪文を唱えた。バチンと大きな音がして辺りが光ると、フォスティが地面に倒れていく。
しかし、数が数なのでなかなか全部は倒せない。
(私も何かしなきゃ……!)
私は杖をぎゅっと握りしめる。レナード様に任せっぱなしではなく私もフォスティたちをどうにかしなくては。私はどきどきしながらフォスティに杖を構えた。
「えーと、ね、眠れ!!」
呪文を唱えてフォスティにそう命じる。しかし、私の使った生き物を眠らせる魔法はフォスティに効くことがなく、フォスティの上を少し光が舞っただけであっさり消えてしまった。
(え、き、効かない……!?)
私はショックを受けて立ち尽くす。
以前、授業で生徒同士で相手を眠らせる魔法を試したときは確かに効いた。私はそのときのクラスで一番早く目の前の相手を眠らせられたくらいなのに。練習と実践では違うのだと思い知らされる。
私が立ち竦む間にも、レナード様は息を切らせながらフォスティを電撃の魔法で倒していた。
(人相手じゃないから効かないのかしら……。魔獣と人間では体内の魔力量が違うから? でも、それにしたって全く反応がないのは不思議だわ。……もしかしたら、生き物を眠らせる魔法は光属性の魔法だから、闇属性のフォスティに使うと魔力を打ち消し合ってしまうのかも。それなら、ほかの属性の魔法を混ぜて使ってみたら……。何の属性を混ぜればいいのかしら……)
私は必死で頭を回転させる。
それからふと、闇属性の魔獣には、同じ闇属性の魔法をぶつけてみればいいのではないかという考えが思い浮かんだ。