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2-4

「エイデン様、オーブリー学園長から演習場に魔獣が大量に出現するようになったと聞いたのですが、詳しくうかがってもよろしいですか?」


 エイデン様の質問攻めが一段落すると、レナード様がそう尋ねた。エイデン様は真面目な顔になって口を開く。


「ああ。実は数週間ほど前から――……」


 エイデン様は説明を始めた。


 彼の話によると、数週間程前から突然狼型のフォスティという魔獣が魔法演習場の広場や森など至る所に出現するようになったらしい。


 どうやら、演習場の付近にある山から餌を求めて移動するうちに演習場にたどり着いたようだ。


 フォスティは魔獣の中ではそれほど強くない生き物だけれど、気性が荒く人を追いかけ回したり噛みついたりすることもある。


 演習場ではフォスティによる怪我人も出ていて、現在は演習場を封鎖せざるを得なくなっているらしい。


 困ったヘイル家の当主様は、昔から付き合いのある学園長先生になんとかしてくれないかと依頼したのだそうだ。


「……というわけなんだ。二人には迷惑をかけて申し訳ないけれど、協力してもらえるかな」


「ええ、もちろんです! 協力させていただきます」


「お任せください」


 私とレナード様が答えると、エイデン様はほっとした顔になる。


 それからエイデン様は、私たちを演習場の魔獣がよく出るという場所に案内してくれた。



「ここが演習場の中でも特に魔獣の目撃情報が多い場所だ」


 広場の奥にある、木が生い茂った森のような場所まで来ると、エイデン様は言った。


「ここにフォスティが……」


「この辺りの木の影に隠れてたんじゃ気づかないね」


 私とレナード様は森を眺める。このような場所なら、道を歩いていてふいに木の影から魔獣が現れたら、逃げる間もなく襲われかねない。


「そうなんだよ。現にここで数人の怪我人が出ていてね。捕獲しようにも木の陰に隠れながらすばしっこく逃げていくから困ってるんだ」


 エイデン様は顔を顰めて森を眺めながら言う。魔獣に随分と苦労させられているようだ。


 それから、私たちはどうやったらフォスティを追い払えるか対策を話し合った。


 罠をしかける、柵で侵入を防ぐ、一部の木を切ってフォスティの隠れ場所をなくす……。色々案は出るけれど、ぴったりくる方法は見つからない。


 というか私たちが考えつく方法は、すでにエイデン様も試しているものがほとんどだった。


 私たちは再び頭を悩ませる。



 するとその時、木陰からガサガサ音がして、突然黒い犬のような生き物が飛び出てきた。


「あっ! フォスティが……!」


 現れたのは、今まさに対策を考えていたフォスティだった。


 黒い毛皮にギラギラ光る牙。鈍く金色に光る目。見ただけで後退りしたくなる風貌だ。


 フォスティは牙を剥き出して、唸りながらこちらへ近づいてきた。


 見た目は狂暴そうでもフォスティがそれほど強くないことは魔獣図鑑で読んで知っている。知っているのに、実際目の前で唸るフォスティを見ると足が竦んでしまった。


 すると、レナード様が私を庇うように前に立つ。


「ここに近づいてはいけないよ」


 レナード様はこちらに駆けてくるフォスティに向かってそう言いながら懐から杖を取り出す。それから短い呪文を唱えた。


 するとバチンと音がして、フォスティの周りが強く光る。その瞬間、フォスティがガクンと地面に崩れ落ちた。


 フォスティはぴくぴく痙攣しながら倒れている。目に見える傷はなく、息はあるようだ。私は感動して思わず声を上げた。


「すごい! レナード様、一瞬でフォスティを気絶させてしまうなんて!」


「あはは……。父上に魔獣退治に連れていかれたこと何度かあるから……」


 レナード様は頭をかきながら、照れたように言う。横でその様子を見ていたエイデン様は、私以上に感動した顔をしていた。


「さすがラネル魔術院の魔導士だ! フォスティはすばしっこくてなかなか仕留められないのに、こんなにあっさり倒してしまうなんて!」


 エイデン様に目を輝かせて詰め寄られ、レナード様は少々たじろいでいた。

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