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2-3

 私の話を聞いて、学園長先生は明るい表情になって言った。


「そうか。メイベル君はヘイル侯爵家と関わりがあったのだな。それはちょうどよかった。ヘイル家のためにも、メイベル君の姉君のためにも、魔獣の問題をどうにかしてあげてくれ」


「ははは……。はい……」


 私は苦笑いでうなずく。多分、学園長先生は私とお姉様を仲のいい姉妹だと思っているのだろう。



 学園長先生からの話が終わると、私とレナード様は部屋を出た。廊下を歩きながら、レナード様は口を開く。


「生徒によそから依頼された魔獣退治を頼むなんて、この学校くらいだよね」


「本当ですね。さすがラネル魔術院です」


 私たちはくすくす笑いながら顔を見合わせた。


 ラネル魔術院は、学園長先生が数年前に設立した非公式の学校だ。学校という名目にはなっているけれど、実際は私塾といったほうが意味合いが近いかもしれない。


 ルヴェーナ魔法学園のような王立の学園よりずっと自由度が高く、時折学園長先生から気まぐれに仕事を依頼されることもあるなんて話も入学する前から聞いていた。まさか本当に依頼されることになるとは思わなかったけれど。



「ところでメイベルさん、ヘイル侯爵家のご令息が君のお姉様の婚約者って言っていたけれど、それは大丈夫なの? この前のパーティーで見た感じだと、お姉様とはあまり関係が良くないように見えたけれど……」


「大丈夫です。お姉様の婚約者と確執があるわけではありませんから。せっかく学園長先生に頼まれたのですから、魔法演習場の魔獣を退治して、無事にみんなが使えるようにしたいです!」


「そっか。問題ないならよかった。じゃあ、一緒にがんばろうね」


 レナード様は微笑みながらそう言った。私も笑顔でうなずく。


 そうして、どきどきと不安の入り混じった気持ちで、週末を待つことになった。



***


 週末はあっという間にやってきた。


 私は朝早くから馬車に乗り込み、魔法演習場まで向かう。一時間ほど馬車に揺られると、王都の西にある魔法演習場に到着した。


 馬車で門のそばまで向かうと、そこにはすでにレナード様が待っていた。


「あ、メイベルさん」


 馬車の窓から顔を出すと、門のそばに立つレナード様と目が合う。私はすぐさま馬車から降りた。


「レナード様、おはようございます! お待たせしました」


「おはよう、今日はがんばろうね」


「ええ、がんばりましょう! 私、魔獣についてばっちり予習してきました!」


 私が気合を込めて言うと、レナード様はくすくす笑っていた。



 それから私たちは、演習場の事務所まで向かった。そこで今日立ち合ってくれる予定のヘイル侯爵家の方と会うことになっているのだ。


 お屋敷風に作られた事務所の扉を開け、中に入ると、そこには濃紺のジャケットを着た青年が待っていた。黒髪に青緑色の目をした美青年。彼の姿を見るのは数ヶ月ぶりだ。


 彼は私たちが入ってきたのに気づくと、こちらへ近づいてきた。


「あなたたちがラネル魔術院のオーブリー学園長のおっしゃっていた魔導士様ですね。私はヘイル侯爵家のエイデン・ヘイルと申します。本日はよろしくお願いします。……ってあれ? メイベル嬢? なぜ君がここに?」


 礼儀正しく挨拶をしていたエイデン様は、私を見て驚いた顔をする。


 今日立ち合う予定のヘイル家の方は、まさにお姉様の婚約者のエイデン様だったらしい。私は彼に事情を説明した。


「エイデン様、お久しぶりです。実は私、今ラネル魔術院に入学して魔法を学んでいるんです。そこで学園長先生からこの魔法演習場の魔獣退治を頼まれてうかがいました」


「本当に? 驚いたな。まさかメイベル嬢が来てくれるなんて」


 エイデン様は目をぱちくりさせながら言った。


 その後、エイデン様は興味津々の様子で、私がラネル魔術院に入った理由や、普段どんなことをやっているのかなどを尋ねてきた。私がひとつひとつ答えると、興味深そうにうなずいていた。


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