28.伝言
なんだか人間不信になりそう……
「では、もう調査は終了ですわね。
あら?公女が幽閉されても魔法が残っているのはなぜなの?聞くのを忘れるところだったわ」
「それがですね、信じられないことに、自分の代わりにと魔導具であるネックレスを学園に置いて行かれたんですよ!
そのせいで、今までずっと魔法が解けなかったのでしょう。
そちらは別の者が回収に動いており、見つかり次第封印する手筈です」
まさかの呪具の置き土産!
態とじゃないところが怖いわ。
「ありがとうございます。これですべてかしら。今後はどうなさるの?」
「いただいた資料と今までの調査内容とを照らし合わせて、陛下に報告することになります。ご協力感謝します」
「あら、最後に一つ伝えたいことがあるわ」
「はい?何でしょうか」
情報提供だけで許すはずないでしょう。
当然の権利を主張させて頂きますよ。
「私は今回の事件を許しません。今まで謝罪も無くすまそうとした方々すべてです。
王家から慰謝料はいただきましたが、あれは怪我の分です。王妃様の調査妨害による被害の謝罪は受けていません。
公女はもちろん、学園からも私に嫌がらせをした生徒からも、何一つ謝罪がありません。
そのような状態で内々にすまそうだなんてありえませんわよね?事件が発覚してからこれで何日経ったのかしら。まぁ、調査の終了がまだだったから仕方がなかったと思いましょう。
皆様がどの様にして誠意を見せてくださるのか楽しみにしていますとお伝え下さい」
可哀想に。固まってしまったわ。
でも、陛下への報告ついでに伝えてもらえると助かるもの。報告書には直接手出しをしてきたご令嬢達の名前も、現場を見ていたのに助けてくれなかった先生の名前もしっかり書いてある。
頑張って!それで前回の調査不足は責めないでおきますね。
「どうぞ気を付けてお帰りになって下さい」
泣きそうな顔で帰って行ったけど私は知らない。しっかり報告をお願いします。
ここまで喧嘩を売ったらやっぱり他国に留学した方がいいかなぁ。でも、帰って先輩達と話をしなきゃ。
皆で図書室で勉強会をしたのが遠い昔のようだわ。ビアンカ、やっぱり真実は心に痛いわよ。知りたかったけど、知りたくなかったわね。
もう、昔のままではいられない。
入学した頃のように、純粋にすべてを信じることはできない。領地に来る前のように手のひらに残った僅かな希望だけを握りしめて生きていくこともできない。
でも、こうやって戦おうと思えるようになった自分は嫌いじゃないわ。負けて逃げるのは嫌。勝って堂々と出ていこう。
「お父様、私はもう大丈夫です。そろそろ王都に戻りましょう」
「もうどうするか決めたのかい?」
「はい。貴族の娘なのにこのように自由に選択させてくれてありがとうございます」
「時代は変わるよ。結婚だけが貴族子女の義務ではないはずだろう?私の可愛い娘を簡単に渡す気もないしね」
「あら、結婚しないなんて一言も言ってないですわよ?」
「……アーベル子爵令息は反対だぞ。失敗したからといって逃げ回る奴に我が家の娘も仕事も任せられん!」
あら、やっぱり怒っていたのね。確かに失敗するのは仕方がないけど、逃げたことが評価を下げちゃったか。
10日は長過ぎたわね、先輩。私の事を気にし過ぎてお父様への謝罪を忘れるなんて。
「謝罪に来たら聞いてあげてくださいね?」
「……来たらな」
来ないと思われてるわ。大丈夫よね?忘れてないわよね?……何だか不安になってきました。
「とにかく誰が一番に謝罪に来るか楽しみだな」
最近お父様が怖くなった気がします。
誰からも謝罪が無かったことをずっと静かに怒っていたのね、きっと。
私だけじゃない。ブリッチェ伯爵家が軽んじられていたのですもの。そりゃあ怒るわよ。
「お父様はどうしていままで我慢していたのですか?」
「そうだね、憶測で動くのは危険だから、かな。すべてが明らかになっていないと感じたんだよ。公女一人だけの罪ではおかしいだろう?」
そうね。彼女がいなければ起きなかった事件だけど、彼女だけならあそこまで大事にはならなかったはずだもの。
「やっと真相が判明したんだ。嬉しくて仕方がないよ」
本当に、やっとだわ。
「そうですね、私も楽しみです」




