15.ビアンカのおせっかい
「あれ、あいつは一緒じゃないのか?」
「……先輩って存外ヘタレですね」
「あ゛!?」
「未だに名前も呼べないなんて格好悪いです。ちなみに私はリーゼって呼んでますよ」
「!」
リーゼが尊敬するヒーロー先輩は、彼女が思う様な人じゃないと思うなぁ。
最初は確かに凄いと思ったわ。私達が自分可愛さに彼女の境遇に目を瞑っていた時、先輩だけが彼女の心を守っていたから。
でも、仲良くなって様子を見てるとあれっ?って思ったのよね。
「ヘタレ先輩。リーゼは今日、殿下と会うんですよ」
「なんで止めないんだ!」
「私がお勧めしました。ふたりには話し合いが足りないと思ったので。本当は先輩だってそう思うでしょう?」
「でもまた怪我でもしたら」
「伯爵も同席します。問題無いですよね」
わー恐い顔。ヒーローの顔じゃないよ。
そんなに悔しいなら真っ向勝負したらいいのに。
「はい、ストップ!なんで喧嘩腰なのさ」
「フィデルありがと。だって腹が立つんだもの。ねえ先輩。リーゼを騙したでしょう」
「……俺は嘘はついてない」
「嘘はついてない?でも、いくつか隠してるし、こうだといいなって方向にさり気なく導いてるでしょ。ずるいなぁ」
先輩は腹黒そうに見えて嘘が付けない人なのだろう。そこは好感持てるけど、私は貴方じゃなく、リーゼに幸せになって欲しいのよ。
「最初は小動物みたいにプルプルしてたくせに、中身は肉食獣かよ」
「褒めてくれてありがとうございます。
それでね、先輩。リーゼに言っちゃったの。先輩の仮説はずいぶん先輩に都合がいいですねって。あと、ブリッチェ伯爵家はとっても美味しい婿入り先だから気をつけて、とも伝えました。これ、合ってますよね?」
私こそ嘘は言ってないわ。先輩の仮説は都合が良すぎるもの。そしてそれはリーゼを幸せにするためのものじゃないことが許せない。
「……ようするに、お前はリーゼの為にめちゃくちゃ怒ってるんだな」
「ご理解いただけて嬉しいですわ。
それで?どうしますか。このまま尻尾を巻いて退散?それとも指を咥えて傍観?」
「……悪かった。叱ってくれてありがとう」
おぉ、ここまで言ったら流石に怒るかと思ったけど、謝って更にはお礼まで言うとは驚きです。悪い人ではないのよね。格好つけてるヘタレなだけで。
「どういたしまして。また勉強会やって下さい。私の数学がヤバイので。
殿下との話し合いはリーゼのお家ですよ」
「おう、任せろ。行ってくるわ」
「いってらっしゃ〜い」
ふぅ、いい仕事をしたわ。……たぶん?
隣からかなりの圧があるけど、私は間違ってない!と思う。
「ビアンカ。今回は許すけど、人の恋愛は口出しし過ぎたら駄目だよ。恋はタイミングも大事なんだから。チャンスを掴めない奴は自滅してもいいんだよ?」
私を肉食獣だって言ってたけど、フィデルの方が厳しめだと思うのよ。
「だってリーゼのためだもん。あのまま先輩と盲目的に恋に進んだら嫌だわ。もちろん殿下に脅されるのも許せないけど。
リーゼはいっぱい悩むけど、本当は自分で答えを出せるの。最近は魔法のせいで自信がなくて先輩任せになってただけでしょ?だからこれは恋の後押しじゃなくて、自立の後押しでーす!」
「ビアンカは罰として一週間お菓子抜きね」
えっ、ひどい!これは絶対食べられない私の前で美味しそうにお菓子を食べるやつだ!
「睨んでも駄目だよ。これでリーゼがどっちも振っちゃったらどうするんだよ」
「え?リーゼなら絶対他にもいい人が言い寄ってくるよ。問題なしだわ」
リーゼは側にいるとなんだか落ち着くのよね。ふわっとして可愛い彼女は誰を選ぶんだろう。
「のんきだなぁ。殿下と先輩が血みどろの戦いを繰り広げたらどう責任をとるつもりなんだ?」
「いやいや、さすがに無いでしょう。……え、無いよね?でも、もし本当にやったら殿下は気が狂ってるわよ。もう絶対に魅了だけじゃないわ。伯爵様がいるから平気だと思うけど」
やだ、心配かも。早くリーゼに会いたいわ。




