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11.四人寄らば

「放っておけばいいじゃないか」


翌日、図書室にて先輩に相談したところ、大変あっさりとした回答が返って来ました。


「でも自分を傷つけるかもしれないのよ?」

「殿下が自分でやるんだろ?自作自演だ。誰も文句なんて言わないさ。王妃様という証人もいる」

「でも私のせいで自傷するなんて」

「どうして?そうしろってお前が言ったのか?それとも武器でも渡した?

殿下が勝手に考えて愚かな思い込みで行動するだけだ。やりたいようにさせておけばいい」


確かにそうだけど、本当にいいの?いきなり指が送られてきたらどうするの!?

想像して泣きそうになってると、


「ほら、そうやって相手をするから駄目なんだ。嫌ならキッパリとした態度をとれよ。

犬の躾と一緒だ。お前が焦ったり怒ったり反応を返すから、馬鹿犬は構ってもらえると思ってどんどん悪さをするんだろ。そういう時はしっかり無視しろ」


うわ、馬鹿犬って言ったわ!そうね、ワンちゃんは躾をちゃんとしないと人に迷惑をかけちゃうものね。無駄吠えとかと一緒なの?


「……私は飼い主じゃないわ」

「じゃあ、元飼い主の義務かな。手放して新しい飼い主に渡したいんだろ?だったら未練なんて残らないくらい無視しとけ」


無視する、か。でも、無視される辛さを知っているから、私へのダメージも大きいのよね。

空気の様に扱われるのは本当に泣けるんですよ。先輩は知らないでしょう。

でも、確かに諦めてもらえないと困るから。


「分かったわ。毅然とした態度を心がけます」


無視するとか、相手を傷付けるのではなく、ただ本当に無関係なのだと態度で示そう。


「おう、がんばれ」


その後はビアンカ様とフィデル様も合流して勉強会をしました。いかにも仲良しグループって感じで楽しい。

充実した時間を過ごし、そろそろ帰ろうと支度を始めると。


「馬車が残ってるのに姿が見えないと思ったらこんな所にいたんだね」


うわ、まさか2日連続攻撃!

大丈夫よ落ち着いて。毅然とした態度よ。


「殿下、ごきげんよう。私達はもう帰るところですの。どうぞごゆっくり」


淑女の微笑みで優雅にでも素早く、


「せっかく会えたのに慌てて帰らなくてもいいだろう?君の御者(ぎょしゃ)には私が送るから戻るように伝えたから大丈夫だよ」


逃げられなかった!まさかの先回りですか!


「私の予定を勝手に決められては困ります」

「ごめんね、君と二人でゆっくり話したかったんだ。婚約って簡単に決めていいことじゃないだろう?それとも私が決めてしまってもいいのかな」


なぜそんなにも優しい笑顔なの。言葉は毒まみれなのに。


「私はお断り致しました。これ以上お話しする事などありませんわ」

「どうして?」


どうして?私が聞きたいわ!

我が家は断っているし、私自身も断ってる。それなのに、それ以上どんな返事が必要なの?


「あの!で、でで、殿下には大変申し訳ありませんが、リーゼさんは我が家にお泊りするんです!」


ビアンカが突然大きな声で宣言した。


「あ、あぁそうそう!初めてお友達になれたから招待したって話だったよな!リーゼロッテさん御者(ぎょしゃ)に伝え忘れたのかな!」

「え!?あ、そうみたい!駄目ね。お友達の家に行けるなんて嬉しくて浮かれてたら伝え忘れたみたい!」


何と言う大根芝居なのかしら。

揃いも揃って棒読みというか焦り過ぎで嘘がバレバレです。


「そうだな!そろそろ向かわないと食事の時間に遅れるんじゃないか?せっかく準備してくれてるのに悪いだろう。ということで、殿下には大変申し訳ありませんが、俺達はここで失礼します!!」


フィデル様が凄い勢いで捲し立て、私達を扉に押しやる。


「あ、では殿下ごきげんよう!」


言い終わると同時に小走りで逃げる。なるほど、集団行動とは!4人になっただけでこんなことが出来ちゃうの?


「ははっ、お前達すごいな!俺が一言も口出せなかったよ!」


先輩が爆笑している。走ったせいで私は息切れが酷いわ。


「はっ、こんなに走ったのはいつぶりかしら。二人ともありがとうございます!本当に助かったわ」

「ど、どうしよう!殿下に殺されないかな!」

「どんな理由でだよ。大丈夫、あいつはおかしいけど馬鹿ではない。そんなことしたら自分の株を下げる事くらいは分かってるさ」


そうであってほしい。助けてくれて嬉しいけど、そのせいで何かされたら友達ではいられない。


「とりあえず、俺がお前の家に知らせに行くよ。顔が分かった人間が行ったほうがいいだろ」

「え、私は本当に泊まりに行ってもいいの?」

「もちろんです!リーゼロッテ様が来てくれたら嬉しいわ!パジャマパーティーしましょうよ!」

「んじゃ俺も送ってくよ、二人だけだと心配だから、後ろからうちの馬車でついてく」


私のせいでこんなにも迷惑をかけて申し訳ないけど、殿下から守ってもらえて心から皆を信じることが出来た。

本当に私を思ってくれる仲間なのだと。







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