月光が照らすのは 【月夜譚No.337】
窓から見える月が眩しい。
暗い夜空に白銀に輝くそれが太陽の光の反射であると知った時は、心の底から驚いた。同時に、太陽の偉大さにも気づかされた。
ベッドの上から満月を眺める彼女は、眠れない夜に息を吐いた。
太陽と月で例えるなら、自分はきっとどちらでもない。誰かを輝かせることなんてできないし、誰かに輝かせてもらうなんてこともない。地味な自分は、キラキラとする周囲の陰でひっそりといるのが性に合っている。
――だというのに。
『ね、一緒にお昼食べない?』
今日の昼休み、クラス一の人気者の彼に声をかけられて、どう返事をしたものかと迷った。その沈黙を是と捉えたらしい彼に連れていかれそうになって、彼女は慌てて拒絶を返した。
その時の周囲の冷めた視線が忘れられない。ただ怖くて、彼女は教室から飛び出した。
それからの記憶は曖昧だ。しっかり授業を受けたことは覚えているが、内容はさっぱりである。気づいたら家にいて、ベッドの中で昼間の出来事を思い返していた。
彼もどうして突然自分になんて声をかけたのだろう。自ら輝きもできず、輝かせてもらうこともできない、こんな自分に。
彼女は再び息を吐いて、無理矢理にでも寝てしまおうときつく目を瞑った。
夜空に浮かぶ満月は、そんな彼女を照らし続けた。