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第2話 友達

これからどうすればいいのだろうか。

そんな不安を抱き、呆然としていた時だった。


その場に横たわっていた、痛々しい様子の魔物がゆっくりと立ち上がり、こちらに近づいてきた。


「傷の手当をしますのでついきてください。」


一刻も早くこの場を去りたいと言わんばかりに

簡潔に放ったその言葉に、その背中に、俺は黙ってついて行く他なかった。


杖を拾い、一歩歩くだけでも痛みを伴う中、

黙々と誘導する魔物の背中を追いかけて行った。


歩いている中で辺りを見渡すと、集落に住んでいるであろう魔物が沢山住んでいた。


集落に誰かが住んでいるのなんて当たり前だ。

そんな事よりも俺がまっさきに疑問に思ったのは


「なんで誰も……見て見ぬふりかよ…」


「仕方ないですよ。ここはそういう所ですから。」


俺の小言に答えかけるよう。彼はそう言った。


「僕もあなたもここに居る皆がすべて、群れているだけで、仲間なんて居ないんです。家族すらも。」


「……」


ここの事情はまだ分からない事だらけだが。

彼の哀しみにまみれた、生気を感じない話し方に、

気味悪さを感じながらも、耳を傾けずにはいられなかった。


「着きました。僕の住処です。

どうぞ上がってください。」


周りを見る限り想像はしていたが、かなり汚い。

こんなもん鶏小屋の方がまだ綺麗だ。


でも俺がさっき居た古小屋よりかはマシだな、、


「これを食べてください。魔豆(まず)です。

食べると傷が癒えていきます。」


なんだその魔法の豆は、、名前のせいもあってとても食べたくは無いが、今は言ってられない。



んごくぅ…


名前負けのしない予想通りの味だった。

味覚に全神経が集中している中、身体中の痛みがみるみるやわらいでいったのを感じた。


「すげぇ、、おーあーおーおー、、」


喉も癒え、声もすんなり出るようになった。

関心様々の中、同様に傷を癒した彼が椅子に腰を下ろした。


「先程から辺りをキョロキョロしていましたが、

どうかしたんですか?」


不思議そうな表情と口ぶりだった。

俺からしたら見知らぬ地で落ち着かないのは当たり前の事だが。

向こうからしたら、俺も同じ魔物として見えているのだ。

このままだと挙動不審のヤバいやつとして捉えられている可能性があるな、、



「アイツらに殴られてから、記憶がなくて。

ここの事とか、この世界の事とか何も覚えてないんだ。」


アイツらとは先程の三人衆のこと。

咄嗟に出た嘘としては上出来だろう。

これなら色々聞き出せるかもしれない。この世界のことを。


返事もなく、彼は腰を上げ、椅子から本棚へ、本棚から俺の元へと近づいてきた。


「これ、どうぞ見てください。なにか思い出せるものがあるかも。」


そう言い、彼は一冊の本を俺に渡した。

一枚一枚、ページをめくっていく。


読み進めていく中で、俺は衝撃の事実に気がつく。

字が読めねえ、、


それもそうだろう。こんな変な見知らぬ世界の言語なんて初見で読めるわけがない。

言葉を交わせるのは、魔物としてのこの姿の耳が慣れているからだろう。


「僕の名前はヨイル。よろしくね。」


こちらが本を読み進んでいる中、丁寧に挨拶をしてきた。


名前か、、

この先生きていく中で、名前はあった方が都合がいいだろう。


名前、、名前、、


アイデアを引き出すにはもってこいのこの本も、俺にとってはなんの価値もない。字が読めないのだから。



いや待てよ、、読めない、、、読み、、、、



「俺の名前は、、ヨミネ。今名付けた。よろしくな」


我ながら天才的発想。中々のネーミングセンスだ。


「よろしくヨミネ!」



先程までの暗い雰囲気に、ほんの少し柔らかな彩りを取り戻した感じがした。


独りじゃない事がこんなにも安心できるとは。


「俺たちはもう友達だ。これからも一緒にいような」


彩りを灯す眩しい笑顔に、次第にヨイルの目からは涙がこぼれた。


彼もずっと一人だったのだろう。


穏やかな、居心地の良い空間を打ち壊すかのように、耳馴染みのある鐘の音がなった。


グォーン グォーン


先程聞いた鐘の音だ。


「やばい、そろそろ行かなきゃ」


ヨイルは俺から本を取り上げ、同じような本を何本か重ね、巾着に入れた。


「ヨミネも一緒に来て。遅刻しちゃう。」


なんの事かも分からず、俺は急ぎ足で駆けるヨイルについて行く。


「待て、ヨイル!どこに行くのか教えてくれ!

心の準備!」


集落の奥、どデカい建物に指をさしながらヨイルは答えた。


「学校だよ。行かなかったら減点対象だ。」


口をポカンと開けたまま、目を見開き、体を自動(オート)で走らせた。



学校、、最も酷な、、嫌な場所だ。








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