お気に入りのお店
10月10日(日)
時刻【11時00分】
天気【曇 最低気温25℃ 最高気温28℃】
京都のとある地域。
風情漂う古民家が建ち並ぶ場所。
そこに【バナナで憩いのひととき】という、古民家を改装した2階建てカフェ&オーダーメイド家具の店があった。
1階は木彫りのゴリラから、所々にバナナが彫られたオーダーメイドの机やゴリラ愛用の椅子などが取り揃えられており、奥にはバナナ型のライトに照らされてた、おしゃれなイートインスペースが。
2階は居住スペース設けられている。
ここは知る人ぞ知るバナナ好きとコーヒー好きが集まるバナ友の憩いの場で。
ゴリラのバナ友である森野夫婦が営むお店だ。
そのイートインスペースで人間より遥かに大きな体した黒い塊が「ウホウホ」と言いながら名物であるミルクコーヒーとバナナシフォンケーキに舌鼓を打っている。
そう、都会のジャングルで働くインテリゴリラ。
社会人の鏡。
いや、社会ゴリラの鏡である彼は、休みの日ということもあってお気に入りのお店で寛いでいた。
「ウホゥ……」
一息つくと乳脂肪分高めで濃厚な味が特徴の北海道産の牛乳、エチオピア産のコーヒー豆を深煎りした物が使用されたエスプレッソ。
この2つが合わさったカフェイン少なめの名物である
【優しさのアイスミルクコーヒー】を口に運ぶ。
そんなほっこりゴリラとなった彼のコーディネートは、前面にバナナ3房と背中側にバナナ先輩が刺繡された白のTシャツと、ゆったりめで冷感加工が施された黒色のスラックス。
それに踵部分にバナナが刺繡されたスニーカーを合わせたものだ。
「ゴリラさん、美味しいですか?」
表情を柔らかくする彼の右隣でポニーテールを揺らし優しく微笑むのは、亀浦マリン30歳。
彼女はこの日の為に予定を空けていた。
だが、いつものように全身バナナコーデではなく、夏を感じさせる服装をしている。
サンゴ色のシュシュで髪を束ね、耳にはホタルガラス製のイヤリングを。
それに水色のワンピースと歩きやすいヒールバンドが付いたサンダル姿だ。
何故、バナナコーデをしていないのかは、一緒に来ていた人物が影響していた。
それは今なお、ゴリラの左隣でバナナシフォンケーキに夢中となっている人物。
ダークブラウンの髪色にふんわりとしたボブヘアに、オーバーサイズで桃が刺繡されたTシャツ。
マスカット色のショートパンツに桃色のスニーカーが似合う小柄な女性、山川すもも28歳である。
グループLINE【戦友】のやり取りで、すももが来ると知ったマリン。
フェアな戦いをするため、自らバナナコーデを封じ、ゴリラからのネックレスや眼鏡も身に着けずにこの日を迎えたのだ。
そんな気遣いを知らないすももは、メニューに記されている原材料に目をやっては、目の前のバナナシフォンケーキを口いっぱいに頬張り、咀嚼を終えたらミルクコーヒーを一口飲むを繰り返していた。
「うん……このバナナシフォンケーキ美味しい……さんたろうも食べられるかな……あ、コーヒー飲もう」
ゴクリと喉を鳴らし冷えたミルクコーヒーを飲む。
「うん。ミルクコーヒーも美味しい」
何を隠そう、この山川すももと言う人物。
仕事ではしっかり仕事をこなし、目上の人間にも臆することもないのにかなりの天然である。
その天然を爆発させゴリラとの仲を深めることを忘れ去ったすももの隣に、マリンが座り耳元で囁いた。
「すももさん、すももさん、シフォンケーキも美味しいとは思いますが、ゴリラさんとお喋りしなくていいんですか? ダブルで攻めるチャンスですよ!」
「あ、そうでした。あまりにも美味し過ぎて忘れていました」
すももは口元に手を添えてマリンに囁き返す。
ここで普通の感覚を持っている恋する女性なら、「そんなことで忘れるなんてありえない」と思うだろう。
だが、マリンは気にする様子もない。
つまり、彼女もまたかなりの天然であるのだ。
「えっ、そんなに美味しいんですか!?」
「は、はい! 一口どうですか? あーんします?」
「じゃ、じゃあ……頂きます」
「あーん」
「あーん! んむっ! こ、これは! 美味しぃぃぃー!」
「ですよね! 口に入れた瞬間にバナナの香りとバニラの優しい香りが広がるんですよ!」
「はい、一瞬で口の中に広がりました! しかも嫌味のない優しい味わい! これはたまりませーん! では早速、もう1個頼んできます」
そう言うとマリンは駆け足でレジへと向かった。




