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現在と過去7

結婚式は無事に終わり、ユーメはそのまま会社を離れていった。アズミは少し寂しそうであるものの、仕事の時は変わらず、冷静だった。ユーメと離れたくなくて、この会社を選んだのではないかと思ったが、そんな感じでもなかった。


ユーメの夫である先輩はもちろん同じ職場にいるから、オレがユーメのことを聞く時は必ずと言っていいほどアズミもその場にいる。ユーメのお腹の中にいる赤ちゃんは順調だそうだ。それを聞いて、アズミはどう思っているのだろう。自分も早く結婚して、子どもが欲しいと思ったりしないのだろうか。


アズミは自分を産んでくれた母親を大切にしている。両親の離婚後、たった一人になってしまった家族だから。家の中だけではない。ユーメに出会うまでは他に信頼できる人は誰もいなかったのではないか――いや、いたかもしれない。いじめられていた時も影で支えてくれていた誰か――アカネは接点はなかったと話していたが、アズミは森田と何かあった気がしてならない。森田はアズミを気遣って、同窓会に出ないのだ。


それから数ヶ月経っても、まだ別の道に進む決心がつかないでいた。オレはいつものように隣で取引先の会社の人と話しているアズミの姿を眺めていた。冷静だったアズミの顔が急変していくのに気付いた。そして、ついに怒鳴り出した。これはヤバいと思って、アズミに電話を代わるように伝えた。想像していた通り、電話の相手は猛烈に怒っていた。それにオレはただ平謝りするしかなかった。


電話を代わった時点で上司に報告しなくてはならない状態だったが、アズミが最初に電話に出たことは一切話さなかった。アズミがこの会社を離れなくてはいけない気がして、怖かったからだ。


「どう責任取ってくれるのだ?」という上司の質問に頭が真っ白になって、「オレがやめます」と反射的に答えていた。自分でも不思議なくらい冷静だった。上司はあっ、そうという感じでそれ以上問い詰めなかった。上司もこれほど冷静な反応を示すとは思わなかった。


入ったばかりの頃はまだ学生で、この上司のことを間違って、先生と呼んでしまった時も、笑いながら、ここは学校ではないと教えてくれた。社会人になっても、遅刻しそうでバタバタしてきたことあったが、学校の先生みたいに廊下は走っちゃダメだろと注意してくれた。そんな温かな心で見守り続けていてくれるのではないかと甘い考えでいた。


あと一つ「私が悪いんです」とアズミが引き止めてくれるという僅かな期待があったが、それもなかったので、四年間勤めてきた会社を後にすることになった。

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