現在と過去3
「高校の時はどうだったの?」
ノートを取りに行ったついでにまた話をした。今までのナオキとユーメの話では高校の時だけがすっぽり穴が空いていた。その穴を埋めたくて、仕方なかった。
「優等生だったよ」
ナオキはそれだけしか話さなかった――という前に高校の時は習熟度別のクラス編成で三年間同じになることはなくて、ほとんど関わりがなく、本当に知らないのだと言う。それは分かる気がした。ナオキもオレと一緒で成績がよい方でなく、類は友を呼ぶということで仲良くなった友人だった。あんな優等生と同じ大学に行けたのが不思議なくらいだが、その優等生という言葉でピンときた。あれはノート事件の前でオレが高校二年の時のクリスマスイヴの夜の話をしていた時だった。
「そーゆうのをフラれたっていうんだよ」
ナオキは得意気に言った。あとのみんなはバカじゃないの~というだけだったが、ナオキだけは自分の高校時代のバカな話をはじめた。
「優クラに中学の時から好きだった子がいてさ〜」
その子がナオキをいきなり呼び出して、告白されるかとドキドキしていたら、同じ中学から有名私立高校に進学した男の連絡先を知らないかと聞かれ、咄嗟に自分のメールアドレスを答えてしまったのだとか。
「それから数日後、その子からイヴの日に会いたいってメールが来たんだけど、ホントのこと言いづらくて、約束してしまったんだ」
みんなのへぇーという反応でナオキは話を続けた。
「やっぱ行きづらくて、行くのやめた」
みんながバカだ、バカだとナオキをからかったが、オレはそれ以上に怒りのようなものを感じていた。女の子の立場を考えるとたまらなくなった。
その年のイヴの夜は雪が降っていて、オレはカラオケを熱唱していた。勢い余って、アルコールに手を出し、その後のことはほとんど覚えてないが、夜道をとぼとぼと一人で帰っていった寒さだけ身に染みた。そんな中、優等生であろう男を待つ女の子を想像すると、アズミに見えて、仕方なかった。
アズミの冷静さの中には情熱がある。それがその女の子とピッタリ一致していた。他に何か根拠があるわけではないが、オレの心の中に空いていた穴が自然と埋まっていき、本人に確認することはしなかった。このノートを返して、余計な過去を思い出させたくもないし、このノートはオレがずっと持っておこうと心に決めた。




