事実と空想7
後からサエから聞いて、分かったことだが、ショータはコーキのところにしばらく泊まっていた。普段うちのことを話さないショータが犬のことを話し出したので、タダ事ではないとコーキが言っていたそうだ。
ショータはとっくに頭を冷やしたと思ってたら、両親の想像通りに暴力を続け、何も罪のない犬を犠牲にしたが、この事件でショータもうちを離れて、今度こそ頭を冷やしたと言う。ノゾミもこれをきっかけにもう家出なんかしないと言った。それにちゃんと学校も行くのだと。
先輩のところに荷物を取りに行った時にノゾミはそれを報告した。すると、ユーメは自分の子どものことのように喜んだ。そこでもノゾミは泣いた。おそらく今度は本物の涙を。それでノゾミの一夏の出来事は幕を閉じた。
「悲劇のヒロイン」は全てノゾミの作り話ではない。学校のいじめも兄からの家庭内暴力も本人が望んで創り出したことではなかった。不登校もいじめから身を守る手段で家出もそうだ。
その家出は大切なペットを失うということになったが、ノゾミは失ったものばかりではない。普通に学校に行っただけでは出会うことができない世代の人達との交流を通して、再び学校に行く決心や離れて気付いた家族の絆を取り戻した。
それでもノゾミの人生が悲劇的に見えるのは過去のことを引きずっているせいではないか――小学校のいじめも、兄からの暴力も、ノゾミの中ではまだ終わっていなかった。トラウマとして現在や未来に持ち込まれていくのだろう。事実を受け入れないことには処理もできないはずだ。




