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事実と空想5

次の日は朝から先輩のところへ向かったが、先輩はもう会社に出ていた。昨夜のことはユーメが話してくれた。

「10時過ぎに連絡があったわよ」

想像していた通り、先輩が代わって、話をしてくれていたようだが、ノゾミは一向に帰る様子ではなかった。あの頑固さがアズミとそっくりだ。きっといろいろなことを我慢してきた証拠なのだろう。


「ユースケの面倒とか見てくれてて、逆に助かったくらいだから」

ユーメはこちらの心配はないとノゾミを庇ったが、もう一つ心配なことがあった。こうなってしまって、余計にアズミにどう説明したらいいのか分からなくなっていた。それも先輩に押し付けるのはあんまりだ。


「アズミは最近来ないのよ」

ユーメはそう言ったので、後はノゾミが寂しくなって、帰りたいというのを待つだけだったが、先輩のうちが気に入って、先輩達も困り出していた。


「うちは助かるんだけど、両親のことを考えたら、このままってのはちょっと」

ユーメも電話口でそう言った。ユーメは手伝いをしてくれるノゾミに勉強を教えていた。不登校でも勉強が嫌いなわけではなさそうだ。


そこで次の日、ちょうど大学に用事があったので、ノゾミも連れていった。大学の授業はまだ休みで人が少なかったが、すれ違う人の中にはオレ達を不思議そうに見る者もあった。オレ達は親子には無理があるが、兄妹には歳が離れすぎている。そんな二人の関係を不思議に思うのも分からなくもなかった。


「この子が話の子か」

教授はノゾミを歓迎した。そして、ノゾミはユーモアのある教授の話に何度も笑った。もともと明るい子なのだ。


「ノゾミも大学に行きたい」

待ちに待った言葉がついに出た。

「大学に行くにはもうちょっと勉強しないとダメだよ。それにはちゃんと学校に行って、両親にお金を出してもらわないと」

オレはすかさず、用意しておいた言葉で説明したが、中学、高校に行かなくたって、ミライのように大学に行く道はある。例え、両親がお金を出してくれなくても、アズミみたいに奨学金という手もあるし、働きながら行くことだってできるが、ノゾミにはもっと楽な道を選んで欲しかった。


これをきっかけにうちに帰り、学校に行くようになってくれたらと思っていたが、ノゾミは楽な道を選ばなかった。このまま先輩のうちでユーメに勉強を教わり、自分で稼げるようになったら、働いて、大学に行くと宣言した。中学二年生でそこまで決めてしまわなくてもと思ったが、ノゾミの意志は固かった。


「中学時代の杉本とは大違いだな」

オレの中学時代までこの教授には見破られてしまっているようだった。

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