事実と空想2
次にアズミに会った時にノゾミについて聞いた。
「相変わらず――」
「――だよね」
それくらいで上手くいくなら、今までにショータでもアズミでもどうにかできていたはずだ。
ショータとはあれ以来で連絡もなかった。自分からケータイを番号を教えてくれたのだから、こちらから電話をしても構わないということだろうが、あちらにも学校がある。突然かけても、迷惑だろう。
「その子のことはもういい。行きたくないのを無理に行かせようとしなくても」
アズミの方がノゾミが学校に来ない事実を受け入れようとしていたが、それでは事実は変わらない。ノゾミが学校に行くようにならなければ、問題は解決しないのだから。そういうアズミの態度が急に無責任に感じてきた。
それに口ではそう言っても、理想が高く、完璧主義のアズミが事実を完全に受け入れているとも思えなかった。それよりまだ中学二年生のノゾミを学校に行かせて、アズミの気持ちを楽にさせる方がずっと簡単に感じていた。
「――この場合、いい方法とかあります?」
オレは教授にも相談していた。
「杉本は学校に行きたくない時とかなかったのか?」
教授は質問を質問で返した。
「ないってこともないですけど」
「だったら、その時に身を置いてみれば、いいじゃないか」
教授は直接、解決方法を教えてくれない。不登校なんて生徒のは数だけ理由があるから、教授でも分からないと言う。
「杉本の方が若いんだから、分かるはずだろ」
小、中学校の時は毎日が楽しくて、学校に行きたくないとか思いもしなかった。毎日バカみたいに笑って、みんなを笑わせたが、そんなオレを傷つけ、学校から離れていったのはその笑いの正体に気付いていてからだ。
彼らは楽しいから笑っているというより可笑しかったのだ。バカなオレを見て、ただ安心したかったのだろう。その中には優越感も含まれていたのかもしれない。逆にオレは劣等感や引け目を感じて、肩身の狭い思いをした。
「その劣等感や引け目のようなものがその子の中にもあるんだろ、きっと」
教授はオレの一人言を拾い集めて、まとめた。
「そっか、それをなくすためには?」
また教授に救いを求めた。
「だから、知らんと言ってるじゃないか。第一みんながみんな優越感があって、笑ってたとも限らないし、要はどう受け止めるかだ」
そうだ、オレが勝手に劣等感を感じていただけなのだ。バカは大学に行く必要はないとナオキ達も一言も言わなかった。
ミライもそうだ。姉のいじめを見て、自分もいじめられるのではないかと考えていた。不登校なら、いい経験者がいるのに、オレはミライに相談しなかった。新しい職場で頑張っているミライに暗い話をして、落ち込ませるのは嫌だった。この教授もミライを手放してから例すら挙げようとしなかった。




