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事実と空想1

「サエ――」

大学で久しぶりにサエの姿を見て、思わず叫んでしまった。サエは一瞬嫌な顔をしたが、話を聞いてくれた。


アズミを笑顔にさせるにはこれしかなかった。不登校の高野(たかの)(のぞ)()を学校に行かせることだ。


オレはいつもの要領でこの子について調べた。ある路線から接点が見つかった。サエの弟はノゾミの兄と同じ高校の同級生で随分親しい仲のようだった。


サエの弟はよく知っている。サエよりさらに五歳下で家庭教師に行っていた時はまだ小学生だった。やんちゃでうちの中をドタバタと走り回って、姉の部屋を覗きに来ては勉強の邪魔をした。好きにやったらとサエは弟の(こう)()に会わせてくれた。


「高野君ってどんな子?」

「別にフツーだけど」

高校二年生になったコーキはあの頃とは別人のように落ち着いていた。


「ノゾミちゃんには会ったことあるの?」

「いや、(しょう)()は絶対うちに入れてくれないし、妹を隠したいだろ」


「そのショータって子を紹介してくれない?」

「別にショータがいいって言うなら」

――というわけでオレは簡単にショータにも接触できた。


ショータはコーキが言うように見た目は普通の高校生だったが、妹が不登校になるくらいだから、ミライのように家庭にも何か事情があるのではないかと思った。


「コーキから聞いたことなんだけど、うちに入れないのは何か理由でもあるの?」

今までいい感じで会話していたのに、そのことになると、ショータは黙り出した。


「いや、何でもないっす」

何かを考えていると思ったら、出た言葉はそれだけだった。


「実はノゾミちゃんのことで学校に行けるように協力して欲しいんだ」

「協力って何を?」

そう返されて、今度はこちらが答えに迷った。


「ノゾミちゃんにも一度会って、話がしたいんだ」

「そんなことしたって無駄だよ」

さっきまでの敬語が崩れて、少しふてくされた様子だった。


「でも、話すことで気が楽になるかもしれないし」

「それだったら、オレでもできるし」

そう言われてみれば、その通りだ。これ以上オレが介入する隙のなさを感じた。


「なら、話くらい聞いてあげてよ」

それには、分かりましたと素直に聞き入れた。何かの時のためとケータイの連絡先を教えておいた。それなら、オレも――とケータイ番号を交換した。

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