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夢と現実11

オレも人のことばかり考えている余裕はなくなった。冬になると、同学年のサエ達も就職に向けて動き出した。


ナオキ達もこんな寒い季節から来年の春のために準備をしていたとは知らなかった。ナオキがあの時に気持ちの整理をつける必要があったのも、転勤で東京に行くことが決まっていたからだ。


オレは教授の部屋を訪ねていた。ミライが四年間お世話になった教授だ。


「コーヒーはダメだったかな」

オレの顔を見るなり教授はそう言った。さすがに心理学部の教授だけあって、見抜かれてしまった。


オレはここ数日、眠れない夜を過ごしていた。以前はアルバイトで忙しくて、そんなこともあったが、それとは違った。眠ってはいけないからでなく、眠ってもいいのに、眠れないということだった。夢と現実のパラドックスにハマってしまい、夢を見るのが怖くなったのだ。


「卒論のことだったかね。何か決まったのかい?」

「いや、今はそれどころじゃなくて――」

オレは悩みのことを相談にやってきた。


「興味があることぐらいあるだろ? 眠らないで、熱中するくらいだから」

「それはその――夢を見るのが怖くなって」

「そんなに夢に関心があるなら、それでいいじゃないか」

この教授の言うことはいまいち理解不能なことがある。それだけオレの頭が悪いのか、それともこの教授が変わり過ぎているのか、判断しづらい。


「人は怖いものに人一倍知ろうとするから、きっといいものが書ける。これでも飲んで、もうしばらく考えてみたら?」

教授はコーヒーを差し出した。それで意外にも気持ちが楽になった。


「笑いというテーマで――」

卒論を書くことを次に教授の部屋に行った時に伝えた。


教授が言うように怖いからこそ関心があるのかもしれない。好きの反対は嫌いじゃなく、無関心なのだ。そう考えると、恐怖や笑いも感情に関わるもの全ての反対は無関心なるのだ。今のアズミはどうでもいい存在でないからこそ怖かった。


「それが君の夢か」

今日の教授の言うことはよく分かって、一緒になって、笑った。そのことを何も知らないミライだけが不思議そうに眺めていた。


「加藤はもう私の元から卒業だ」

さっきまで笑っていた教授が少し厳しい口調になった。別れがつらいから、少しずつ距離を置いているのだ。


アズミもそうだ。ミライが大学を離れる頃、アズミも東京に向かう。


「――ってか、オレの分のミルクと砂糖は?」

「加藤が全部使ったから、ないよ」

オレはブラックのままコーヒーを飲んだ。

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