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夢と現実10

ユーメもアズミが東京に行くという話を知らなかったらしく、久しぶりに怒った顔を見せた。

「アズミの夢に対する情熱はどこに行ってしまったの? 私だって教師目指してたから、その分アズミには頑張って欲しいと思ってたのに」

ユーメがオレが言いたかったことをほとんど伝えてくれたので、黙っていた。


いつもなら、一言、二言でピンときて、受け答えをするアズミも今日は黙っていて、最後までユーメの話を聞いている。そんなオレ達を見て、ユーメだけが一人でしゃべっていた。


「杉本君に対してもそう、私達では入れないほどの情熱的な思いあったじゃない?」

アズミはオレを追いかけていたと確かに言った。それで就職先まで決めたのだと。それがどうしてこうなったのだろうか。


オレはアズミを引き止めることでさえできない。森田のように一緒に暮らそうなど言える立場ではなかった。こう恋愛に奥手になったのはきっとアカネのせいだ。そして劣等感を抱くのはナオキのせいだろう。オレは彼らに傷つけられたのだ。


アカネもナオキも素直だから、謝って欲しいと言えば、謝るだろうが、それだけでは何も変わらない。自分自身を変えられるのは自分だけなのだから。


オレだって東京に憧れていた一人だった。人を笑わせて、人気になるためにはとりあえず人が集まるところに行けばいいのだ。そんな夢から覚めさせたのも、アカネだった。


アカネは酔い潰れるオレを見て、あり得ないとだけ言い捨てた。それは現実に戻らずにはいられなかった。それからオレはあり得ない世界を見ず、目先の大学に入ることくらいしか考えなかった。


その大学ではバカにされる現実が待っていた。次第に笑われることにも劣等感を抱き、自分から人を笑わせようなんて思わなくなった。


「落語も飲み会サークル何だろ?」

ナオキはバカにしているわけでもなく、正直な感想だったが、その頃からサークルに行かなくなった。酔い潰れるくらいなら、現実の世界だけで確実に生きようと。


ユーメと別れて、オレはやっと口を開いた。アズミは何かを期待しているようだが、オレはこれが精一杯だった。

「アズミがいないと、オレの夢も実現できないんだ」

この一言で何かが変わるとは思わなかったが、素直な気持ちだった。これを言わなければ、一生後悔しそうだった。


アズミは何も答えなかった――という前に何かを答える質問はしてなかった。

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