夢と現実3
「山内先生のクラス、なんかまとまってるのよね」
アズミもユーメや先輩の前では自分の仕事の話をしなかった。幸せな家庭に仕事のことを持ち込んだら、悪いと思ったのだろうが、今日は違った。オレと会うなり、そんなことを言い出していた。それだけ信頼してくれているということなのだろうか。
山内先生というのはもちろんシオリのことだ。高校時代の二人の関係は知らないが、何か嫉妬でもしているように聞こえた。
アズミは大学四年間ずっと塾講師のアルバイトしていたぐらいだから、三年のブランクはあっても、それなりの指導力はあると思うが、クラスを受け持つことになると、それとは少し違うのかもしれない。
シオリも中学生の男子の気持ちが分からないと相談してきたから、そのようなものだろうと思ったが、そんな日がこんなに早く来るとは思いもよらず、何も準備できてなかった。
「――って、杉本君にそんなこと言っても、困らせるだけだよね」
アズミは自分から話を打ち切った。デートとは言えないが、アズミとはこうやって何度か二人で会っていて、話のネタが尽き出していた。
今の大学でのミライやサエの話はアズミを不快にさせるだけのようで持ち出したくない。だからと言って、他人の過去を詮索するのはもうやめた。結局、アズミが癒されるというユースケの顔を見に行くことにした。
「先輩は?」
アズミはそんなことよりすぐユースケのそばに行ったが、オレは部屋の中を見回して、ユーメに聞いた。最近残業ばかりで忙しいのよと答えるユーメはオレ達が来て、喜んだ。ユーメも1日中ユースケと二人で疲れもあるのだろう。
ユースケの癒しの原因は何だろうとオレもそばに行った。何の罪もなさそうに眠っているこの顔は今の現実を忘れさせてまうほど純粋だった。それはミライが持っているものと似ていた。