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夢と現実1

「久しぶり、どうぞ上がって」

ユーメは笑顔で迎えてくれた。先週先輩から赤ん坊の顔でも見に来ないかと誘いの電話があった。オレはもちろん行くと答えた。部屋の中に入ると、その赤ん坊とそれを見つめるアズミの姿があった。ここのところ毎日、仕事帰りに来てくれるのよと言うユーメは嬉しそうだった。


「この子見てると、癒されるのよね」

アズミが言っているこの子はユーメの「優」に先輩の名前から「翼」を取って、(ゆう)(すけ)になったそうだ。


それから四人揃って、話をした。この四人は一年ほど前まで同じ会社で働いていた。それが今、あの会社に残っているのは先輩一人だけになってしまった。


アズミの電話応対が悪くて、オレが責任をとってやめたということが広まり、アズミも居づらい状態になっていたことは先輩からこっそり聞いていた。先輩はそのことを気遣ってか、会社の話は一切持ち出そうとしなかった。


会社の話がなくても、同じ大学出身だから、話すことなら、いくらでもあったはずなのに、ユーメはスピーチのお礼ばかり言っていた。オレのおかげで最後まで笑顔でいられたのだと。


確かにあの日の写真を見ていると、それがよく分かった。ユーメだけでなく、アズミもオレもみんな笑顔でその後の現実を忘れてしまいそうだった。


「この授業も一緒だったんですか?」

スーツ姿の加藤(かとう)()(らい)が聞いてきた。ミライは就職活動中の四年生で取っている授業自体は少ないはずだが、気が合うのか、一緒になることが多い。


名前に「来」が入っていたから、自己紹介で初めて聞いた時から親近感があった。三年生でオレの方が後輩だから、敬語はいいと言っても、こんな感じだ。


「それでシューカツはどう?」

オレは就職活動らしいものをしてこなかったので、よく分からないことがある。だからというわけではなく、まだお互いのことを知らなくて、それくらいの話題くらいしかなかった。


「またダメだったみたいで――」

落ち込ませてしまったようだ。オレは年下の男一人も癒すことができず、ただ呆然としていた。

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