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白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
前編:Grayish future
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福山少佐の遺言

 アーサーとカーライル中尉が席に着いた後、(さい)大佐が福山少佐が残したメッセージ動画を再生した。

 映し出されたのは福山少佐の自室。

 少佐が神妙な顔で椅子に腰かけている。


「この動画を君が見ているという事は、既に俺は死んでいるのだろう……って言ってみたかったんだよね。自分で言ったけど君って誰の事だろうね。敬愛する(さい)司令は遺言動画みたいなの見てくれないだろうから、誰が見てくれるんだろうね。まてまて、早送りするなよ今から大事な話をするから」


 (さい)大佐が早送りしようとした手を止めた。

(大佐、始まったばかりなのに苛立っているな。よく長い付き合いが出来たものだ……)

 アランには大事なことを簡潔に話す事を好む崔大佐と、けれんみあふれる話し方をする福山少佐が相棒だった事が不思議に思えた。


「さて、今から俺自身について一番重要な事を話す。俺は、俺はなぁ……本当の俺は!」


 アーサーとカーライル中尉は、今から福山少佐自身の秘密が開かされると思っているだろう。

 様子を見なくても、隣に座っている二人が緊張しているのをアランは感じていた。

(俺は先に見ているから分かるが、初見の二人はどういう反応をするだろう。大佐も初見だがオチが想像出来ているのだろう)


「俺はシニチじゃない! 真一だあああああ! 分かるさ! 君たちにとって呼び辛いって。でも、少しだけ努力してみてくれ。し・ん・いーー」

「ここはいらないね」


 (さい)大佐がついに早送りした。

 アーサーとカーライル中尉は呆然としている。

 二人の反応は当然といえる、戦闘シミュレーションでの不遜で偉大で鬼の様な強さの少佐しか知らなかったのだから。

 福山少佐が落ち着いたように見えたところで、(さい)大佐が早送りを止めた。


「俺には家族がいない。だから誰に遺言を残すか考えた。司令には全てを伝えてきた。だから伝える事はもうない。司令以外で考えた時に、最後に戦った奴らが思い浮かんだ。まだまだ素人だったが、他の兵士より根性があったからなーー」


 画面に字幕が表示された。

 グリント大尉へのメッセージは1:10:15。

 バークス兵長へのメッセージは1:15:46。

 カーライル中尉へのメッセージは1:18:24。

 シークレット1:22:51。


「これは便利ね。飛ばすよ。最初はアーサーね」


 崔大佐が字幕をクリックして、アーサーへのメッセージ動画を表示した。


「グリント大尉、君は相手の考えを読み過ぎている。だから相手に合わせすぎて、敵に主導権を握られる事が多い。敵は思いやりを向ける相手じゃない。相手の考えを読んで先手を打て。そうすれば有利に戦えるはずだ。だけど気をつけろよ。世の中には考えが破綻している異常者がいる。特に戦場っていう特殊な環境では多くいるから、常に動きが読めると思わない事だ。冷静になれば、お前が一番優れたパイロットだ」

「もっと早く言って欲しかったですよ。もう、とっくに思い知ってる事ですから」


 アーサーが疲れたように言った。


「次はアランね。アランは一度見てるのだろう? どうする?」

「大佐、映してくれ。俺が受け継いだものを二人に見て欲しい」

「分かったよ」


 (さい)大佐がアランへのメッセージ動画を表示した。


「バークス兵長、君は既に俺の強さの秘密に気付いているのだろう? 戦闘シミュレーション中に、常に俺の機体の動きを観察していたからね。他の兵士は俺を倒そうと躍起になったり、撃墜を恐れて怯えるだけだった。戦闘シミュレーションだから死ぬ事はない。だけど、シミュレーションとはいえ、リアルに撃墜を体感する事になる。戦場に近い状況で冷静に観察してきたのは大した根性だと思うよ。既に解析して取り入れているだろうが、俺の使っているプログラムをベースにすれば作業が捗るだろう。前に会った時は時間が無くて渡す準備が間に合わなかったが、俺の機体からデータ移行が出来た。俺が作った格闘プログラム『摩利支天』。使ってくれよ」

「そういう事だ。だから俺のシンセシスー2には福山少佐の力が宿っている」


 シンセシスー2の圧倒的な格闘能力は、福山少佐の戦闘プログラムのお陰だ。

 他の機体でも使えれば大幅に戦力が上がるが、E.G.の標準規格の制御プログラムでは動作しない。

 シンセシスー2で使用出来たのは、ウォルフ技師長が改良した統合プログラム『Synthesis ver.2』のお陰である。


「次はカーライル中尉の番ね」


 (さい)大佐がカーライル中尉のメッセージ動画を表示する。


「あー、カーライル中尉は戦闘シミュレーションでしか関わってないから良く分からない。でも一人だけ仲間外れは可哀そうだから一応言いたい事を残しておくよ。最初に聞くけど、君は生きてるかい? もし死んでたら、このメッセージは飛ばしてくれよ。なんで俺がこんな事を言うか分かるか? 君が死に急いでいる様に見えるからだ。君は戦場で死のうと思っていないかい? 戦闘シミュレーションで真っ先に撃墜されたのは毎回君だった。機体性能と操縦技術が他の二人より劣ってるからだと思っているか? それは違う。グリント大尉は実力を発揮出来ていなかったし、バークス兵長は実力を発揮していなかった。君が適切に戦っていれば、彼らと同等の戦いが出来た。でも、仲間を無駄に庇って直ぐに撃墜されていた。君の事情は知っている。仲間の盾になって死ぬことが贖罪だと思っているのかい? もし、君が生きているなら考えを改めた方がいい。自分が犠牲になれば仲間を守れると思い上がるな。君の不用意な行動が仲間を窮地に陥れる事になる。味方が君を守ろうとしたら、どうなると思う? 君の自殺まがいの行動に仲間を巻き込むなよ」


 カーライル中尉が下を向いている。

 彼には心当たりがあるのだろう。

 実際、E.G.軍宇宙センターでの戦いで、アーサーを助けようと焦って機体にダメージを受けた。

 そのせいで戦力不足となり苦戦を強いられた。

(後はシークレットデータだけだな。二人は何を思うだろう……)

 シークレットデータには福山少佐が不正を行った切っ掛けが記されているのだ。

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