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白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
前編:Grayish future
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重すぎる決意

 格納庫に着いて直ぐアーサーは見つかった。

 カーライル中尉の情報通り、シンセシスー1の腕のパーツの前で座り込んでいたからだ。


「何をしているのアーサー?」

「見ての通り座っているだけだ」


 以前のアーサーからは想像出来ない冷たい反応。

(様子が変わり過ぎて、もう誰だか分からないわね……)


「座っているのは目の方だと思うけどな。いい加減、元に戻れって。そんなにギスギスしてたらみんな困るだろ? 英雄様がご乱心ってな」


 カーライル中尉が場を和ませようと、おどけて見せる。

 だが、アーサーは鋭い眼光で睨み返した。


「それが上官に対する態度ですか? カーライル中尉? 軽口は謹んでもらえませんか?」

「何だよ、いつもの様にオリヴァーさんって呼んでくれないのかい?」

「必要ないでしょ。今のあなたには」

「その通りだ。必要なのは俺じゃない」

「なら、何故聞いた?」

「俺じゃなくてアーサーに必要だからさ。いつもの様にオリヴァーさんて呼んで、笑って見せろよ」


 アーサーが高圧的な態度を取ったが、カーライル中尉は一歩も引かなかった。

(アーサーが階級で圧力をかけようとするなんて……でもカーライル中尉が頑張ってくれている)

 カーライル中尉は諦めていない。

 だから、凛は二人の会話を黙って見守る事にした。


「戦争をしているのだ。我々の仕事は笑えるものではない」

「そんな事はお前以上に知ってるよ。でも、普段の生活まで神経質になる必要はないだろ?」

「そういう甘い考えだから仲間を失うんだよカーライル。敵は何時、誰の命を狙っているか分からないのだ。今もこの世界の何処かで、誰かの命を奪い続けている」

「そうかもしれない……だけど、アーサーが何処の誰だか知らない奴の命に責任を感じる必要はないだろ?」

「ありますよ。奴らを滅ぼす職に就いていながら、滅ぼし損ねていますからね」

「奴らを滅ぼす職だって……違うだろ! E.G.軍はファングを滅ぼす為に作られた組織ではない!」

「それは建前ですよ? 我らアースガバメントの敵はB.o.Dが保有する軍隊、ファングなのは明白ですよ。他に敵対する組織がありますか? 無いですよね? 世界政府に属さないファングだけですよ。まさかとは思いますが、テロリスト程度を敵だなんて事は言わないですよね?」

「敵だろ、テロリストだって!」

「なら、テロリストも滅ぼせばいい。ファングの次にね」

「滅ぼすって! アーサーは宇宙の民を虐殺するつもりなのか!」

「別にそこまでは言ってませんよ。我々が滅ぼすのはファングです。私の前で兵器を手にした愚か者だけですよ。宇宙に住む民の全てがファングに参加するというのであれば、宇宙の民を虐殺するというのは間違っていないですけどね」

「そんな事が許されると思っているのか!」

「許されますよ。我々は軍人で、戦争中なのですから」

「俺は戦争犯罪を許せない……だからアーサーが暴走したら俺が止めるからな」

「出来ますか? 私より階級が低く、弱い貴方に?」

「やってやるよ! もう、諦めねぇ。こんな情けない俺を信じてくれた奴がいるんだ!」


 カーライル中尉が肩で息をする。

 興奮気味に矢継ぎ早で話をしたから息切れをしたのだろう。

 カーライル中尉は伝えたい事の全てを言い切った。

 それでもアーサーには想いが伝わっていない様に見える。


「凛さんですか? カーライルに何を吹き込んだんですか?」

「吹き込んだって……アーサー変わっちゃったね」

「変りもするさ。目の前で何人も殺されればな」

「今のアーサーをアランが見たら悲しむわよ」

「故人が悲しむ事は無い」


 アーサーの声が一段と低くなる。

(故人だって? アーサーはアランが死んだと思っているの? 一番一緒に戦ってきて、一番信頼していると思っていたのに……)

 凛はアランが生きていると信じている。

 だから、アランを死んだ事にしているアーサーを許せなかった。


「勝手に殺さないでよ!」

「レイモンド・バージェス……あの男は私に匹敵する実力者だった。損傷した機体で勝てる相手ではない」

「それでも、アランは想像を超えた戦い方で勝ってきたでしょ」

「工夫で何とかなる戦力差ではない。アランだけではない、友軍のアルダーン部隊も全て撃墜されただろう。E.G.軍宇宙センターと通信が出来ないのは知っているな? 打ち上げ支援をしていたウォルフ技師長も戦死したって事だ」

「整備班の皆は生きてるって信じてるよ」

「そういう甘さが今回の事態を生み出した。大丈夫だろう、何とかなる、そう言い続けた末の末路だよ……」

「不安な時は誰だってそう思うわよ。希望を持つことは悪い事じゃないよ」

「希望を持つのは悪い事ではないよ。でも、それは他者の話だ。私は希望を持つのではなく、希望そのものにならねばならない。私がE.G.軍の英雄、アーサー・グリントだ」

「そんなの誰も望んでいないわよ」

「望んでいるさ、私自身がね。作戦会議の時間だ。ブリッジに向かいますよ」


 アーサーは凛とカーライル中尉の返答を待たずに、ブリッジへ向かって行ったーー

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