密林の少年1
State1のE.G.軍基地を出港した戦艦フリージアは、順調に目的地のインドへ向かっていた。
東アジアはE.G.軍の支配地域であり、今回のファングの侵攻対象地域ではない。
戦闘の可能性が無いから、搭載しているチャリムのオーバーホールを行い、暇になったフリージア隊のパイロット達はしばしの休息を堪能していた。
それが甘い判断であった事を気づかせてくれたのは、戦艦フリージアのメインスラスターへの着弾であった。
「スコット、状況報告! 索敵どうなってる?!」
フィオナ艦長が通信士のスコットに指示を出した。
「G.D.ウエイブVS2クラスの反応6! 量産型チャリム6機のアンブッシュです」
「メインスラスターに被弾してるぞ! 高度が保てない!!」
操縦士のアンソニーが叫んだ。
メインスラスターに損傷を受けて、混乱するブリッジクルー。
フリージア隊のクルーは新型機体の実験部隊出身者が多い。
実戦経験が浅く、戦闘でのトラブルへの的確な対処が困難であった。
だが、そういう状況でも的確な指示を出し、窮地を脱するのが艦長のフィオナの役目である。
「アンソニー! あの岩山の合間に着艦させなさい。凛、出撃出来る機体はある?」
フィオナ艦長が戦艦フリージアを近場の岩山へ着艦させるよう指示をした。
戦艦フリージアが最新鋭の戦艦とはいえ、動けなければ唯の的である。
岩山の合間に着艦させる事で、敵の攻撃を遮るのが目的だ。
凛は艦長の指示を受けて、ウォルフ技師長へ通信して出撃可能な機体を確認しようとしたがーー
「駄目ですっ!」
通信士のスコットが悲鳴を上げた。
敵のリベレーンVEがビームライフルをカタパルトに向けている。
戦艦フリージアには耐ビームコーティングが施されている。
だが、この至近距離で撃たれれば持たないだろう。
カタパルト出口の障壁を打ち破られ、格納庫のチャリムを失えば反撃を試みる事は出来なくなる。
それどころか、そのまま格納庫に向かって撃たれ続ければ、内部から崩壊して戦艦フリージアは撃沈するだろう。
ギュアン!
高温の重粒子の帯が鋼鉄の障壁を抉り、不快な振動が戦艦フリージアを襲った。
そして、カタパルト入口の障壁を突き抜けたビームが、カタパルトにビームライフルを向けていたリベレーンVEを貫いた。
障壁の内部から外へ向かって放たれたビーム。
その後を追いかける様に姿を現した、銀と黒のまだら模様のチャリム。
シンセシスー1だ!
「修理費用は艦長が払え! 何で奇襲を受けた?」
アランはフィオナ艦長に文句を言った。
「そういう貴方こそ、どうして出撃出来たの?」
「俺はパイロットだ。出撃方法ぐらい知っている」
「そういう意味じゃない。搭載しているチャリムはオーバーホール中で、パイロットには休暇を出してます」
「休暇なんだから俺が何をしていようと自由だろ?」
「ふざけている場合ではない。アラン、調整中で動作が不安定だが問題ないか?」
ウォルフ技師長が通信に割り込んだ。
「ウォルフ技師長、どういう事ですか?」
「坊主は福山少佐に勝つために機体を弄っていたんじゃよ。だからオーバーホールも後回しにしてたんだ」
「余計な事は言うなウォルフ! 敵は俺が何とかする!!」
敵の残り5機はアランが乗るシンセシスー1を撃墜する為に集まってきた。
最初に襲撃を受けてから出撃したのはシンセシスー1だけである。
この危機的状況で搭載しているチャリムを出し惜しみする事は考えられないから、シンセシスー1が唯一動かせる機体だと気づいたのだろう。
だから、敵はシンセシスー1撃墜して安全を確保してから、戦艦フリージアを撃沈させる事にしたのだろう。
今回出撃したシンセシスー1はビームライフルとビームソードを搭載した標準装備である。
福山少佐の操縦を再現する為、彼が戦闘シミュレーターで操作していたアルダーンと同じ装備にしていたのだ。
(実践でどこまで再現出来るか分からない……だが、英雄でもない相手に負けるとは思えないな)
アランは敵機に向かってビームを放ち、予測した敵の回避ポイントにもビームを打ち出していく。
敵のリベレーンVEが吸い込まれるように予測して撃ったビームに当たる。
敵機に当てる為に撃ったとはいえ、簡単に当たってしまい拍子抜けする。
残り4機。
このまま一気に殲滅したかったが、敵も馬鹿ではない。
アランが攻撃出来ない様に交互に攻撃してきている。
(少しだけでいい。隙が出来れば!)
アランは一時的に回避に専念する事にした。
突如、眼下に広がる森林からビームが飛び出し敵機を貫いた。
そして、見慣れないチャリムが飛び上がってきた。
緑と黒のまだら模様のチャリム。
(これは……E.G.軍のアルダーンとファングのリベレーンVEの部品を組み合わせた機体か?)
アランは飛び出してきたチャリムが、シンセシスー1同様に両軍の部品を組み合わせた機体である事を見抜いた。
「やるじゃないっすか! パンダ柄の人!」
E.G.軍の標準規格で謎の機体から通信が入った。
(少年……何者だ?)
聞こえたのは軍人とは思えない少年の声だった。
パンダ柄というのはシンセシスー1の比喩表現だろう。
味方かどうか分からないが、アランは謎のチャリムと共闘する事にした。
敵のリベレーンVEを撃破したのでファングではないと判断したからだ。




