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白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
前編:Grayish future
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裏切りのアラン6

 時は戦闘開始前に遡るーー

 アーサー機の背後を飛行していたアランはオートバランサーを切った。

(予想はしていたが、結構難しいな)

 アランは挙動が不安定となったシンセシスー1を必死にコントロールする。

 人型であるチャリムは、航空機と違って空力性能に秀でている訳ではない。

 大出力のスラスターで無理やり飛行するには、コンピューター制御は欠かせない。

 オートバランサーが動作を止めれば墜落の可能性があるから、自ら切るのは自殺行為だ。

 それでもアランがオートバランサーを停止した事には意味がある。

 オートバランサーが動作していたら機体の挙動が安定してしまい、整備不良のフリをして帰還する事が出来ないからだ。

 アランはシンセシスー1の挙動が異常である事に友軍が気づいたタイミングで、ロイド中将に通信を送る。

(予想通り動揺している。秘密回線ではなく、軍の通常通信で送った事にも気づかないとはね。これで、全軍が俺が退却した事を知っただろう。後はウォルフ次第だな)

 アランはふらつくシンセシスー1を戦艦フリージアではなく、ロサンゼルス基地に向かわせた。

 そして、ウォルフ技師長が指定した場所に辿り着いた。

 着いてすぐ、シンセシスー1を停止させ、コクピットを開けて、ウォルフ技師長に問いかけた。


「ウォルフ、トレーラーのアレはなんだ?」

「どうだ凄いだろ! シンセシスー1の偽物だよ」

「俺は頼んでない」

「頼まれて作ったもんじゃんないさ。ロイドを撃てば、軍本部はカレイドスコープを起動するだろう。バリアーを張った基地の中に退却したシンセシスー1がないと大問題だろ?」


 ウォルフ技師長は、アランがロイド中将を撃つ事が当然だと思って行動している。

 それはアランを驚かせるには充分であった。

 カーライル中尉、アーサーだけでなく、陰謀慣れしているロイド中将ですら、全く気付いていないのに……

(何故だ……俺は何かミスったのか……)


「ボケっとするなアラン。データを送ったから今すぐ目を通せ!」


 ウォルフ技師長の声で、考えに浸っていた意識が戻る。

 今は考え事をしている場合ではない。

 目的を知られたとはいえ、ウォルフ技師長は敵ではないのだ。

 ウォルフ技師長が送ったデータをモニターに表示する。

 データの内容は地図だった。

 ロサンゼルス基地から、北と北西の山岳地帯へのルートが表示されている。

(地図なら標準で搭載されているのに送る意味があるのか? しかも、ルート案内にしては一部のルートが不自然だ。これは何の地図だ?)


「ウォルフ、この地図はなんだ?」

「俺が監視カメラを停止させたルートだ」

「監視カメラ?」

「馬鹿もの! G.D.ジェネレイターを起動しなければ、G.D.ウエイブを検知される事はなくなる。だがな、監視カメラに映像が残っていたらどうする。戦場でバレなくても、諜報部の調査でバレるぞ!」


 アランはウォルフ技師長の説明で自身の甘さに気付いた。

 G.D.ウエイブを検知されない事にとらわれて、シンセシスー1の存在自体を視認されるリスクを忘れていた。

 ウォルフ技師長が気付いて対処してくれていなかったら、アランは指名手配犯となっていただろう。

 それも覚悟の上だったが、指名手配されない事に越した事は無い。


「準備出来たぞ。稼働時間は2時間だ。武器などで電力を使えば短くなるから気をつけろ!」

「分かった、ありがとうウォルフ!」

「頑張れや坊主!!」


 アランはコックピットを閉じてシンセシスー1を走らせた。

 ウォルフ技師長が設定したルートを走らせながら武装の確認をする。

 装備はスタンロッドとワイヤーアンカーの二つだけ。

 スタンロッドは接触した対象に電流を流す武器で電力消費が大きい。

 出来るだけ戦闘は避けた方が良いだろう。

 ワイヤーアンカーは射撃ボタンで射出、リロードで巻き取りの設定となっている。

 これなら、通常の武装と同じ感覚で操作出来る。

 アランは装備を準備してくれたウォルフ技師長に感謝した。

 そして、ウォルフ技師長の指定したルートを問題なく走り抜け、アランは迷いなく北の山岳地帯を目指した。

 スナイパー機がいるとしたら北の山岳地帯で間違いない。

 北西の山岳地帯では、撤退した時にスナイパー機が取り残されるからだ。

 その様な選択をしないのが、イーサンという男だ。

 北の山岳地帯に着いたアランは、ワイヤーアンカーを使ってシンセシスー1を地道に()()()()()いった。

 ワイヤーアンカーで飛び回るようなカッコイイ動作を期待していたが、飛び回るには80tを超える巨体は重すぎるのだ。

 アランは少しがっかりしたが、山頂の開けた場所に辿り着いて直ぐ嬉しさがこみ上げてきた。

(予想通り! スナイパー機がいる! 僚機のレーダー仕様のリベレーンVEは余計だがな)

 スナイパー機がアランのシンセシスー1に気付き立ち上がろうとする。

 アランはシンセシスー1を走らせ、立ち上がろうとしたリベレーンVEの背部にスタンロッドを打ち付け、スナイパー機の動作を止めた。

 後は、レーダー仕様のリベレーンVEのみ。

 ビームライフルで攻撃してくるレーダー機。

 シンセシスー1には遠距離武器はない、だがーー

 シュバッ、ガキィン! シュゥゥゥウン!!

 アランはすかさず、ワイヤーアンカーをスナイパー機に打ち込んだ後に巻き上げた。


「こういう使い方もあるんだよ!」


 引き込んだレーダー機のコクピットにスタンロッドを当てて機能停止させた。

 敵を排除し、欲しかった物が目の前に転がっている。

 後は目的を果たすだけだーー

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