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白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
前編:Grayish future
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裏切りのアラン2

 アランが指令室に向かうと、あっさりと室内へ迎え入れられた。

 警備の兵もおらず、ロイド中将と二人っきりである。

 アランはロイド中将に促され席に着いた。


「よく来たねアラン君。要求は何かな?」

「要求? 話を聞きに来たのに、いきなり要求する必要があるのか?」

「あるよ、あるよ~。僕はね、親しくしたい相手には最初に要求を聞く事にしてるんだよ」


 楽し気にアランに要求を問うロイド中将。

 アランには中将の意図が分からない。


「何故要望なんだ?」

「最初に欲しいものを聞いてた方が、今後の付き合い方を決めやすいんんだよ」

「それなら兵器を準備してくれ。出来るだけ強力な奴だ」


 アランは即答した。

 目的が付き合い方を決める為なら、即断した方が印象が良いと考えたからだ。

 答え方を考えて、有利に働くよう思考していると思われる方が問題だ。


「いいよ、いいよ。直ぐに手配してあげるからね。あのカリバーンより高性能な機体を開発させよう」

「何故、そんなに簡単に俺を信じる?」

「僕がこの質問をどれだけの人間に聞いて来たと思っている? 人間ってのはね、欲深いくせに欲を隠そうとするんだよ。僕が聞いても願いを口に出さない。そのくせ、目線でねだるんだ。口に出さなくても、気を使ってやってもらえる事を期待している。実に汚い」

「俺にとっては特別な事ではないな。俺はファングを滅ぼす。だから強力な兵器が欲しいと常々言っている」

「僕は自分の欲望を他人に晒せる人間は好きだよ」

「それなら、中将の欲望を教えてもらえますか?」


 ロイド中将が一瞬固まった後、破顔した。


「ロイドでいいよ。僕もアランって呼ぶからさ。アランは僕の欲望を聞いてくれるのか……僕を前にして、それを口にしたのは君が初めてだよぉ。僕の欲望はね、楽しく生きたいんだよ」

「楽しく生きたい? 楽しく生きるのに軍に所属する意味が分からない」

「ファングが侵略してきてるだろ? ただの金持ちじゃ身を守る兵士がいないんだよ。それに兵力があればやりたい放題だ」

「やりたい放題か……一つ聞いてもいいか?」

「いいよ、アラン。なんでも聞いてよ」


 アランは少し考えた後、最後の質問を口に出す。


「ロイドは今楽しいか?」

「もちろんだよ! 愉快な人生を堪能しているよ」


 心の底から楽し気なロイド中将。


「全て理解した」


 アランは全て理解した。

 ロイド中将が愉快な人生を、今も送り続けているという事の意味を……


「それは嬉しいね。まぁ、あの不愉快なカーライルが生き残っていた事は想定外だった。アイツの排除に協力してくれるよね?」

「作戦はあるのか?」

「今のところないね」

「それなら自己判断で対応する」

「自主性があるのは素晴らしい! 部下達にも見習って欲しいものだ。任せたよアラン!」

「承った」


 ロイド中将との話を終えたアランは指令室を後にした。


 *


 翌日、アランは戦艦フリージアの格納庫でカリバーンの整備を行っているウォルフ技師長に声をかけた。


「どうした坊主?」

「ウォルフ、イーサン達は基地を攻撃してくると思うか?」

「可能性はある。だが、攻めてこない可能性の方が高い。ロサンゼルス基地には『カレイドスコープ』があるからな」

「カレイドスコープ?」


 アランは聞きなれない単語を聞いた。

(カレイドスコープ? ウォルフ技師長が言うのだから兵器なのだろうけど、初めて名前を聞いた)

 だが、ウォルフ技師長はアランが知らない事に驚いている。

 彼はアランは兵器なら全て知っていると思い込んでいたのだろう。


「兵器マニアの坊主が知らなかったのか! 基地を覆うビームバリアーだよ。見た目が万華鏡みたいだから、カレイドスコープって呼ばれている。戦艦の主砲にも耐えるからな。イーサンの戦力で攻撃してくる意味はないな」

「もし、攻撃されるとしたら、どこから攻撃されると思う? 特にスナイパーが陣取りそうな場所を知りたい」

「スナイパー? どうしてスナイパーを気にするのか分からないが、基地北西か北部の山岳地帯だろうな」


 ウォルフ技師長は一瞬怪訝な顔をしたが、アランの質問に答えてくれた。

(あからさまだったか。でも、事前情報は必要だ)


「ウォルフ、シンセシス-1をG.D.ジェネレイターなしで稼働する事は可能か?」

「坊主、何を考えている? アルダーンのビームライフル用のバッテリーパックを改良すれば可能だが……」

「頼む」


 アランには事情を話す事は出来ない。

 だから、ただ『頼む』とだけ伝えたのだ。


「理由は教えてくれんのかね?」

「それは出来ない。アンタを巻き込みたくないんだ」

「坊主に心配されるほど落ちぶれちゃいないさ。で、後はなにが必要なんだ?」


 ウォルフ技師長が諦めた顔をする。

 だが、理由を聞くのは諦めても、アランの行動に首を突っ込む事は諦めないようだ。

 だから、必要な事を伝える。


「敵に気付かれずスナイパーを無力化する必要がある」

「スラスター無しで山岳地帯を上るつもりか。それならワイヤーアンカーが必要だな」

「ワイヤーアンカー?」

「チャリムはスラスターでの移動がメインだからジャンプ力がない。だから、高低差がある場所はワイヤーで引き上げる必要があるんだ」

「分かった。実戦でミスらないようシミュレートしておく」

「坊主が何をするつもりか分からんが、準備は任せておけ」

「任せる」


 ウォルフ技師長に会いに来た目的を果たしたので、アランは自室に戻った。

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